福島第一廃炉の記録 西澤丞

 福島第一原子力発電所の廃炉作業をひたすら追い続けた写真集。
 防護服を身につけた作業の大変さが想像できる。防護服とマスクのせいで人物の特定が難しいので、背中に会社名のシールが貼られている。
 元々の敷地が大きいのでたくさんの設備を増設できているが、狭かったらどうなっていたのかな。地図は俯瞰的な写真があることで、空間的な問題が気になった。

 四号機の屋上には植物が生えていて、たくましいと言うか、木だったら成長したとき厄介になりそうだ。

 断面での説明の「ほぼ燃料デブリなし」は、炉心内部に残っていないという意味で、メルトスルーしちゃったことの説明らしいが勘違いしてしまいそうになった。
 これからも大変な廃炉作業は続くが、少しずつ作業環境は整えられている様子。風化させることなく、見守り続けたい。

伝える。遺す。廃炉の記録。 - 廃炉プロジェクト|ビジュアルコンテンツ|東京電力ホールディングス株式会社

関連書評
建設中。 勝田尚哉

福島第一 廃炉の記録
福島第一 廃炉の記録
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耐火物 第70巻 第8号

明治の窯業技術者たちの生涯
 ワグネルとかグリフィスとかゼーゲルコーンとか、出てくるカタカナがいちいちカッコいい。明治の人も海外に憧れるはずだわ。
 明治時代の人の業績がきちんと記録に残っていて筆者が追跡できたことが興味深かった。

不活性ガス雰囲気におけるマグカーボンれんがの高温強度の経時変化
 重量が減った分はどこに消えてしまったのか?ガス化して排気されたとしか考えにくいが、なんだか不気味に感じてしまう。
 要約的な記事が多い中、けっこうたくさんのグラフが出てきて意外だった。

技術報告:Al4SiC4-C系マトリックスにおける耐食性モデル
 自己修復的な力をもった素材の研究。Al4SiC4-C系マトリックスから発生したAlガスとCOが反応してAL2O3と炭素として再凝集が起きて空隙を埋めるそうな。この凝集は吸熱反応なのかなぁ。スラグの湿潤との戦いなど、過酷な環境に置かれている素材である。

技術報告:炉内条件に適応したセメントロータリーキルン脱着帯用マグネシア・スピネル質れんが
 写真でのボロボロっぷりが凄い。表面が剥がれ落ちてある厚さに達するまでが平常状態という運用なんだろう。切断されたレンガの真ん中に長方形の黒い部分が現れているのが気になった。向かい合わせの切断されたレンガとは別のレンガのようだ。コランダムとスピネルはやはり強いんだな。名前が出てくれば、とりあえず良さそうな感じがする。

耐火物における熱力学計算の基礎
 とりあえず保存。

耐火物サロン:趣味から広がる世界
 イタリアの調理器具(クレイパン)は大きな熱容量で調理するタイプと。エネルギー効率は悪そうだ。日本は江戸時代のバイオマスしか燃料がなかった時代に調理器具の省エネが進んだのかもしれない。イタリアだって似た時代を経験していそうな気はするが。
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トコトンやさしい 薄膜の本 麻蒔立男

 メッキからCVDまで最先端技術を支える薄膜技術についてわかりやすくまとめた本。半導体工場などでは、とてつもなく精密なことが行われていることが分かった。
 使用されているガスも聞いたこともない成分が多くて、それらを扱うための独自技術は、先鋭的に発達しているように思われる。0から新規参入できる会社とか、あるのかなぁ。

 著者が「真空の本」も書いているとおり真空技術との縁も深くて、装置系統の図が興味深かった。
 また、ひとつの方法の繰り返しにこだわらず、機械的に研磨してみたり、いろいろな方法を組み合わせて求める性能を達成しようと日々試みられていることが分かった。

関連書評
トコトンやさしい地熱発電の本 當舎利行・内田洋平
トコトンやさしい水処理の本 オルガノ(株)開発センター編
今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいバイオエタノールの本

トコトンやさしい薄膜の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)
トコトンやさしい薄膜の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)
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セラミックス 第53巻 7月号(2018年)

■ Ce3+を発色源とする新規な優環境型の赤茶色無機顔料
 原発事故のせいでマイナスのイメージがついてしまっているセリウムであるが、赤色無機顔料として無害なものを作れる可能性があるらしい。酸化鉄では需要を満たせないんだな……
 日本の希元素に頼らない政策によって余ってしまっているので用途を模索している事情は皮肉だった。

■ 酸化亜鉛受光層によるUVセンサー
 どうも、この筋の研究では亜鉛がけっこう熱いらしい。発見はけっこう遅れた元素だしなぁ。
 健康目的というか、子供を心配する親が関連商品をもたせたがりそうな技術だ。学校に採用されれば一気に広がるかも?

