ナショナルジオグラフィック世界の国 ペルー アニタ・クロイ

 ヒルデガルド・コルドヴァ・アグィラー/デービッド・J・ロビンソン監修。
 実はアメリカ合衆国よりも立派な歴史をもつと言える南米の国ペルーの本。アメリカ大陸最古の大学がペルーにあったとは知らなかった。識字率も90%と高めである。
 しかし、山岳地帯に住むインディオの子供たちは厳しい環境におかれているらしい。海岸地帯の都市に出てきた人々が恵まれているとも限らず、ペルーの社会に存在する格差は大きな問題である。
 いちおう希望をもつ方向にまとめているが――フジモリ大統領が汚職で亡命したおかげで――予断を許さない雰囲気はある。貴重なペルーの自然環境がダメージを受けない形でうまく発展してほしいものだ。

 とくにアマゾン川に住むピンクイルカが興味深かった。
 最初から頭数が少なかった感じはするけれど、将来的に維持できる集団なのかなぁ。マチュピチュのおかげか山岳地帯の印象が強いペルーのイメージをナショナルジオグラフィックが誇る写真のおかげで補正できた。
 でもやっぱりマチュピチュがいちばん行きたいかな。

ペルー (ナショナルジオグラフィック世界の国)
ペルー (ナショナルジオグラフィック世界の国)
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ナショナルジオグラフィック世界の国 ケニア

 ブリジット・タングェイ著、チェゲ・ギシオラ/タビサ・オティエノ監修。
 東アフリカで安定した政治をおこなえている国ケニア。サファリの観光でうるおうケニアの意外な一面も見えてくる本。
 人口の75%が従事する農業が内陸の地域に集中していて、特産品の地図がなかなか見ないメリハリのありすぎる状態になっていた。北東部はなんの換金作物も描かれていない空白である。

 海岸のモンバサは赤道直下らしく暑いけれど、標高1500メートルのナイロビは温帯的な気候というところに、アンデス山脈の赤道地帯との意外な共通点があった。

 ケニアは40の民族が60の言語を話す――ストリートで生まれた若者の言語すらある!――にも関わらず内戦が起こっていないことが興味深い。
 宗主国がイギリスであった関係もあるのだろうか……イギリスの元植民地で内戦をやっている国はたくさんある。
 本書の限られた情報からは国家にも歌われている協力の精神がプラスに働いたと思われる。学校がなければみんなでお金を出し合って学校を建てるとのことだが、そういうときに民族の壁を超えた協力ができているのではないか。
 それこそ疑いのない「和」だと思う。

関連書評
イスラーム史のなかの奴隷 清水和裕 世界史リブレット101
スワヒリ都市の盛衰〜世界史リブレット103 富永智津子

ケニア (ナショナルジオグラフィック世界の国)
ケニア (ナショナルジオグラフィック世界の国)
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自然地理のなぜ!?48 松本穂高

「世界を歩いて謎を解く」という一文のついた地理の本。豊富な写真と地図で楽しく世界地理の学習ができる。
 あとがきで著者が地理に深入りすることになった理由がおそらく線状凹地だと分かったのだが、その名前すら出さずに関連する項目がなかったところが何とも言えなかった。気になって調べたいと思った読者がいても、取っかかりが掴めないじゃないか。
 そこから地理の推理ゲームははじまっているのかな?

 著者は本当に世界中を歩き回っており南極大陸に行っていないことが不思議なくらいだった。海外の高峰もしっかり登っている。
 地形と関わる人の暮らしが見えてきて、どれも興味深い。

 最後には親しみやすい日本の地理が紹介されている。黒部ダムの建設工事に関連して猛烈な雪崩で亡くなった作業員の記述にはぞっとした。想像を絶する恐ろしさ。
 そして、劔岳を「初登頂」した人たちが山頂で発見した人の痕跡には感動した。昔から我々はこの大地と関わって生きてきたのだなぁ。

自然地理のなぜ!?48
自然地理のなぜ!?48
カテゴリ:雑学 | 21:46 | comments(0) | trackbacks(0)

そだててあそぼう46〜ピーマンの絵本 たかはしひでお・へん

 たけうちつーが・え。
 ごめんねピーマン、読むのが最後になって。
 栄養は豊富ながら嫌いな人も子供を中心に多いピーマン。その歴史はトウガラシから枝分かれしている。辛さのない甘いトウガラシがピーマンという話だが、いくら相対的なものでもピーマンの味を「甘い」と表現することに違和感を覚えた。どうしても苦いイメージがある。
 パプリカなどのカラーピーマンが流通してきて、そんなイメージも払拭されるのかなぁ。まだまだ人間とピーマンの関係は変化の可能性を残している。

