くらべてわかる哺乳類 小宮輝之・著 籔内正幸・絵

 日本に生息するすべての哺乳類を写真やイラスト付きで紹介してくれる。迷行して日本にやってきた哺乳類や、尖閣諸島での数例しかない哺乳類なども取り上げている。
 コウモリについて分かっていないことが多すぎて驚いた。

 迷子の哺乳類では、日本にホッキョクグマが来た例が――江戸時代に不確定な情報として――あるらしいことが面白かった。しかも、北海道はわかるけれど、越後にも出現しているらしい。神出鬼没の熊だな。
 日本のヒグマにはツキノワグマみたいな白斑が表れることが多いという情報も気になった。多少の交雑があるのかなぁ。それは自然に起きたことだろうから特色で、移入種との交雑は問題になるというのも、なかなか複雑である。

 クジラの仲間がたくさんあげられているところは、さすがに海に囲まれた国である。謎多きアカボウクジラの仲間も気になる存在だった。
 タイヘイヨウアカボウモドキは、なんのモドキなんだ?タイヘイヨウアカボウ?が日本では発見されていないのか紹介されていないので、気になった。それともアカボウクジラのことを指しているのかな。

 あと、雪に残った哺乳類の足跡写真も興味深い。プロの目から見れば、いろいろなことが分かるのだと感心した。

関連書評
Life Vol.2 BBC EARTH

くらべてわかる哺乳類 (くらべてわかる図鑑)
くらべてわかる哺乳類 (くらべてわかる図鑑)
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ビジュアル版 地球・生命の大進化〜46億年の物語 田近英一・監修

「大人のための図鑑」と銘打った地学の本。綺麗な図や写真、イラストなどで地球の誕生から現在までが紹介されており、未来についてもちょっと書かれている。
 2億5千万年後に誕生する超大陸「パンゲア・ウルティマ」に妄想が膨らんだ。でも、コラムで紹介されていた別の説で産まれる超大陸「アメイジア」の方を先に知っていたので、アメリカの東側に沈み込み帯が誕生する展開に不審なものを感じてしまった。
 そこまでして大西洋は広がりたくないのか?困った奴だ。
 パンゲア・ウルティマにおいてはインド洋が内海になっているところも興味深い。インド洋の生き物は特殊な進化を約束されている!?

 まぁ、すべては人類による大量絶滅を切り抜けてこそ。過去の大量絶滅を遙かに上回る速度で現在の絶滅が進行しているとも紹介されており、未来がとても心配になる。

 大人向けでも恐竜は関心が高いと思ったのか、再現イラストがたくさん紹介されていた。ただし、羽毛がない復元ばかりが並んでいるので、個人的には違和感が強かった。
 ビジュアルが強い図鑑だけに、復元の変化による影響も強く受ける。
 過去の大陸配置についても、それなりに詳しい図が載っているので興味深かった。

関連書評
「地球科学」入門 谷合稔
大地と海を激変させた地球史46億年の大事件ファイル ニュートンムック

大人のための図鑑 地球・生命の大進化 -46億年の物語-
大人のための図鑑 地球・生命の大進化 -46億年の物語-
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世界に衝撃を与えた日2〜オーストリア皇太子暗殺とアドルフ・ヒトラーの最期

 第一次世界大戦から第二次世界大戦までを一繋がりにみて、一発の銃弾にはじまり一発の銃弾に終わるとしている。日本人の視点からは同意しがたいのだが、ヨーロッパ中心主義で「世界」大戦をみれば、そういう見方もできるわけだ。

 暗殺されたフェルディナント皇太子は非常に運が悪く、暗殺が失敗して困っている状態の暗殺者に偶然遭遇して射殺されてしまった。22口径の2発で2人を殺害したのだから、確かに実行犯の銃の腕は確かである――不幸なことに。
 皇室にくれべれば生まれの卑しい皇太子の妻ゾフィーにたいするハプスブルグ家の冷たさが葬儀にまで表れていたことに老いた帝国ぶりがよく発揮されていた。
 おかげさまで滅亡だ。

 映画でも有名なヒトラーの最期は、5人の証人からの情報がちりばめられている。最期まで軍に責任転嫁したがるところが全体主義の独裁者らしい。そんな人間でも自殺するまでは死ななかったことが不思議でさえあった。
 ソ連軍の暴行に関連する女性の自殺者数に胸が悪くなった。勝っているソ連の側さえ、むちゃくちゃもいいところである。

関連書評
第一次世界大戦の歴史大図鑑 H・P・ウィルモット
ベルリンの戦い1945 ピーター・アンティル

BBC 世界に衝撃を与えた日-2-~オーストリア皇太子暗殺とアドルフ・ヒトラーの最期~ [DVD]
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北斗燃ゆ 進撃篇 青山智樹

 木製、推進式プロペラの双発機、北斗。そんな架空の航空機を太平洋戦争の戦場に持ち込んだ架空戦記。
 北斗の構造についていろいろ考えられていて興味深い。極端な性能をもっているわけじゃなくて、双発ながら零戦より安い機体というところが凄かった。まさに隙間産業。

