耐火物 第70巻 第7号

日本の独自性
 アメリカのインフラはソフト面で弱いという話――は分かったのだが、結びがまるでコンプライアンスを軽視し、我が国のトップにもやりたい放題させろと言っているように読めてしまって眉をひそめた。
 自販機に行けと言うアメリカの窓口は訴訟されて負ければいいのに。

副原料の違いによるMgO-Cれんがの特性挙動
 バインダーの粘土とALの添加量を調整することで性能アップが可能とのこと。グラフにすべてR^2を記入してあるが0.2とかもあった。

都市ごみ焼却炉の耐火物耐用向上アプリケーション
 自分の税金も使われているので強い関心をもって読むことができた。節税のためにも広く共有してほしい知見で、公共のものなのに、炉の情報は分析している人たちにも出されていないっぽい。なんでそんなに秘密主義になってしまうのか……

マグネシアクロムれんがの耐還元性評価
 るつぼ試験のわかりやすさがありがたい。やはりコランダムは強かった。はるか未来的には材質を全部サファイアにできれば解決。ArもOも宇宙にありふれた物質だ。材料業界では三二酸化物なんて言い方があるんだな。

セメントロータリーキルン焼成帯用マグネシア・スピネル質れんがの耐剥離性の改善
 緻密化を勧める成果が多目である。耐スポーリング性に関しては気孔があったほうが良かったと思うのだが、両立する要素なのかなぁ。断熱性は奥にある材料で確保すればいいだけだが。


セメントロータリーキルン落口用SiC含有キャスタブル材の適用例(続報)
 写真が環境の過酷さを物語っている。そして、こんな状態でも「持っている」と判断されている。消耗が前提で他に替わるものがないとユーザーにも理解されているのだな。

セメントロータリーキルン用マグネシア・スピネル質れんがの機械的特性の向上
 壊れることでそれ以上は壊れない微妙なバランス。セメントロータリーキルンの仕様によって最適なれんがが違ってきたりはしないのかなぁ。

離島の魅力
 沖永良部島の宣伝だった。話に出てきたDr.コトーの舞台は下甑島だったが、フェリーや飛行機の見送りは似た感じになるらしい。
 数時間平気で立ち話してしまう性質は、都会の人には我慢出来ないかもしれない。
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セラミックス 第53巻 5月号(2018年)

・学問における多様性の重要性:生物の多様性に学ぶ
 ちょうどトマトイプーのリコピンでも話題になっていた「現代は大量絶滅時代」の話。密接に繋がりあったものを、一見の判断でジェンガすると恐ろしいことが起きかねない。ずいぶん昔に作られたM1エイブラムス戦車のパワーパックは生産していた会社がなくなったことで生産不可能になっているしな。

■ 無機ナノシート表面を反応場とした有機分子間での連続する光化学反応
 人工光合成への挑戦に無機ナノシートが活用されている話。自然の光合成がとても効率がよく、追いつこうにもスタートラインに立ったばかりだと分かる。数十億年掛かっているからなぁ。1000年で追いついたら凄いくらいかもしれない。

■ 半導体ナノシートの特徴を活かした水分解光触媒の研究
「非常に美しい液体」と形容しながら写真がない。研究報告的にはもっと大事な写真や図があるからしょうがないな……。1940年代に提出された理論が無機ナノシート液晶の挙動とよく合っているところが熱かった。温故知新。

■ グラフェン液体セルの高効率作製法
 いちばんわかりやすくて興味深かった。グラフェンの間に挟み込むだけで高圧をかけられるなんて凄い!常圧で観察したい場合は効果が邪魔になる場合もあるかもしれないが。
 さすがは炭素系素材でカーボンナノチューブより生産が伸びると予想されているグラフェンである。
 銅板への前処理が単結晶的なグラフェンを生み出す仕掛けもよく気づいたものだと感心する(成功率が低くてもゴリ押ししていた時代も、それはそれで「研究」らしい。)他の薄膜技術から応用しているのかなぁ。
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わかる!使える!溶接入門 安田克彦

 参考文献が全部著者の著書!いっそ清々しいレベルで市場征服していた。それだけの実績があることも物語っている。
 タイトルは「入門」となっているけれど、本当の入門はそちらの参考文献に譲って本書は溶接の実務を知っている人がレベルアップするために読むと良さそうな本だった。
 実際にやりながら試してみないと分からないとも言える。経験が必要な部分も大きな技術を体得し、材質や作業姿勢に応じて使い分けている溶接工のすごさが分かった。

