世界の名景〜地中海の光ベスト50 渋川育由

 エーゲ海から西周りに地中海を一周して、名景をたどっていく写真集。観ているだけで地中海一周の観光旅行をした気分になれてしまう。
 なんといっても地中海の景色を特徴づけるのは、街の白と海の青であることが良く分かる。そこに車などの小物がパステルカラーで配置されており、まるでミニチュアの中に迷い込んだようだ。

 写真の構図も優れたものが多くて、街を手に取る気分で眺められた。シチリア島のラグーサの写真など、騙し絵を観ている気分になってしまう。
 海辺に建設されていることから、斜面にある街が多く、死角なく一望できる感覚が気持ちよい。
 南ヨーロッパにとどまらず、北アフリカもしっかり押さえてくれている点も好感がもてた。アルジェリアのガルダイアはなんとも気持ちのよい街だ――道に迷ったらひたすら上へ向かえというアドバイスが面白かった。

 街の風景だけではなく、いくつかの祭りも紹介されていて、ヴェネチアの仮面とスペインのトマト合戦はお約束の感じ。ニースの花合戦は小林幸子氏が参戦できそうな迫力があった。

 締めはキプロス島で、美しい絶景を眺めていると地中海はひとつだと思えると語っているのは、しょうじき皮肉気味に響いた……肝心のキプロスが南北に分裂してるんですけど。

地中海の光ベスト50--世界の名景
地中海の光ベスト50--世界の名景
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世界の美しい本屋さん 清水玲奈

「いつか行きたい世界中の名店ガイド」ということで、日本の書店はひとつも取り上げられていない世界の美しい書店写真集。
 あのTSUTAYA図書館が志向しているものが、おぼろげながらわかった気がしないでもなかった。カフェが併設されている本屋がけっこう多い。中には本を置いたBARというお店まで紹介されていた。
 それ以上に元々は別の建物であったものを本屋に改装したパターンが印象的で、その構造をいかした面白い陳列が試みられている。駅舎を本屋に改装して、だんだんと面積を広げている「バーター・ブックス」などは、建物を駅としても復活させたいと共同オーナー・店長が語っていて意気込みが凄い。

 お店紹介の最後に載せられている店長やオーナーのインタビューが、彼らの人生の一端を覗かせてくれて、非常に興味深かった。
 店主の父親が建物を買ったら「元書店だから書店として運営しろ」と無理難題を町役場にふっかけられて誕生したイタリアの「パラッツォ・ロベルティ書店」などは店主のヴェロニカ氏は今でもあまり本を読まないが作家と話すのは好きと語っていて、本大好きな人々とは違った視点を持っていそうだ。
 中東旅行の準備に本をあつめていたら「ぼくたちの考えた最高の旅行書店」を作る運びになってしまったドーント・ブックス・マリルボーンの店長とオーナーもおもしろかった。
 人生こうありたいものだが、やはり彼らの栄光の影には書店経営に失敗した多くの人が世界中にいるのだろうなぁ……。

関連書評
書店ポップ術 梅原潤一

世界の美しい本屋さん
世界の美しい本屋さん
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マダガスカルがこわれる 藤原幸一

 もう助からない……国土に占める森林の割合が10%を切ってしまったマダガスカル。政治的には比較的安定していても人口爆発と貧困で、ここまで事態は深刻化してしまう。
 大量絶滅と国土の荒廃の末、マダガスカルに残されるものは何なのか。知らずに済ませる方法がみつかることを願わずにはいられない。とりあえずサイザル麻の製品は買っちゃダメかな。
 あの状態で安定しているなら、他の地域よりまだマシな気もするが……。

 東部は降水に恵まれたマダガスカルに、うまく資本が回っていれば治水したり植林したりして持続可能な生産地が作れそうなのだけど、位置的に極悪なヨーロッパの影響が強すぎたのか。
 商売っけの強いインド人の影響も気になるところ――さらに中国資本も入ってきている。マダガスカルの未来が大事なときに荒らしたのは日本資本の可能性も?
 社会の伝統的なエリート層が生き残っていないと悲惨なことになりがちだと、ナショナルジオグラフィックのDVDでみたアマゾン奥地の部族と比較して思ってしまった。
 まぁ、この一冊の印象で決めつけるのは賢明ではないが。

関連書評
巨大津波は生態系をどう変えたか 永幡嘉之

マダガスカルがこわれる
マダガスカルがこわれる
カテゴリ:写真・イラスト集 | 11:27 | comments(0) | trackbacks(0)

にっぽんスズメ楽園 中野さとる

 楽園と書いてパラダイスと読ませる。パラダイス状態!
 人々に愛されているスズメにとって、にっぽんはパラダイス?飼い猫を通じて間接的な被害を受けていそうではあるし、人家や電柱から巣を作る場所が減って困っている情報はある。
 まぁ、小さく弱々しい存在にみえても、スズメはかしこくしたたかにやっていくのだろう。

