連合艦隊西進す3〜スエズの彼方 横山信義

 紅海から地中海までスエズ運河を突破せよ。スエズからポートサイドまでの攻防が描かれる。
 重戦車ティーガーに遭遇してピンチに陥るが航空攻撃で撃退。イタリアの勇敢な魚雷艇部隊も航空攻撃で壊滅させる。困った時は航空攻撃でゴリ押し。独伊が制空権を割とあっさり渡してくれたおかげで勝てている。空母12隻で攻めたからなぁ。独伊には空母が一隻もないことを考えると差が大きい。イギリスから接収した空母はある?

 イタリアのリットリオ級戦艦が出てきて戦艦長門・陸奥と砲撃戦を演じた。主砲口径の関係から砲撃力では長門級が上だと登場人物は思っていたが、リットリオ級の38センチ砲はやたら初速が速くて強力だったはず。実際、兵器解説のほうでは40センチ砲に匹敵すると書かれている。

 この作品のイタリア軍は特別に強くはないが真面目に戦って、戦力としてカウントされる働きをしている。よく小艦艇ほど勇敢と揶揄されるが、リットリオ級も一度は消極的な砲撃戦をしたものの二度目は夜戦ということもあって近距離で長門級と撃ち合った。
 地上陣地を砲撃した金剛級にも徹甲弾を温存させて海戦に参加させれば楽に戦えたんじゃないかと考えちゃいけないのかなぁ。担当がハッキリしている方が戦いやすいのは確かだが、戦力的にもったいないと感じた。

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カテゴリ:架空戦記小説 | 14:58 | comments(0) | -

パラドックス戦争・下 ドゥームズデイ 大石英司

 上巻で火星のシーンに「ドゥームズデイの核爆発」が出てきたときには有名な映画のシーンか何かだと思っていたが、分岐した未来で起こっていたことだったとは。それともまた異なる北朝鮮による核攻撃シナリオでの日米韓三カ国を襲った悲劇も描かれた――あ、その前に北朝鮮もNGADによるトールハンマーの核攻撃を4発浴びていた。
 さらっと日本では1200万人が死亡したと書けてしまうのが小説の力だな。韓国が700万人で済むのは人口比で見ているのだろうけど、ソウルへの人口集中ぶりを考えると怪しく感じてしまう。撃ち込まれるのは150キロトンの核弾頭だからってことかな。

 未来において月面から「オカリナ」が忽然と消えたのは、原田萌のザックの中に移動したってことで良いのか。シミュレーション仮説の話もあって混沌としている。最後の説明でみんな理解していることにビックリした。
 レスリングの各務自衛官(フォール)はもうちょっと出番が欲しかった。女性隊員4人と合わせて今後のサイレント・コアでの活躍が期待される?
 AIのナナはジョーカー的だが再登場あるのかな。原田夫婦の娘として生まれてくることが確定したからAIとしてはもう出てこないかも。

 おそろしく高価なB-2爆撃機がバタバタと撃墜される意味でも贅沢な話だった。一方の日本は「もがみ」をフル兵装で進水させることができなかったせいで……世知辛いものだ。空母に予算を取られすぎ何じゃないの?と一応言っておく。この世界の場合はサイレント・コアに使っているお金も凄そうだが。

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カテゴリ:架空戦記小説 | 05:12 | comments(0) | -

パラドックス戦争・上 デフコン3 大石英司

 火星における未知の知的生命体遺跡の発掘にもサイレント・コアが絡んでくる……未来と現在を行き来しながら何かが描かれているが、まだ上巻では繋がりが完全には明かされていない。火星で発見された「オカリナ」によって超高速通信が行われることがパラドックスを起こして、現在に未来の技術を逆流させている?
 まぁ、わけが分からないけど新しいことを描いている感じでおもしろい。ChatAIでシンギュラリティが現実味を帯びた時期だからこそ楽しめる「旬」の作品なのかもしれない。本書の執筆にもAIは活用されたのかな。

 原田小隊長の中国人嫁、原田萌がすごい天才でヤバいAIまで作ってしまっている。最初は何を言っているんだと思っていたが、ガチで未来人並の人間だった。
 でも、「ガーディアン」の狙いは原田萌じゃなくて、誘拐にただ巻き込まれたと思われた5歳児だった……どういうことなのか。完全に彼女の行動を読んでいて、あえて幼児の方を狙っていると見せかけて同行を引き出した?