■ コアシェル型セリア微粒子による構造色の発現
 構造色は経年劣化しない!そういう強みを活かそうという話。そういえば正倉院の玉虫厨子は今でも綺麗なのかと思ったが、そもそも玉虫の羽根がほとんど失われているらしかった。復元品でイメージが混乱していた。

■ 無機蛍光体を分散させた農業用波長変換シート
 透明なシートにルビーを混ぜることで作物が利用できない波長域の太陽光線を利用させる研究。植物側を遺伝子操作して緑色の光に反応させる方法もありそうだけど……
 実用化されればルビーを使っているとしてブランド化してくることが瞼に浮かぶような技術だ。

■ ホタテ貝殻から創製した蛍光体とその応用
 炭酸雰囲気でホタテ貝殻を焼けば蛍光する。ホタテ以外の貝殻でも蛍光するのか?個人的にはそっちが気になってしまった。大気中で高温にさらしても数日間は光るらしいので個人レベルでもアサリの貝殻などで試せるかも?
 利用方法については実用化のために製薬会社が導入する精巧極まる機械のことを想像して頭が痛くなった。それでもお金を持っている業界なので必要があれば導入するだろう。


■ UNITECR2017とサンティアゴ訪問
チリの首都サンティアゴで開かれた学会の報告と、サンティアゴの観光案内。日本から直行便が出ていなくて27時間の旅になったそうだ。これにお金を出してくれる筆者の会社(新日鐵)は、やっぱり凄いな。聖堂の姿などには新大陸でもけっこう歴史が感じられた。

■ 東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 大場研究室
 計算によって目的とする物性をもった物質をあらかじめシミュレーションして材料開発の近道を作ろうという研究をしている研究室。計算のために利用されている量子力学が直接的に一般の生活に役立っていることが分かる。
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耐火物 第70巻 第7号

日本の独自性
 アメリカのインフラはソフト面で弱いという話――は分かったのだが、結びがまるでコンプライアンスを軽視し、我が国のトップにもやりたい放題させろと言っているように読めてしまって眉をひそめた。
 自販機に行けと言うアメリカの窓口は訴訟されて負ければいいのに。

副原料の違いによるMgO-Cれんがの特性挙動
 バインダーの粘土とALの添加量を調整することで性能アップが可能とのこと。グラフにすべてR^2を記入してあるが0.2とかもあった。

都市ごみ焼却炉の耐火物耐用向上アプリケーション
 自分の税金も使われているので強い関心をもって読むことができた。節税のためにも広く共有してほしい知見で、公共のものなのに、炉の情報は分析している人たちにも出されていないっぽい。なんでそんなに秘密主義になってしまうのか……

マグネシアクロムれんがの耐還元性評価
 るつぼ試験のわかりやすさがありがたい。やはりコランダムは強かった。はるか未来的には材質を全部サファイアにできれば解決。ArもOも宇宙にありふれた物質だ。材料業界では三二酸化物なんて言い方があるんだな。

セメントロータリーキルン焼成帯用マグネシア・スピネル質れんがの耐剥離性の改善
 緻密化を勧める成果が多目である。耐スポーリング性に関しては気孔があったほうが良かったと思うのだが、両立する要素なのかなぁ。断熱性は奥にある材料で確保すればいいだけだが。


セメントロータリーキルン落口用SiC含有キャスタブル材の適用例(続報)
 写真が環境の過酷さを物語っている。そして、こんな状態でも「持っている」と判断されている。消耗が前提で他に替わるものがないとユーザーにも理解されているのだな。

セメントロータリーキルン用マグネシア・スピネル質れんがの機械的特性の向上
 壊れることでそれ以上は壊れない微妙なバランス。セメントロータリーキルンの仕様によって最適なれんがが違ってきたりはしないのかなぁ。

離島の魅力
 沖永良部島の宣伝だった。話に出てきたDr.コトーの舞台は下甑島だったが、フェリーや飛行機の見送りは似た感じになるらしい。
 数時間平気で立ち話してしまう性質は、都会の人には我慢出来ないかもしれない。
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セラミックス 第53巻 5月号(2018年)