 本書の写真はすべて愛知県内で撮られたものらしいが、雪とスズメの写真もあった。愛知県でも奥三河の方かな。2017年はたくさん降ったことがあったから、そのときに一気に撮ったのかな(確認したら前も似たことを気にしていた)。
 ネット上のスズメ写真が増えたことで、著者も雪国のスズメについて知ることができているそうだ。スズメの分布も人間ほどではないが、広い。

 シリーズ4冊目(自分が読んだのは2冊目だが)の本作では「なじみの顔」が名前付きで紹介されていた。「ザビエルくん」のハゲの跡に白い毛が一本だけ生えてきた姿が気になって気になって気になって。
 戦国武将の派手な兜みたいになっている……どこかに行ってしまったと書かれていたけど、実は白い毛が抜けただけで実はまだ著者の近くにいることはないのかな。
 特徴がなくても見分けられるレベルっぽい気もする。


にっぽんスズメ歳時記 中野さとる

にっぽんスズメ楽園
にっぽんスズメ楽園
カテゴリ:写真・イラスト集 | 21:37 | comments(0) | trackbacks(0)

野鳥フィールドノート 水谷高英

 とても美しくわかりやすい野鳥観察のフィールドノート。
 見ているだけで野鳥観察にいった気分になる。また実際に行った人間には当時の状況を詳しく思い出せる優れたツールだと思われる。これほど巧い絵がいきなり描けるはずもないがフィールドノートを残すことのメリットも伝わってきた。

 日本にこれほど多くの鳥がいたことに驚いてしまった。頭では知っていても、フィールドノートは感覚的に訴えてくる。
 この前、山で見かけたよくわからない鳥はアオジのメスっぽい。カワセミの他にヤマセミもいることを知った。
 季節や地理によって本当に多種多様な鳥がいる。旅鳥については「一期一会」の感慨も湧いてくるのであった。

 雑誌に載せたと思われる「スケッチ」は、清書で彩色されている。現地で描かれた鉛筆スケッチも著者の生の感覚が伝わってきて興味深かった。絵がとても巧いことが分かる。
 植物などにも目を配っていて、一時的に借りることのできた著者の視界からみる自然は豊かだった。ただ、年々減っている鳥もいるようで、部分部分では深刻な気分にもさせられた。

関連書評
極楽鳥〜魅惑の求愛ダンス ナショナルジオグラフィック
にっぽんスズメ歳時記 中野さとる

野鳥フィールドノート―スケッチで楽しむバードウォッチング (BIRDER SPECIAL)
野鳥フィールドノート―スケッチで楽しむバードウォッチング (BIRDER SPECIAL)
カテゴリ:写真・イラスト集 | 23:21 | comments(0) | trackbacks(0)

行ってみたい世界の灯台

 まず灯台を目的に海外旅行する発想がなかった。
 目から鱗が落ちる思いだった。
 何事にもマニアはいるもので、国際機関が世界の灯台100選とか作っているらしい。日本の灯台も多数ランクインしているようだ。
 3000ある日本の灯台で内部を見学可能なものは40しかないと書いてあったが、そのわりに紹介されている灯台の見学可能率は高かった。注目の灯台には管理人も気を使っているらしい。

 出てくる地域にはかなり偏りがあって、ヨーロッパとアメリカ、日本がずいぶん多めである。人口比でいえばニュージーランドも多い。
 灯台が必要だった時代に長期間残る建築物を造れた地域が偏っているためと考えられる。

 それにしてもインド洋の灯台がひとつもないのは寂しかった。イギリス人が建てた灯台などたくさんありそうなものだけどな。保存状態が悪いのか?
 マカオの灯台はマカオ出身のポルトガル人建築家が設計していて、マカオの特殊な歴史を強く感じさせてくれた。植民地出身の宗主国人もいるんだよな……。

関連書評
世界の写真家たちによる冒険の記録 世界でいちばん美しい洞窟、魅惑の石窟

行ってみたい世界の灯台
行ってみたい世界の灯台
カテゴリ:写真・イラスト集 | 12:32 | comments(0) | trackbacks(0)

おいしい”つぶつぶ”穀物の知恵 盛口満 文・絵

 ゲッチョ先生の穀物コレクション

 とっても身近な作物、穀物について収穫前の姿からスケッチをしている絵本。最初に出てくるのはイネ科の旗手イネであるが、イネ科に属さない双子葉植物のアマランサスやソバにも出番が与えられていた。
 インドで作物化されている雑草があったり、ヒエだけは日本原産の可能性が隠されていたり、おいしいつぶつぶ穀物の世界も奥が深い。

