生命ふしぎ図鑑〜発光する生物の謎 マーク・ジマー

 近江谷克裕 訳。
 体裁は子供向けの本なのに内容がおそろしく高度。大人向けの深海魚写真集なんかには、この本よりもやさしい内容のものがたくさんある。
 発光生物からはじめて、いつのまにかGFPを組み込んだ生物を使った研究にまで話が発展していた。アメリカの子供がこういう本を子供向けとして普通に読んでいるなら敵わないなぁ……「何かの間違いで」本書を手に取った日本の子供が将来の生物学者になってくれることを願ってしまう。
 重要人物のひとりに日本の研究者、下村脩氏も出ていることだし――ギネスブックがクラゲの大量採集者をあげるとしたら下村脩氏だという説明にはニヤリとした。

 子供を使って大量の蛍をかきあつめたアメリカの研究者ウィリアム・マッケロイ氏のエピソードも面白かった。なんか業者のマツタケ集めみたいだった。
 GFP組み込みサルが宇宙人みたいでドキリとする。我々が目撃したのはGFPを組み込まれた使い走りの動物だと考えればツジツマが――!?

 ルシファーから来ているルシフェリンとルシフェラーゼの名付け親が「ラファエル」・デュボアというのは面白くて覚えやすいのではないか。ガブリエルとミカエルも使おうぜ。

関連書評
NHKスペシャルDEEP OCEAN 深海生物の世界
恐竜はホタルを見たか〜発光生物が照らす進化の謎 大場裕一

発光する生物の謎 (生命ふしぎ図鑑)
発光する生物の謎 (生命ふしぎ図鑑)
カテゴリ:科学全般 | 23:52 | comments(0) | trackbacks(0)

緊急報道写真集2014.9.27御嶽山噴火 信濃毎日新聞社

 火山災害としては戦後最大の犠牲者を出した2014年の御嶽山噴火の報道写真集。
 地元長野県の新聞社らしい現地に密着した情報が数多く得られている。反面、岐阜県側の存在感が希薄になってしまっている様子は不満が残った。岐阜新聞はこういう本を出しているのかなぁ。

 救助活動の写真をみると、火山灰に早い時期から亀裂構造が生じている。少量でも雨が降ったのか現地の気象状況を間接的に伝えている気がした。
 大雨が降ってからの救助活動は本当に大変そうで、泥まみれになった自衛隊員が要救助者と見間違えそうな状態になっている写真まであった。
 警察、消防も連日救助活動にあたっていて、体力の限界に挑むような苦労がしのばれた。噴石除けの盾までもって空気の薄い高山に登っているわけで……。

 噴火対策については地元の玉滝村はせっせと準備を進めていたが、国は監視を縮小する方法だったとの指摘が巻末でなされている。少なくとも東日本大震災直後からは監視体制を強化するべきだったのだ……。

関連書評
緊急出版 平成28年熊本地震 発生から2週間の記録

緊急報道写真集 2014.9.27 御嶽山噴火
緊急報道写真集 2014.9.27 御嶽山噴火
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地図で読むケルト世界の歴史 イアン・バーンズ

 鶴岡真弓 監修、桜内篤子 訳。
 ……分厚すぎて最初に読んだことを忘れかけてしまっている。でも、歴史地図なので地図だけを頼りにしたふりかえりは比較的たやすい。ただ色分けの感覚が自分には合わない地図が最初の方にあった。
 本書は「ケルト」に分類される世界を古代から現代までおいかけていく歴史地図である。ゆいいつケルト人の完全独立国家であるアイルランド共和国が主人公的な存在で、スコットランド・ウェールズ・マン島などが脇を固めている。コーンウォール(西ウェールズ)がケルトであることは知っていたが、ブリュターニュのことは殆ど知らなかったので新鮮だった。
 ノルマン人がブリテン島征服に出撃した半島のとなりの半島では、サクソン人に追い出されたケルト人が足場を築いていたのだから面白い。

 ケルト系移民によって近年世界に広がったケルト社会のこともしっかり追いかけている。遠い世界の話と思いきや日本でも伝統競技のグレートゲームが開催されているらしい。

 歴史関係では非常に珍しい戦いの戦況地図がたくさん載っていて嬉しかった。征服戦争の動きの地図もあったりする。
 特に珍しいところではケルト系部隊とネイティブアメリカンの戦いを紹介した戦況地図まであって、かなりマニアックだった。
 世界中でケルト系の人々が世界に対して与えてきた影響を知ることができた。彼らの将来は極端に明るくないとしても、そんなに暗くもないはずである、イギリスやフランス政府との関係は気になるが。アメリカのケルト系移民については、今後も大成功者を輩出していくのではないか。音楽関係も期待大だ。