 北斗を自主開発した技術者のひとりは海軍に志願して、もうひとりは開発を続けることになっている。
 空戦描写の多い架空戦記をさいきん読んでいなかったので新鮮だった。米軍側のパイロット、ガイ・マイヤーとの間に非常に強い縁ができているところはいかにもフィクションである。

 主人公の箱崎が乗ることになった空母が翔鶴だと知ったときには被弾フラグが立っているように感じられて気を揉んだ。実際に珊瑚海海戦で被弾したが、そのおかげでダメージコントロールに厳しい艦に生まれ変わるようだ。災い転じて福となす。

北斗燃ゆ 進撃篇
北斗燃ゆ 進撃篇
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図説イングランド海軍の歴史 小林幸雄

 アルフレッド大王からネルソンまでのイングランド海軍の歴史が分厚い一冊にまとまっている。簡潔にして臨場感ある海戦描写に、図も加わって読み応えはバッチリ。
 楽しみながらもイングランド海軍の変遷や綺羅星のごとき提督たちについて学ぶことができる。
 多くの海戦において被害人数がしっかり集計されているところが印象的で、近世の戦いであることだけではなく、物事を計算して進める必要がある海軍ならではの文化を感じた。

 一方で海軍の士官の呼称が非常に混沌としている理由も著者はイングランド海軍の歴史的な経緯から詳らかにしてくれている。
 個人的に強い印象を受けた提督はルパート王子で、王党派につきながらも王政復古でイングランドに戻り、今度は海上で活躍した異色の経歴が興味深い。
 もっとも陸軍大佐が海軍の指揮をとる手法は、人材の不足した共和制海軍においてよく行われ、大きな成果をあげていたりする。

 ナポレオン戦争時代のフランス軍も同じ手を使って海軍を補強すれば、違った結果になったかもしれないなぁ。組織全体が揺らいでいるから無理か?ターポリン艦長すら貴重だし。
 フッド提督のカルディアのエウメネスを彷彿とさせる当意即妙の優れた戦術も鮮やかであった。破壊に満ちた戦争の中に創造性すら育んでいる。

 主人公的なネルソンについては、フランス唯一の名提督とさえ言われたサフラン提督が艦長のあつかいに苦労していたことと対比して、自分の意図通りに艦長たちを動かした手腕のすごさが伝わってきた。
 事前の打ち合わせがしっかりしていて、相互に信頼感があるから、困ったらともかく突っ込め戦法でも、突っ込んだ艦長が梯子を外されることがない。
 孤立させずに戦力を使いこなして、戦場での数的優位を確保している。
 個人的には戦術や情勢判断よりも、ネルソンのそんな資質に注目した。

 著者は「England expects that every man will do his duty.」の最も優れた和訳は「皇国の興廃は此の一戦にあり、各員一層奮励努力せよ」だとしているが、個人的には後者は給料以上の働きを求めている点でまったく別物だと認識している。
 個人個人の一層奮励努力に対して、何をもって答えるのか。答えられなかった時に、どうなるのか。
 まじめに考えれば非常に厄介な問題のはずである。長年の苦労の末にイングランド海軍を建設した英国人はそのあたりの機微を熟知して抑制された表現をうまく使っているのではないか。

関連書評

海戦の歴史大図鑑 R.G.グラント 五百旗頭真・監修
海戦 世界戦史研究会 新紀元社
戦闘技術の歴史3〜近世編 AD1500-AD1763
戦闘技術の歴史4〜ナポレオンの時代編 AD1792-AD1815

図説イングランド海軍の歴史
図説イングランド海軍の歴史
カテゴリ:歴史 | 21:29 | comments(0) | trackbacks(0)

世界に衝撃を与えた日09〜マンハッタン計画の始まりとチェルノブイリ原発事故

世界に衝撃を与えた日09〜マンハッタン計画の始まりとチェルノブイリ原発事故

 日本人にはひたすら悪夢の始まりにしか思えない二つの出来事が描かれる。

 エンリコ・フェルミによる世界初の原子炉実験は、限られた計器でよくやったものだと感心するが、安全装置を外して実験を続行はチェルノブイリをみた後に見直せば最悪の行為以外の何物でもない。
 少しずつ限界を探りながら試験をするべきだったのに、簡単にやっちゃえとしてしまえる神経は、どこにでも現れる。
 東海村の事故でもあったし、何度繰り返しても本人の出来事にならないうちは止めることができないのだろうな。

 チェルノブイリ原発事故に一番に駆けつけ、何も知らないまま消火にあたった消防士たちには頭が下がる。
 それだけにアホみたいに実験を続行したジャトロフ技師や事故を隠蔽しようとしたブリューニン所長が許せなくなった。上からの命令を断れないパワハラの横行する組織ではこの手の事故は起こりやすくなる。恐ろしいことである。

関連書評
世界に衝撃を与えた日4〜ヒロシマ BBC ACTIVE

BBC 世界に衝撃を与えた日 09 マンハッタン計画の始まりとチェルノブイリ原発事故 [レンタル落ち]
BBC 世界に衝撃を与えた日 09 マンハッタン計画の始まりとチェルノブイリ原発事故 [レンタル落ち]
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クラゲの神秘(The Mystic World og JELLY FISH) 倉沢栄一

 日本近海に生息している夏と冬のクラゲの姿を1/f音響と一緒にひたすら流す環境映像。
 近場に生息しているのに、やたらとエキゾチックに感じてしまうあたりに、クラゲと日常的に距離を置いてしまっている事実を感じた。

 ひたすら漂っているクラゲばかりじゃなくて、それなりに激しく動いている様子も見られる。
 水面近くの光がクラゲの体も光らせるアングルで撮影しており、なおさら幻想的だった。ただ、画面の左端が丸く影になっていることが気になった。ズームの関係なのかな?

