動物たちの地球大移動 ベン・ホアー著 別宮貞徳 監訳

 移動という戦略をとる大小の動物たち。
 彼らの壮大な旅をそれぞれ追いかけていく。

 北極から南極へ、南極から北極へ旅を繰り返すキョクアジサシは頭がおかしい。本当に白夜依存症でおかしくなっているのかもしれない。さすがに空を飛べる鳥類の機動力はすさまじく、体重数十グラムの小さな鳥ですら驚くような渡りをするものがいた。

 海中にあってはクジラたちが遠距離を旅しているが、主な目的は安全な場所での出産にあるらしい。数ヶ月食事をしないなどの驚くほどの不便を堪え忍んでいる動物が多かった。
 オキアミの上下移動は規模が大きすぎて海水循環に影響を与えるし、アメリカイセエビが隊列を作って深海へ歩いていく様子はユーモラスである。

 陸上の歩く動物たちは人類によって移動を制限されてしまっている場合が多くて、アフリカは本当に貴重な場所になっていた。あとは北極圏や中央アジアくらいかなぁ。
 動物の移動をウォッチングする適地が紹介されているものの、欧米視点の本なのでアジアの適地はほとんど見あたらない。そこがちょっと残念だった。

関連書評
野鳥フィールドノート 水谷高英
子どもと一緒に覚えたい 野鳥の本 山崎宏・加古川利彦

ビジュアル版 動物たちの地球大移動―空と海と大地をめぐる神秘のライフ・サイクル
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ユーラシア動物紀行 増田隆一

 動物地理学研究のため、ユーラシア大陸を西から東へ股をかけた著者の紀行的な文庫。
 フィンランドにはじまってロシア、日本とつながる。ロシアがでかい!ロシアさえ何とかすればヨーロッパから極東まで多くの情報が得られることが分かる。
 ロシア国内の研究者は、この利点をどれくらい活かしているのだろう。

 ヴォルガ川を境界とするヨーロッパアナグマとアジアアナグマの分布に交雑がみられる箇所がある点が興味深かった。十分に隔離されて長い年月がたてば新種になるのかな。
 その場合、一方に近縁とは言えない評価になりそう。

 ロシアの大地で活動した探検家の逸話もよかった。ベーリング海峡のベーリングは探検中に亡くなっていたんだな。ステラーも西へ向かう途中で亡くなっているし探検家はやっぱり命がけの仕事だった。

関連書評
日本の動物はいつどこからきたのか〜動物地理学の挑戦
絵でわかる進化のしくみ〜種の誕生と消滅 山田俊弘
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ユーラシア動物紀行 (岩波新書)
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科学のアルバム イネの一生 守矢登

 やっぱりイネとムギは似た植物なんだな。
 ムギの一生でも撮影されていた苗の先端から水滴が生じている現象がイネでも生じている。もちろん違いはあって茎には空気を根に送るための空洞があったりする。
 植物は栄養を送る管を切っても枯れないというけれど、空気を送る管に穴があいたら――そこから空気が入り込んで助かる?

 さすがにイネは害虫や病気も充実している。「普通の雑草」にとって、病気や害虫が研究・意識されていないだけかもしれない。
 害虫といっても草の方が害だと思われていれば、食害する虫の方が益虫になるし。

 ムギの祖先は「雑草」と表現されていたが、著者の違いかイネはそういう表現はなかった。本書では「野生のイネ」という表現がされている。

イネの一生 (科学のアルバム)
イネの一生 (科学のアルバム)
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科学のアルバム ムギの一生 鈴木公治

 子供向けに書かれたムギの本。写真がたくさんある。花粉が飛び散るところのストロボ写真は表紙になるほど印象的。でも、自家受粉しちゃうから基本的には無駄弾……花粉が減る方向に品種改良されなかったのは、昔の人にはそんなに見る機会がないからか。減らしても収穫が目立って増えるほど大きな影響はない?スギ花粉すら迷惑がわかって花粉の少ない品種が作り出されているくらいだからなぁ。

 胚乳に注目して成長段階ごとの断面写真が撮られている。もしも、事前に胚乳を切り取って減らしておいたら成長できるのか?そんな実験を見てみたくなった。
 昔の方が粒は小さそうだし大丈夫かなぁ。

