いくさ物語の世界――中世軍記文学を読む 日下力 岩波新書1138
2023.10.27 Friday | by sanasen
「平家物語」に代表される日本の軍記物作品。中でも「平家物語」に加えて「保元物語」「平治物語」「承久記」の(成立年代が非常に近いとされる)4作品に注目して、これらの作品が描き受け手に伝えようとしてきたものが分析されている。
歴史研究とは違って、古くてより史実を反映していると考えられるバージョンが重視されるとは限らず、多くの口に語られて変化した流布本の内容から軍記物語に関わった人間の考えが読み取られていて興味深い。変化した時期が細かく分かれば、その変化の積分が時代を表すとか、どうでも良い部分の浮動変化の蓄積から時期を計算できないかとか、変なことまで考えてしまった。遺伝子じゃないんだから無理かな。
日本の軍記物語とヨーロッパの叙事詩が比較されていることも興味深かった。仏教・神道とギリシャ神話・キリスト教の違いも背景にあるのだろうか。後者をセットにするのも無理があるが。
戦争には無数の死別が待っていて、夫婦・親子・兄弟・主人と従者などの関係が強く問われる。一緒に死のうと約束していたのに果たせない組み合わせもあれば、しっかり果たして名を遺すがそれも虚しいと言われる組み合わせもある。
重盛と宗盛、宗盛と知盛はよくよく対比に使われている。一方で頼朝と義経あるいは範頼の源家の兄弟が本書で話題になるほどに比べられない(義経と範頼は天才と凡人で比べられていそうだが)のは物語中に死に際がないせいか、源氏への遠慮からか。
承久の乱以降の成立なら実力者は北条氏でそれほど遠慮する必要もなさそう――実際に保元物語や平治物語では題材にされているわけで、実際どうなのかなと思った。為朝は玩具フリー素材にされすぎ!
歴史研究とは違って、古くてより史実を反映していると考えられるバージョンが重視されるとは限らず、多くの口に語られて変化した流布本の内容から軍記物語に関わった人間の考えが読み取られていて興味深い。変化した時期が細かく分かれば、その変化の積分が時代を表すとか、どうでも良い部分の浮動変化の蓄積から時期を計算できないかとか、変なことまで考えてしまった。遺伝子じゃないんだから無理かな。
日本の軍記物語とヨーロッパの叙事詩が比較されていることも興味深かった。仏教・神道とギリシャ神話・キリスト教の違いも背景にあるのだろうか。後者をセットにするのも無理があるが。
戦争には無数の死別が待っていて、夫婦・親子・兄弟・主人と従者などの関係が強く問われる。一緒に死のうと約束していたのに果たせない組み合わせもあれば、しっかり果たして名を遺すがそれも虚しいと言われる組み合わせもある。
重盛と宗盛、宗盛と知盛はよくよく対比に使われている。一方で頼朝と義経あるいは範頼の源家の兄弟が本書で話題になるほどに比べられない(義経と範頼は天才と凡人で比べられていそうだが)のは物語中に死に際がないせいか、源氏への遠慮からか。
承久の乱以降の成立なら実力者は北条氏でそれほど遠慮する必要もなさそう――実際に保元物語や平治物語では題材にされているわけで、実際どうなのかなと思った。為朝は