岩合さんの好きなネコ 岩合光昭

 鹿児島から青森まで、日本各地のネコを撮影した写真集。それぞれ人々の生活に密着して、いろいろな表情をみせてくれる。
 野生動物には考えにくい適応力の高さもネコの魅力だ。

 ふつうの名前のネコがいる一方で、「デブ」君や「タヌキ」がいることには驚いた。本当にタヌキの写真が出てくると思ってしまった。
 実際に出てきたネコ以外の動物は、柴犬とロバ、そしてヒトくらいだったな。

 ネコの行動に対して著者が解釈を提示しているが、それも一つの考えにすぎず、ネコの考えていることは誰にもわからない。
 そこもネコの良さである。

関連書評
ネコに金星 岩合光昭
野生動物カメラマン 岩合光昭

岩合光昭写真集 岩合さんの好きなネコ
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地質学者が見た風景 坂幸恭 築地書館

 地質学者である著者が世界中で撮った写真を、自らカラーイラストになおした作品集。個人的に実物から目が離れてしまっている点で「スケッチ」と呼ぶことには抵抗がある。
 現場で肉眼で描いたものに比べれば情報的な劣化は避けられない。代わりに海外の風景であってもたくさん見ることができる。車窓から撮影した一枚というものまである。

 地域ではケニアやアイスランドの割合が比較的多く、著者が長くフィールドとしてきたことが分かる。北ヨーロッパとは異なるアイスランドの氷河地形は興味深かった。
 新しい溶岩相手ではU字谷も浅くなるらしい。
 あと、トルコと中国の絵も多い。トルコではクルド人のレジスタンス組織が活動していて、中国では監視の目があって、ちょっと物騒だった。シリア国境などは今、近づけるのだろうか。

 成因でイラストが並べられているため、海外の地形と日本の地形がほぼ同時に観察できる点も興味深い。同じ地球上であり似たような機構が働けば似たような地形が生まれることが分かる。

地質学者が見た風景
地質学者が見た風景
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茶のある暮らし(my life in chanoyu) 千宗屋

 三千家のひとつ、武者小路千家による2年分のインスタグラムを正月から始まり12月まで月ごとに一冊の本にまとめたもの。
 歴史ある茶道とインスタグラムの組み合わせが面白い。日本をエキゾティックに見せる点で相性がよさそうだ。
 しょうじき日本人からみてもエキゾティックなところがあり、近代に入ってから生じた日常生活の強烈な変化を意識せざるを得なかった。京都には京都の時間が流れている?

 著者は東京や名古屋、海外でも活動していて、各地の茶室がみられた。また、月の最後に和菓子がまとめられている。とっても美味しそうだ。価格もたいしたものだろう。
 著者の号、随縁は陶芸家の荒川豊蔵が座右の銘としていたものでもあり、何らかの関係がありそう。荒川豊蔵の弟子である加藤孝造との交流も載っているし。

茶のある暮らし  千宗屋のインスタ歳時記 (講談社の実用BOOK)
茶のある暮らし 千宗屋のインスタ歳時記 (講談社の実用BOOK)
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鬼才 月岡芳年の世界 浮世絵スペクタル 加藤陽介

「血みどろ」絵師あるいは「最後の浮世絵師」とも呼ばれる月岡芳年の作品をテーマに沿って多数収録した本。本書初公開の絵もあるそうだ。
 最初に「血を描く」をもってきて、血みどろ絵の強烈なパンチを放ってくれた。これが娯楽になったというのだから、当時の人々は感性が違う。評価している最近の人とも、少しズレがあるかもしれない。
 血みどろ絵は芳年にとって一時期の表現であって、しかも過渡期的な作品であったことが、熱心に説明されている。

 その後は戦争画はともかく美人画や静的な武者絵など、方向性の異なる作品も描いている。
 ただし、根本の雰囲気は変わらず、コメントを寄せている山口貴由先生が言われるとおり、一発勝負の緊張感に満ちていた。だから長時間一枚の絵で人を引きつけられる。
 庶民が浮世絵を買うために払ったお金に見合う時間の「暇つぶし」に耐えられる作品を提供しているとも感じられた。

