カラーイラスト世界の生活史13 大帆船に乗りこんで ピエール=アンリ・シュトレーター/ピエール・ブロシャール

 フランス発行の大航海時代本ということで微妙にマニアックな要素が滲みでる。歴史を変えた海戦3つを挙げるうち、2つをフランスの戦略的勝利にもってくるセンスは、イギリス人どころか他の民族には発揮しえないであろう。それでも戦術的には2敗しているのだが……トラファルガーではなくアブキール湾を持ってきたのは、何故かな。
 海の冒険者もフランス人が多めであるものの、著名なイギリス人は取り上げられているし、イギリスの発明品は正直にあげている。そこがフランス人のプライドなのかもしれない。「フランス人は金のために戦うと聞いているが、イギリス人は名誉のために戦うのだ」と言われたシェルクーフが「だれもがそれぞれ自分にない物のために戦うのだ」と返したのは秀逸だ。あとフンボルトの享年90歳がとても長生き。

 カラーイラストのつく本編では造船に必要な木の本数や大砲の重量など、具体的な数字をたくさんあげて説明してくれているところが良かった。必ず人が入っているイラストレーションと合わせてリアルなイメージが育まれる。

 歪が出ないよう両舷を等分に乾かすために造られる船の軸は正確に南北に合わせて置かれる、などついつい感心してしまう知識も満載で興味深かった。イギリス流に偏った海洋知識に異なる視点を効果もあり、オススメできる一冊だ。

関連書評(というか何というか…)
蒼海ガールズ! 白鳥士郎:美少女一杯の海洋冒険ライトノベル

カラーイラスト世界の生活史(13) 大帆船に乗りこんで
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カラーイラスト世界の生活史8 城と騎士 アシェット版/福井芳夫・木村尚三郎

 西ヨーロッパの城と、城に住む人々の姿を充実したカラーイラストで巧みにまとめた本。中世の城で行われていた生活をおおよそ把握することができる。
 目を楽しませてくれるがテーマに関しては散漫な印象のミニアチュールと、伝えたいことが明確なイラストの違いが興味深かった。
 中世も長い期間であるので、初期と後期では生活の様子も異なっていることに注意が必要だ。さすがに一度にそれぞれの年代を網羅できるものではないが、変化の方向を押さえることはできる。

 注目すべきは巻末に充実したヨーロッパの城ガイドで、現在まで残存している城の案内が写真付きで載せられている――保存ボランティア団体の連絡先まで!
 日本人で利用する人がいるとはあまり思えないが、あちらの活動を参考に、日本の城郭について考えるのも有意義だ。

城と騎士(カラーイラスト世界の生活史 8)
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カラーイラスト世界の生活史5 ガリアの民族 ルイ=ルネ・ヌジエ/ピエール・ブロシャール

 フランス人の偉大な祖先。文字を遺さなかったガリア人の姿をできるだけ彼らに寄りそった視点から描いている。
 鉄器をもったガリア人が、フランスの地により進んだ文明をもたらし、インフラを整備していった様子が分かる。これならローマ人も安心してローマ化を進められるわけだ。やはりゲルマン人とは勝手が違う。

 それぞれの部族が独自に行動していたものの、物流網は細かく太かった点に注目したい。道路の建設がガリア全体でどれだけ計画的だったかが気になるところだ。ドルイド僧がとりもってくれることもあったのだろうか。

 それにしても猪や豚の好きな民族だ。人を犬に喩えることが褒め言葉になる点が、今のフランスでやったら侮辱になるという注釈とあわせて、おもしろかった

 ケルトの高城(オッピドゥム)の空中写真が最後についていて、カエサルの戦ったアレシアが今に地形を遺していることに感動を覚えた。
 舌状大地の先端を堀で分断して城にする手法は、日本の戦国時代にも通じるものがある。ラ・ショーセ・ティランクールの構造が、長篠城を想わせた。

関連書評
ガリア戦記 ユリウス・カエサル

カラーイラスト世界の生活史〈5〉ガリアの民族 (1985年)
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カラーイラスト世界の生活史3 古代ギリシアの市民たち ピエール・ミケル/ピエール・プロプスト

 古代ギリシアを描くカラーイラスト世界の生活史3巻は面白さが格別だ。そのように感じる理由は、情報がたくさん残されているから、特に面白い知識をより抜きすることができるからか、私が事前に知っている知識が多いおかげでイラストにぴったりハマるものが見つかるからか。
 単純に都市国家にロマンがあるから、と考えても良さそうだ――ただし奴隷制という負の側面を常に抱えている。鉱山労働の奴隷とか、見るからに苦しそうな労働状態だった。何年も生きられる気がしないよ……。