 フェライト系ステンレスはオーステナイト系ステンレスと違って、溶接に事前の加熱が必要なことなど、興味深い知識もいろいろと得られた。
 TIG溶接とアーク溶接では溶け込んでさえいれば強度に差はないとインターネットで調べたことがあるけれど、細かいことを言い出せばいろいろありそうなのも、感じられた(すっきりまとめて覚えることはできなかったが)。
 見た目の美しさもいいが、しっかり溶け込んでいることを確認し、切磋琢磨できる環境にある溶接工は頼りになりそうだ。本書に書いてあることをマスターしたような人は、お賃金もかなり高そうだけど……つまりマスターすれば賃金もあげられる。

関連書評
ガス溶接・溶断作業の安全 中央労働災害防止協会
図説 船の歴史 庄司邦昭 ふくろうの本

わかる! 使える! 溶接入門-<基礎知識><段取り><実作業>-
わかる! 使える! 溶接入門-<基礎知識><段取り><実作業>-
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耐火物 2018/3月号 第31回年次学術講演会 プログラム 

 いつも以上に要旨成分のつよい内容が多い。1ページの要約なので読みやすいが、理解は難しかった。

・「たたら吹き製鉄の歴史と日本刀」
もののけ姫の世界だ……あちらはいちおう戦国時代よりも前で、こちらで解説されているのは江戸時代だったりするのだが、映像で得られた知識の力を感じざるを得ない。足踏みのフイゴは通常三人で踏むものだったらしく、もののけ姫のフイゴは大きかったみたいだ。江戸時代のものよりシール性が低い分を人数で補っていたかも?
 けっこう具体的な数字が多くて興味深かった。かんな流しによって農民と対立があった点も興味深い。農民自身が刈敷のために山を伐採しすぎて水害に悩まされていた時代でもあるのだが、中国地方はさらに複雑なことになっていたはず。

・溶融スラグによる耐火れんがの浸漬濡れ
 ムライトと一緒にアンダルサイトの名前が出てきた。なぜかざくろ石系と勘違いしてしまったが、紅柱石のことか。当然ながら、きっとマテリアル研究の人も同質異像に遭遇しているのだな。

・構造安定性に優れた電気炉炉底ライニング
スタンプ材をレンガに変更したとのことだが、スタンプ材とは?耐火物技術協会の用語辞典によれば「スタンプ施工に用いる粉状の不定形耐火物。そのまま若しくは少量の水と混練してライニングを構築する。」と説明されていた。普通のキャスタブルとは違うっぽい。安定して作られるおかげなのか知らないが、相対的なレンガの強さは興味深い。

・低セメントキャスタブルの乾式吹付け
 作業風景の写真が幻想的……これは相当大変だと思われる。作業性のいい資材を開発して使わせてほしくなる。
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セラミックス 第53巻 3月号(2018年) 特集 セラミストの働き方改革 〜男女共同参画の視点から〜

 セラミストって名乗りはアジアの女王セミラミスみたいだな。はてなで手斧に使えそうなデータがいろいろあった。最後の学会の案内で、いらすつやのイラストが使われているのには笑った。本当に浸透力が高い!

■ 研究現場での男女共同参画推進のすすめpdf
 女性が共著から弾き出されているらしいデータが気になった。研究者も同性同士で固まってしまっているなら残念だ。異性の視点が入ったほうが研究をより良く出来ると思うんだけどな。

■ 学術分野での男女共同参画の現状と期待pdf
 薬剤師だけは女性の指導的立場の比率が高くなっている。どんな経緯があったのか、気になった。医者などの隣接分野に男性が吸収されているからだとすれば、男女差別の延長線上の可能性すらあって素直には喜べない?
 女性に社会参加してもらうことで、社会が活性化するというのは分かりやすい説明である。片方の性別が優位になれば同調圧力も働きやすく、現状の見直しができない組織になってしまいがちであろう。

■ 北欧フィンランドの大学における研究生活経験pdf
 研究者によるガチ北欧出羽守。フィンランドは日本よりも人口が少なく、女性の力を社会的に活用する必要が高かった。それは分かるが、同じく人口が少ない国でも、そういうことができずに低迷している国もたくさんあるわけで、筆者のいう教育や100年の伝統も影響しているのだろう。フィンランドと違って日本では第二次世界大戦時ですら女性を家に閉じ込めていたし、戦争が終わったら閉じ込め直したとも、思えてくる。
 当時の指導者が国家総力戦のなんたるかを知っていれば、今の社会状況も変わっていたのではないか。第一次世界大戦に深入りしなかったせいとも?