関連書評
小さなプランクトンの大きな世界 小田部家邦・高岸昇

クラゲの神秘 [DVD]
クラゲの神秘 [DVD]
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楽しい植物化石 土屋香・土屋健

 なんとなく国産の個人的なコレクションの本だと勘違いしていた。中身を開いたら古生代からガッツリ世界的な標本が紹介される本だった。
 著者のひとりでもある土屋健氏の黒い本の植物版ダイジェストに感じられる内容だ。

 化石ショップを経営する土屋香氏の視点が入っていそうなコメントは、本屋のポップみたい。少々物欲を刺激する。
 しかし、白亜紀の植物については大半が現生のものが写真で紹介される形なのであった。第三紀以降では化石の方が多いのでイメージが混乱する。
 ディラノサウルスとアノマロカリスの地学会話が何気に情報量が多いもので、ほうほうと感心しながら読んだ。化石の形成が数ヶ月で済む場合もあるのか……。

 さいきんの第四紀ながら大量に紹介された栃木県塩原の化石も強く印象に残った。シノブ(植物)の化石と「忍石」の標本を並べてニヤニヤしたい。

関連書評
石炭紀・ペルム紀の生物 土屋健 群馬県立自然史博物館
白亜紀の生物・上巻 土屋健 群馬県自然史博物館監修
古第三紀・新第三紀・第四紀の生物・上 土屋健

楽しい植物化石
楽しい植物化石
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世界に衝撃を与えた日29〜ボストン茶会事件とインド独立の日 BBC

 二つの大英帝国からの独立を描いたドキュメンタリー。
 アメリカのボストン茶会事件で、お茶の放棄を実行した人々が異常に冷静に見えた。ちょっとした義賊気分だったのかな。元々、一般民衆であったことがプラスに作用したのかもしれない。
 モホーク族の格好をして自由を訴えておきながら、インディアンに対しては過酷な国家を作り出した点は皮肉といわざるをえない。後の解放奴隷の自由を思う詩に自分たちを重ねるところも複雑な気持ちにさせられる。
 交易者のために弁護を試みた人物の勇気には感心した。

 インド独立はボストン茶会事件にくらべると、非常に混沌としている。シーク教徒600万人も独自の国を作らせてもらえれば良かったのに?ジャイナ教徒については言及がなかったな。
 なお、仏教徒は当時はいなくて発祥の地に再移入されたらしい。
 パキスタンの初代指導者であるムハンマド・アリー・ジンナーについて、知ることができて良かった。しかし、Wikipediaの写真と見比べると役者は元気すぎる……。
 最後のインド総督マウントバッテンを持ち上げているのは、イギリスの制作会社だからって理由もあるのかなぁ。無惨な虐殺の現場をみた結論が「さっさと独立しろ」なのも引っかかってしまった。

関連書評
アメリカ独立戦争・上 友清理士
世界の戦争8 アメリカの戦争 猿谷要

BBC 世界に衝撃を与えた日-29-~ボストン茶会事件とインド独立の日~ [DVD]
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兵と農の分離 吉田ゆり子 日本史リブレット84

 タイトルからそんなものはなかったと言われる戦国時代の兵農分離を連想してしまうが、本書であつかっているのは戦国時代から江戸時代にかけて起こった武士と百姓の身分的な分離である。
「士と農の分離」と表現した方が伝わりやすいかもしれない。

 信濃で武田氏につかえた波合備前をとっかかりに、武士になったり、地主になったりと、分かれていった彼の子孫を追う。
 他にも信濃の「元郷主の名主」と「地下(義務を負った農民)」の関係の例をいくつか取り挙げている。

 福島村での名主に対する地下の権利要求活動(義務撤廃活動と言うべきか)では、農民たちが一丸となって活動している。草切と呼ばれる身分の人々のために、他の立場の農民たちも協力している様子に感動した。
 そういう環境を作れたから既得権益に抵抗できたのであって、体制をつくれなかった地域では旧来の関係が維持された可能性もある。
 こういう民衆運動の例は現代においても、もっと注目されるべきかもしれない。

 最初に出てきた波合備前の家系図を著者がまとめているが、討死が多すぎて恐怖を覚えた。あの惨状でよくお家をつなげることができたなぁ。

関連書評
役職・作法から暮らしまで「武士」の仕事 歴史REAL編集部

兵と農の分離 (日本史リブレット)
兵と農の分離 (日本史リブレット)
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