 シャーレにイネの種とムギの種を並べて、イネの種だけ水中でも発芽するところを撮った写真が両者の違いをはっきり示していて良かった。陸稲でも水中でやっていけるポテンシャルは残っているのかな。

関連書評
そだててあそぼう7〜ムギの絵本 よしだひさし・へん/めぐろみよ・え

ムギの一生 (科学のアルバム)
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霊長類図鑑 公益財団法人 日本モンキーパーク編

「サルを知ることはヒトを知ること」霊長類学と深い関わりを持ち続けてきた日本モンキーパークが送る霊長類図鑑。図鑑部分よりも図解部分の方が大きく、研究の上で興味深い情報をとりあげている。
 チンパンジーとニホンザルは扱いが大きい。
 地域ごとに異なるチンパンジーの文化的行動が、わかりやすくまとめられていた。人間に比べてしまうと大人しい気がするが、人間に比較できる時点で特異と考えるべきかな。
 ヤクシカに騎乗するヤクシマのニホンザル亜種が、牧畜に目覚めないものか。そういえばシカ牧場の必要性を訴えている本があった。牧羊犬ならぬ、牧鹿猿が仕込めれば!?

 図鑑の情報だけでも軍隊アリの後を追いかけて驚いて飛び出す昆虫を食べる事例が観察されたサルがいたり、霊長類の賢さ・柔軟性が分かる本だった。著者の中にはチンパンジーを匹じゃなく人で数える人まで出ている。
 日本モンキーパークには人が少ないときに行ってみたいなぁ。

霊長類図鑑―サルを知ることはヒトを知ること
霊長類図鑑―サルを知ることはヒトを知ること
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美しき捕食者サメ図鑑 田中彰

 シロワニの出生が恐ろしい。子宮の中で子供たちが共食いをおこない、一匹のみが出てくるなんて……女王アリが同時に羽化すると殺し合いを始めることに、ちょっと似ている。こういう生態をもつ生き物が知性をもってしまったら、倫理観は人類とは相容れないだろう。
 ダルマザメの回転切り取り喰いが怖い。こんな喰い方をされてしまったら、傷の治りが悪そう。

 図鑑の方は他の本に被っている部分が結構あった。ホホジロザメをサメの代表として、いろいろな生態の説明をしている最後の章は勉強になった。
 やはりホホジロザメよりシャチの方が上位の存在で、ホホジロザメをなぶり殺しにしたり、子供を守るため優先的に「駆除」する事例もあるらしい。
 そんなシャチよりもホホジロザメの存続にとって恐ろしいのは人間なのだが……中国のフカヒレ需要は何とかならないものか。

 身体を温める特殊なシステム「奇網」をもっている点でもホホジロザメ(の仲間たち)は興味深い。

関連書評
世界の美しいサメ図鑑 仲谷一宏・監修被る情報が多い

美しき捕食者 サメ図鑑
美しき捕食者 サメ図鑑
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道具を使うカラスの物語 パメラ・S・ターナー

「生物界随一の頭脳をもつ鳥カレドニアガラス」アンディ・コミンズ撮影、グイード・デ・フィリッポ挿絵、杉田昭栄・監訳、須部宗生、翻訳。

 著作の関係者が多い!ここにさらにはカレドニアのフィールドで長年カラスの道具研究を続けてきたギャビン・ハントの名前を挙げなければなるまい。
 カラスの道具が発展することを突き止めようとするギャビンの根気強い研究には野外生態学者魂を感じてしまう。

 舞台はフランス領のニューカレドニア島であるが、研究者はニュージーランドのオークランド大学関係者が中心になっている。氏より育ちというか、遠くの親戚より近くの他人状態で研究環境も興味深かった。
 野焼きによってニューカレドニアの貴重な森林が失われている事実、その野焼きが外来種である野生ブタを狩るために行われている事実も、覚えておきたい。そもそも持ち込まれていなければ……。

 さて、本題であるカラスの賢さについては、与えられた問題を論理的に考えて、必要な段階を次々と解決していく能力があることが示されている。道具をくちばしの右にもつか、左にもつかの好みがあることも面白かった。
 人間に右利きが多いのは左脳が言語に関わっているからと聞くが、カレドニアカラスの場合は?今後の研究が楽しみだ。

