鉱石の生い立ち 島崎英彦

 しかし、しかし、である。
 スカルン鉱床を中心に研究してきた著者による様々な鉱床の話が聞ける本。元はブログであったものを書籍化したらしい。自分が納得しないと通説が相手でも別の解釈を求める意固地な姿勢がすばらしい。
 今の日本国内で活用される機会はあまりないかもしれないが――活用される機会が生まれたら一大事な気もする――興味深い話を読むことが出来た。
 原料高騰によってモリブデン鉱山が再開の検討をしたこともあったし、完全に活動がありえないとも言い切れないかな。

 神岡鉱山などの著名な日本の鉱山については個別に鉱床の状態が紹介されていた。鉱物マニアにとっても見逃せない内容だろう。
 チタン鉄鉱系花崗岩と磁鉄鉱系花崗岩の違いは覚えておくと何か良いことがありそうな気がした。

関連書評
岩石はどうしてできたか 諏訪兼位 岩波科学ライブラリー269
銀鉱山王国〜石見銀山 遠藤浩巳

鉱石の生い立ち
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そして恐竜は鳥になった 小林快次・土屋健

 もはや常識・定説になっている鳥は恐竜の子孫(というよりも一種)説。恐竜が鳥になった経緯を、恐竜化石の情報から掘り起こしていく。
 まるで鳥になるための準備を発生時点からせっせとつづけていた様に思えてしまうが、もちろんそんなはずはなく、羽毛も翼もその時々でその目的にしか存在しないと思えるほど役立っていたはずである。
 そして、現時点で役立っている器官も未来には別の役割を果たしているかもしれない。

 過去からの延長線上に現在の鳥をみることで、未来の生物にも思いを馳せることができた。
 恐竜の定義が、鳥とトリケラトプスの共通祖先から派生した種で、鳥類の定義がイエスズメと始祖鳥の共通祖先から派生した種。イエスズメはトリケラトプスや始祖鳥に匹敵するビッグネームなのだ!?
 そんな情報もなかなか興味深い。

「鳥類の多くはイクメン」というのは哺乳類のもたない強みになりえるので、次の地質時代に支配者再逆転の原因になったりして……。

関連書評
生命史図譜 土屋健 群馬県立自然史博物館 監修
新版 再現!巨大隕石衝突〜6500万年前の謎を解く 松井孝典

そして恐竜は鳥になった: 最新研究で迫る進化の謎
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MikuMikuDanceキャラクターモデルメイキング講座 マシシP

 マシシ芸能事務所社長によるBlenderをつかったモデルメイキング講座。この本で説明するために生み出されたオリジナルモデル柿葉みどりを説明にしたがって1から作ってしまおうというハードルの高い試みになっている。
 絵が描けなくても魅力的な3Dモデルを作ることはできる(著者は絵が描けない)。そんな情報が背中を押してくれる。
 BlenderからMMD用モデルにコンバートして、PmxEditorで追加の設定をするところが力尽きる可能性が高く思える(そこまでたどり着くのも大変きわまるが)。複数のソフトをあつかう場合の負担が……先にPmxEditorの本を読んで、そちらに慣れ親しんでおくことが賢明だ。

 作成したMMDモデルをBlenderで修正する方法も紹介されているので、そこから慣れてみるのもいいかもしれない。小物の作り方も最後の最後に載っている。
 力尽きたら寄り道できるポイントは用意されているので、最初から順番通りにやりきることに拘らず、できることの範囲を増やして行ってもいいのではないか。
 ただし、モデルをつくる手順はできるだけ守った方がよさそうだ。

関連書評
PさんのためのPMDエディタの本 でで/かんなP
MikuMikuDanceモーション作成教室 かんなP/ポンポコP/ショ大河P/6666AP
MikuMikuDanceでPさんと呼ばれる本


MikuMikuDance キャラクターモデルメイキング講座 Pさんが教える3Dモデルの作り方
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広辞苑を3倍楽しむその2 岩波書店編集部 編