 中国の違法警察署がオタクショップに本気を出している描写が困ったことに面白い。罪のない人間を誘拐して、ドンパチで(違法警官に)死人まで出しているから笑い事じゃないが。
 カラー挿絵でいろいろ解説のあったサイレント・コアの隊舎がめでたく襲撃を受ける舞台になっていた。オンボロ隊舎よりも今回挿絵の特殊車両の方が居住性良さそう?メグとジョーは名前が出てきたけれど、道板で繋がるはずの「ベス」の存在は謎である。
 弾道弾攻撃を警戒してノマド生活にでも入るのかなぁ。連合艦隊司令部が陸に上がった動きが通信機器の高性能・小型化した現代においては逆行しそう?

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カテゴリ:架空戦記小説 | 21:02 | comments(0) | -

連合艦隊西進す2 紅海海戦 横山信義

 日英連合軍はインド洋に進出してくるUボートを防ぐため紅海の出口にあるジブチを制圧。連合艦隊とイギリス艦隊はマンデブ海峡に防衛線を張る。
 レッドサンブラッククロスではソコトラ島が攻防の焦点になったけれど、本作ではイギリス兵によってあっさり制圧されている。現実にも海賊対策で海軍基地がたくさん設けられているジブチが重要になっている。レッドサンブラッククロスのソコトラ島はシチリア島の戦いになぞらえるための都合もあったのかな。

 本書で描かれる対潜部隊とUボートの戦いは輸送船が絡んだ場面のない非常に奇妙なものになっている。そしてUボート部隊は恐ろしい損害を出し続けている。もったいない。日英側からみればおかげで助かるが。
 水上艦隊のマンデブ海峡突破作戦もUボートが連携して動けばデューク・オブ・ヨークを沈めることが出来たかもしれないのになぁ。鹵獲フランス戦艦が単横陣で逆T字戦法を使ってくるところに、横山信義先生のロンメルを活躍させたシミュレーションを思い出した。
 日英艦隊の地形を活かした戦い方によって今度は成功しなかったが……ちょっとサラミスの海戦っぽいと思った。

 北では独ソ戦が派手に展開している。エジプトを防衛するロンメルの部隊まで引き抜かれるなら地中海への道も拓けてくるな。アメリカが戦車を日本に売ったことも大きい。両方と貿易するとしながら、現状では日英側に有利に働いている印象がある。
 最後までそうなるかは?

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カテゴリ:架空戦記小説 | 00:27 | comments(0) | -

連合艦隊西進す1〜日独開戦 横山信義

 独ソ不可侵条約の衝撃により独伊との同盟を諦めた日本は英仏に接近して第二次日英同盟を結ぶ。しかし、ナチスドイツは第二次バトル・オブ・ブリテンで勝利して、イギリス本土への上陸を成功させる。
 インド洋に逃げてきたイギリス海軍と王室を迎え入れた日本が、ドイツと戦火を交える歴史シミュレーション。

 さらりと日中戦争が防止されていたり、アメリカの大統領が共和党のデューイだったり、アメリカ空軍が既に設立されていてトップがリンドバーグ御大だったりする。改変点が多い。
 いきなり赤城と加賀がUボートに撃沈されて南雲司令長官も行方不明、幕僚も更迭と組織が変わる機会が与えられている。乗員は7割が生き残ったので搭乗員不足に苛まれるまでは、まだまだ時間がありそうだ。
 赤城と加賀の撃沈を総統自ら称賛していたが、最終的な影響はドイツにとってマイナスになるだろうな。

 中立のアメリカが空母サラトガとレキシントンを、赤城・加賀の代わりに売ろうとしてくる。急場には要るけど将来的には要らない絶妙な感じ!でも、ダメージコントロールの技術も吸収できるから買いなのは間違いないな。CICも教えてくれるのかなぁ……流石に米海軍に反対されそうだが、英米に接近してからそれなりに時間が経っているので何とかなるかも。

 ソ連とドイツの戦いも史実より遅く1942年になってから開始されている。ドイツからみると日本が反対側からソ連を攻めることをまったく期待できないから、開戦が遅れたのかもしれない。どちらから攻めたとも書かれていなかったが。

