家づくりの図集2〜狭い敷地での間取り 泉幸甫・川口通正

 狭い敷地に建築家のテクニックを尽くして建てられた家の間取り集。最小は6坪、最大でも35坪しかない。しかも、旗竿地などの扱いにくい敷地での建築も多い。
 よくぞ建てたものだと感心するものの、住んでいる住民の満足度は載っていなかった。同じプロの目線から賞賛されているのみで、ちょっと不安になる。
 まぁ、こんな家を建てるには打ち合わせが必要なわけで、後から「こんなはずじゃなかった」と思う場合はあっても、納得済みのことであろう。
 家族構成の変化に対応できるのか、老婆心で心配した。日中は仕事に出ているから一階の日当たりは諦めている家も、土日や老後はどうしているのやら。活動的な住民なんだろうなぁ。

 吹き抜けや中庭などの空間を利用して狭い中にも開放感を与える工夫が目立った。
 まるでイスラム圏の都市建築で、参考にしていても違和感はない。それとも収斂進化なのか?
 予算の関係もあってか、景観の調和については気を使っておらず、尖っている家が多かった。コルゲートパイプの家とシリンダの家には笑った。用語解説でコルゲートパイプが出てくるのは、一軒のためだけっていう……。
 一度地下に降りないと入れない家もおもしろかった。

狭い敷地での間取り (家づくりの図集)
狭い敷地での間取り (家づくりの図集)
カテゴリ:工学 | 23:14 | comments(0) | -

古代世界の超技術〜あっと驚く「巨石文明の智慧」 志村史夫

 エジプト・ギリシア・ローマそしてメソアメリカとアンデスの文明における超技術を紹介する文庫。姉妹本の古代日本の超技術に比べると文献に頼る部分が多いのは当然だが、それでも著者が現地に行った経験があって、活かされている。
 職人の声については日本の石工から情報をえていた。ピラミッドの石を焼いて割る説で、カルタゴのハンニバルがアルプスの石を焼いて割った逸話を思い出した。酢もかけていたかもしれない?相手は石灰岩だし。

 四大文明は日本の歴史教育が生んだ鬼子であることを紹介しつつ、マヤ(メソアメリカ)とインカ(アンデス)を加えた六大文明の概念も紹介。
 インダス文明やエジプト文明へのメソポタミア文明の影響を考えると、独自性の高いマヤ文明はもっと評価されるべきではあるな。文字もあるし。
 アンデス文明の石垣加工で金属製のノミが使われただろうというところで、青銅製にならべて隕鉄製のノミの可能性をあげているのは、コスト的に無理がありそう。製鉄技術のない時代の古代メソポタミアでは金より貴重だったのだから、それくらいなら金のノミの方が……。

 現代人の効率や経済性中心の考え方で古代文明の技術をみると、読み解けないことがたくさんあるとの説明には納得させられた。宗教施設については特に不経済なことが信仰の証明になってしまう部分さえあったかもしれない。
 殉死がそうであるように。

古代世界の超技術 あっと驚く「巨石文明」の智慧 (ブルーバックス)
古代世界の超技術 あっと驚く「巨石文明」の智慧 (ブルーバックス)
カテゴリ:工学 | 20:25 | comments(0) | -

耐火物 2020年2号

耐火物との出会い
 上司の一言が著者の仕事観を変えた。耐火物誌の寄稿も減少傾向で将来が不安視されるようだが、やはり耐火物の必要性が完全になくなることもないだろうな。

負の熱膨張率を有する材料の最近の話題
 熱応力をコントロールできそうで興味深い。3Dプリンタを使うことで普通に熱膨張する材質でも構造として負の熱膨張をさせられる物は特にプラスマイナスを打ち消し合わせることができそうだ。同じ手法をつかえば熱膨張を本来より大きくすることもできる?