 岩波科学ライブラリー270
 広辞苑第7版に対応。広辞苑のトピックから科学的な話題をさまざまに引き出したブックレット。たくさんの著者が参加しており、巻末には経歴と著作の紹介もあるので、関心をもった分野からどんどん読書の輪を広げていくことができる。
 個人的には読んだことのある本を数えて自己満足していたが……我ながら読み過ぎなくらい読んでいた。岩波科学ライブラリーを出している場合は、ほぼ確実に読んでいる。そちらの記憶のダイジェストとしても機能しないでもなかった。

 歯が左右非対称という面白い蛇、背高蛇の著者が経歴で「本当はヘビよりも植物の方が好き」と書いていて、ブリッジしそうになった。せめてヘビに食べられるカタツムリが好きなら分かるけどさ……。

 小笠原姫水薙鳥は名前が優雅すぎる。ヒメがついている雌雄のある動物なんていくらでもいるから命名者は気にしなくて良いし、姫若子といわれた人物もいる。
 ニホニウムは説明がわかりにくいというより、核分裂の図をじっと見る気になれなかった。広辞苑の第8版がでることには新しい元素が生まれているかな?いつか元素の存在安定領域まで到達できれば……!?

 ところで3倍の根拠はどこにあるのかな?定量的にお願いします。

関連書評
時を刻む湖〜7万枚の地層に挑んだ科学者たち 中川毅
クマムシ?!〜小さな怪物 鈴木忠

広辞苑を3倍楽しむ その2 (岩波科学ライブラリー)
広辞苑を3倍楽しむ その2 (岩波科学ライブラリー)
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ド・ゴール〜偉大さへの意志 渡辺和行 世界史リブレット人096

 ド・ゴールに経済感覚まで備わっていたら、きっと現実の人物ではありえないと言われる。しかし、軍学校での成績はそこまで極端ではないのだった。学校だけでは見えないことや卒業後の成長があることが伺える。
 軍事においても政治においても「正解」への嗅覚が異常にするどい人物だったのかもしれない。まぁ、選挙では負けて一時的に引退したりもしているけどな。

 アルジェリアをめぐる問題が想像以上にフランスを揺るがしていたことを知った。アルジェリアに展開した軍が反乱してコルシカ島まで攻めてくるなんて普通に国家存続の危機である。
 周辺諸国が変にちょっかいを掛けてこなかったことがフランスには幸いだった。まぁ、ドイツもイタリアも自国のことで手一杯か。フランコのスペインは食指が動きはしたかもしれない。
 強硬派のように登壇しながら、たくみにアルジェリア解放でまとめていったド・ゴールの手腕は興味深かった。本人の考えも事態に対処しながら変化したものと思われる。

 また欧州共同体をめぐる動きも、ド・ゴールの視点から知ることができた。イギリスを仲間に加えることへのド・ゴールの不満は、結果的に正鵠を射ていたと言えてしまいそうだ。
 第二次世界大戦で大打撃をうけながら立ち直り、独自路線を築いた点で、ゴーリズムに日本が学ぶべき面も多々あるのではないか、いまさら模倣は無理にしても。

関連書評
各国陸軍の教範を読む 田村尚也
カラーイラスト世界の生活史19 フランスの歴史 ピエール・ミケル/ピエール・プロプスト

ド・ゴール―偉大さへの意志 (世界史リブレット人)
ド・ゴール―偉大さへの意志 (世界史リブレット人)
カテゴリ:歴史 | 23:04 | comments(0) | trackbacks(0)

テオティワカン〜消えた古代文明の謎 ナショナルジオグラフィックDVD

 メソアメリカにあった巨大な都市テオティワカン。アステカ文明がそこを知ったときには無人の廃墟になっていたそこの謎に考古学調査によって迫る。

 太陽の神殿や月の神殿がアステカ人が名付けたもので、そこに住んでいた人々が名付けたわけじゃないことを知った。あまり名前のイメージに引きずられないように気をつけないと間違った認識を持ってしまいそう。
 日本でいうと山城の曲輪につけられた名前みたいな感じだ。