 個人的に惹かれた作品は月百姿の武田信玄。駿河湾ごしに月と富士山を見物している戦国大名の顔はごく一部しか描かれていないのに、姿勢と背中が人物を雄弁に物語っている。
 南朝の武将や天皇そのものが多く題材になっているところは、やはりに明治を生きた絵師であった。

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鬼才 月岡芳年の世界:浮世絵スペクタクル (コロナ・ブックス)
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忘れられない祈りの聖地 富井義夫

 世界各地のさまざまな宗教の聖地を撮影した写真集。
 山上の修道院や岩をひたすら掘り下げて造った寺院など、信仰にかける情熱から生まれた経済的合理性のない建造物が楽しめる。

 エチオピアのラリベラにある岩の聖堂群は、風の谷のナウシカに出てきたシュワの墓所の元ネタかな?
 岩を真下に掘り下げた構造だから排水の問題が気になって気になって気になって――丘の上にあるみたいだし、低地まで横穴を掘って排水しているのだろう。現代ならポンプも使えるが、昔の状態が気になった。

 岩の掘り下げではインドのエローラーも取り上げられている。仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教のあわせ技。これぞインドらしい寛容といわれるが、中国の懸空寺は仏教・道教・儒教の三教合一をやっている。こちらは寛容とは別物なのだろうか。

 キリスト教の施設では正教会とカトリックが多くてプロテスタントの影が薄いところも印象的だった。素朴でもカメラ写りのいい教会はあると思うけどなぁ。「聖地」にはなりにくいのか?

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メッカ−聖地の素顔− 野町和嘉
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忘れられない祈りの聖地 祈りの力により存在する美しき場所
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世界のタワー〜Towers〜

 タワーにはビルも含まれるとのことで、世界中の高層建築物写真をあつめた写真集。結果的に、いきおいに乗っている国や地域がみえてくる。
 東側諸国の実用性一辺倒のタワーにも独特の雰囲気があってよかった。

 パナマのレボリューションタワーをはじめとする捻った構造のタワーに一定の人気があることが面白い。内部にいる人間は方向感覚が狂わないのかな。決まった階しか利用しないか。

 中国の広州テレビ塔が綺麗でうらやましい。広州テレビ塔みたいなLEDライトで証明されたタワーはそんなに気にならないのに、アイスランドのイマジン・ピースタワーは光害が気になってしまった。周囲が暗くて天体観測やオーロラ観測に良さそうだからかな。

 日本のタワーはやや古びたものもありながらも、スカイタワーが出てくることで、それなりに締められていた。
 表紙にもなっている世界一高いブルジェ・ハリファの偉容よりも、人口島につくられたブルジェ・アル・アラブの成金趣味っぷりに震える。

関連書評
ブルジュ・ハリファ〜世界一高いビルへの挑戦
建設中。 勝田尚哉

世界のタワー
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雪の手紙 片平孝

 中谷宇吉郎の名言をタイトルにした雪の図鑑的な写真集。
 氷河以外は日本国内で撮影された写真と思われる。
 締めを飾る蔵王でのアイスモンスターの写真は圧巻で、雪の撮影にかける著者の意気込みが伝わってくる。1973年と2008年の月ごとのアイスモンスター比較写真がすごい。冬なのに湿度100%の風に晒されるのは日本の雪国特有の過酷さであろう。

 大気汚染や地球温暖化がかなり気になっているようで、あとがきからは少々悲観的な雰囲気も伝わってきた。
 空からの手紙には感情がまったくこもっていないのに、手紙を受け取る側は感情をこめて読まずにはいられないのである。

 雪紐が本当に紐になって空中でつながっている写真がおもしろかった。雪国の人しか見たことのないような現象もたくさんあるのだな。

関連書評
雪と氷の図鑑 武田康男
雪崩教本 雪氷災害調査チーム&雪崩事故防止研究会
フィールドの生物学19〜雪と氷の世界を旅して 植竹淳

雪の手紙
雪の手紙
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破壊破砕解体写真資料集 ジェイズパブリッシング

