予測の科学はどう変わる?人工知能と地震・噴火・気象現象 井田喜明

 人工知能を応用した自然災害の予測について紹介している岩波科学ライブラリー282巻。
 いろいろと興味深い試みが存在していて、一定の成果が期待できる分野もあるようだ。

 インド洋の津波に関してシミュレーション結果を学習用データに使用する発想に驚いた。AlphaGOが自分同士の棋譜を学習データに使ったことを連想する。
 計算資源の節約にも人工知能は役立つ。そんな表現もできるだろう。

 モンスーンがもたらす降雨の予測もあって、インドは人工知能を利用した研究が進んでいる印象を受ける。あとはイタリアも火山の研究が目立っていたが、研究者はEU内から集まっているのかもしれない。
 著者も指摘しているとおり、結果をえるための流れが人間には追いきれない問題はあるものの、人工知能はさまざまな分野でなくてはならない存在になることが予想できた。

関連書評
日本の地下で何が起きているのか 鎌田浩毅
地震予知を考える 茂木清夫

予測の科学はどう変わる?: 人工知能と地震・噴火・気象現象 (岩波科学ライブラリー)
予測の科学はどう変わる?: 人工知能と地震・噴火・気象現象 (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:科学全般 | 23:40 | comments(0) | trackbacks(0)

明智光秀 東美濃物語〜光秀45の謎〜 籠橋一貴

 明智光秀の出生について著者が追いかけた本。最後の根拠とした資料が周辺自治体の市史に収録された遠山氏の家系図であることは、どう考えたらいいのやら。
 徹底的な検証がされていると信頼するのも自然なことかな。

 明智光秀謀反の動機が、武田氏との戦いに関連して岩村遠山氏が滅ぼされたことにあると考えている点が興味深かった。四国問題よりも直接的に光秀の心理に影響を与えそうではある。

 各自治体提供の写真と、なぜかイタリアのイラストレーターが描いた挿し絵が本書を飾っていた。

関連書評
織田信長〜近代の胎動 藤田達生 日本史リブレット人045
カテゴリ:架空戦記小説 | 20:04 | comments(0) | trackbacks(0)

必見!関ヶ原 監修 小和田哲男 発行 岐阜県

 関ヶ原合戦に絡めて関ヶ原を観光するときに便利なハンドブック。関ヶ原合戦の概要が、それまでの流れまで含めて簡潔に説明されている。また、目立った武将についての説明もある。
 まとめられると島津勢が天下分け目の戦いにおいて私情に囚われる身勝手な連中に思えてきた……小早川勢よりも思い切りが悪いようにすら見えてしまう。島津も最初から迷走しているからなぁ。最後に見せ場を得られなければ、なんと言われていたことか。

 小早川への問い鉄砲はなかったとされると説明しながら、その後の説明では繰り返し問い鉄砲のことが出てくる。
 これでは検証よりもイメージの方が強くなってしまう。
 そもそも関ヶ原合戦の展開自体が疑問をもたれてきているので、流布した通説どおりの方が、関ヶ原の観光にとっては都合がいいのだろうと斜に構えた見方もしてしまった。

 関ヶ原を歩き回るときに巻末資料を利用しなければ、島左近を撃った黒田隊の管六之助の名前がいちばんの収穫かもしれない。

関連書評
戦国の陣形 乃至政彦
フィールドワーク関ヶ原合戦 藤井尚夫

必見! 関ケ原
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カテゴリ:日本史 | 09:15 | comments(0) | trackbacks(0)

セラミックス 第53巻 3月号(2019年)

■ 六古窯の可能性
 常滑と瀬戸は別に並べられているのに美濃はないんだ・・・・・・系統的に瀬戸に重なる部分が大きいとはいえブランディングの問題ありそう。伊万里などは新しい磁器だから六古窯に出てこなくてもわかるが。そして、渥美窯はどうした!?
 越前も、古窯とまでは言えないのか?
 六古窯のマークが漢字の象形文字らしさを存分に活かしていた。

■ 時代と共に変わる産地「信楽」
 信楽では便器を焼いたこともあったらしい。衛生陶器は焼き物の中でもかなり特殊化しているイメージがある。大物で割れやすいから?

■ 焼成,窯
 窯作りから経験されている陶芸家の手記。システマチックなアメリカ。モノとの距離が遠い(と感じられる)韓国。それぞれの違いが手仕事に現れているらしく興味深い。

■ 果てない 食 への好奇心
 焼き物の伝統を継承してきた一族の話?土遊びしている子供の写真をみると、次の世代も大丈夫そうだ。

■ 素材と文様
 陶器の象嵌技法について。それと、よく使われる植物をくわえた鳥のモチーフについて。
 巣作りをするために植物を運んでいるところを、昔の人が自然観察したのだろうけど、東南アジアには雌にアピールするため花を集める鳥もいるなぁ。動けない植物と人よりも遥かに動けた鳥の組み合わせが、いろいろ考えさせたのだと思われる。

■ 瀬戸の中の『民藝』
 瀬戸の採土場は「瀬戸キャニオン」と呼ばれているのか・・・・・・場所によっては水晶が採れるのもここだったかな。博物館の採集会でもなければ入れないらしいが。
 民藝に活路を見出すのは自然なことだが、どこかで新しいユーザーを獲得するルートも作っておかないと先細りになる?