 テオティワカンは平和の都。巨大なピラミッドの建設にも民衆が自発的に参加していた――そんな雰囲気で進んでいた話が、突如として人身御供の発見で変わってしまった。
 最後は兵士用の住居まで出てきて楽園を楽園のまま続けることの難しさを感じさせる。

 対処不能なほどの人口集中による破滅という仮説が正しいならば、現代の巨大都市計画者にも参考にして欲しい遺跡である。

関連書評
文明崩壊のシナリオ マヤ ナショナルジオグラフィックDVD
古代マヤ〜密林に開花した神秘の文明の軌跡をたどる ナサニエル・ハリス

ナショナルジオグラフィックDVDレビュー記事一覧

ナショナル ジオグラフィック[DVD] テオティワカン 消えた古代文明の謎
ナショナル ジオグラフィック[DVD] テオティワカン 消えた古代文明の謎
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岩石はどうしてできたか 諏訪兼位 岩波科学ライブラリー269

 タイトルから岩石の形成論が展開されるものと思っていたら、「岩石学はどうしてできたか」が長い人名の列によって紹介されていた。
 遙か昔から始まって現代に生きる90歳(2018年時点)の著者と一緒に研究した人々まで、大量の肖像画を記憶のたよりに岩石学の歴史を追うことができる。

 どうしてもプレートテクトニクスが画期に思えてしまうのだが、岩石学においては水成論と火成論の激突こそが重要だったらしく、その周辺に関する話題が印象に残った。
 火山のある国、ない国、島国と大陸の国など、研究者が生きていた国の状況がそれぞれの説に影響を与えていることが伺えた。
 だから日本の研究者がやってきたことも世界的な意味をもってくる。

 今後の研究は先進国にはめずらしい地質をもつ発展途上国の研究者が牽引していくのかもしれない。過去の様子から、岩石学のそんな未来を思った。

関連書評
鉱物・岩石入門 青木正博
新潟の花こう岩の生い立ちを読む 加々美寛雄・志村俊昭
岩石概論 宮城一男 共立出版株式会社

岩石はどうしてできたか (岩波科学ライブラリー)
岩石はどうしてできたか (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:地学 | 22:55 | comments(0) | trackbacks(0)

三つの石で地球がわかる〜岩石がひもとくこの星のなりたち 藤岡換太郎

 岩石名にやたら難しい漢字が使われている岩石学を、三つの石に集中することで、とっつきやすく紹介することに挑戦した本。
 作者はわざとタイトルなどでは秘密にしていたが、三つの石とは、かんらん岩、玄武岩、花崗岩である。地球の大部分はこの三つの石(と鉄)が構成しているとのこと。ただし、花崗岩には堆積岩起源のSタイプ花崗岩もあったりするので単純ではない。Sタイプ花崗岩とIタイプ花崗岩のことは習わなかったので覚えておきたい。
 あとは地球科学概論などの講義を通して習ったことがあるので、本書が地学初心者にとっつき易いかは自分には判断できなかった。

 あと、その他の石で方解石が造岩鉱物じゃないといわれていたけれど、著者の考えでは石灰岩や大理石は「岩」に含まれていないのかなぁ。
 そこもちょっと気になるのだった。

 火成説と水成説の対立は本書でいわれているように単純ではないと別の本(岩石はどうしてできたか 諏訪兼位 岩波科学ライブラリー269)で読んだばかりだったので、話半分に聞いておいた。しかし、連続で出てくると記憶の助けにはなる。ありがたい。

関連書評
星くずたちの記憶〜銀河から太陽系への物語 橘省吾
奇跡の惑星 地球vol.1マグマの力 ナショナルジオグラフィック

三つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち (ブルーバックス)
三つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち (ブルーバックス)
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よみがえる古代山城〜国際戦争と防衛ライン 向井一雄