 アメリカ大陸の暑い地域が原産地であるため、育成には高い温度が必要だ。水を大量に必要とする割には、じめじめには弱いあたりはなかなかワガママな作物と言える。追肥も必要だが、それは人間が実を大きくさせたせい。

 実が中空で傷つきにくいために、機械による選別や梱包が可能という視点が新鮮だった。
 無精な宮崎県の県民性にピーマンはあっていたそうで……あとがきのおかげで宮崎県民に対する余計なイメージまで育んでしまった。

農文協そだててあそぼうシリーズ感想記事一覧

ピーマンの絵本 (そだててあそぼう)
ピーマンの絵本 (そだててあそぼう)
カテゴリ:ハウツー | 23:56 | comments(0) | trackbacks(0)

安土〜信長の城と城下町 滋賀県教育委員会・編著

 発掘調査20年の記録というサブタイトルが付く、安土城の発掘や研究の記録をまとめた本。
 近世城郭の原点とも考えられるが、短期間で失われたために謎の多い安土城の実状に発掘調査で迫っている。

 安土城の炎上については主郭部にしか確認されておらず、城下町からの延焼は考えにくいように読みとれた(再建に関連する書状も残っている)。
 城下町の発掘調査でも焼土が確認できるようだが、象徴的な意味が強くていわいる「城を割る」という行為だったのではないかと想像した。

 発掘調査関連の写真がたくさん収録されていて、一部には復元CGもある。伝羽柴邸については他の本でもみたせいか、親しみさえ覚えてしまった。
 しかし、伝○○邸のたぐいは片っ端から由来が怪しいらしく、言われていた人物が住んでいたとは考えにくい模様……伝羽柴邸については信長が住んでいた可能性も指摘されている。

 そんな感じで怪しい情報を再検討して、わかるところはハッキリと、わからないところもできるかぎり整理してくれていた。また、石仏などを石垣に利用したことについては、特別に宗教的な意味はないと説明されている。
 それを踏まえると安土城からイメージされる信長像は比較的常識的な人物と感じられる。

安土 信長の城と城下町―発掘調査20年の記録
安土 信長の城と城下町―発掘調査20年の記録
カテゴリ:歴史 | 22:14 | comments(0) | trackbacks(0)

ビジュアル博物館48〜文字と書物 カレン・ブルックフィールド

 絵文字から粘土板に刻まれた楔形文字、そして印刷術まで。文字と書物の歴史をたどる。アメリカ先住民のもつ絵文字の巻物が本当に絵で、なんだか懐かしくすらあった。絵日記の絵だけ残っている状態みたいである。記憶の補助にはかなり有効だったのだろうな。
 日本と中国は興味をもって取り上げられていて、比較的あつかいがよかった。アラビア文字の中東もなかなか。
 こうして一緒に取り上げられることで文字が複数発生した不思議を感じることができる。アルファベットのようなシステムと、漢字のようなシステムが共存していることも不思議だ。

 印刷術の段階に突入すると一気にアルファベットが特色を活かす。朝鮮の印刷術がグーテンベルク印刷術より早いくらいなのは知っていたが、てっきりハングルの特色を活かしているものだと思っていたので、漢字を活字の数でごり押ししていたのには驚いた。
 そういえばハングルができたのはもっと後の時期か……。日本はひらがな・カタカナに特化していればチャンスがあったのにな。逆に初期印刷術が流行しすぎたせいで漢字が消えてしまう恐れもあったのかもしれないな。

 王羲之が永の字を完成させるのに15年かけたというエピソードが印象に残った。まぁ、15年の間に他のこともしていたのだろうけど。

文字と書物 (ビジュアル博物館 48)
文字と書物 (ビジュアル博物館 48)
カテゴリ:雑学 | 22:13 | comments(0) | trackbacks(0)

ビジュアル博物館36〜船 エリック・ケントリー著/野間恒・監修

 やはり英語圏は船にうるさい。古今東西の船をあつかった写真図鑑。人類が機能的な海上交通手段を営々と発展させてきたことが分かる。
 帆船を補修するための道具がひとつずつ作り出されていったことを想像すると感動すら覚える。名もなき船乗りたちが、時には海没しながらも技術を発展させてきたのだ。

 本が古いので豪華客船が退勢にある扱いだが、いつからか潮目が変わって今では豪華客船が新しく建造されるようになっていることが興味深い。
 港から港に雑多な品を輸送するタイプの船が生き残っているのかな。コンテナによって仕事を失った港湾労働者が社会のどこに消えたのか、想像すると怖い。

 中国のジャンク船が出てきて、昔は「今でも現役のジャンク船がある」と本に書かれていたのを思い出した。流石に商業的なジャンク船は全滅したかな?
 河川交通をになうサンパンはまだ生き残っていそう。中国の経済発展は格差をそのままにしているから……。