 ペリクレスの神殿造営に関するニューディール政策的な発言がすごく印象に残った。当時から、そういう発想はあったんだなぁ。それを言ったらピラミッドの建設にまで遡るかもしれないが、明確に意識して行えるところが流石はペリクレスである。

 彼の時代(前431年)のギリシア軍の兵士は歩兵13000に騎兵1000、港や城塞の防衛軍が1400人の青年兵と9500人の居留外人、2500人の在郷軍人でしめて27400人。これに全盛期には海軍が三段櫂船400隻にのぼったと言うが、200隻で4万人以上を必要とするので、400隻なら8万人以上。
 一方、アテネの人口は自由市民4万、居留外人や家族16万に奴隷30万の50万――奴隷を含めてさえ5人に1人は無理ではなかろうか。市外の人口や傭兵、陸軍と海軍の重複を考えて、やっとギリギリの数字か。

 あと、巻末の動物記事のアルベラ(ガウガメラ)の戦いでのマケドニア軍騎兵が700しかいなかったとする記述は明らかにおかしい。

関連書評
会戦事典 古代ギリシア人の戦争 市川定春

カラーイラスト世界の生活史〈3〉古代ギリシアの市民たち (1984年)
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不思議で美しい石の図鑑 山田英春

 鉱物の中でも不思議な模様の浮かび出るタイプの石を集めて紹介されている。当然のごとく多くを瑪瑙とジャスパーが締めていて、SiO2であることが気になって仕方がない場合は苦しい……孔雀石やエッチングされた隕鉄の写真に一息つけた。
 まぁ、孔雀石は瑪瑙の一種の名前にも使われているらしいが……ややこしいことをしてくれるものだ。ここは石の不思議さにひたすら素直な先人の感性にかんじいるべきか。

 ひたすら瑪瑙ばかりが続いたが、ずぅっと見ていると瑪瑙にも多種様々なものがあることに目を瞠らされてくる。縞の形状や間隔、色彩などが多くのバリエーションを生みだすことに驚嘆を禁じえない。
 サンダーエッグを割って中を確かめるのが、すごく楽しそうだ。

 イリスアゲートはもっと多くの写真を見たかったのだけど、色の変化を立体的に愉しむ物の写真を複数載せても無粋という考えかたなのかな。様々な角度からの写真を大量に載せるなら、本よりもインターネットが向いているとは思う。

 漫画C.M.B.で知った「驚異の部屋」に関する記述もあって興味深く読ませてもらった。ただ、風景石の中に現れた模様が現実の火山活動などと同じ地磁気の作用によるものなどというトンデモな話を一説として載せているのは残念。
 まったく、地磁気のない火星の断層や金星の火山は、どう解釈するんだか。フラクタルまでで話を終えてほしかった。

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不思議で美しい石の図鑑
不思議で美しい石の図鑑
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カラーイラスト世界の生活史2 ナイルの恵み ピエール・ミケル/ピエール・プロプスト

 エジプトはナイルの賜物。有名な語句を裏付ける内容で、古代エジプト文明の姿が描かれる。ナイル河沿い850kmの細長い領域に農業を基礎とする豊かな生活が送られている。
 砂漠へ行く機会は狩りや通商の時くらいのようだが、エジプトの内乱はほとんど一次元的な機動で行われていたのだろうか?水運と組み合わせれば、もうちょっと二次元的になるかなぁ。

 エジプト兵が役得の多くて人気の職業だったことが意外だった――イラストでは泣いている人物も描かれているが。
 戦いの後、右手を切って山と積み、戦果を確認する様子はおぞましいが、遥か未来の日本でも似たことが行われているから困る。

 集団が何かを行う時には、必ずと言っていいほどパピルスの紙と筆をもった書記の姿があることが印象的だった。彼らこそファラオの忠実な手足にして、人民と違い「個」を持った人々。そんな矛盾しているところが興味深い。

カラーイラスト世界の生活史〈2〉ナイルの恵み (1984年)
カテゴリ:天文 | 09:09 | comments(0) | trackbacks(0)

カラーイラスト世界の生活史1 人間の遠い祖先たち ルイ=ルネ・ヌジエ/ピエール・ジュベール

 古生物の歴史から辿る人類の生活史。いちばん最初の石を道具として使うことを覚えた人類が都市を造り攻防をはじめるに至るまで、フランスを中心にして描かれている。だから英雄の例としてカエサルではなくウェルキンゲトリクスが挙げられるのだ。
 たびたび話題に出るため、有名な洞窟壁画の在り処がフランスに多いことが良く分かった。先史研究に足跡を残した研究者も多いようだ。

 石器の加工法や火の発見など、人類が試行錯誤をくりかえし、時にせっかく得たものを忘れてしまいながら歩みつづけてきた事が説得力たっぷりに描かれている。
 ほんの小さな家や道具でも、人類が生きていくためには、とても大きな力となったに違いない。自分がどれだけ恵まれているか、気付かされるのであった。

