大活字本シリーズ 信長死すべし・下 山本兼一
2022.03.28 Monday | by sanasen
正親町天皇の思いから始まった信長死すべしがついに目標を捉えた。すべての責任を明智光秀に押しかぶせるずいぶんと朝廷に都合のいい形で。
どうにも光秀への同情を禁じえない。戦国時代を泳ぎ渡るには迂闊な人間に描かれているきらいもある。信長傘下であればこそ、そういう光秀が飛躍できたとすればあまりにも皮肉だ。
光秀が織田旧臣たちとの戦いに勝てば征夷大将軍にしてやるとの朝廷の態度は「勝てば官軍」を朝廷が言ってしまったみたいできまりが悪い。自らが正義と確信することができれば、こんなあやふやな態度はとらない。力のない朝廷が生きていこうとしつつも、天下人の信長を倒そうとしたから、こういう歪んだ形になった。
信長を倒すことしか考えていなくて、その後の政権構想がなかった正親町天皇の描かれ方は流石にちょっと……後醍醐天皇の故事を知らないはずもないのに建武の新政みたいなことを言わせてやるなと思った。
秀吉視点の章は一話もなかったのに、秀吉が登場人物全員の一枚上手だった。なかったからこそ死角から効果的な反撃を放った。そんなオチでもある。
どうにも光秀への同情を禁じえない。戦国時代を泳ぎ渡るには迂闊な人間に描かれているきらいもある。信長傘下であればこそ、そういう光秀が飛躍できたとすればあまりにも皮肉だ。
光秀が織田旧臣たちとの戦いに勝てば征夷大将軍にしてやるとの朝廷の態度は「勝てば官軍」を朝廷が言ってしまったみたいできまりが悪い。自らが正義と確信することができれば、こんなあやふやな態度はとらない。力のない朝廷が生きていこうとしつつも、天下人の信長を倒そうとしたから、こういう歪んだ形になった。
信長を倒すことしか考えていなくて、その後の政権構想がなかった正親町天皇の描かれ方は流石にちょっと……後醍醐天皇の故事を知らないはずもないのに建武の新政みたいなことを言わせてやるなと思った。
秀吉視点の章は一話もなかったのに、秀吉が登場人物全員の一枚上手だった。なかったからこそ死角から効果的な反撃を放った。そんなオチでもある。