■ 丹波焼と土
 昔の焼き物も凄かった。失敗が許されるゆえの凄さで、良品だけが残っているのか、それともともすれば現代の陶芸家よりも失敗しないコツがあったのか。ぜひ発掘調査が行われてほしいものだ。


■ セメント用耐火物の損耗要因と特性
場所ごとに耐火物に求められる特性が違い、最適な耐火物が選択されてきた。クロムを使わないことへの業界の意識が強いことも分かった。しょうじきリサイクル絡みでかなり無理させられている様子。よく需要に答えてきたなぁ。

■ ほっとSpring International Symposium on Inorganic and Environmental Materials 2018(ISIEM 2018)に参加して
 ベルギーの観光記事だった。うらやましい。アルコール度数の高いビールは別に飲みたくないけれど。
 やはりヨーロッパ人は自己演出に長けているのだろうな。
カテゴリ:工学 | 19:39 | comments(0) | trackbacks(0)

渤海国とは何か 古畑徹

 謎多き渤海の歴史。それゆえにロマンをもって語られたり、政治的背景に影響を受けやすい渤海の実像について、著者なりの視点から迫ろうとした本。
 情報が少ないと言っても中国と日本にそれなりの情報は残っていて、時期によっては流れを追うことができる。韓国に情報が乏しいのは基本的に新羅とは対立関係だったからかなぁ。
 せめて北朝鮮の遺跡を発掘調査できていれば……。

 あの時代を新羅と渤海の南北時代と考える北朝鮮・韓国時代の人々の感覚が興味深かった。どうしても現代を過去に投影してしまうところがあって、避けられないならそれも真実の一面を写す可能性があると利用してみるのも手だろうか。

 唐と渤海の間に紛争が発生していて、沿岸地帯を舞台にした意外と激しい戦闘があったのも興味深かった。
 当時の日本は島国の自国にとっても貴重な戦訓になると思って、調べてくれなかったのかなぁ。

 渤海が北部まっかつに対して行った政策は、威信財を使った日本の古墳時代でもおなじみの政策にみえた。日本も小中華ぶるため、それなりに支出をしていたんだな。
 祝賀のあいさつに出席させるため、無理な時期に渡海させて難破のリスクを冒させていた点は、あらためられてよかった。一方、唐は日本に同じ負担を掛け続けたなら、それも遣唐使廃止の理由につながったのかな?

関連書評
東アジアの中世城郭〜女真の山城と平城 臼杵勲
東アジア世界と古代の日本 石井正敏

渤海国とは何か (歴史文化ライブラリー)
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カテゴリ:歴史 | 22:38 | comments(0) | trackbacks(0)

東海のジオサイトを楽しむ 森勇一

 東海四県のジオサイトを興味深い話題とともに紹介する一冊。東海三県の本があったところに静岡県をくわえて加筆修正したらしい。ジオサイトに関して静岡県は強力すぎる。
 単独でも他の三県に対抗できるのではないか。

 とはいえ他の三県にもそれぞれの見所があって、なかなか興味深かった。
 愛知県にだけ県立の総合博物館がないという悲しい事実も知った。単に箱物を造ればいいだけとは思わないけれど……。

 苗木の花崗岩のことを本書では「苗木石」と呼んでいるが、自分の記憶では変種ジルコンのことを苗木石と呼んだはず。岩石と鉱物でそれぞれに苗木石がある?
 紹介されている中津川市の鉱物博物館では、鉱物の苗木石が紹介されていたと思う。

 なお、考古学に深く関わってきた著者の経歴も異色に感じられておもしろかった。

関連書評
地質と地形で見る日本のジオサイト―傾斜量図がひらく世界― 脇田浩二・井上誠

東海のジオサイトを楽しむ (爽BOOKS)
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カテゴリ:地学 | 17:16 | comments(0) | trackbacks(0)

新版 縄文美術館 写真 小川忠博 監修 小野正文・堤隆

 縄文時代の出土品は幅広い。ひとつの遺跡、ひとつの地域、ひとつの時代に固まっていないこともあるのだろうが、同じ縄文土器でも非常に多彩なものが収録されていて感心した。
 他に例のない「作品」も多くあることに注意が必要だが、同時に土器以外の大半が朽ちてしまった生活用品があったことも意識すれば、それなりに物のある生活をしていたのかもしれない。
 これなら定住生活にもなると納得する。

 豪華な土器は特別なときだけで、普段は質素な土器を使うような発想がなかったらしい点が気になる。おそらく、自分で作ったものだから、そういう使い方になるのか?

