見えない脅威 生物兵器 小林直樹 アリアドネ企画

 炭疽菌、ボツリヌス毒素……etc.etc.
 生物兵器の実際について解説した本。911の直後に出版されたらしく化学兵器が使用された地下鉄サリン事件には、かなり言及している。
 オウム真理教が炭疽菌の散布も試みていて、感染の条件が揃わなかっただけということに戦慄した。生物兵器攻撃に、失敗した場合に、仕掛けた側は失敗したことが分かっても、仕掛けられた側は攻撃を受けたことすら認識できないかもしれない。
 成功するまでトライ・アンド・エラーを繰り返されたら……そんな恐ろしさも感じた。

 最強威力のものにこだわらなければ、生物兵器の材料になる細菌や生物毒が付近にいくらでもあることも恐ろしい。
 アメリカ軍でも、攻撃されることを防ぐのは難しく、攻撃されてからの対応に重点を置いているという。

 ソ連が自ら禁止条約に調印した生物兵器の開発を密かに続けていて、ロシアになってもやめていないらしいことは、(本書が書かれた後におきた)イラク戦争が存在がきわめて怪しい生物化学兵器の保有を理由におこなわれたことを考えると、理不尽に思えるのだった。
 亡命者により、もっと証拠がはっきりしているロシアは殴らず、イラクは殴るんだ。

 終盤に細菌兵器にむいた細菌やウイルスの紹介があり、感染力や致死性などで五段階評価されている。ちょっと書くのが楽しそう……まぁ、現実と切り離してみることができれば、気持ちはわかる。

カテゴリ:雑学 | 23:33 | comments(0) | -

異邦戦艦、鋼鉄の凱歌3〜ソロモン決戦! 林譲治

 気がついたらマキシムゴーリキー号戦記になっていた。異邦戦(闘)艦とは元々ロシアの船だったマキシムゴーリキー号のことを指していたのか!?
 戦艦丹後1944年までが撃沈されないことはプロローグでハッキリしているからなぁ。マキシムゴーリキー号の方がスリリングだった。
 生みの親はダグラス・マッカーサー元帥である!
 レーダーを搭載した状況判断能力のある指揮官が乗った軍艦が現場にあるだけで戦況は大きく変わる。そんな結論にたどり着いた。

 3巻までなので玉木運用長の運用が改善されそうで「面白くなってきたな」発言が、続かないことが寂しい。
 タイトルに戦艦があっても陸戦要素の強い話だったことも覚えておきたい。旧式戦艦で艦砲射撃の贅沢ができるのは制空権を確実に握れる米軍だけで、日本帝国軍の艦砲射撃には丹後のような巡洋戦艦こそがふさわしかったのかも知れない。
 いっそ、高速のモニター艦もありなのでは?陸軍が建造して船舶工兵に使わせそう……。

林譲治作品感想記事一覧

カテゴリ:架空戦記小説 | 23:35 | comments(0) | -

異邦戦艦、鋼鉄の凱歌2〜ポートモレスビー作戦! 林譲治

 架空戦記作家は自分が殺したフレッチャー提督の人数を覚えているか?

 空母機動部隊戦の手頃なやられ役として何度も何度も殺されるフレッチャー提督が可哀想。死亡ループモノでフレッチャー提督を主人公にすれば、面白い作品ができるかもしれない。メタすぎる?
 今回の空母が損傷して巡洋戦艦に追撃され、砲撃で死亡は、なかなか壮絶なコースだった。史実ではイギリス海軍の空母フューリアスが巡洋戦艦にやられているなぁ……。

 ポートモレスビーとダーウィンのインフラストラクチャーが破壊されて地獄絵図になる展開は、ポートモレスビーに関しては著者の他の作品でもみた。
 連合軍にとってのガダルカナルにするなら都市の方が便利と言うことか。

 予定寿命2ヶ月のでっちあげ空母マキシムゴーリキーは作者に愛されそうだ。火星探査機みたいに予定を超えて数年生きる可能性も否定はできない。

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カテゴリ:架空戦記小説 | 21:15 | comments(0) | -

異邦戦艦、鋼鉄の凱歌〜マレー沖の激突! 林譲治

 タイ海軍が日本やイギリスに発注した戦艦ターチンとメークロン。その存在は南シナ海のパワーバランスを複雑にしていた。
 ターチンとメークロンの整備をうけおうバンコクの中村造船所では日本による2戦艦奪取の陰謀が巡らされ、太平洋戦争開戦と同時に彼女たちは日本のものとなる。