■ ほっとSpring 韓国の磁器文化pdf
 韓国もコバルトが手に入るんだ――と思っていたら、江戸時代のころには資源が不足して、鉄絵が増えたらしい。ボーンチャイナみたいに牛の骨を使わざるを得ないよりはマシか。

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カーボンナノチューブのすべて NEDOレポート

 夢の素材、カーボンナノチューブ(CNT)の歴史と現況が分かる。日本ゼオンによって日本国内での単層カーボンナノチューブの大量生産が開始されているなど明るいニュースが多かった。
 ただし、ライバルであるグラフェンの方が生産量の伸びが大きいようなデータもでている。むしろCNTより知らないグラフェンについて学ばなければいけない思いを強くした。

 個人的に注目する素材としては、エラストマーにCNTを混ぜることで性能を向上させたものがあった。サイトで説明を見に行ったところでは繰り返し使用温度が340℃ともいうから変形するシール材としては破格の性能になる。
 早く切実に実用化してほしい(実用化していないというより価格が使えるものに降りてきていないようだ)。

 もう一つはCFRPの後釜と考えられている、炭素繊維の代わりにCNTを使ったFRPが気になった。これはまだまだ実用化は先の話になると思われるが――CFRPだって普及中なので――素材の将来を考えると注視したい流れである。
 ところで原料となる炭素の資源量は大丈夫なのかなぁ。天然ガスなどを使う生産法はエネルギーとの奪い合いになる可能性も……。

 あとCNTの発見者や研究者のインタビューも収録されていて、技術者として人生を考えている人間には有用な内容になっていた。

関連書評
SPACE ELEVATOR 宇宙旅行はエレベーターで ブラッドリー・C・エドワーズ/フィリップ・レーガン

NEDOレポート カーボンナノチューブのすべて
NEDOレポート カーボンナノチューブのすべて
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くらべる飛行機 矢吹明紀・市ヶ谷ハジメ

 第二次世界大戦を中心とした航空機の比較本。それぞれの航空機ジャンルごとに三位までをランキング。また似た立場の機体をいくつか採点により比較している。
 日本軍機に対して、やや甘い採点になっている気がする。
 基礎知識的な解説も多くあって、なかなか勉強になった。最後には現代の軍用機や旅客機の説明まで載っている。

 そのため、ボーイングとエアバスの殴り合いが現代における最大の戦いとして記憶に残るのであった。エアバスA-380の座席数が多すぎる!オールエコノミーなら853席もつけられるなんて凄まじいなぁ。
 人間だけなら大隊をだいたい一機で運べると考えたら軍事的にも利用価値は高いのではないか。

 ジェット機の世代開発でミグ21が第二世代機であることを知った。それなのに軍事小説ではイーグルなんかの相手までさせられていたような……生産性が高いばかりに地獄だな。ISISが一時期運用していたはずのミグ23は第三世代機で、やっぱりカモにしかなりそうにない。
 SFCゲームのエリア88で見覚えのある機体が多くて懐かしかった。最初の乗機はF-8クルセイダーだったな。

くらべる飛行機
くらべる飛行機
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耐火物 第70巻

・医用及び歯科材料の表面処理と固定
 最初は骨の話で歯の話ではなかった。最後はタイトル通りの話になったが、駆け足に感じた。ジルコニアが非常に期待される素材になっていることは分かった。硬度ならアルミナが上でも靭性はジルコニアが上回っているようだ。
 こういう技術がどんどん進歩してくれることは若者にとっても将来への不安を和らげる価値がある。

・MgO-Cれんがの消化に及ぼす添加物の影響
 MgO-Cれんが中のAl4C3は悪役と覚えてしまった。一つの視点から印象をもつことは好ましくないけれど、少なくともいい影響だけを与えるものでないことは確かになっている。

・添加した金属Alの粒径がMgO-Cれんがの物性・組織に与える影響
 ひとつ前の論文によって、Al4C3が生成する!?それはいかん。って思いながら読んだ。スピネルができる温度まで高くするか、あえて高くしないようにしてAl4C3の生成に注意すれば、ひとつ前の論文的にはいい結果が得られそうだ。
 あとAlの粒径はともかく細かいほうがいい。

・酸化カルシウム焼結体の水への溶解に及ぼす微量添加物の影響
石灰岩の産地によって微妙に結果が変わることに・・・・・・経験からそこまで意識して使っているところもあるのかなぁ。そういう蓄積も国力なのかもしれない。

・和歌山脱炭炉耐火物の耐用向上に向けた取り組み
転炉炉底羽口スリーブれんがの高耐用化
 こういう成果のデータをみていると耐用性が無限に伸びていきそうな錯覚に陥る。発表されていてもすぐに導入できる方法ばかりではないとか、いろいろ事情があるのかもしれない。なくても、別のネックが表面化してきて戦いは無限に続く。 