関連書評
世界の民族・国家興亡・歴史地図年表 ジョン・ヘイウッド
カラーイラスト世界の生活史5 ガリアの民族 ルイ=ルネ・ヌジエ/ピエール・ブロシャール

地図で読むケルト世界の歴史
地図で読むケルト世界の歴史
8640円だからボリュームから考えれば、そんなに高くないよ。
カテゴリ:歴史 | 22:14 | comments(0) | trackbacks(0)

星くずたちの記憶〜銀河から太陽系への物語 橘省吾

 岩波科学ライブラリー252
 隕石は宇宙からの手紙。特にプレソーラー粒子は銀河系からの手紙。
 説明を読んでいてそんなことを感じていたら、著者自身が中谷宇吉郎の雪は空からの手紙を引用していた。科学の文字で読める鉱物という書物は意外と雄弁に宇宙の情報を語ってくれる。
 月の石がそうであるように、未来になればより多くの情報が引き出せる分析機器が開発されるかもしれない。はやぶさやはやぶさ2の功績はそうやって度々思い出されるのではないか。

 下部マントルを構成する鉱物に「ブリッジマナイト」の名前が与えられたことを知った。
 水星探査機メッセンジャーの成果もまとめられていて興味深かった。ついたことはニュースになっても、成果があまり伝わってきていなかった。
 エンケラドゥス内部の水は塩類から90℃までの加熱を受けていることが想定されているんだ。長期間保たれているなら、なかなかいい温度だ――エネルギー源から考えれば保たれていると考えるべきだろうなぁ。
 タイタンや冥王星の話題もあったけれど、ガリレオ衛星はあえてスキップされていた。でも、ちょっとした言及から星のサイズがガニメデ>タイタン>水星>カリストであることを覚えた。ガニメデたちを水星軌道まで持ってきたら、水分は飛んじゃって絶対小さくなるけどなー。

星くずたちの記憶――銀河から太陽系への物語 (岩波科学ライブラリー)
星くずたちの記憶――銀河から太陽系への物語 (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:天文 | 12:45 | comments(0) | trackbacks(0)

耐火物 第70巻

・医用及び歯科材料の表面処理と固定
 最初は骨の話で歯の話ではなかった。最後はタイトル通りの話になったが、駆け足に感じた。ジルコニアが非常に期待される素材になっていることは分かった。硬度ならアルミナが上でも靭性はジルコニアが上回っているようだ。
 こういう技術がどんどん進歩してくれることは若者にとっても将来への不安を和らげる価値がある。

・MgO-Cれんがの消化に及ぼす添加物の影響
 MgO-Cれんが中のAl4C3は悪役と覚えてしまった。一つの視点から印象をもつことは好ましくないけれど、少なくともいい影響だけを与えるものでないことは確かになっている。

・添加した金属Alの粒径がMgO-Cれんがの物性・組織に与える影響
 ひとつ前の論文によって、Al4C3が生成する!?それはいかん。って思いながら読んだ。スピネルができる温度まで高くするか、あえて高くしないようにしてAl4C3の生成に注意すれば、ひとつ前の論文的にはいい結果が得られそうだ。
 あとAlの粒径はともかく細かいほうがいい。

・酸化カルシウム焼結体の水への溶解に及ぼす微量添加物の影響
石灰岩の産地によって微妙に結果が変わることに・・・・・・経験からそこまで意識して使っているところもあるのかなぁ。そういう蓄積も国力なのかもしれない。

・和歌山脱炭炉耐火物の耐用向上に向けた取り組み
転炉炉底羽口スリーブれんがの高耐用化
 こういう成果のデータをみていると耐用性が無限に伸びていきそうな錯覚に陥る。発表されていてもすぐに導入できる方法ばかりではないとか、いろいろ事情があるのかもしれない。なくても、別のネックが表面化してきて戦いは無限に続く。 

・キャスタブルの乾燥における爆裂に対するピッチの影響
 ピッチがそんなところで働いていたとは驚いた。そしてやっぱり始末が悪かった?問題を起こす性状が現れない物質をみつければプラスの効果だけ引き出せそうだ。コスト的にはピッチに勝てないだろうけど。

カテゴリ:工学 | 21:31 | comments(0) | trackbacks(0)