 雑草にも丁寧に処理すれば食べられるつぶつぶがたくさんあることを知った。でも、サバイバル本で採集を勧められているところは、あまり見ないような……そんな雑草を収穫に適した性質に品種改良して、現代に伝えてくれた先祖に感謝である。
 収穫量の多い穀物だけに偏らず、バランスよく後世に受け継いでいけたらいいなぁ。

 品種改良について穀物側が生き残るために「考えた」ような視点から説明していた。それも一つの見方ではあるけれど、やはり人間による淘汰圧を意識せざるを得ない。

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食べられたがる果物のヒミツ 盛口満 文・絵
見てびっくり野菜の植物学 盛口満 文・絵
落ち葉のふしぎ博物館 盛口満 文・絵

おいしい“つぶつぶ
おいしい“つぶつぶ" 穀物の知恵 ゲッチョ先生の穀物コレクション(ゲッチョ先生の自然誌コレクション)
カテゴリ:写真・イラスト集 | 19:32 | comments(0) | trackbacks(0)

ジブリの猫たち 宝島社

 「猫の恩返し」上映にあわせて出版されたらしいジブリと猫の本。猫の恩返し以外の作品からも猫が紹介されているが、期待したよりも少なくて猫バスとジジが主力である。「耳をすませば」にも猫は出ているのだが、猫の恩返しと共通の世界という感じで本書での存在感は弱かった。

 ジブリスタッフにより自分の猫自慢やジブリ周辺の野良猫写真は、どうでもいい感じがどうにもいい。
 牛子と呼ばれる牛柄の猫については覚えてしまった。しかし、15年前の本だから元気にしているかなぁ……。

 インタビューでは鈴木プロデューサーが流石にいいことを言っている。15年前から激動の時代で、若者はがんばりにくいと思われていたのか。参ってしまうな。
 自分が「猫の恩返し」のダイジェスト紹介で感じたのは、価値観の違う世界はほんわかして見えても落とし穴があるってことで、主人公の成長ではなかったが、それは通してみないと分からないのだろう。

ジブリの猫たち
ジブリの猫たち
カテゴリ:写真・イラスト集 | 21:55 | comments(0) | trackbacks(0)

奇岩の世界 山田英春 編 創元社

 フリー写真をふんだんに使った奇岩写真集。一部は編集者が自分で撮影したもので巻末にクレジットのついている写真もあるのだが、時代はここまで来たかと驚きを禁じ得ない。
 そのまま本で印刷しても通用するほど高解像度の写真がネットにあふれているのか。さすがにフリーと言ってもプロが撮影した高解像度の写真がメインかなぁ。

 不思議なバランスを保っている奇岩はどれも「??」と思わせてくれた。バランスを保てない岩は崩れてしまうので、保てているものだけが奇岩と言われる一種の生存バイアスである。
 載っているだけじゃなくて、くっついている関係でおそろしいほど奇妙な形状をたもっている岩もある。表紙にもなっている「翼の王」などまるでリーゼントヘアーだった。

 奇岩が人の住みかになっている場合もあるが、さすがに修道院や要塞などの特殊な施設が多めだ。
 だがポルトガル人は本気で岩に住む。たしか住居にデータロガーを設置して調べている本でもイベリア人がくり抜いた岩の中に住んでいた(スペイン人だった可能性もある)。
 そういうのも一種の文化なのであろう。

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インサイド・ザ・ストーン〜石に秘められた造形の世界 山田英春
奇妙で美しい石の世界 山田英春

奇岩の世界
奇岩の世界
カテゴリ:写真・イラスト集 | 21:11 | comments(0) | trackbacks(0)

高度1万メートルから届いた 世界の夕景・夜景 杉江弘

 合計飛行時間3万時間以上!
 世界中の空を飛び回ったパイロットである著者による世界の夕景および夜景の写真集。微妙な時間帯だけに、その瞬間にしか存在しえなかった景色が切り取られて展開されている。
 特に都市は刻々と姿を変えていくので、いまはまったく別の姿をしているに違いない。貴重な写真だ。

 撮影テクニックの講座もあるが、パイロット目線からみた飛行機雲の話が興味深かった。飛行機雲から気流を読みとり安全性や経済性から高度変更の判断をする。
 ある意味で職業病といえるかもしれない。

 地上からでも飛行機雲は気象に関する情報を与えてくれるはずで、飛行機が飛んでいなかった時代には存在しなかったファクターだ。だから観天望気の蓄積が足りないとすれば、詳しく追ってみる価値がある。
 夕景のベスト3に大阪が、夜景のベスト3に東京が入っていた。こういうところでも名古屋は入れないんだ……まったく名古屋は地味だぜ!フウハハハハー!!

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空から見る日本のふしぎ絶景50 渋川育由

高度1万メートルから届いた世界の夕景・夜景
高度1万メートルから届いた世界の夕景・夜景
カテゴリ:写真・イラスト集 | 23:19 | comments(0) | trackbacks(0)
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