・キャスタブルの乾燥における爆裂に対するピッチの影響
 ピッチがそんなところで働いていたとは驚いた。そしてやっぱり始末が悪かった?問題を起こす性状が現れない物質をみつければプラスの効果だけ引き出せそうだ。コスト的にはピッチに勝てないだろうけど。

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セラミックス 第53巻 2月号(2018年) 特集 水資源の確保と保全に向けた浄化材料

■ 「水資源の確保と保全に向けた浄化材料」特集にあたって
 地球は水の惑星だが、利用できる淡水はごく少量しかないという、いつもの説明がされている。
 縦軸:国内総生産と横軸:一人あたりの水使用量のグラフでアメリカが、近似直線の下側に来ていることが新鮮だった。省エネ的な日本やドイツが「浪費」している。国名はあげられていなかったが、いちばん左下の国が悲惨すぎる……。
■ セラミックスが実現する途上国の水環境問題:水処理技術から水資源管理までpdf
 チェニジアでの水処理問題の事例を紹介している。飲む水にフッ素があれば虫歯が減るというほど単純ではなく、多すぎると歯に変色があらわれてしまうらしい。対策を取ったら虫歯が増えたという結果になる可能性はありそうだが、どうなのかな。
 貯水池の浚渫費用を、浚渫して出て来る泥でつくったレンガの売却で賄う計画はクレバーだ。

■ 光触媒を用いた水処理の現状と課題
 まだまだ可能性の多い酸化チタンによる光触媒技術の話題。モノリス化した触媒なら表面を削れば機能を復活できると説明されていたけれど、汚れが構造の奥まで入っていかないのか気になった。光や水の方が遥かに隙間に入っていきやすいからOK?
 植物工場での利用事例からはお金の臭いがした。うまくやれば儲かりそう。

■ほっとSpring イタリア留学体験記
 イタリア人が歴史を大事にしている様子がわかる。復元ではオリジナルと復元部が区別できるようにあえて別の絵の具を使うとか――話題になったスペインでのフレスコ画の復元はイタリア人にどう思われているのかなぁ。絵の具が違っていて剥ぎ取れるならセーフ?
 著者が留学した研究室は女性が11人中10人とのことで、白1点の人の気持ちを思った。写真にいないような……撮影側に回ったのかも。

セラミックス 第53巻 1月号(2018年)
カテゴリ:工学 | 18:10 | comments(0) | trackbacks(0)

普及版 腐食事例解析と腐食診断法 石原只雄 監修

 主に第二次産業の現場を悩ませる腐食について現象や事例を詳しく説明した専門書。36000円は自分が読んだ中でも最高値の本だと思う。
 いろいろな業界の人が腐食の問題に取り組んでいて、腐食をおこしている例も鉄にとどまらず青銅やアルミニウムなどの非鉄金属、コンクリートにまで及んでいる。
 腐食の原因も高温からサンやアルカリなど多岐にわたり、複合していることも多いので、この問題が一筋縄ではいかないことがよく分かる。
 しかし、ガスタービンや原子力などお金をもっている分野が先陣を切っていろいろ研究してくれており、スピンアウトが期待できる感じだ。珍しいところでは地熱発電や考古学における腐食事例もとりあげられていた。 後者は非常に長い年月を経験したサンプルを得られる点で、単純に特殊あつかいできない。そういえばインドの鉄柱についての風化の研究を紹介している本もあったことを思い出した。内容的には普通の腐食対策とは違って、出土品を保存する目的での腐食対策のあり方を追求するものになっていて、工業の役にはあまり立たないかもしれないが興味深かった。

 あとは海岸などでの塩分による腐食事例が目立つ。海中よりも潮位線の上下の負傷が激しいことは覚えておきたい。また融雪剤によって内陸部でも塩分が多い環境になってしまっているらしい。橋梁腐食の話もあったが、そのあたりで数十年後には融雪剤の影響が大問題になっている可能性がある。

関連書評
鉄学137億年の宇宙史 宮本英昭・橘省吾・横山広美
おもしろサイエンス錆の科学 堀石七生
とことんやさしい錆の本 松島巖

普及版 腐食事例解析と腐食診断法: The Current Issue Case Histories in Corrosion Failures Analysis and Corrosion Diagnostics
普及版 腐食事例解析と腐食診断法: The Current Issue Case Histories in Corrosion Failures Analysis and Corrosion Diagnostics
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