MgO-CれんがとSpinel-Cれんがの各種スラグに対する耐食性およびMgO-C反応性の調査
 スピネルの緻密な層が表面に生じて防御してくれる場合がある薄片写真で証拠がしっかり表れていて面白い。

フェルト状のアルカリアースシリケートウールの特性改善
RCFペーパーが一番よい圧縮復元率を示しているそうで、AESウールはやはり弱点が多い。石綿が使えなくなった時代の衝撃ほどではないと想像するが、困ったものだ。

自然から学ぶ技術
サメの肌や蜂の巣のハニカムなどはよく聞く話題だが、ロータス効果とそれがヨーグルトの蓋に使われていることは知らなかった。あれを舐めたい人には恨まれそうな技術だ。カタツムリの殻が汚れの落ちやすい構造になっていることも初めて知った。勉強になる。
カテゴリ:工学 | 18:45 | comments(0) | -

ダムの科学 改訂版 一般社会法人ダム工学会

 ダムが社会で果たしている役割、ダムの造り方、ダムの今後についてまとめられた新書。ダムブームと切っても切り離せない関係にある「ダムカード」の付録付き。
 トレーティングカードとしてダムカードをみると、通し番号がつけられない点が惜しいとは思った。同じ体裁が流行していて、自分は堰カードと城カードも持っている。

 ダムの建造技術では日本が開発した技術が従来方法と同じ強度を基準にしているのに対して、海外の同種の技術は強度低下を許容している点が考え方の違いを表しているようで興味深い。
 どちらにもメリットデメリットはあるのだろうが、日本の方法は海外展開よりも国内需要を睨んでいる印象を受ける。

 ダムがもたらす負の側面、重大な事故についても言及があった。ただ、三峡ダムと揚子江カワイルカの関係には触れていなかった。どちらかと言えば、やはりプラス面が強調されていたことは否めない。
 たまった土砂を浚渫して寿命を延ばす技術が興味深かった。

ダムの科学[改訂版] 知られざる超巨大建造物の秘密に迫る (サイエンス・アイ新書)
ダムの科学[改訂版] 知られざる超巨大建造物の秘密に迫る (サイエンス・アイ新書)
カテゴリ:工学 | 00:05 | comments(0) | -

古代日本の超技術 改訂新版 志村史夫

 現代でも、あるいは現代だからこそ再現のむずかしい古代の技術について半導体の開発に携わってきた著者が独自の視点から解説をくわえたもの。
 古代技術の結晶である寺院に関連する技術が多い。そもそも後世で評価できる技術が、ほとんど寺の形でしか残っていないのかもしれない。
 宗教心は大事。

 呼吸する瓦の説明について、真空土練機から脱却して空隙の多い瓦を焼くことはメーカーにもメリットがあると感じた。原材料を減らせるわけで。
 空隙が多いと失敗せずには焼くのが難しいとはいっても、そっちもセットで技術開発をして解決していくことは出来ないものか。
 もはや投資に回せるだけの余裕がないのだろうな……。

 その点、製鉄業は採算度外視で古代の純粋な鉄を再現することができている。微量のチタンが含まれると分析があげられていたが、西日本の花崗岩は磁鉄鉱があるかわりにチタン鉄鉱を含まないタイプの花崗岩だった記憶が……?別の鉱物から進入してきたものなのか、非常に気になる。
 あと、「鉄鉱石」と「砂鉄」を対応する単語として使われることに違和感を覚えた。文脈から褐鉄鉱と磁鉄鉱を指しているのだが、磁鉄鉱も鉄鉱石に含まれるわけで。
 古代の鉄が錆びないと言われるのは、複数回の修理工事で低質なものがすでに弾かれた生存バイアス的な効果も働いていそう。
 正宗の刀に心鉄がない説については、他の本で旧日本陸軍が室町か鎌倉の古い名刀を切断して調査したところ、もっと複雑に鉄が織り込まれていて、その通りだったという話を読んだことがある。

 著者がインタビューした職人の発言もあわせて興味深く読ませてもらった。
 江戸時代の大工が荒いとダメ出しされているのは、古代の比較対象が宮大工だったからでは?とも思ったが、宮大工の棟梁が言っている以上は江戸時代の宮大工の仕事をみての評価かなぁ。