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カテゴリ:架空戦記小説 | 07:11 | comments(0) | -

荒海の槍騎兵4〜試練の機動部隊 横山信義

 なかなか渋い展開だ。ついに日本の空母もやられる時が訪れ、赤城・加賀・翔鶴・隼鷹が沈没した。他はともかく隼鷹がやられるとは!
 対する米軍はエセックス級を一隻も失っていなかった。まぁ沈めるのも難しいからインディペンデンス級を狙う結果になって確実に沈めたのは怪我の功名になるかもしれない。
 史実通りの新型機対決は零戦が更新できていない時点で苦しい。
 スペック解説によればヘルダイバーは2000ポンド爆弾や魚雷が積めるとあり、本文では搭載量はドーントレスと変わらないとある。どっちなのやら。
 バージョンがズレているのかもしれない。

 トラック沖の夜戦では最新鋭の戦艦アイオワが沈む以外な展開になった。潜水艦部隊が実に上手く利いてくれたなぁ。
 吉田善吾軍令部総長はあまり架空戦記に出てこない名前だと思ったら現場を振り回す結果を招いたクセ者だった。

 ノルマンディー上陸作戦が失敗している歴史改変が非常に大きい。ソ連が勢力拡大する脅威で日本の講和に少し可能性が見えてきた。

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カテゴリ:架空戦記小説 | 07:39 | comments(0) | -

第三次世界大戦2〜連合艦隊出撃す 大石英司

 イギリスから購入して回航されてきた空母「ほうしょう」を巡る戦いが繰り広げられる。F-35戦闘機のポテンシャルを徹底的に使って、長駆襲来する中国軍の航空部隊を迎え撃つ。
 大量のミサイルを抱えてステルス性がなくなった問題を一時的に着陸することで解決したのは凄いアイデアだ。VTOL機とヘリパイロットの組み合わせが産んだ戦術という説得力も持たせていた。
 その後もマラッカ海峡で工作船が仕掛けてきたり、日本の大動脈と言われる航路を体験する気分で読めた。パナマ船籍のタンカーやインドネシアの島にまで果敢に乗り込んでくるサイレント・コアが恐ろしい。
 羌三佐が白人傭兵に突きつけた二択も残酷だった。インドネシアの刑務所を知らない身としては、そっちで生き残り状況が変わるのを待つ判断を選ぶけれど、死んだほうがマシな扱いが待っているのかなぁ。

 後半では豪華客船に乗った中国軍部隊がハワイを奇襲攻撃。しかも、占領を狙う。そんな遥か遠くでは航空支援が期待できないだろうに、よくやるものだ。ほとんど特攻ではないかと感じる。
 まぁ、サウジアラビア革命でてんてこ舞いのアメリカ政府は更に対応を余儀なくされて混乱の度合いを深めるだろうが、その隙に台湾を落とすくらいはできないと割に合わない作戦だ。

 アメリカ人の戦意を甘く見ているところやレーダーに映ったのに奇襲を許してしまったところなど、史実の真珠湾奇襲攻撃のパロディを感じた。

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カテゴリ:架空戦記小説 | 12:32 | comments(0) | -

大東亜の矛―太平洋封鎖戦― 林譲治(感想2回目)

 これって、執権が最終的勝利者なのかな。日本植民計画を放棄しつつ、妻と自分の遺伝子的な子供を女王の地位にまで押し込むことが出来た。本来であれば宰相にすることが限界であったものを。
 魁姫を取り立てようとしていたのも、実は血が繋がっていたからと考えると能力主義的には絶望感もある。もちろん、執権本人は能力的にも適性は十分と言うだろうけど。

 ジャイナはこちらの世界に残ることを選択したらしい。あるいはこっちで育てた行政のわかる人材を向こうに送り込むことも考えているかもしれないが、流石に魁姫が乗ってくれないか。
 元住田機関の憲兵たちは、それぞれの相棒と人生と共にしたのかな。住田以外は――彼は妻がいる身だからしょうがないね。実名くらいは教えてやれと思わないでもない。

 倭国がこちらに送り込んできた兵器は意図的に性能を下げた物だと思っていたけれど、水中軍艦「轟天」の経緯を考えると、そうとも言い切れないのかな。数世代前の通常動力潜水艦の性能なら向こうの世界でも、あのくらいが普通と考えて良さそうだ。

