子どもに教えてあげられる身近な植物図鑑 岩槻秀明

 フルカラーで身近な樹木の名前が分かる文庫サイズの図鑑。定価800円はお買い得だ。
 子供に親が教えることを意識してか、果実が食べられる樹木について、そのことを言及している場合が多かった。逆に実に毒があると注意されている樹木もある。
 自分の子供の頃を思い出すと、よく中らなかったものだとゾッとする。

 日本原産の木に限らず、園芸などの関係で日本に入ってきた木も、よく見かけるものが紹介されている。
 なかには外来種として厄介な状況になっている木もあった。園芸に関連した雑種も結構多い。
 コニファーが園芸用針葉樹のことだと知れてよかった。

 DNA解析による新しい分類法(APG)によって分類される前の科と後の科が併記されていて、その点も興味深かった。ページ数の制限のためか、見分けるためには葉っぱの拡大写真がほしいと感じる木で載っていないものがあって、図鑑としてはそこが少し物足りなかった。

カテゴリ:生物 | 19:49 | comments(0) | -

微生物〜目には見えない支配者たち ニコラス・P・マネー 花田智 訳

 微生物全般にわたる事柄を解説した凄い文庫。微生物の生理から医療や工業利用にまで触れていて、もはや博物学の領域である。
 医療に関わる情報が多いのは、やはり人間の関心がそこに集中しているからで、微生物にはまだまだ分からないことだらけだと釘を刺すことを著者は忘れない。
 独立栄養にみえる植物すら微生物におんぶに抱っこされているのだと指摘している。

 数十億年のアドバンテージをもった微生物の影響を排除することなど効率的に不可能だろうし、我々は微生物との共生を強制されているんだ!とも言いたくなってきた。

 微生物と一言でいっても原核生物・アーキア・真核生物で大きな違いがあって、その開きは相当大きいことも肝に銘じなおした。

カテゴリ:生物 | 22:37 | comments(0) | -

バイオロギングで新発見!〜動物たちの謎を追え

 佐藤克文 監修 中野富美子 構成・文

 動物にセンサーを取り付けて情報をえるバイオロギング。1960年代から発展してきた新しい研究手法を若い読者に伝える本。
 内容がかなり濃密で読み応えがあった。動物そのもののエピソードも研究に関するエピソードも印象的だ。
 世界中に行って厳しい環境の中、ひとつの目標に打ち込んでいる研究者はやっぱりヒーローだな。

 サケが産卵・放精中は心臓の動きを止めていることを知ってたまげた。サケの研究者が心臓が止まるほど驚いたと最後に書いているのは、それに絡めた発言だろうな。
 アリゲーターやヒラシュモクザメなど、目的とする動物が捕まらなかったので代わりにバイオロギングの対象になった動物がいる。調査したあとに、その動物の文献を調べているのだろうから、かなり苦労していそう。
 オオミズナギドリの飛行情報から海上の風速がわかることは、かなり応用の余地がありそうだ。

 研究者紹介でオオミズナギドリをやっている研究者が3人もいた。大人気だな。

カテゴリ:生物 | 23:09 | comments(0) | -

寄生虫の奇妙な世界〜寄生…驚きに満ちた不思議な生活

 斉藤勝司・著 目黒寄生虫館・監修

 やはり衝撃的な内容だった。最初に紹介されている寄生虫でも十分に怖かったのに、その後に「危険な寄生虫」が紹介されていることが……そして実際に危険性がとんでもない。
 エキノコックスの肝臓がエキノコックスに置き換わるの怖すぎる。治療は切除するしかないなんて。写真で、額に寄生虫の浮種が出ていたブラジルの少年はその後どうなったんだろう……無事だといいな。
 鬼の角が未知の寄生虫が人の頭に集まったデキモノの可能性をちょっと考えた。

