霊長類図鑑 公益財団法人 日本モンキーパーク編

「サルを知ることはヒトを知ること」霊長類学と深い関わりを持ち続けてきた日本モンキーパークが送る霊長類図鑑。図鑑部分よりも図解部分の方が大きく、研究の上で興味深い情報をとりあげている。
 チンパンジーとニホンザルは扱いが大きい。
 地域ごとに異なるチンパンジーの文化的行動が、わかりやすくまとめられていた。人間に比べてしまうと大人しい気がするが、人間に比較できる時点で特異と考えるべきかな。
 ヤクシカに騎乗するヤクシマのニホンザル亜種が、牧畜に目覚めないものか。そういえばシカ牧場の必要性を訴えている本があった。牧羊犬ならぬ、牧鹿猿が仕込めれば!?

 図鑑の情報だけでも軍隊アリの後を追いかけて驚いて飛び出す昆虫を食べる事例が観察されたサルがいたり、霊長類の賢さ・柔軟性が分かる本だった。著者の中にはチンパンジーを匹じゃなく人で数える人まで出ている。
 日本モンキーパークには人が少ないときに行ってみたいなぁ。

霊長類図鑑―サルを知ることはヒトを知ること
霊長類図鑑―サルを知ることはヒトを知ること
カテゴリ:生物 | 10:06 | comments(0) | trackbacks(0)

美しき捕食者サメ図鑑 田中彰

 シロワニの出生が恐ろしい。子宮の中で子供たちが共食いをおこない、一匹のみが出てくるなんて……女王アリが同時に羽化すると殺し合いを始めることに、ちょっと似ている。こういう生態をもつ生き物が知性をもってしまったら、倫理観は人類とは相容れないだろう。
 ダルマザメの回転切り取り喰いが怖い。こんな喰い方をされてしまったら、傷の治りが悪そう。

 図鑑の方は他の本に被っている部分が結構あった。ホホジロザメをサメの代表として、いろいろな生態の説明をしている最後の章は勉強になった。
 やはりホホジロザメよりシャチの方が上位の存在で、ホホジロザメをなぶり殺しにしたり、子供を守るため優先的に「駆除」する事例もあるらしい。
 そんなシャチよりもホホジロザメの存続にとって恐ろしいのは人間なのだが……中国のフカヒレ需要は何とかならないものか。

 身体を温める特殊なシステム「奇網」をもっている点でもホホジロザメ(の仲間たち)は興味深い。

関連書評
世界の美しいサメ図鑑 仲谷一宏・監修被る情報が多い

美しき捕食者 サメ図鑑
美しき捕食者 サメ図鑑
カテゴリ:生物 | 19:42 | comments(0) | trackbacks(0)

道具を使うカラスの物語 パメラ・S・ターナー

「生物界随一の頭脳をもつ鳥カレドニアガラス」アンディ・コミンズ撮影、グイード・デ・フィリッポ挿絵、杉田昭栄・監訳、須部宗生、翻訳。

 著作の関係者が多い!ここにさらにはカレドニアのフィールドで長年カラスの道具研究を続けてきたギャビン・ハントの名前を挙げなければなるまい。
 カラスの道具が発展することを突き止めようとするギャビンの根気強い研究には野外生態学者魂を感じてしまう。

 舞台はフランス領のニューカレドニア島であるが、研究者はニュージーランドのオークランド大学関係者が中心になっている。氏より育ちというか、遠くの親戚より近くの他人状態で研究環境も興味深かった。
 野焼きによってニューカレドニアの貴重な森林が失われている事実、その野焼きが外来種である野生ブタを狩るために行われている事実も、覚えておきたい。そもそも持ち込まれていなければ……。

 さて、本題であるカラスの賢さについては、与えられた問題を論理的に考えて、必要な段階を次々と解決していく能力があることが示されている。道具をくちばしの右にもつか、左にもつかの好みがあることも面白かった。
 人間に右利きが多いのは左脳が言語に関わっているからと聞くが、カレドニアカラスの場合は?今後の研究が楽しみだ。

関連書評
科学者の目、科学の芽 岩波書店編集部・編

道具を使うカラスの物語 生物界随一の頭脳をもつ鳥 カレドニアガラス
道具を使うカラスの物語 生物界随一の頭脳をもつ鳥 カレドニアガラス
カテゴリ:生物 | 20:37 | comments(0) | trackbacks(0)

世界の美しいサメ図鑑 仲谷一宏・監修

 魅力的な海の生き物サメ。その写真とプロフィールがたくさん紹介されている。危険性を五段階で評価した項目がある点が特徴で、ホホジロザメやイタチザメはもちろん、オオメジロザメやシロワニが危険なことも覚えた。ホホジロザメ級に危険との情報もみたことがあるシュモクザメは、そこまで高い脅威度で扱われていなかった。
 シロザメとシロワニが別種として存在することがややこしい。生物の名前にはよくあることかもしれないが。