古代日本の超技術 改訂新版 (ブルーバックス)
古代日本の超技術 改訂新版 (ブルーバックス)
 五重塔や大仏を新造している青森県の青龍寺が何か凄かった。
カテゴリ:工学 | 22:02 | comments(0) | -

流体技術magazine No.4

 展示会で配られていた企業の冊子

・世界で最も環境が汚染されている場所
 こうしてみるとロシア(旧ソ連圏)とインドが危険だ。福島第一原子力発電所は出てこなかったが、チェルノブイリは出てきた。アメリカのブラックスミス研究所による評価らしい。
 新大陸ではペルーの「ラ・オロヤ」のみがランクインしている。アフリカも意外とザンビアの「カブウェ」だけである。

・世界の水保全の現状
 地球温暖化の責任が重い北米が状況的には恵まれている皮肉・・・・・・彼らのツケは他の地域が払わされている。
 欧州でも楽観できない状況らしい。

・酒とポンプと人類の進化
 ロバート・ダドリーの「酔っぱらった猿」仮説を初めて知った。ちょうど宮沢賢治の「やまなし」で、カニがやまなしの酒を飲もうとしているところを読んだばかり。定住と農耕まで酒のためとは大胆な仮説だな。まぁ、先史時代の酒には娯楽じゃなくて宗教的な意味もあったはず。

・ザ・リアルアフターワーク
 雪合戦世界大会に挑戦した話。日程の都合で決勝辞退とは・・・・・・企業モノらしいエピソードではあるかな。
カテゴリ:工学 | 19:45 | comments(0) | trackbacks(0)

セラミックス 第53巻 3月号(2019年)

■ 六古窯の可能性
 常滑と瀬戸は別に並べられているのに美濃はないんだ・・・・・・系統的に瀬戸に重なる部分が大きいとはいえブランディングの問題ありそう。伊万里などは新しい磁器だから六古窯に出てこなくてもわかるが。そして、渥美窯はどうした!?
 越前も、古窯とまでは言えないのか?
 六古窯のマークが漢字の象形文字らしさを存分に活かしていた。

■ 時代と共に変わる産地「信楽」
 信楽では便器を焼いたこともあったらしい。衛生陶器は焼き物の中でもかなり特殊化しているイメージがある。大物で割れやすいから?

■ 焼成,窯
 窯作りから経験されている陶芸家の手記。システマチックなアメリカ。モノとの距離が遠い(と感じられる)韓国。それぞれの違いが手仕事に現れているらしく興味深い。

■ 果てない 食 への好奇心
 焼き物の伝統を継承してきた一族の話?土遊びしている子供の写真をみると、次の世代も大丈夫そうだ。

■ 素材と文様
 陶器の象嵌技法について。それと、よく使われる植物をくわえた鳥のモチーフについて。
 巣作りをするために植物を運んでいるところを、昔の人が自然観察したのだろうけど、東南アジアには雌にアピールするため花を集める鳥もいるなぁ。動けない植物と人よりも遥かに動けた鳥の組み合わせが、いろいろ考えさせたのだと思われる。

■ 瀬戸の中の『民藝』
 瀬戸の採土場は「瀬戸キャニオン」と呼ばれているのか・・・・・・場所によっては水晶が採れるのもここだったかな。博物館の採集会でもなければ入れないらしいが。
 民藝に活路を見出すのは自然なことだが、どこかで新しいユーザーを獲得するルートも作っておかないと先細りになる?

■ 丹波焼と土
 昔の焼き物も凄かった。失敗が許されるゆえの凄さで、良品だけが残っているのか、それともともすれば現代の陶芸家よりも失敗しないコツがあったのか。ぜひ発掘調査が行われてほしいものだ。


■ セメント用耐火物の損耗要因と特性
場所ごとに耐火物に求められる特性が違い、最適な耐火物が選択されてきた。クロムを使わないことへの業界の意識が強いことも分かった。しょうじきリサイクル絡みでかなり無理させられている様子。よく需要に答えてきたなぁ。

■ ほっとSpring International Symposium on Inorganic and Environmental Materials 2018(ISIEM 2018)に参加して
 ベルギーの観光記事だった。うらやましい。アルコール度数の高いビールは別に飲みたくないけれど。
 やはりヨーロッパ人は自己演出に長けているのだろうな。
カテゴリ:工学 | 19:39 | comments(0) | trackbacks(0)