 本来の宿主でないから致命的な被害を人間に与えている事実がたまらない。でも、そういう出来事がないと寄生虫の宿主は増えていかず、ただでさえ別の生物に依存する生態がジリ貧なんだろうな。

 最後は共生する生き物たちも紹介されていて、衝撃的な内容を紛らわせてくれた。
 ハゼとエビの仲睦まじきことよ。

カテゴリ:生物 | 22:33 | comments(0) | -

身近な鳥のすごい事典 細川博昭

 ハヤブサがタカの仲間じゃなかったことに衝撃を受けた!とんびはタカの仲間だが評価がやたらと低かった。百舌鳥も準猛禽的な扱いを受けることがあるらしい。いまさらながら猛禽=タカの仲間とは限らないのだな。

 身近な鳥の豆知識をたくさん得られる本。歴史関係の情報に詳しく万葉集の中に出てくる鳥の名前には目がない。江戸時代に大流行した鳥の飼育情報にも頻繁に触れていた。
 紹介されている絵は江戸時代の日本画に描かれた鳥ばかりだ。

 35種も紹介されているのに、「雉」がいないことに個人的な衝撃を受けてしまった。1年に1回は見ているんだけどな……実は今日も車内から見かけた。
 江戸時代を含めて、都市に適応した鳥が多めである。

 江戸時代、ヤマガラに仕込まれた複雑な芸や美しい声の鳥を掛け合わせたり弟子入りさせたりした話が興味深かった。江戸時代の(少なくとも一部の)人間はそういうことに打ち込む余裕があったと分かる。
 フクロウの仲間を昼の森においておくと、小鳥が擬攻撃(モビング)にあらわれるので、そこを一網打尽にする狩りが行われていたのも面白い。ちょっと鮎の友釣りみたいだ。

カテゴリ:生物 | 22:38 | comments(0) | -

4億年を生き抜いた昆虫 岡島秀治 ヴィジュアル新書

 昆虫のそれぞれ優れた生態を見事な写真と一緒に示した新書。
 なお、写真はアフロからのものだったり、図が引用だったりする。本書のために、これほど多くの種類の昆虫写真を撮ることは現実的ではないか。
 中には海外の昆虫もいるからなー。アルゼンチンアリは海外の虫だが、写真は国内で撮られた様子。そういえば子供の頃あこがれていた海外のカブトムシが日本に放されて問題になっているらしいことに驚いた。
 日本の気候に適応できたのか!?地球温暖化による気候の変化も影響しているかもしれない。

 解説の多くは1ページや2ページしかないのだが、自分の知らない知識がたくさん載っていた。アブラムシに社会性昆虫の特徴をもった種がいて、生殖能力がない「兵隊アブラムシ」が生まれるとか……アリに護衛させるだけじゃ物足りないのか。アリに護衛させない種なのか。
 アゲハチョウでも食草がくっきり違っていて、我が家のサンショウを食い荒らしていたアゲハチョウが、おそらくナミアゲハであったことも今更ながら気づいた。
 紹介される昆虫の最後がハチ・アリの仲間だったことは、やはり著者に彼らの社会性が高く評価されている証左なのかなぁ。

 あと、無変態性、不完全変態性、完全変態性の分類は覚えておきたい。

カテゴリ:生物 | 20:23 | comments(0) | -

食虫植物の世界〜虫を食べる不思議な生き物たち 柴田千晶・田中桃三

 ハエトリグサの開閉は5回が限度。大きすぎる獲物は消化しきれず枯れる危険がある。自分で栽培する場合は虫じゃなくてタンパク質の小片を与えればいい。筆者はゆで卵の白身をピンセットでつまんで与えている。

 最後の栄養の与え方は目からウロコだった。食虫植物のおもしろいところだな。もちろん餌の与えすぎは注意である。

 食虫植物は栄養の乏しい土地のパイオニアプランツで、他の植物が生きられないような環境でも進出して、だんだんと土地を豊かにすることができる。
 しかし、人間の活動で土地利用が固定されてしまったため、人工的に食虫植物が生きる環境を維持する必要がでてきている。皮肉なことだ。

 タヌキモとムジナモが別種なのはややこしい。でも、ムジナはアナグマのことなんだっけ?