 ジンベエザメは日本国内には展示している水族館が複数あるけれど、世界的には少ないとのこと。地図も載っているので近くにあったらラッキーだ。巨体でも海棲ほ乳類よりは食事量が少なくて済むのだろうな。
 サメのいる水族館では茨城県大洗水族館アクアワールドが飛び抜けて種類が多かった。対抗できそうなのは海遊館や神戸市立須磨海浜水族館あたりか。

 写真には可愛いものから怖いものまで、いろいろなサメのいろいろな「顔」が写っていて彼らの「表情」をおもしろく感じた。自分が一般的な硬骨魚類よりもサメの方に表情を感じるのは何でだろうな。目かな?
 イタチザメの写真などいろいろなものが写った水中写真の中には、なぜか模型っぽく見えるものもあった。

関連書評
ホホジロザメ〜恐怖の殺戮マシーン ナショナルジオグラフィック
サメの素顔 ナショナルジオグラフィックDVD

世界の美しいサメ図鑑
世界の美しいサメ図鑑
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タガメとゲンゴロウの仲間たち 市川憲平

 琵琶湖博物館ブックレット6
 環境の変化によって急速に数を減らしてしまっている日本最大級の大型昆虫。タガメやゲンゴロウを中心に、水生昆虫の生態を解説する本。
 特にタガメは共食いをしたり、雌による卵塊破壊行動が見られたり、過激な生き物であった。マムシを襲って食べちゃうことまであるとは……。

 そんなタガメたちもウシガエルなど外来生物が相手では分が悪く、水田の乾田化、農薬の使用などもあって厳しい状況だ。外来生物の密放流がある一方で、コレクターに乱獲までされているのだから、人間の身勝手さをここまで味わっている生物も少ないのではないか。
 かなり悲観的になってしまうけど、著者によるタガメビオトープの活動など、光明も少しだけ見えている。もともと水田がなかった時代には湿地で繁栄していた生物だろうから、水田に棲めなくなったときに湿地を破壊してきた人間が最低限の住処を提供したいところだ。

関連書評
水生昆虫2 タガメ・ミズムシ・アメンボ ハンドブック

タガメとゲンゴロウの仲間たち (琵琶湖博物館ブックレット)
タガメとゲンゴロウの仲間たち (琵琶湖博物館ブックレット)
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ときめくクラゲ図鑑 峯水亮 山と渓谷社

 著者が自ら撮影した主に日本近海のおもしろいクラゲを収録した図鑑。刺胞動物門と有櫛動物門が両方出てきて、順番も混ざっている。
 どちらもクラゲと呼ばれているからしかたない?でも、軟体動物門のクラゲがついた連中は、コラムで名前が取り上げられただけだった。なぜなのか。

 ポリプが銀貨の形をしたギンカクラゲが面白かった。有毒に分類さているが、おもわず触ってしまって被害にあう人はいるのかな?ポリプだから大丈夫?
 アカクラゲのハクションクラゲぶりは中世以前なら兵器に利用できそう。エチゼンクラゲに刺されまくると、中華でクラゲを食べてもアナフィラキシーショックが起きるようになることもあるらしいし、クラゲとの関わり方はなかなか大変だ。
 だからと言って拒絶することなく、関心をもってつきあって行きたい生き物である。

関連書評
危険生物ファーストエイドハンドブック海編 NPO法人武蔵野自然塾
生命ふしぎ図鑑〜発光する生物の謎 マーク・ジマー

ときめくクラゲ図鑑 (ときめく図鑑)
ときめくクラゲ図鑑 (ときめく図鑑)
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嗅覚はどう進化してきたか〜生き物たちの匂い世界 新村芳人

 岩波科学ライブラリー278

 象さんはお鼻が良いのよね?そうよ、香りも習うのよ。

 そんな知識が身についた一冊。嗅覚に関する人間といろいろな生物の興味深い研究成果が集められている。嗅覚受容体遺伝子の種類から、様々なほ乳類の嗅覚が比較されている。
 我ら人類(約400種)はそれなりに成績のいい方だった。そして、イヌ(811種)よりもラット(1207種)よりも、ゾウ(1948種)の嗅ぎ分け能力が優れていることが分かった。
 「感度」においてはイヌが優れているとされているが、人に比べて一億倍鼻がいいなどと言われる研究データが最も古く最も極端なものであることが指摘されていた。
 ソースを追跡する大切さも学んだ。

 なお、ゾウとは対照的にイルカは12種類の嗅覚受容体遺伝子しか持たず、味覚も塩辛さの一種類しかもっていないそうだ(意外と粗雑なところがある)。代わりにエコーロケーションを発達させているとのことだが、有毒生物は学習で回避しているのかな?
 嗅覚の世界は(三つの色が見える哺乳類は珍しい視覚の世界も)生物が知覚している環境と人間が知覚している環境が大きく異なっていることを教えてくれた。
 案外、ロボットの周辺認識能力に関する研究でも、こういった知識は役に立つのかもしれない。