 ひたすら建物の破壊風景を撮影した写真集。解説文がちっともなくて写真を眺め続けるだけで終わった。
 重機は先端しか写っていない場合も多いため、工事の全容がわかる感じでもない。これで「写真資料集」になるのかなぁ?アクション漫画などで破壊された建物が建てたい場合はなるのかもしれない。自分は工事関係者への資料を想像していた。

 破壊する場合にも鉄筋コンクリートが手強く、鉄筋が引きちぎれずにコンクリートからモジャモジャと生えた写真がたくさん写っていた。コンクリートの大きな破片が鉄筋に引っかかっている状態などは下に落ちてきそうで怖い。
 重機の先端に水を掛けているシーンは埃の拡散を防ぐ目的があるのだろう。でも、地面に落ちた泥が乾いて強風をうけたら結局舞い上がるのでは?高いところから飛び散るよりはマシか。

関連書評
建設中。 勝田尚哉

写真資料集 解体・破砕・破壊
写真資料集 解体・破砕・破壊
カテゴリ:写真・イラスト集 | 22:59 | comments(0) | trackbacks(0)

世界の名景〜地中海の光ベスト50 渋川育由

 エーゲ海から西周りに地中海を一周して、名景をたどっていく写真集。観ているだけで地中海一周の観光旅行をした気分になれてしまう。
 なんといっても地中海の景色を特徴づけるのは、街の白と海の青であることが良く分かる。そこに車などの小物がパステルカラーで配置されており、まるでミニチュアの中に迷い込んだようだ。

 写真の構図も優れたものが多くて、街を手に取る気分で眺められた。シチリア島のラグーサの写真など、騙し絵を観ている気分になってしまう。
 海辺に建設されていることから、斜面にある街が多く、死角なく一望できる感覚が気持ちよい。
 南ヨーロッパにとどまらず、北アフリカもしっかり押さえてくれている点も好感がもてた。アルジェリアのガルダイアはなんとも気持ちのよい街だ――道に迷ったらひたすら上へ向かえというアドバイスが面白かった。

 街の風景だけではなく、いくつかの祭りも紹介されていて、ヴェネチアの仮面とスペインのトマト合戦はお約束の感じ。ニースの花合戦は小林幸子氏が参戦できそうな迫力があった。

 締めはキプロス島で、美しい絶景を眺めていると地中海はひとつだと思えると語っているのは、しょうじき皮肉気味に響いた……肝心のキプロスが南北に分裂してるんですけど。

地中海の光ベスト50--世界の名景
地中海の光ベスト50--世界の名景
カテゴリ:写真・イラスト集 | 22:40 | comments(0) | trackbacks(0)

世界の美しい本屋さん 清水玲奈

「いつか行きたい世界中の名店ガイド」ということで、日本の書店はひとつも取り上げられていない世界の美しい書店写真集。
 あのTSUTAYA図書館が志向しているものが、おぼろげながらわかった気がしないでもなかった。カフェが併設されている本屋がけっこう多い。中には本を置いたBARというお店まで紹介されていた。
 それ以上に元々は別の建物であったものを本屋に改装したパターンが印象的で、その構造をいかした面白い陳列が試みられている。駅舎を本屋に改装して、だんだんと面積を広げている「バーター・ブックス」などは、建物を駅としても復活させたいと共同オーナー・店長が語っていて意気込みが凄い。

 お店紹介の最後に載せられている店長やオーナーのインタビューが、彼らの人生の一端を覗かせてくれて、非常に興味深かった。
 店主の父親が建物を買ったら「元書店だから書店として運営しろ」と無理難題を町役場にふっかけられて誕生したイタリアの「パラッツォ・ロベルティ書店」などは店主のヴェロニカ氏は今でもあまり本を読まないが作家と話すのは好きと語っていて、本大好きな人々とは違った視点を持っていそうだ。
 中東旅行の準備に本をあつめていたら「ぼくたちの考えた最高の旅行書店」を作る運びになってしまったドーント・ブックス・マリルボーンの店長とオーナーもおもしろかった。
 人生こうありたいものだが、やはり彼らの栄光の影には書店経営に失敗した多くの人が世界中にいるのだろうなぁ……。

関連書評
書店ポップ術 梅原潤一

世界の美しい本屋さん
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