図解ノート術 美崎栄一郎 仕事の教科書BOOKS

「ミスがなくなり、アイデアが生まれ、目標を達成できる」とのアオリがついたノート術の本。ここに書かれていることを全て実践してきていれば自分の人生も変わっただろうか……と考えてしまった。もっとも、本書の中で読書ノートの取り方として「ひとつふたつでも役立つことを見つけて実践しろ」と書かれているし「役に立たないと思ったら途中で読むのをやめろ」とも書かれている。
 後者の説明があるページを早めに出してきた点で非常に良心的な本だと感じた。最後のページに持ってくるのは勇敢すぎるか。

 社会人のノートは忘れるために取るもので、忘れている間に目の前の問題に集中するとの基本的な思想には頷けるところが大きかった。説明によれば学生のノートとは正反対だけれど、誰も教えてくれず、つまづく人が多いものと思われる……。

 お役立ち文房具紹介もみていて楽しかった。売り文句から高価な品だと想像したのに数百円だったり、逆に限られた機能なのに千円を突破していたり。
 気になったものをノートに取っておいて、いつか試してみるのも良さそうだ。効果の予測と結果を書いてみると、なおいい?

関連書評
仕事、人生がはかどる!ふせんの技100 舘神龍彦

図解 ノート術 ミスがなくなり、アイデアが生まれ、目標を達成できる 仕事の教科書BOOKS (学研ムック)
図解 ノート術 ミスがなくなり、アイデアが生まれ、目標を達成できる 仕事の教科書BOOKS (学研ムック)
カテゴリ:ハウツー | 20:29 | comments(0) | trackbacks(0)

セラミックス 第53巻 2月号(2018年) 特集 水資源の確保と保全に向けた浄化材料

■ 「水資源の確保と保全に向けた浄化材料」特集にあたって
 地球は水の惑星だが、利用できる淡水はごく少量しかないという、いつもの説明がされている。
 縦軸:国内総生産と横軸:一人あたりの水使用量のグラフでアメリカが、近似直線の下側に来ていることが新鮮だった。省エネ的な日本やドイツが「浪費」している。国名はあげられていなかったが、いちばん左下の国が悲惨すぎる……。
■ セラミックスが実現する途上国の水環境問題:水処理技術から水資源管理までpdf
 チェニジアでの水処理問題の事例を紹介している。飲む水にフッ素があれば虫歯が減るというほど単純ではなく、多すぎると歯に変色があらわれてしまうらしい。対策を取ったら虫歯が増えたという結果になる可能性はありそうだが、どうなのかな。
 貯水池の浚渫費用を、浚渫して出て来る泥でつくったレンガの売却で賄う計画はクレバーだ。

■ 光触媒を用いた水処理の現状と課題
 まだまだ可能性の多い酸化チタンによる光触媒技術の話題。モノリス化した触媒なら表面を削れば機能を復活できると説明されていたけれど、汚れが構造の奥まで入っていかないのか気になった。光や水の方が遥かに隙間に入っていきやすいからOK?
 植物工場での利用事例からはお金の臭いがした。うまくやれば儲かりそう。

■ほっとSpring イタリア留学体験記
 イタリア人が歴史を大事にしている様子がわかる。復元ではオリジナルと復元部が区別できるようにあえて別の絵の具を使うとか――話題になったスペインでのフレスコ画の復元はイタリア人にどう思われているのかなぁ。絵の具が違っていて剥ぎ取れるならセーフ?
 著者が留学した研究室は女性が11人中10人とのことで、白1点の人の気持ちを思った。写真にいないような……撮影側に回ったのかも。

セラミックス 第53巻 1月号(2018年)
カテゴリ:工学 | 18:10 | comments(0) | trackbacks(0)

バーミヤーン〜幻の仏像が眠る谷 ナショナルジオグラフィック

 タリバンから解放された後のアフガニスタン。タリバンの原理主義的蛮行による傷跡と、それに抵抗する文化的な人々の強い姿が見られる。
 ここまで言われているタリバンも政権をとるほどの支持者がいたはずで、このドキュメンタリーではそのことがまったく信じられない内容になっている。正直、偏っているとの疑いをもってしまった(タリバンは唾棄すべき存在だと思うが、一定の支持がされた理由を明らかにできなければ、同じことが繰り返される恐れがある)。
 アフガニスタンは部族社会というけれど、地方と都市の差も大きいのかもしれない。けっきょく文化の恩恵を受けられるのは都市と遺産に恵まれた一部の地方だけという屈折があるとか?

