耐火物 第70巻 第8号

明治の窯業技術者たちの生涯
 ワグネルとかグリフィスとかゼーゲルコーンとか、出てくるカタカナがいちいちカッコいい。明治の人も海外に憧れるはずだわ。
 明治時代の人の業績がきちんと記録に残っていて筆者が追跡できたことが興味深かった。

不活性ガス雰囲気におけるマグカーボンれんがの高温強度の経時変化
 重量が減った分はどこに消えてしまったのか?ガス化して排気されたとしか考えにくいが、なんだか不気味に感じてしまう。
 要約的な記事が多い中、けっこうたくさんのグラフが出てきて意外だった。

技術報告:Al4SiC4-C系マトリックスにおける耐食性モデル
 自己修復的な力をもった素材の研究。Al4SiC4-C系マトリックスから発生したAlガスとCOが反応してAL2O3と炭素として再凝集が起きて空隙を埋めるそうな。この凝集は吸熱反応なのかなぁ。スラグの湿潤との戦いなど、過酷な環境に置かれている素材である。

技術報告:炉内条件に適応したセメントロータリーキルン脱着帯用マグネシア・スピネル質れんが
 写真でのボロボロっぷりが凄い。表面が剥がれ落ちてある厚さに達するまでが平常状態という運用なんだろう。切断されたレンガの真ん中に長方形の黒い部分が現れているのが気になった。向かい合わせの切断されたレンガとは別のレンガのようだ。コランダムとスピネルはやはり強いんだな。名前が出てくれば、とりあえず良さそうな感じがする。

耐火物における熱力学計算の基礎
 とりあえず保存。

耐火物サロン:趣味から広がる世界
 イタリアの調理器具(クレイパン)は大きな熱容量で調理するタイプと。エネルギー効率は悪そうだ。日本は江戸時代のバイオマスしか燃料がなかった時代に調理器具の省エネが進んだのかもしれない。イタリアだって似た時代を経験していそうな気はするが。
カテゴリ:工学 | 22:57 | comments(0) | trackbacks(0)

鳥になりたい!〜ウイングスーツで大空へ ナショジオ

 冒険家ディーン・ポッターの挑戦。ロッククライミングと綱渡り、そしてウイングスーツを使った高所からの飛行で次々と新境地を打ち立てていく冒険家の姿が描かれる。
 綱渡りの映像はみるだけでも怖くて、やっている最中のディーン・ポッターの脳内が気になった。どれほどの物質が分泌されていることやら……。
 ヨセミテ国立公園でのフリークライミングは新記録なのに、飛行前の腹ごなし的に行われていた。少なくとも映像では、そういう感じで描写されていた。
 自分が同じことに挑戦したら何回死ぬことか。そして何度蘇生できても同じことを成し遂げられないかもしれない……まったく大した人だ。

 ウイングスーツは人間を人工的にムササビに変えるような装備だった。でも参考にされたのは鳥である点が気になる。1メートル落ちる間に3メートル前進できるという話だから、標高2740メートルのビュート山から飛び立てば単純計算で8220メートル飛べることになる。
 平地でも歩いて2時間の距離が一瞬で飛べるのだから、苦労して歩く経験の多い登山家ほど新鮮な体験に違いない。

関連書評
地底の神秘 ナショナルジオグラフィックDVD
山登りABC テント泊登山の基本 高橋庄太郎

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DVD 鳥になりたい!  ウイングスーツで大空へ
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世界史リブレット73 地中海世界の都市と住居 陣内秀信

 イスラム圏の都市を手始めに、最後はイタリアのヴェネチアまで。
 地中海世界の都市に隠れた共通点を掘り起こすリブレット。

 狭い空間にたくさんの人が住んでいても通路を折り返すことで「外部」から距離を置くことができる。現代の合理性につらぬかれた都市とは異なった都市計画のありかたが見えてきた。
 住民の心の安息は尊い。イスラム社会の見えにくい価値観が垣間見えた気がした。

 中世の初期から発展していたイタリアの都市アマルフィが興味深い。はるか昔にできた暗渠が町の下を走っているのか――ローマはもっと古いなぁ。
 アマルフィ人が高所に住んでいたのは中世の住民がそれを苦にしなかったためじゃなくて、それほどイスラムの海賊が恐ろしかったせいだと思うけれど……アマルフィが製紙業によって二度目の発展を経験していたことも初めて知った。
 谷間の狭い都市なのにポテンシャルが高い。

関連書評
イスラーム歴史文化地図 マリーズ・ルースヴェン+アズィーム・ナンジー
スワヒリ都市の盛衰〜世界史リブレット103 富永智津子

地中海世界の都市と住居 (世界史リブレット)
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カテゴリ:歴史 | 21:10 | comments(0) | trackbacks(0)