・学問における多様性の重要性:生物の多様性に学ぶ
 ちょうどトマトイプーのリコピンでも話題になっていた「現代は大量絶滅時代」の話。密接に繋がりあったものを、一見の判断でジェンガすると恐ろしいことが起きかねない。ずいぶん昔に作られたM1エイブラムス戦車のパワーパックは生産していた会社がなくなったことで生産不可能になっているしな。

■ 無機ナノシート表面を反応場とした有機分子間での連続する光化学反応
 人工光合成への挑戦に無機ナノシートが活用されている話。自然の光合成がとても効率がよく、追いつこうにもスタートラインに立ったばかりだと分かる。数十億年掛かっているからなぁ。1000年で追いついたら凄いくらいかもしれない。

■ 半導体ナノシートの特徴を活かした水分解光触媒の研究
「非常に美しい液体」と形容しながら写真がない。研究報告的にはもっと大事な写真や図があるからしょうがないな……。1940年代に提出された理論が無機ナノシート液晶の挙動とよく合っているところが熱かった。温故知新。

■ グラフェン液体セルの高効率作製法
 いちばんわかりやすくて興味深かった。グラフェンの間に挟み込むだけで高圧をかけられるなんて凄い!常圧で観察したい場合は効果が邪魔になる場合もあるかもしれないが。
 さすがは炭素系素材でカーボンナノチューブより生産が伸びると予想されているグラフェンである。
 銅板への前処理が単結晶的なグラフェンを生み出す仕掛けもよく気づいたものだと感心する(成功率が低くてもゴリ押ししていた時代も、それはそれで「研究」らしい。)他の薄膜技術から応用しているのかなぁ。
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わかる!使える!溶接入門 安田克彦

 参考文献が全部著者の著書!いっそ清々しいレベルで市場征服していた。それだけの実績があることも物語っている。
 タイトルは「入門」となっているけれど、本当の入門はそちらの参考文献に譲って本書は溶接の実務を知っている人がレベルアップするために読むと良さそうな本だった。
 実際にやりながら試してみないと分からないとも言える。経験が必要な部分も大きな技術を体得し、材質や作業姿勢に応じて使い分けている溶接工のすごさが分かった。

 フェライト系ステンレスはオーステナイト系ステンレスと違って、溶接に事前の加熱が必要なことなど、興味深い知識もいろいろと得られた。
 TIG溶接とアーク溶接では溶け込んでさえいれば強度に差はないとインターネットで調べたことがあるけれど、細かいことを言い出せばいろいろありそうなのも、感じられた(すっきりまとめて覚えることはできなかったが)。
 見た目の美しさもいいが、しっかり溶け込んでいることを確認し、切磋琢磨できる環境にある溶接工は頼りになりそうだ。本書に書いてあることをマスターしたような人は、お賃金もかなり高そうだけど……つまりマスターすれば賃金もあげられる。

関連書評
ガス溶接・溶断作業の安全 中央労働災害防止協会
図説 船の歴史 庄司邦昭 ふくろうの本

わかる! 使える! 溶接入門-<基礎知識><段取り><実作業>-
わかる! 使える! 溶接入門-<基礎知識><段取り><実作業>-
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耐火物 2018/3月号 第31回年次学術講演会 プログラム 

 いつも以上に要旨成分のつよい内容が多い。1ページの要約なので読みやすいが、理解は難しかった。

・「たたら吹き製鉄の歴史と日本刀」
もののけ姫の世界だ……あちらはいちおう戦国時代よりも前で、こちらで解説されているのは江戸時代だったりするのだが、映像で得られた知識の力を感じざるを得ない。足踏みのフイゴは通常三人で踏むものだったらしく、もののけ姫のフイゴは大きかったみたいだ。江戸時代のものよりシール性が低い分を人数で補っていたかも?
 けっこう具体的な数字が多くて興味深かった。かんな流しによって農民と対立があった点も興味深い。農民自身が刈敷のために山を伐採しすぎて水害に悩まされていた時代でもあるのだが、中国地方はさらに複雑なことになっていたはず。

・溶融スラグによる耐火れんがの浸漬濡れ
 ムライトと一緒にアンダルサイトの名前が出てきた。なぜかざくろ石系と勘違いしてしまったが、紅柱石のことか。当然ながら、きっとマテリアル研究の人も同質異像に遭遇しているのだな。