 数奇な運命をたどる出戻り輸出用戦艦の戦記。
 いきなりタイ海軍が戦艦を2隻も保有するバランスの悪さが、各国の外交事情で説明されている。ふつうは巡洋艦にしておくだろう……しかも、大砲に関しては42センチで大和級以外では最大口径ときた。
 防御は巡洋戦艦並だがダメージコントロールに配慮して、干された藤本少将の復讐心がこもった仕事だけに尖ったスペックになっていた。

 火災による電線と塗料の話は、林譲治氏の作品でみない例がないと思えるほど頻出している。今回も駆逐艦の火災実験で発見されると思いきや、Z艦隊との実戦で知られる結果となった。
 空母機動部隊に同行することでダメコン思想が、空母にも展開されていく形になりそうだ。

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カテゴリ:架空戦記小説 | 23:50 | comments(0) | -

MARS|火星 未知なる地表 惑星探査機MROが明かす、生命の起源

 アルフレッド・S・マキュイーン、フランシス・ロガール、グザヴィエ・バラル、宮本英昭

 火星の地表を偵察するマーズ・リコネサンス・オービターによる火星地表画像集。大判に引き延ばされた詳細画像は見応え十分。解説を巻末に完全分離して画像だけに集中できる構成になっている。
 多数の層がなす地表、砂丘に覆われた地表、ダストデビルが縦横無尽に暴れ回った地表、間欠泉が吹き出した地表など、火星表面が多様性に富んでいることが分かる。
 非常に高い解像度で撮影が可能なため、現在の火星でも砂丘の移動があることを明らかにしている。水の影響が疑われるガリーについても、もちろん狙い撮りしている。しかし、太陽光の当たらない北斜面に生じるガリーが性質は不思議だ。
 噴出物が白と黒の二色ある画像から間欠泉の深さが二種類あることを読みとったのだが、解説には特に指摘されておらず自信がなくなった。

 MROは解像度が高い代わりにデータ量も多く、火星の極一部しか撮影できていない。特定の地域は定期的に撮影した方がいいだろうし、火星全体を撮影し尽くすことは無理らしい。
 いささか残念だが、他の探査衛星の画像とあわせて火星理解のデティールを高めたいものだ。

 ところでコントラストの非常に激しいモノクロ画像をみると、解析者がトーンカーブの処理に苦労したことを想像する。白トビを避けつつ、黒い部分までちゃんと見えるように調整するのは大変だったに違いない。

カテゴリ:天文 | 23:15 | comments(0) | -

セラミックス 第55巻 5月号(2020年)

随想 陶磁器用顔料の開発
 コバルトの釉薬は周囲に溶け込んで色が滲みやすいのか。博物館で染付をみたときに確認してみたい。にじみを抑えつつ色を維持するための工夫が最後は力技的だった。まぁ、ともかく安定して発色しなければ話にならないからなぁ。

■ モルフォロジクス:材料の「かたち」と「はたらき」を紐解く科学
 モルフォ蝶のモルフォと同じ語源なのかな。構造色のイメージが強い言葉だが、機能に注目した研究のようだった。

■ 数理的均質化法に基づく材料微視構造のトポロジー最適化
 数値計算で最適なミクロ構造を割りだそうという研究。梁の長さによってミクロ構造も大きく変化していくので、「万能の構造」探しとは
逆方向のやりかたみたいだ。開発コストが上がってもリターンが見込めるのは大量生産する高付加価値製品の部品開発か。

■ ナノスケールの積木細工─ナノブロックの集積による形態制御と機能開拓─
 四角い建物がならぶ街の地図みたいな画像がついている。著者も積み木に例えている。これを狙い通りにつくれるのは凄い。

ほっとSpring 焼き物の里、砥部を訪ねて
 愛媛県の砥部。窯元が100もあることに驚いた。砥石屑が窯業原料になったことも。博物館じゃなくて産業会館が広告塔になって企画展などもしているみたい。
カテゴリ:工学 | 23:45 | comments(0) | -

工業加熱 2020/5 VOL.57 NO.3

新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針
 三密の説明は、3つの条件が重ならなければ一つ一つなら大丈夫って印象を受け手に与えそうだと危惧した。一つ一つでも感染しうるし、これらを満たさない場合でも感染するときは感染するものと思っておいたほうがいいはず。
 筋肉トレーニングの紹介がありがたい。

〜廃熱回収と”活エネルギー”のご提案〜
 排ガスの熱回収によるエネルギー活用の提案。蒸気の需要がある工場でどんどん実用化してもらいたい。フラッシュ蒸気が湯になったあとも水と熱交換させるフローが徹底的に熱を絞り出していて強い。