 富士山基地と艦隊の戦いはあれで富士山の山容が変わったりしたら、日本人にはたまったものじゃないな。これまで働いてきた愛着のある軍艦たちが次々と沈んでいくのは少し寂しかった。

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カテゴリ:架空戦記小説 | 07:07 | comments(0) | -

覇権交代8〜香港ジレンマ 大石英司

 死亡フラグクラッシャー原田一尉!特殊部隊の小隊長がメディックをやっている意味はここにあったのか。
 いかにも悲壮感を漂わせて命懸けの攻撃に出る雰囲気だった敵部隊の指揮官の一人を救命してのけた。結婚関係の話をしていたのはフラグっぽかったのに、結婚するフラグだけにして回収したし。
 紫外線での大量のドローン攻撃は、イスラエルの技術者がたった一晩でやってくれました能力で防がなければアウトだった。市街地を防衛する都合だけを考えればドローンの飛ばしやすさを考えて街路樹などを植えることは有効かもしれない――現実の日本社会では街路樹は排除される傾向にあるけれど。送電線なんかも照準の邪魔になるのかな。

 韓国大統領は専用機で青島に脱出する途中で謎の失踪……林彪事件かな?2020年3月の発行だが、プリゴジンの末路みたいでもある。臨時政府の首班は情報機関の人間だから、属性だけ切り取るとプーチンっぽいし。

 WEBライターの澤井芽惧は民間人なのに看護兵としての仕事をしすぎていて、そっちが知られれば誰も何も言えない気がした。それとこれは別にした方が健全なのだろうけど。
 彼女のおかげで命を救われた人間も一人や二人じゃないだろう。これだけ大きな貢献をしても、WEBライターの日常に戻っていくのかなぁ。良いことのような報われないような――日本全体が豊かになる確信があれば前者と思えたはずで、やはり覇権交代の影がここにも燻っている。

 香港絡みでは司馬に英国がボロクソに言われていたのに笑った。作中ではちゃんと義理を果たしたが史実ではどうなることか。

 全体的にアメリカをアテナイ、中国をスパルタにした現代のペロポネソス戦争みたいな印象があった。日本の存在がデロス同盟との大きな違いで、アメリカが鞭、日本が飴になることで韓国や中国を懐柔したオチと言えるかもしれない。現実の日本にもこんな能力があったら良いなぁ……。

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カテゴリ:架空戦記小説 | 12:27 | comments(0) | -

覇権交代7〜ゲーム・チェンジャー 大石英司

 ゲーム・チェンジャー兵器が大集合で本命が分からない。変える変えると言っても戦争は複雑な兵器システムの上に成り立っているので、そう簡単ではない。特に新兵器の数が少ない間は――ということも示している話。
 無人機「暗剣」の存在を巡って、最初は爆撃で基地ごと吹き飛ばす計画だったのが、デルタフォースからの横槍で基地を強襲して機体を奪取するリスクの高い計画に変わった。ついでにサイレント・コアも巻き込まれるのはお約束……さすがに出番ないと思ったのだが。
 中国大陸に自衛隊は足を踏み入れない――海南島は島だからセーフ――って理屈は特殊部隊のサイレント・コアには適用されないのかな。暗剣とその技術者の強奪によって技術開発競争でアメリカが中国に追いすがるのは、ナチスドイツのロケット技術者を攫うみたいな話かもしれない。昔からやってきたこと?

 釜山ではモラルに与える悪影響の点でも極めて厄介な存在だった韓国の潜水艦がついに撃沈された。さらにアジテーターの釜山市長も解任されて副市長が後釜につく。大統領府は求心力をすっかり失っている様子だから倒されるのでなければ、北朝鮮に併合されるくらいしかない?
 海南島の韓国軍は大量の血を流したのに、このままだと報われない結果になりそうだ。
 曲がりなりにも進撃している日米軍や祖国を防衛している中国軍よりも先に韓国軍が参っていたのは納得できた。あと、気候に慣れないのもあるかもなぁ。自衛隊は先にハワイや南シナ海の島を経験しているみたいなので韓国軍より身体が慣れている。

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カテゴリ:架空戦記小説 | 09:11 | comments(0) | -
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