昆虫のすごい瞬間図鑑 石井誠

 身近な昆虫にも感動の瞬間がある。そもそも身近なのに名前を知らない昆虫がたくさんある。
 人に知られていなくても彼らは熾烈な生存競争を戦っている。

 寄生バチは昆虫の仲間であると同時に昆虫にとっても恐ろしい相手で、20種以上の寄生バチに狙われているツツゾウムシには思わず同情してしまった。
 そんな寄生バチも寄生ハエによって獲物にされることもあると、決定的な瞬間が撮影されている。ああいう場合は卵を産みつけずに餌だけおとりに埋めてしまう生存戦略はできていないのかなぁ。

 あのスズメバチさえ毒針の集中攻撃で倒してしまうヨコヅナサシガメの存在にも驚いた。桜の木専門じゃなければ昆虫の天下を取れそうだ。
 カマキリの共食いに関する情報も興味深く、メモさせてもらった。

 著者は70年以上も昆虫の撮影を続けている1929年うまれの方とのこと(2017年2月の発行である)。本を読んでいると日本には無数に凄い人がいることも実感できる。

関連書評
ムシの考古学[増補改訂版] 森勇一
百姓仕事がつくるフィールドガイド〜田んぼの生き物

昆虫のすごい瞬間図鑑: 一度は見ておきたい!公園や雑木林で探せる命の躍動シーン
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カテゴリ:生物 | 21:20 | comments(0) | trackbacks(0)

世界の名景〜地中海の光ベスト50 渋川育由

 エーゲ海から西周りに地中海を一周して、名景をたどっていく写真集。観ているだけで地中海一周の観光旅行をした気分になれてしまう。
 なんといっても地中海の景色を特徴づけるのは、街の白と海の青であることが良く分かる。そこに車などの小物がパステルカラーで配置されており、まるでミニチュアの中に迷い込んだようだ。

 写真の構図も優れたものが多くて、街を手に取る気分で眺められた。シチリア島のラグーサの写真など、騙し絵を観ている気分になってしまう。
 海辺に建設されていることから、斜面にある街が多く、死角なく一望できる感覚が気持ちよい。
 南ヨーロッパにとどまらず、北アフリカもしっかり押さえてくれている点も好感がもてた。アルジェリアのガルダイアはなんとも気持ちのよい街だ――道に迷ったらひたすら上へ向かえというアドバイスが面白かった。

 街の風景だけではなく、いくつかの祭りも紹介されていて、ヴェネチアの仮面とスペインのトマト合戦はお約束の感じ。ニースの花合戦は小林幸子氏が参戦できそうな迫力があった。

 締めはキプロス島で、美しい絶景を眺めていると地中海はひとつだと思えると語っているのは、しょうじき皮肉気味に響いた……肝心のキプロスが南北に分裂してるんですけど。

地中海の光ベスト50--世界の名景
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カテゴリ:写真・イラスト集 | 22:40 | comments(0) | trackbacks(0)

地球最後の日を生きる〜ナノマシンの反乱 ナショジオ

 ナノマシンが暴走して人間を襲いはじめたら?SF仕立ての映像作品。自己複製機能をもったナノマシンの暴走はほとんど手に負えない。
 作中での被害は低く見積もりすぎに思えた。自己複製も一瞬で済むわけじゃないか。暴走ナノマシンの撃退用ナノマシンに自己複製機能をもたせたのは、ちょっと疑問だった。生産量が追いつかないってことかなぁ。生産ナノマシンの散布ナノマシンに完全分離する手はあるはず(そっちの方がまだ単純になるし)。

 最初は通常のミサイルが打ち込まれてナノマシンを飛散させるだけと言われていたのに、二回目は燃料気化爆弾が用いられていた。最初から燃料気化爆弾は使えるだろう?
 最終的にはエイワックスによるマイクロ波攻撃で片がついたものの、そうでなければ中性子爆弾の使用まで突っ走っていたかもしれない。
 なかなか恐ろしい未来像が展開されていたが、こういうシミュレーションがあるおかげで最初から対策にショートカットが利く点が限られた救いである。

関連書評
賢くはたらく超分子 有賀克彦 岩波科学ライブラリー103

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DVD 地球最後の日を生きる ナノマシンの反乱
カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 21:14 | comments(0) | trackbacks(0)

赤ちゃんの不思議 ナショナルジオグラフィック

 人間にとって、とても大切な時期である赤ちゃん。赤ちゃんの期間におこる劇的な変化がわかる。
 未熟な状態で生まれてくるために生まれてからの柔軟性が非常に高く、人間の可能性を高めているようにみえた。ただし、この時期に不運な育て方をされると一生たたってしまうことも分かった……ルーマニアの孤児院で人の顔をほとんど見ずに育った赤ちゃんたちのその後が心配だ。