関連書評
つじつまを合わせたがる脳 横澤一彦 岩波科学ライブラリー257
錯覚の不思議 あなたの脳はだまされる! ナショジオ

嗅覚はどう進化してきたか――生き物たちの匂い世界 (岩波科学ライブラリー)
嗅覚はどう進化してきたか――生き物たちの匂い世界 (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:生物 | 22:53 | comments(0) | trackbacks(0)

プランクトンハンドブック淡水編 中山剛・山口晴代 著

 一次共生に二次共生、生物の世界では光合成の能力でマトリョーシカが作られていた。
 もやしもんを連想させるイラストと光学顕微鏡写真によって紹介される淡水プランクトンの世界。なお、プランクトンと言いながらベントスも紹介している。

 ミカヅキモなどが硫酸バリウムの結晶を体内にもつことを知った。ごく一部の海洋生物の骨格に使われているのは炭酸ストロンチウムだったか。
 用途がわからず不思議である。

 イカダモの単体で育てていても、ワムシやミジンコの「気配」を感じると、群体にもどる性質も興味深かった(この業界では一般トリビアっぽいが)。大きいことは食べにくいことだ。

 ポーリネラ属が藍藻の取り込みという車輪の再発明を行っている最中なのも面白かった。効率では先駆者たちに及びそうもないのに意外と対抗していけるんだなぁ。

関連書評
やさしい日本の淡水プランクトン図解ハンドブック
美しいプランクトンの世界 クリスティアン・サルデ
美しい海の浮遊生物図鑑 若林香織・田中祐志 著 阿部秀樹 写真

プランクトンハンドブック 淡水編
プランクトンハンドブック 淡水編
カテゴリ:生物 | 21:47 | comments(0) | trackbacks(0)

「おしどり夫婦」ではない鳥たち 濱尾章二 岩波科学ライブラリー276

 性別が生まれてから日夜くりかえされてきた男女の生存戦略。その鳥類における集大成の一端を知ることができる。
 下手に人間にたとえて考えてしまうとドロドロしたものに満ちているので切り離して客観的な意識をもって読んだ方がいい。漫画的な挿し絵は理解を助けてくれるものの、そういう部分でマイナス面も感じられた。「浮気」されている雄や雌に感情移入してはいけない。
 でも、人間でも類似の行動がまったくないとは言い切れない――いくつかのニュースを思い出した。理性で制御するのが理想ではあるが、100人が100人野生の呼び声を押さえ込めると考えるのも傲慢である。

 実は、つがい以外との交尾が頻繁に行われていて、遺伝子の確認からその割合が明らかになっていることは衝撃だった(生息環境などによって割合には違いがある)。
 子殺しなどに比べれば、ヘルパーの存在は明るい話題だ。「家事手伝い」がちゃんと「嫁入り修行」になっていることが実証されている模様だ。……どうしても人間に例えてしまう。

 多夫一妻の鳥では雌の方が派手な外見をしている話もおもしろかった。彼らの先祖である恐竜にも一定の駆け引きがあったのではないかとの妄想も広がる。

関連書評
昆虫の交尾は味わい深い…。 上村佳孝 岩波科学ライブラリー264
野鳥フィールドノート 水谷高英

「おしどり夫婦」ではない鳥たち (岩波科学ライブラリー)
「おしどり夫婦」ではない鳥たち (岩波科学ライブラリー)
ちなみにしょっちゅう相手を変えるというおしどり自身の話題はなかった。
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池の水をぬいた!ため池の外来生物がわかる本 加藤英明

 池の水全部抜くに出演している加藤英明教授の本。外来生物について子供向けに啓蒙することを目的にしていそうな内容だった。
 コイもしっかり外来生物として扱われている。

 池は人が造ったもので、天然の湖や沼とは区別されることを初めて知った。人が造った関係でヘドロなどが流れて行きにくく「かいぼり」が求められるわけだ。
 淡路島の漁師が協力してかいぼりをしたら養殖海苔の育成にもいい影響があった事例がおもしろかった。昔は農家の必要でやっていたことから、無償で利益を受けていたんだな。運が良かった。
 池の魚を捕まえているところのシーンはさすがに漁師なので得意そうだった。

 後半には外来生物図鑑があって、ちょっとした怪獣図鑑のおもむきすら感じた。日本や世界のワースト100も迫力をあげるスパイスになってしまう一面がある……ワニガメの最大体重10kgは巨大だ。
 50年以上静岡大学で飼育されているカミツキガメは折り返しの著者近影にも写っていた。

関連書評
日本の動物はいつどこからきたのか〜動物地理学の挑戦
ザリガニ〜ニホン・アメリカ・ウチダ 川井唯史
百姓仕事がつくるフィールドガイド〜田んぼの生き物

ため池の外来生物がわかる本: 池の水をぬいた! (児童書)
ため池の外来生物がわかる本: 池の水をぬいた! (児童書)
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