 動物を次々と滅ぼし、地形すら改変してきた祖先。我々が来たところを知ったことで、我々がどこへ行くのかも考えさせられる。

カラーイラスト世界の生活史〈1〉人間の遠い祖先たち (1984年)
カテゴリ:歴史 | 19:35 | comments(0) | trackbacks(0)

美濃・飛騨新百景 岐阜新聞・岐阜放送

 岐阜県の名勝100を1ページずつ紹介していく本。
 身近な観光地のガイドブックとして役に立ちそうである。

 飛騨地方の名勝が20ヶ所と面積に比べて少ないが、その分、厳選された観光地が取り上げられているように感じた。「古い町並」の呼び方がそのまますぎて新鮮だった。
 美濃地域の観光地には、ちょっと無理を感じるものも少なくない――日帰りで足を伸ばす分にはダメージは少ないと思うけど。
 まぁ、近場や行ってみたいところから行ってみれば良いんじゃないかな。

 城跡がいくつか取り上げられているが、郡上八幡城の「日本でいちばん古い木造再建城郭」という微妙なスタンスに琴線が震えた。そう遠くない犬山城と1対1で勝負したら勝ち目のない売りだ……。
 犬山城の次は郡上八幡城にどうぞ。

美濃・飛騨 新百景
カテゴリ:写真・イラスト集 | 19:32 | comments(0) | trackbacks(0)

戦国の荒鷲2〜浜松最終決戦 神宮寺元

 島左近の戦いは一気に年代をすっ飛ばして徳川家康と石田三成の激突へ。歴史改変により大和の大名となった島左近は石田三成とは別に6千の兵を率いており、尾張と三河の城をつぎつぎと攻め落としていく。
 結果、徳川家康との決戦は三河と遠江の間で行われることになった。浜名湖が酷く邪魔な状態で、神宮寺先生らしい窮屈な戦いが展開される。

 島左近、石田三成、直江兼継のトライアングルが家康を追いつめる筋書きだったはずだが、実戦に臨んでは維新のじっちゃが、かなり出張っていた。島左近と波長が合うおかげで、島津義弘が島左近の立場に収まっているように見えた。
 あと、空気を読まない行動をする気概の持ち主、田丸直昌がいい仕事している。小山評定で徳川家と豊臣家の立場が逆だったら、三河武士は無数の田丸直昌になっていたに違いない。
 そう考えると、やはり徳川家の地力は強大だ。

 変に兵力の分散を強いられる西軍だったが、吉田城に敵の半数を引きつけている間に、北方で数的優位を確保して最後は家康をしとめた。吉田城の石田勢に島左近の姿はないわけだが、蒲生郷舎がふんばったのだろうか。
 家康を襲撃する船を用意していた島津義弘は、ヤマトの真田さん並だな。「こんなこともあろうかと」
 そういえば真田家は陰が薄かったなぁ。家康死後の関東攻めも、華麗に東軍を裏切った伊達家がおいしいところを持って行ったし……ふざけんなと言いたい。言いながら笑いたい。さすがは政宗だわ。

神宮寺元作品感想記事一覧

戦国の荒鷲2 (歴史群像新書)
戦国の荒鷲2 (歴史群像新書)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 19:32 | comments(0) | trackbacks(0)

戦国の荒鷲1〜伊賀・大和の死闘 神宮寺元

 筒井家に仕えていた島左近が、史実と違い筒井家の後を継いだ番条五郎の元で懸命に働き、ついには秀吉の直臣になる。
 わりあい地味な筒井家単独の伊賀攻めや秀吉軍にしたがっての雑賀攻め、四国仕置きで話が進んでおり、華々しさはないものの新鮮に感じた。筒井家の人材を意識することは中々なかったからなぁ。

 その作品に特徴的なのは、主人公側が常に敵より多数で戦っているところだ。伊賀攻めでは7倍、秀吉軍と地方勢力の戦いではもはやリンチ状態である。
 ただ、味方が大集団であるがゆえの付き合いの難しさは存在している。元々大和自体が政治的に難しいところでもあり、ひとりひとりが外交官であることを宿命づけられている戦国時代の雰囲気が伝わってきた。

 柳生宗厳が思わぬ役割をはたしており、徳川家と左近たちの諜報戦が静かに展開されているところも興味深かった。伊賀越えもあったし、家康とあの地域の関係も無視できない。

神宮寺元作品感想記事一覧

戦国の荒鷲〈1〉伊賀・大和の死闘―島左近戦記 (歴史群像新書)
戦国の荒鷲〈1〉伊賀・大和の死闘―島左近戦記 (歴史群像新書)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 19:30 | comments(0) | trackbacks(0)
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