子供の科学サイエンスブックス 食虫植物の世界
子供の科学サイエンスブックス 食虫植物の世界
カテゴリ:生物 | 23:40 | comments(0) | -

わらうプランクトン ひらいあきお

 まるで笑っているように表情豊かにみえるプランクトンたちの写真集。幼生は相対的に頭が大きいこともあって人間が表情を投影してみやすい姿をしている。
 おどろきの姿をした生き物が多すぎて、一巡では覚えられなかった。

 写真には別方向からの写真と実際のサイズもついているので、印象的な写真だけでは終わらずに、対象になっているプランクトンのことを知ることができる。
 ツジツボから海中でつかえる接着剤の開発ができるかもしれないなどの豆知識も書かれていた。

 子供だけじゃなくて大人でも楽しめる本だった。

わらうプランクトン (図鑑NEOの科学絵本)
わらうプランクトン (図鑑NEOの科学絵本)
カテゴリ:生物 | 00:05 | comments(0) | -

ゾウの時間ネズミの時間〜サイズの生物学 本川達雄

 歴史的名著!実はジャンプに掲載されていた読み切り漫画でタイトルを知った。それから実際に本書を読むまでに20年以上掛かってしまったのではないか?

 さすがに現代でも揺るがない価値のある内容になっていて、生物に対する新しい目を拓いてくれる。
 数学や物理学を駆使することで生物全体の一般的法則を追求する研究を紹介しつつ、人間の視覚に頼ったものの見方に見直しを求めている反転が面白い。

 ウシの効率の悪さが説明されているところをみて、変温動物で草食の家畜を研究すれば肉の生産効率がよくなるのにと思った。
 現実には肉食のワニでやられているくらいか?草食のイグアナは味か何かに問題があるのか。
 まぁ、現代の研究はもっと効率的な昆虫食やミドリムシまで来ているので、いまさら爬虫類の家畜化にエネルギーを割く価値はあまり認められないのだろうなぁ。
 大型でエネルギー消費の多い動物ほど縄張りが重なりやすい関係で群れのシステムが発達する指摘もあった。その性質をもつことも家畜化の利点につながるわけで……。

 最後に出てくる棘皮動物の特殊性も面白かった。必要なときはロックができる装甲の構造は技術的に模倣する価値が高そうだ。

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)
ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)
カテゴリ:生物 | 23:35 | comments(0) | -

土の中の美しい生き物たち〜超拡大写真でみる不思議な生態

 価値観の変更が必要だ。なかにはもちろん美しい生き物もいるのだが、個人的にはやっぱりグロテスクとの印象を覆すことのできない生き物もたくさんいた。特に実害を受けた経験のあるヤマビルは無理だ……。
 そんな生き物でも写真が細かいところまで写っていて美しいことは認められる。小さい生き物なので透明感を出せているものが多い。
 ムカデに比べてヤスデから綺麗でカッコいい印象を受けることも不思議だった。体長3メートルの古代ヤスデからイメージの影響を受けているのかもしれない。
 ほとんど知らなかったトビムシはカワイイというかコミカルな雰囲気がしていて、なかなか印象に残った。

 写真撮影の方法はもちろん、土壌動物を使った学習の方法や環境評価の方法など、学術的に実用できる情報も盛り込まれている。
 足下への関心が少しでも深まればいいと思った。

関連書評
ハエトリグモハンドブック 須黒達巳

土の中の美しい生き物たち ―超拡大写真で見る不思議な生態―
土の中の美しい生き物たち ―超拡大写真で見る不思議な生態―
カテゴリ:生物 | 18:51 | comments(0) | -
| 1/7PAGES | >>