子どもに教えてあげられる身近な植物図鑑 岩槻秀明

 フルカラーで身近な樹木の名前が分かる文庫サイズの図鑑。定価800円はお買い得だ。
 子供に親が教えることを意識してか、果実が食べられる樹木について、そのことを言及している場合が多かった。逆に実に毒があると注意されている樹木もある。
 自分の子供の頃を思い出すと、よく中らなかったものだとゾッとする。

 日本原産の木に限らず、園芸などの関係で日本に入ってきた木も、よく見かけるものが紹介されている。
 なかには外来種として厄介な状況になっている木もあった。園芸に関連した雑種も結構多い。
 コニファーが園芸用針葉樹のことだと知れてよかった。

 DNA解析による新しい分類法(APG)によって分類される前の科と後の科が併記されていて、その点も興味深かった。ページ数の制限のためか、見分けるためには葉っぱの拡大写真がほしいと感じる木で載っていないものがあって、図鑑としてはそこが少し物足りなかった。

カテゴリ:生物 | 19:49 | comments(0) | -

日本史の新常識 文藝春秋編

 古代から太平洋戦争直前まで、各時代の研究者が日本史の見方に新しい光をあてるオムニバス。新常識といえるほど固まっていない説もあるが、研究者の書いた章は情報源を示している。
 江戸時代の影響が思いの外大きく、鎌倉幕府成立を1192年とする考え方も江戸時代の価値観に影響を受けていたことに驚いた。鎖国に関して江戸幕府に対するネガティブな印象を最初に植え付けられたが、人口論のところでは評価されてもいる。

 継体天皇に関する、王位継承に関わることがなく地方で力を蓄えたためにチャンスが巡ってきたという説は、後世の守護大名が味わった京都にいる本家より領地にいる分家のほうが力で勝ってしまった事例を思わせる。

 平安貴族が激務だった話には、なんだか日本の官僚を連想した。過去のやりかたに従うことが第一で、無駄が多かったであろう点を踏まえても歴史の慣性力を感じてしまう。

カテゴリ:日本史 | 20:31 | comments(0) | -

微生物〜目には見えない支配者たち ニコラス・P・マネー 花田智 訳

 微生物全般にわたる事柄を解説した凄い文庫。微生物の生理から医療や工業利用にまで触れていて、もはや博物学の領域である。
 医療に関わる情報が多いのは、やはり人間の関心がそこに集中しているからで、微生物にはまだまだ分からないことだらけだと釘を刺すことを著者は忘れない。
 独立栄養にみえる植物すら微生物におんぶに抱っこされているのだと指摘している。

 数十億年のアドバンテージをもった微生物の影響を排除することなど効率的に不可能だろうし、我々は微生物との共生を強制されているんだ!とも言いたくなってきた。

 微生物と一言でいっても原核生物・アーキア・真核生物で大きな違いがあって、その開きは相当大きいことも肝に銘じなおした。

カテゴリ:生物 | 22:37 | comments(0) | -

永遠の海 中村征夫

 世界各地の海で生きる動物たちを撮った写真集。
 ほとんどが熱帯・亜熱帯の海で、例外は三陸の海だけだろうか――さらに特殊な駿河湾の深海もあった。著者が気に入っている紅海が特に珍しく感じた。ほぼ周りから隔絶されて特有の生物が多く生息しているとのこと。
 スエズ運河が出てきたときは紅海から地中海に進出した魚がいたはずだが、やはり交流は控えめなんだろうな。船舶が運んでしまう生き物による生態系の混乱が心配になった。
 心配といえば沖縄の海について基地建設にともなう環境破壊をついつい意識していたが、とくに触れられることはなかった。全体的には逞しく再興していると言われても人間の悪影響はやっぱり気になってしまう。

 魚に対して「表情」を感じる人のようで、読みとったいろいろな表情の説明が興味深かった。コウイカに関する変なキャプションは他でもやらなくて良かったと思ったが。
 古いものでは1978年の水中写真もあって、技術の変化が写真に表れているところも面白かった。もっとも、古い写真でも発色よくて綺麗だ。かなり現像に苦労したんだろうな。

カテゴリ:写真・イラスト集 | 20:13 | comments(0) | -

レトロ銭湯へようこそ西日本版 松本康治

 先に近畿版が出ているので関西の銭湯は載っていない。東日本と西日本で分けていると思いきや。
 本書では昔から長く続いてきた銭湯を写真と文で紹介している。番台さんや経営者も高齢の人が多い。ゆえに歴史ある銭湯でも経営者としては三代目だったりする。銭湯の経歴としては買い取られた銭湯も多いわけで、ほとんどそういう形では代を重ねていないのも銭湯を運営する人の愛着を感じさせられた。

 古いだけに現代の視点からはびっくりするような構造の銭湯もあって、脱衣所と浴場の間にしきりがないのは地域性もあるにしろ、村之湯の湯船の板の下から自噴しているのと寿湯の路地の奥にあるのにはぶったまげた。

 北九州の銭湯が富士山の絵師を招聘して絵を描いてもらったら経営が上向いた話は景気がよかった。
 人吉の銭湯は今年の水害が心配になった……。

カテゴリ:雑学 | 22:33 | comments(0) | -

人類誕生の謎―最後の旧人類ネアンデルタール― ジョン・F・ホッフェカー

 開かれた封印 古代世界の謎11

 ホモ・サピエンス誕生の謎に迫りそうな主題に対して、副題でネアンデルタール人の興亡を扱っていることが分かる。もちろん、それにはホモ・サピエンスの活動も関連しているはずだが、詳しいことはぶっちゃけ分かっていない。
 本書の執筆時からそれほど情報が増えたとは感じられなかった。