関連書評
科学者の目、科学の芽 岩波書店編集部・編

道具を使うカラスの物語 生物界随一の頭脳をもつ鳥 カレドニアガラス
道具を使うカラスの物語 生物界随一の頭脳をもつ鳥 カレドニアガラス
カテゴリ:生物 | 20:37 | comments(0) | trackbacks(0)

世界の美しいサメ図鑑 仲谷一宏・監修

 魅力的な海の生き物サメ。その写真とプロフィールがたくさん紹介されている。危険性を五段階で評価した項目がある点が特徴で、ホホジロザメやイタチザメはもちろん、オオメジロザメやシロワニが危険なことも覚えた。ホホジロザメ級に危険との情報もみたことがあるシュモクザメは、そこまで高い脅威度で扱われていなかった。
 シロザメとシロワニが別種として存在することがややこしい。生物の名前にはよくあることかもしれないが。

 ジンベエザメは日本国内には展示している水族館が複数あるけれど、世界的には少ないとのこと。地図も載っているので近くにあったらラッキーだ。巨体でも海棲ほ乳類よりは食事量が少なくて済むのだろうな。
 サメのいる水族館では茨城県大洗水族館アクアワールドが飛び抜けて種類が多かった。対抗できそうなのは海遊館や神戸市立須磨海浜水族館あたりか。

 写真には可愛いものから怖いものまで、いろいろなサメのいろいろな「顔」が写っていて彼らの「表情」をおもしろく感じた。自分が一般的な硬骨魚類よりもサメの方に表情を感じるのは何でだろうな。目かな?
 イタチザメの写真などいろいろなものが写った水中写真の中には、なぜか模型っぽく見えるものもあった。

関連書評
ホホジロザメ〜恐怖の殺戮マシーン ナショナルジオグラフィック
サメの素顔 ナショナルジオグラフィックDVD

世界の美しいサメ図鑑
世界の美しいサメ図鑑
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タガメとゲンゴロウの仲間たち 市川憲平

 琵琶湖博物館ブックレット6
 環境の変化によって急速に数を減らしてしまっている日本最大級の大型昆虫。タガメやゲンゴロウを中心に、水生昆虫の生態を解説する本。
 特にタガメは共食いをしたり、雌による卵塊破壊行動が見られたり、過激な生き物であった。マムシを襲って食べちゃうことまであるとは……。

 そんなタガメたちもウシガエルなど外来生物が相手では分が悪く、水田の乾田化、農薬の使用などもあって厳しい状況だ。外来生物の密放流がある一方で、コレクターに乱獲までされているのだから、人間の身勝手さをここまで味わっている生物も少ないのではないか。
 かなり悲観的になってしまうけど、著者によるタガメビオトープの活動など、光明も少しだけ見えている。もともと水田がなかった時代には湿地で繁栄していた生物だろうから、水田に棲めなくなったときに湿地を破壊してきた人間が最低限の住処を提供したいところだ。

関連書評
水生昆虫2 タガメ・ミズムシ・アメンボ ハンドブック

タガメとゲンゴロウの仲間たち (琵琶湖博物館ブックレット)
タガメとゲンゴロウの仲間たち (琵琶湖博物館ブックレット)
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ときめくクラゲ図鑑 峯水亮 山と渓谷社

 著者が自ら撮影した主に日本近海のおもしろいクラゲを収録した図鑑。刺胞動物門と有櫛動物門が両方出てきて、順番も混ざっている。
 どちらもクラゲと呼ばれているからしかたない?でも、軟体動物門のクラゲがついた連中は、コラムで名前が取り上げられただけだった。なぜなのか。

 ポリプが銀貨の形をしたギンカクラゲが面白かった。有毒に分類さているが、おもわず触ってしまって被害にあう人はいるのかな?ポリプだから大丈夫?
 アカクラゲのハクションクラゲぶりは中世以前なら兵器に利用できそう。エチゼンクラゲに刺されまくると、中華でクラゲを食べてもアナフィラキシーショックが起きるようになることもあるらしいし、クラゲとの関わり方はなかなか大変だ。
 だからと言って拒絶することなく、関心をもってつきあって行きたい生き物である。

関連書評
危険生物ファーストエイドハンドブック海編 NPO法人武蔵野自然塾
生命ふしぎ図鑑〜発光する生物の謎 マーク・ジマー

ときめくクラゲ図鑑 (ときめく図鑑)
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