・構造安定性に優れた電気炉炉底ライニング
スタンプ材をレンガに変更したとのことだが、スタンプ材とは?耐火物技術協会の用語辞典によれば「スタンプ施工に用いる粉状の不定形耐火物。そのまま若しくは少量の水と混練してライニングを構築する。」と説明されていた。普通のキャスタブルとは違うっぽい。安定して作られるおかげなのか知らないが、相対的なレンガの強さは興味深い。

・低セメントキャスタブルの乾式吹付け
 作業風景の写真が幻想的……これは相当大変だと思われる。作業性のいい資材を開発して使わせてほしくなる。
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セラミックス 第53巻 3月号(2018年) 特集 セラミストの働き方改革 〜男女共同参画の視点から〜

 セラミストって名乗りはアジアの女王セミラミスみたいだな。はてなで手斧に使えそうなデータがいろいろあった。最後の学会の案内で、いらすつやのイラストが使われているのには笑った。本当に浸透力が高い!

■ 研究現場での男女共同参画推進のすすめpdf
 女性が共著から弾き出されているらしいデータが気になった。研究者も同性同士で固まってしまっているなら残念だ。異性の視点が入ったほうが研究をより良く出来ると思うんだけどな。

■ 学術分野での男女共同参画の現状と期待pdf
 薬剤師だけは女性の指導的立場の比率が高くなっている。どんな経緯があったのか、気になった。医者などの隣接分野に男性が吸収されているからだとすれば、男女差別の延長線上の可能性すらあって素直には喜べない?
 女性に社会参加してもらうことで、社会が活性化するというのは分かりやすい説明である。片方の性別が優位になれば同調圧力も働きやすく、現状の見直しができない組織になってしまいがちであろう。

■ 北欧フィンランドの大学における研究生活経験pdf
 研究者によるガチ北欧出羽守。フィンランドは日本よりも人口が少なく、女性の力を社会的に活用する必要が高かった。それは分かるが、同じく人口が少ない国でも、そういうことができずに低迷している国もたくさんあるわけで、筆者のいう教育や100年の伝統も影響しているのだろう。フィンランドと違って日本では第二次世界大戦時ですら女性を家に閉じ込めていたし、戦争が終わったら閉じ込め直したとも、思えてくる。
 当時の指導者が国家総力戦のなんたるかを知っていれば、今の社会状況も変わっていたのではないか。第一次世界大戦に深入りしなかったせいとも?

■ ほっとSpring 韓国の磁器文化pdf
 韓国もコバルトが手に入るんだ――と思っていたら、江戸時代のころには資源が不足して、鉄絵が増えたらしい。ボーンチャイナみたいに牛の骨を使わざるを得ないよりはマシか。

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カーボンナノチューブのすべて NEDOレポート

 夢の素材、カーボンナノチューブ(CNT)の歴史と現況が分かる。日本ゼオンによって日本国内での単層カーボンナノチューブの大量生産が開始されているなど明るいニュースが多かった。
 ただし、ライバルであるグラフェンの方が生産量の伸びが大きいようなデータもでている。むしろCNTより知らないグラフェンについて学ばなければいけない思いを強くした。

 個人的に注目する素材としては、エラストマーにCNTを混ぜることで性能を向上させたものがあった。サイトで説明を見に行ったところでは繰り返し使用温度が340℃ともいうから変形するシール材としては破格の性能になる。
 早く切実に実用化してほしい(実用化していないというより価格が使えるものに降りてきていないようだ)。

 もう一つはCFRPの後釜と考えられている、炭素繊維の代わりにCNTを使ったFRPが気になった。これはまだまだ実用化は先の話になると思われるが――CFRPだって普及中なので――素材の将来を考えると注視したい流れである。
 ところで原料となる炭素の資源量は大丈夫なのかなぁ。天然ガスなどを使う生産法はエネルギーとの奪い合いになる可能性も……。

 あとCNTの発見者や研究者のインタビューも収録されていて、技術者として人生を考えている人間には有用な内容になっていた。

関連書評
SPACE ELEVATOR 宇宙旅行はエレベーターで ブラッドリー・C・エドワーズ/フィリップ・レーガン

NEDOレポート カーボンナノチューブのすべて
NEDOレポート カーボンナノチューブのすべて
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