 ハイハイが赤ちゃんそれぞれのオリジナル動作であって、歩行などに比べると生来のものではないのも興味深い。ハイハイをせずにいきなり歩行に移行する赤ちゃんもいるとのことだ。

 赤ちゃんのときに脳の半分を摘出したが日常生活を送れている少年(ただし、片腕は動かない)の事例など、赤ちゃんを通して人間の驚異を知ることのできる映像作品だった。

関連書評
ヒトはなぜ難産なのか〜お産からみる人類進化 奈良貴史
おなかの赤ちゃんは光を感じるか〜生物時計とメラノプシン 太田英伸

ナショナル ジオグラフィック 赤ちゃんの不思議 [DVD]
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カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 22:02 | comments(0) | trackbacks(0)

トコトンやさしい 薄膜の本 麻蒔立男

 メッキからCVDまで最先端技術を支える薄膜技術についてわかりやすくまとめた本。半導体工場などでは、とてつもなく精密なことが行われていることが分かった。
 使用されているガスも聞いたこともない成分が多くて、それらを扱うための独自技術は、先鋭的に発達しているように思われる。0から新規参入できる会社とか、あるのかなぁ。

 著者が「真空の本」も書いているとおり真空技術との縁も深くて、装置系統の図が興味深かった。
 また、ひとつの方法の繰り返しにこだわらず、機械的に研磨してみたり、いろいろな方法を組み合わせて求める性能を達成しようと日々試みられていることが分かった。

関連書評
トコトンやさしい地熱発電の本 當舎利行・内田洋平
トコトンやさしい水処理の本 オルガノ(株)開発センター編
今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいバイオエタノールの本

トコトンやさしい薄膜の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)
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カテゴリ:工学 | 21:55 | comments(0) | trackbacks(0)

古代ギリシア重装歩兵の戦術 長田龍太

 ポプリタイの持っている盾はポプロンじゃなくてアスピスだった。その他、研究の進展にともなってアップデートされた様々な知識が紹介されている一冊。
 オーストラリアの大学で実験されたデータやアスピスがカバーする面積などの説明もある。いささか文章が重くて一気に読むのは大変だが、それだけに読み応えも大きかった。

 最後には三つの会戦が取り上げられていて、非常に細かい戦列の長さ計算が行われている。
 ガウガメラの戦いはマケドニア軍が完全な中空方陣を形成したとしていて新鮮に感じた――が、これまでの復元でも中空方陣気味ではあったので違和感はない。
 マグネシアの戦いはアンティオコス3世が十中八九まで勝利を手にしていたとの評価。レギオンVS.ファランクスとは別のところで勝負がついていたのだが、それでファランクスが終わってしまうところが興味深い。
 戦象は相変わらず……いなければアンティオコスが戻ってくるまで隊列が持ったのでは?

 アレクサンドロス軍のアグリアネス人が超人的な特殊部隊であったことも分かって面白かった。最強民族の響きの良さよ。

古代ギリシア 重装歩兵の戦術
古代ギリシア 重装歩兵の戦術
カテゴリ:歴史 | 23:20 | comments(0) | trackbacks(0)

その道のプロに聞く 生きものの見つけかた 松橋利光

 四人のプロが紹介する生き物の見つけかた。
 身近な生き物であっても狙って特定の生き物を見つけようとすると難しい。本書はそんな難しいことへの挑戦方法を教えてくれる。見つけるのはやっぱり読者の行動と目なのだが。

 カブトムシはいかにも見つかりそうな場所を一カ所みつけたのを思い出した。ただし、巨大なスズメバチが近くを飛んでいた記憶もついて回っている……おすすめの装備にポイズンリムーバーがついているのは伊達ではない。
 サルは数頭の群れがかなり交通量の多い県道をわたるところを見たなぁ。まさかあんなところで遭遇するとは思わずビックリした。行動範囲が広くて見つけにくいとの説明に納得した。

 最後は南西諸島の珍しい生き物の発見方法が紹介されている(途中のコラムには海外の生き物も出てくる)。南西諸島の山道を走るときは徐行して生き物をひかないように細心の注意をしなければいけないことを覚えた。
 カンムリワシは小学生の人気者なので、話を聞けば教えてくれる可能性があるとのことだが、事案にならないのかなぁ……そんな心配をしなければいけないのが嫌だ。

 カブトムシたちが好む照明条件の話が面白かった。鍬道やネイチャージモンを思い出した。

関連書評
鍬道1巻 藤見泰高
ネイチャージモン1巻 寺門ジモン・刃森尊

その道のプロに聞く 生きものの見つけかた
その道のプロに聞く 生きものの見つけかた
カテゴリ:ハウツー | 21:18 | comments(0) | trackbacks(0)
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