 最悪の愚行によって破壊された石仏のあったバーミヤーンでは三蔵法師が記録したという長さ300メートルの涅槃仏が捜索されていた。
 タリバンが完全消滅する前に見つけてしまうと、こちらまで壊されそうで怖いと思ってしまった……タリバンを復活させないためにも見つけると積極的になるべきかもしれない。
 最後の3メートルの石版が涅槃物の足の裏かもしれないと言うのは、スケール的におかしい、足の長さが身長の7分の1としても21メートルになるわけで、足指の可能性はあるのか?

 バクトリアの黄金はちゃんと再発見されて良かった。遺した民族は「サカ」族?なぜか具体的に名前をあげなかった。
 バーミヤーンで出土した仏像といいギリシア文化の影響が濃厚なので、ヨーロッパ人には意外と親しみのもてる地域なのではないか。平和になりさえすれば観光の需要は大きいのでは。

関連書評
ナショナルジオグラフィック世界の国 アフガニスタン
NHKスペシャル文明の道2〜アレクサンドロスの遺産 最果てのギリシャ都市
バーミヤン写真報告2002 中淳志

バーミヤーン 幻の仏像が眠る谷 [DVD]
バーミヤーン 幻の仏像が眠る谷 [DVD]
カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 16:33 | comments(0) | trackbacks(0)

生きもののヘンな顔 小宮輝之 ネイチャー・プロ編集室

 人間以外の動物もあくびが感染する。ハリセンボンの針は約500本など、動物トリビアと一緒に楽しめる動物の顔写真集。
 かなり不気味な容貌魁偉と言いたくなる顔から、かわいらしい特徴を備えた顔まで、いろいろな顔が存在している。しかし、それは人間の価値観を通して感じられるものなのだとあとがきを読んで気づかされた。
 あのハダカデバネズミと人間が「裸」の点で共通性が高いとは!あちらは地下生活のおかげで裸でやっていけるのだろうけど、そう考えるほどに人間が不思議な動物になってくる。
 他の動物は人間を考えるにあたっての鏡にもなる。

 チャイロタマゴヘビの鳥類の卵しか食べないから、鳥類の産卵時期以外は何も食べずに過ごす生態は絶滅の可能性が高そうで怖い。どんだけ特殊化してしまっているのかと。
 海底の砂にうもれた三島オコゼのなかまは顔が怖すぎて悪夢に出てきそうだった。しかし、英名はかっこよくスターゲイザー(星を見つめるもの)!
 ラクダの睫毛が長いことを意識すると、ラブコメ漫画でよくある「こいつ睫毛長!」ってシーンを「こいつラクダみたいに睫毛長!」に変換したくなった。唾吐きかけてきそうなヒロインだなー。

関連書評
いきもの写真館 べんりなしっぽ!ふしぎなしっぽ! 小宮輝之
外来生物はなぜこわい?1〜外来生物ってなに? 小宮輝之

生きもののヘンな顔
生きもののヘンな顔
カテゴリ:写真・イラスト集 | 19:27 | comments(0) | trackbacks(0)

みんなの放射線測定入門 小豆川勝見 岩波科学ライブラリー224

 福島第一原発の事故以来、一般人にも需要がうまれた放射線測定技能の入門書。元素による違いなどを噛み砕いて説明している。
 ガンマ線がはかれる物は測定しやすいが、ベータ線しか出さない物は測定が容易ではないため出回っている情報も少ない。そういうバイアスが掛かっていることも知ることができた。

 筆者が関心を持っている放射性物質の移動は自分にも興味深く、定「面
」的なマッピングで元素の移動を追跡することには、現実の利益だけじゃなく知的な充足感も与えてくれると思う。

 多くの日本人が放射線測定技術を身につけたら、いつか他国で原発事故が起きたとき、助けに行けるかもしれない。メリットとして思いつくのはそれくらいとも言える……。
 測定機器のメーカーはもの凄い利益をあげているのだろうな。原発事故のときに、そういうメーカーの株を買い込んだ人間もいるはずなどと考えてしまった。

関連書評
クマムシ?!〜小さな怪物 鈴木忠
世界に衝撃を与えた日09〜マンハッタン計画の始まりとチェルノブイリ原発事故

みんなの放射線測定入門 (岩波科学ライブラリー)
みんなの放射線測定入門 (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:科学全般 | 21:39 | comments(0) | trackbacks(0)
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