 白村江の戦い以降、唐の侵攻に備えるため日本国内に築かれたと通説で言われていた古代の山城(さんじょう)。中世以降の山城とは系統のことなる技術でつくられたそれらの分布や研究史がまとめられている。
 文献に載っていない古代山城は「神籠石系山城」と呼ばれ、わけて考えられてきた歴史があるが、その分類も変化していて謎の多い存在である。
 そもそも築かれた年代すらはっきりしない山城が多い。
 その辺りの事情が著者の視点から整理されている。

 低地に位置していて、土塁が街道側の正面にしかない「びんぼっちゃま」状態の防御態勢になっている城の存在が興味深い。
 まるで古墳における「正面」論だと両者をつなげて考えていた。在地勢力の力を削るために築かれたなら戦国時代の築城につながる部分もある。外敵への対応をテコにして支配体制を深めていったとすれば、鎌倉時代の元コウとも結びついてくる。
 逆に考えれば古墳造営は在地勢力の力を削ぐ目的もあった?などと思索が広がるが、ようするに日本社会にくりかえし表れるパターンに古代山城も沿っているのかもしれない
 ただし、解釈する側がそういう風に考えてしまいがちな可能性もある。

 韓国における城郭研究が進展したことで両国の山城の比較からより多くのことが分かってきた。中国東北部の城も注目らしい。朝鮮民主主義人民共和国だけが古代城郭研究の空白になっている……せめて人工衛星画像解析から補完できるといいのだが。
 また日本の中世・近世の城郭研究家と連携して古代山城を研究することの必要性も説かれていた。

 朝鮮半島における三国やボッカイに、唐と日本が絡んだ古代の国際的な政治環境もとても興味深かった。もっとも、唐は朝鮮半島以外にも戦線をもっていて統一新羅との戦争を切り上げたのは、そちらに注力するためだったというから、やはり巨大である。

関連書評
日本の城[古代〜戦国編]〜知られざる築城の歴史と構造 西ヶ谷恭弘・香川元太郎
戦国の堅城〜築城から読み解く戦略と戦術

鬼ノ城 発掘報告書:本書の中で言及されていた報告はこれだろうか。

よみがえる古代山城: 国際戦争と防衛ライン (歴史文化ライブラリー)
よみがえる古代山城: 国際戦争と防衛ライン (歴史文化ライブラリー)
カテゴリ:歴史 | 00:50 | comments(0) | trackbacks(0)

古生物たちのふしぎな世界 土屋健・田中源吾

 古生物は古生代の生き物にかぎらない。なぜかタイトルをみたときに古生代の生き物だけだと思っていたが、それは本書の中については正しかった。
 エキゾチックな古生代の古生物を最新の研究成果をとりこみ、生々しさのあるイラストレーションで紹介する本。

 イクチオステガの前足はいずこにありや?全世界は知らんと欲す。
 もしも発見されたら光速でイラスト化されるはずで、著者の本を追っていれば前足進化のミッシングリンクが解消されていないことが分かる。
 しかし、さいきんのトレンドはティクターリクの重視にあるらしく、あの動物こそが、サカナと両生類をつなぐ重要な鍵とのこと。そもそも「魚類」の分類がなくなりかけていることに衝撃を受けた。
 単弓類もそうだが、進化の基盤は幅が広すぎて分類が難しいってことなのか?

 学校で学んだことがどんどん覆されていく。それを肯定的に受け止められなくなったら成長の終了だ(本来は新説への心構えこそ教育されるべきなのかもしれない)。情報更新の激しい分野は自己チェックにもなる。

関連書評
ハルキゲニたんの古生物学入門〜古生代編 川崎悟司
エディアカラ紀・カンブリア紀の生物 土屋健
オルドビス紀・シルル紀の生物 土屋健

カラー図解 古生物たちのふしぎな世界 繁栄と絶滅の古生代3億年史 (ブルーバックス)
カラー図解 古生物たちのふしぎな世界 繁栄と絶滅の古生代3億年史 (ブルーバックス)
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