モノを温めるために、新しきを知る皆さんへ 第3回
 1975年の日本食が(塩分を除いて)理想的というのは、どこかで聞いてことがある。金属同士の滑り軸受はチャリオット時代からの数千年の実績があるはず。グリスを入れていても発熱すごかったに違いない。

噴煙をあげる富士山
 よく調べられている。やはり富士山は活動的な火山だ。画狂老人卍なら題材にした当時の様子を調べて煙を描いていても不思議はない気がした。買いかぶり過ぎかな。
カテゴリ:工学 | 20:31 | comments(0) | -

織部の流通圏を探る 西日本 土岐市美濃陶磁歴史館

 西日本に広がった美濃焼が産地に集まった。
 生産地と消費地をつなぐ展示会の記録。美濃焼以外の焼き物も収録されている。オランダのデルフト窯の水指には驚いた。どれだけ珍重されたことか。

 豊後岡藩は古田織部と交流のあった中川家の藩であり、家臣には土岐出身の下石(おろし)氏もいたとのことで、特に注目したい存在だ。家老に古田氏もいたそうで、織部が家康に切腹されたわりに賑やかにやっている。

 西日本ということもあってか、中国の陶器や磁器もけっこう収録されていた。さすがに水色の釉薬に覆われた姿には風格がある。
カテゴリ:日本史 | 23:21 | comments(0) | -

耐火物 2020/5月号

随想 耐火物の理屈
 専門書の海賊版おじさんの思い出から専門書の話。台湾の大学街には専門書コピーしまくり業者がいて、本のまま海賊版コピーをできるコピー機をもっていて学生相手に商売していると留学生に聞いたものだ。いまはちゃんとしているのだろうか。
 目の前の現象に理屈を与えてくれる知識は大切という話だった。

解説 動物・細胞を用いた評価
 リフラクトリーセラミックファイバーの問題はまだまだ続いている。人間がファイバーを使い続けるかぎり、ずっと続きそうだ。紹介されている生理食塩水への溶解試験で生分解性確認は、わりとお手軽な方法だな。簡易ゆえに認可をえるには使えないっぽいが。

高温耐用性を向上した生体内低残存性ウールの加熱特性
 1400℃用生分解性ファイバーの性能試験結果。なかなか優秀な値を示すが、RCFとの大きな違いは1400℃をオーバーした途端に大きく変質してしまう点にあるようだ。性能の限界近くで使っている感じ。
 制御の暴走で高温になってしまったり、モニタリングしていなくて部分的に高温になる場所にはRCF以上の注意が必要と思われる。

サロン 青色
青色にも寒々しい色というマイナス要素があるよ。たしかにラピスラズリは貴重だけど、植物から青色をとってきた地域とは価値観が違いそう。ヨーロッパも色のいまいちな藍をとる植物はあったらしい。
 などと面倒くさいことを思いながらだいたい同意した。
カテゴリ:工学 | 21:46 | comments(0) | -

工業加熱 2020/3 VOL.57 NO.2

熱処理知識向上のための基礎講座
 鉄の相転移がたいていの金属とは逆であり、加熱によって密度の低い方から高い方に転移するため焼入れが可能になるとのこと。後半の図に出てくる温度の矢印が逆になっているようだ。

製造設備におけるIoT
 話題のIoTを可能にする機器の紹介記事。バーナーの制御システムについてのもの。ちょっと難しかった。

技術・製品PR
 火炎識別装置のPR。燃料によって向いているセンサが違うことを知る。まぁ。天然ガス・プロパンガスと重油くらいしか意識していなかった。水素も天然ガスと同じ枠に入っているのでいいが、万が一微粉炭を使うときには注意が必要だな。
 バーナーを向かい合わせで使った場合の誤検知問題も興味深かった。

モノを温めるために、新しきを知る皆さんへ 第2回
 豊田自動織機の織機開発話。著者が博物館の織機を観察して木材を分析している。学芸員に聞いても知見はなかったのかな?自分で調べるのは立派なことだと思いつつ、気になった。

気候変動と歴史
 まがりなりにも専門的な教育を受けた自分にはモヤモヤする話。調べて書かれた部分には書き方が気になるだけで済んでいたが、恐竜が大きかったのは自転の遠心力で重力が〜〜だったのかな?でダメだった。いくら閑話休題でも理系の雑誌にこれはないだろう。地学はどこまで軽視されているんだ……つらたん。
カテゴリ:工学 | 18:00 | comments(0) | -
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