耐火物 2019/2月号

・随想 故郷
 愛知県常滑市出身の人。斜陽産業ぶりをみてセラミックスには関わらないと決意した話が生々しい。流れで実際に関わってみれば食べていける業種もあったということだが、それも生存バイアスかもしれない。

・ロータリーキルン用耐爆裂性キャスタブルの開発
マイクロクラックを事前に生じさせておいて水蒸気の圧力を逃がす考え。以前、こんにゃく石の構造を利用して新しい素材をつくる研究をしていた人かな?ミクロ的にはツーツーになっていても、マクロ的には断熱効果は維持されることも面白い。

・新開発低セメント系乾式吹付け材の施工実績
 写真で吹付け作業の雰囲気がわかる。いきなり停電したらパニックになりそう。回転でもすれば露出したアンカーが身体に……閉所恐怖症の人にはできない仕事だ。

・セラミックファイバーブロック支持構造の強化
 鋼材の溝にセラミックの棒を挟む。これも金属とセラミックの複合素材といえる。ちょっとしたことに思える変更でも大きな変化があるものだなぁ。

・耐スケール性高温用生体溶解性ファイバー
 RCF規制の影響からなかなか抜け出せない。こういう研究が活発になった結果、海外をリードしたことになってくれればいいのだが……

・耐火物サロン:野外音楽フェスティバル
 こんな世界もあるという話。そういえば知り合いがライブ会場で出会った相手と結婚していた。
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耐火物 2019/1月号

・フェノール樹脂について‐次の100年に向けての高機能フェノール樹脂‐
 フェノール樹脂についての知識がまとめられている。代表的な二種類があって分子量が違うそうだ。非常に広い範囲で利用されていることが分かった。グリーンフェノールに期待。アシモフのSFでもプラスチックは石油から作られ続けていたんだよなぁ。

・定形耐火物の機械的拘束下における耐熱衝撃性評価
 実際に近い環境での試験が行えたとのこと。シミュレーションとの比較がちょっと知りたい。

・養生時の湿度が低セメントキャスタブルの諸物性に与える影響
 湿度は高いほうがいい。つまり冬よりも夏に打設が行われる工程で造ったほうが設備は長持ちする。まぁ、夏ばかりに仕事が集中したら大変になるが…作業が暑いし。

・トピードの鉄皮冷却による耐火物の損耗低減
 わりと単純な外部からの冷却で効果があるものなんだ。たしかトピードは移動する設備だから冷却用水の安定供給は難しい?

・人間の成長 
 なんか、わちゃわちゃした文章だった。うーん…。
カテゴリ:工学 | 23:34 | comments(0) | trackbacks(0)

錆・腐食・防食のすべてがわかる事典 藤井哲雄

 鋭敏化による粒界腐食に有効なのは、SUS316じゃなくて末尾にLがつく鋼材だったのか。間違えて覚えていた。SUS316でもSUS316Lでも同じようなものでしょ?と言ってくる人もいるので目的を明確にして気をつけて指示しなければいけない。
 題名通りいろいろと腐食の基本について知識のえられる本だった。

 挿し絵もカラーで情報量が充実している。鋼(こう)だけじゃなくて、アルミニウムや銅などの腐食についても言及されていた。配管にアルミニウムはNGとは意識していなかった。さすがにアンモニアにアルミニウムが良くないことは知っていたが。
 エロージョン・コロージョンが銅管で起きるのは1.8m/sあたりからという知識も覚えておきたい。

 SUSの使用が600℃までと書いてあったのは疑問なのだけど(SUS304限定の話ではなかった)。
 生成物について鉱物名が記載されているため、趣味である鉱物の知識を関連させることができるのも楽しかった。

関連書評
普及版 腐食事例解析と腐食診断法 石原只雄 監修
おもしろサイエンス錆の科学 堀石七生

最新オールカラー図解 錆・腐食・防食のすべてがわかる事典
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