 厳しい氷河期に対応するためネアンデルタール人が近東への進出を試み、一時的にでも成功したらしいのは興味深い。
 ホモ・サピエンスと接触したことで最終的には本拠地に、ホモ・サピエンスを招き込む結果になったのかもしれないと想像した。
 ホモ・サピエンスも性格を考えれば、いずれは未知の土地に乗り込んでいるか。

 再現イラストがあまり考証されていない怪しげなものも含まれている印象だった。ホラアナグマ?とネアンデルタール人の成人男性が1対1でつかみ合っていたり。

開かれた封印 古代世界の謎シリーズ感想記事一覧

カテゴリ:歴史 | 17:53 | comments(0) | -

バイキング伝説―謎の征服者たち― ピーター・シュレダーマン

 開かれた封印 古代世界の謎13

 謎の征服者たちとはグリーンランドに北から進出したイヌイットのことだった!?圧倒的な耐寒能力により寒冷化する気候の助けを得て、バイキングたちをグリーンランドから撤退させたイヌイット側の視点が気になった。
 彼らが文字に目覚めてくれていれば……鉄にすらあまり関心を示さなかったのだから「負け組」の技術が生き残るのは難しいよな。

 漫画ヴィンランド・サガの主人公トルフィン・カールセニについて、けっこう情報があって興味深かった。
 グリーンランド西海岸のベステルビュグで4地区のうちの1地区サント地区を所有するほどの豪商だったらしい。

 ベステルビュグから人が忽然と消えた謎に関しては、ヴィーンランドに再度の植民を試みたのなら夢がある。それが書かれていて実際に、その可能性を考える人もいることに驚いた。

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カテゴリ:歴史 | 22:07 | comments(0) | -

トロイ―木馬伝説の古代都市― ドナルド・イーストン

 開かれた封印 古代世界の謎18

 ホメロスのイーリアスに歌われた古代の都市トロイ。その発掘調査の歴史がまとめられた本。
 シュリーマンの扱いが意外と小さくて、流れに乗った発掘者の一人のように感じられた。契約に反して財宝をすべて持って行かれたトルコにとっては詐欺師に思えてもしかたがないだろうな。
 第二次世界大戦において略奪をうけた歴史までついてきて、いわくの多い財宝である。その存在を巡ってドイツ・トルコ・ロシアが争うならシュリーマンのみつけたトロイの財宝こそが美女ヘレネだったというオチがつくのかもしれない。

 トロイのボスポラス海峡を通過するとき、風待ちをするために最適な入り江にあったという立地がわかりやすかった。
 あの入り江はいつ埋まってしまったのかなぁ。

開かれた封印 古代世界の謎シリーズ感想記事一覧

カテゴリ:歴史 | 23:20 | comments(0) | -

ピラミッド―紀元前1万500年の天宮図― ロバート・ボウヴァル

 開かれた封印 古代世界の謎1

 シリーズ1冊目は、ゆんゆんしてるーっ!!シリーズ名のおどろおどろしいフォントで書かれた「開かれた封印 古代世界の謎」にふさわしい内容。
 ピラミッドが建設されたのは通説に反して紀元前1万500年だったと主張する本だった。アトランティスの末裔がピラミッドを……という妄言が飛び出しているが、同じシリーズのアトランティスを扱った本は言われるままのアトランティスの存在に肯定的とは言い難かった気がする。
 まぁ、三大ピラミッドの配置がオリオンの三つ星に似ているのは意味があるかもなぁ。スフィンクスの身体が獅子だから獅子座の時代に造られたと言われても、そもそもエジプトの星座でも獅子座が獅子に見立てられていたのかが自分には分からない。
 ギリシアとエジプトなら、かなり近そうではあるが。

 スフィンクスの地下に坑道があるらしいのは気になる話だった。エジプト側が調査を禁じていることがオカルトの人たちを勢いづかせている?
 そういえば日本の科学者がミューオンでピラミッドを分析して、エジプト政府を怒らせたこともあったな。

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カテゴリ:雑学 | 22:52 | comments(0) | -

恐竜消滅―何がかれらを襲ったか― ダグラス・パーマー

 開かれた封印 古代世界の謎17

 おそらく原著が1997年の本。
 恐竜絶滅の原因に関して、隕石説を取り上げながらも海洋生物の衰退はすでに始まっていたとして否定的な情報が集まっていると述べている。さらに精査すると、そうでもなかったことが判明するのだが……。

 恐竜が鳥の祖先である可能性にも触れているが、まだ定説にはなっていない。恐竜発見直後の古い復元図を取り上げて、新しい復元図も載せているが、その新しい復元図もすでに古くなっている。羽毛がない。
 イグアノドンも肉食扱いして、メガロサウルスと噛み合っている復元図ともいえないレベルの復元図が、かつてあったことに驚いた。
 リチャード・オーエンが「恐竜目」を創ったときにイグアノドンとメガロサウルスに加えてヒラエオサウルスも含めているのだが、ヒラエオサウルスについての知識がなかった。ちょっと調べてみたい。

開かれた封印 古代世界の謎シリーズ感想記事一覧

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