 馬の運搬船のクロスセクションが興味深かった。恐ろしく機能的だ。

船 (ビジュアル博物館)
船 (ビジュアル博物館)
カテゴリ:工学 | 22:12 | comments(0) | trackbacks(0)

金は天下のまわりもの〜金儲けできる人できない人 泉秀樹

 日本の歴史からお金にまつわるエピソードをよりぬいた本。情報密度の関係から江戸時代のエピソードが多い。
 インフレの中で没落していく武士達の姿は涙を誘う。借金は地獄のはじまり。しかし、まったく借金をしないのも、また地獄に突入するかもしれない。
 加賀藩の佐々主殿が武士の心がけを守り続けて借金で首が回らなくなり自殺した話には泣きたくなった。時代の変化に対応できない――できる自由度も与えられていない――悲しさよ。
 岩倉具見のエピソードによれば公家の生活も悲惨だったそうで、衣装などイベントで必要なものがあればレンタルして凌いでいた話がもの悲しい。
 天皇でも3万石しか収入がないんだもんなぁ……。

 一方で、将軍では徳川家斉の風紀糜爛ぶりが凄まじい。子供が55人は多すぎる。著者に批判されている吉宗の政策も、こういうバカ殿が一人現れるだけで台無しになるのであった。

 商人達のエピソードはたくましさを感じるものが多かったが、現代にそぐうかと考えると、難しいものがある。本当に言っていることを守れるなら、まだ良いんだけどねぇ。
 まんまとハメられた材木卸の柏木屋はご愁傷様。

金は天下のまわりもの―金儲けできる人できない人
金は天下のまわりもの―金儲けできる人できない人
カテゴリ:雑学 | 22:12 | comments(0) | trackbacks(0)

古代天皇列伝〜日本の黎明を統べる系譜 歴史群像シリーズ

 伝説上の神武天皇から平城京から決別した桓武天皇まで。
 古代の天皇について重要な人物を一人ずつ追っていく。
 系譜の特異点には女性の影があるという考え方をしている記者がいて、壬申の乱についての記述が新鮮だった。持統天皇がますます印象的になる。

 天皇の補佐をする豪族においては、物部氏・蘇我氏・藤原氏と移ってきて、今度は橘氏の番が来ても良さそうに感じたのだが、藤原氏が踏みとどまった。彼らが前車の轍を踏まなかった背景が気になるところだ。
 県犬養三千代は、藤原氏の男性と結婚しているのに、橘氏の創始者で県犬養の姓も名乗り続けていて、強烈に「夫婦別姓」の存在だった。日本の伝統を古代までたどれば、やはり夫婦別姓かなぁ。

 天皇家に姓がないのは、授ける側の特別な存在だからという論理はスコットランド王国のいにしえの王家も同じであり、世界的に共通しえる考え方のようだ。

 途中に宮内庁の陵墓政策を痛烈に批判する記事が挿し込まれていて深く頷いてしまった。古墳はもはや日本人共有の歴史財産のはず。どんな真実でも今更明らかにされて皇室に不都合なことがあるとは、到底思えない。それくらいで揺らぐと思っているなら、宮内庁が不敬である。
 盗掘や侵食、樹木の根などによって貴重な情報が失われる前になんとしても解放をしてもらいたい。

関連書評
NHKさかのぼり日本史10奈良・飛鳥〜“都”がつくる古代国家 仁藤敦史
中世の天皇観〜日本史リブレット22 河内祥輔

古代天皇列伝―日本の黎明を統べる系譜 (歴史群像シリーズ)
古代天皇列伝―日本の黎明を統べる系譜 (歴史群像シリーズ)
カテゴリ:歴史 | 19:47 | comments(0) | trackbacks(0)

破産者たちの中世〜日本史リブレット27 桜井英治

 万人敵足利義教の裁判記録から追う中世の金融事情。
 なかなか現代的な現象がおきていると著者は書いているけれど、中世ヨーロッパでの金融問題を連想する部分も多々あった。昔の人もお金のことには必死で、いろいろと論理を駆使しているわけである。
 漢帝国の西域でみつかった竹簡・木簡やメソポタミアの粘土版も思い出して、人類に共通の問題が日本の中世でも起こっていたことを確信する。

 足利義教の命じた債権処理の方法が興味深く、所領を差し押さえて債務者が破滅をしない形で時間をかけて絞り立てている。破滅をさせれば結局は債権者も損をすると、みんなが分かっていたのかもしれない。
 いつも冷静ではいられないはずだが、ギリギリで残された冷静さが好ましい。

 義教へのイメージが大きく変わる本でもあった。くじなんて形で選ばれていなければなぁ……。

破産者たちの中世 (日本史リブレット)
破産者たちの中世 (日本史リブレット)
こんな素敵な絵をどこから見つけてきたんだ。
カテゴリ:歴史 | 23:58 | comments(0) | trackbacks(0)
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