 モースが縄文土器の命名者であったり、土器に残った指紋から現代の指紋鑑定のヒントをもたらしていたり、改めて偉大さをみせつけていた。時代もあるのかもしれないが、凄い人だ。

関連書評
ここまでわかった!縄文人の植物利用 工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館 編
日本考古学の原点〜大森貝塚 加藤緑
縄文の女性シャーマン カリンバ遺跡 木村英明・上屋眞一

新版 縄文美術館
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カテゴリ:日本史 | 20:05 | comments(0) | trackbacks(0)

動物たちの地球大移動 ベン・ホアー著 別宮貞徳 監訳

 移動という戦略をとる大小の動物たち。
 彼らの壮大な旅をそれぞれ追いかけていく。

 北極から南極へ、南極から北極へ旅を繰り返すキョクアジサシは頭がおかしい。本当に白夜依存症でおかしくなっているのかもしれない。さすがに空を飛べる鳥類の機動力はすさまじく、体重数十グラムの小さな鳥ですら驚くような渡りをするものがいた。

 海中にあってはクジラたちが遠距離を旅しているが、主な目的は安全な場所での出産にあるらしい。数ヶ月食事をしないなどの驚くほどの不便を堪え忍んでいる動物が多かった。
 オキアミの上下移動は規模が大きすぎて海水循環に影響を与えるし、アメリカイセエビが隊列を作って深海へ歩いていく様子はユーモラスである。

 陸上の歩く動物たちは人類によって移動を制限されてしまっている場合が多くて、アフリカは本当に貴重な場所になっていた。あとは北極圏や中央アジアくらいかなぁ。
 動物の移動をウォッチングする適地が紹介されているものの、欧米視点の本なのでアジアの適地はほとんど見あたらない。そこがちょっと残念だった。

関連書評
野鳥フィールドノート 水谷高英
子どもと一緒に覚えたい 野鳥の本 山崎宏・加古川利彦

ビジュアル版 動物たちの地球大移動―空と海と大地をめぐる神秘のライフ・サイクル
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カテゴリ:生物 | 15:44 | comments(0) | trackbacks(0)

月の地形観察ガイド 白尾元理 誠文堂新光社

 地球上から月の地形を楽しむためのガイドブック。自分の目で見て楽しむことへの強い意識が感じられて、バーチャルへの依存を見直したくなった。
 もっとも著者は月探査機の成果をみて楽しむことも否定はしていないどころか勧めている。さらには月の地形に類似している地球の地形を見に行くことまで勧めているので、ともかくアクティブである。
 東京からなら伊豆大島まで日帰りできることを知った。

 月の地形は月齢ごとと、部分に分けて、後者でやや詳しく解説されている。
 成因についての議論も押さえているので、観察しながら自分なりの仮説を立ててみるのも楽しそうだ。
 常に一方を向けているために、秤動への観察者のこだわりがかき立てられていることを感じる……でも、裏面が存分に観察できるなら観察したいよなぁ。

 まだ月に火山活動は残っているのか、微妙な着色は溶岩の違いによるもの、など時折「生きた月」を感じさせてくれることがあった。

関連書評
月のきほん 白尾元理
双眼鏡で星空ウォッチング 第3版 白尾元理
ビジュアル図鑑 写真で比べる地球の姿 ナショナルジオグラフィック
火山全景〜写真でめぐる世界の火山地形と噴出物 白尾元理

月の地形観察ガイド: クレーター、海、山脈 月の地形を裏側まで解説
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カテゴリ:天文 | 21:57 | comments(0) | trackbacks(0)

本のことがわかる本2〜知っているようで知らない「本」 能勢仁

 ユネスコによれば49ページ以上の不定期刊行物が本らしい。すなわち、本のことがわかる「本」を名乗っている本書も32ページなので、ユネスコのいう本の定義には含まれないことになる。
 まぁ、絵「本」においては49ページを超えることの方が稀だし、孫子だって解説文がなければ49ページ未満に収まるはず。だから、本としての価値が減るとも思えない。
 ひとつの便利な基準として覚えておきたい。

 ページ数表記を「ノンブル(フランス語)」と呼ぶことについて、しつこく掘り下げている点が印象的だった。英語でナンバーって言えばいいのは、確かに!
 いっぽうで、「ルビ」については説明していない。たぶん、語り尽くされたと感じているのだろう。

 最後は「クールジャパン」の説明にきて、ちょっと鼻白んでしまった。外から言われる分にはよくても、自分たちで言うことじゃない気が……それを巧く言うブランディングこそが、これからの時代は大事なのかなぁ。

見てみよう!  知っているようで知らない「本」 (本のことがわかる本)
見てみよう! 知っているようで知らない「本」 (本のことがわかる本)
カテゴリ:雑学 | 21:59 | comments(0) | trackbacks(0)
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