京都時代MAP 幕末・維新編

 幕末の京都、お寺多すぎ……!
 当時の地図をみることでわかる幕末京都の姿であった。大名の屋敷もそれなりにあるが、敷地の広さが石高に比例しているとは言えない。おそらく江戸とは違い、京都とのつながりには藩によって軽重があったことが伺える。大坂をふくめて藩邸の敷地面積と石高をならべたら、おもしろい資料になりそうだ。

 後半で幕末京都事件について蛤御門の変や鳥羽伏見の戦い、新撰組関連が取り上げられている。
 坂本龍馬暗殺に関しては石碑で中岡慎太郎の名前が坂本龍馬と同じサイズで彫られていることに感心した。コナクソ発言の犯人はよくわからない。見出しに下男の籐吉が暗殺されたと書かれている割りに、詳述では彼が殺された経緯が見られず気になった。

 新撰組の隊士数はMAXで200名だったようで、鳥羽伏見の戦いにみる各藩の兵力から考えれば、確かに無視できる人数ではない。
 鳥羽伏見の焼失地域には大きい建物が比較的多い感じがした……現代のマクドナルドやヴィクトリア、アルペンが幕軍部隊指揮官の名前にみえて混乱した。てっきり軍事教練に雇った外国人かと。

関連書評
京都時代MAP 平安京編
ドキュメント幕末維新戦争 藤井尚夫

京都時代MAP 幕末・維新編 (Time trip map)
京都時代MAP 幕末・維新編 (Time trip map)
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京都時代MAP 平安京編

 ずっと東寺が廃れない!すごいぞ、東寺!しぶといぞ、東寺!本編では特に言及されていないぞ!

 平安時代を前中後の三つにわけて、京都の変化を地図にした本。それぞれの時代における重要な変化もまとめている。

 平安時代前期は藤原氏が支配し、唐風から国風への転換があった。その象徴として漢文に詳しかった菅原道真の左遷があげられている。しかし、遣唐使をやめさせたのも菅原道真ではなかったか。民間交流が活発になったからなどの理由があっても、そこに触れていない本書の主張を素直に受け止めることは出来なかった。

 中期は源氏物語に関する情報がメイン。人物相関図をみているだけでクラクラしてくる。親子連続で関係をもつことが、姿も似ているのだから自然、みたいな?源氏物語が当時の常識的感覚を描いていたはずもないが、これにあこがれ、受け入れられる土壌はあったのだな。イラストのせいか、朧月夜がいちばん魅力的にみえた。
 春夏秋冬をイメージした六条院に愛人を配置したことは、もし男性がなろう小説で書いたら目立ったときに相当いわれるやつだ……紫式部は現代の自分すら置き去りにするほど尖鋭的すぎる。

 後期は武士の時代がやってくる。平清盛が六条河原の戦いに勝ってから、権力を完全に握るまでの間には二条天皇親政派との第二ラウンドがあったことを知った。
 運良く手に入れた権力であっても、完璧に固めて見せたことは、清盛が配置した建物の地図が語っていた。

関連書評
平清盛〜「武家の世」を切り開いた政治家 上杉和彦
図説源平合戦のすべてがわかる本 洋泉社ムック

京都時代MAP 平安京編 (Time trip map)
京都時代MAP 平安京編 (Time trip map)
カテゴリ:日本史 | 20:06 | comments(0) | trackbacks(0)

土方歳三〜洋装の武士として散った漢の一徹 歴史群像

 内部粛正の嵐に、敗戦の連続。判官贔屓の日本人でもついていくのが大変になるのに大人気の新撰組副長、土方歳三を特集した本。大勝利といえるものが池田屋事件しかなく、そこでは土方は別働隊をひきいて参加していない。
 宇都宮城を陥落させてもすぐに奪い返されてしまっており、なかなか結果に繋がらない。

 そういう見返りの少ない人生でもめげずに最後まで戦い抜いたことが凄い。現代人として見習いたい意気を秘めた人物である。
 日常的には優しげで文学をたしなむ繊細な人物だった一面もあるというから、なおさら現代人には身近に感じられる。鬼副長がある種のペルソナだったとしたら、よく被り抜いたものである。武士の夢はそれほどに大きかったのか。
 一部の記事では他とまったく方向性が違って、土方歳三は武士になることに価値を認めていなかったと書いていて、それはそれで興味深かった。

 まったくたいした人物だが、それでも新撰組の内輪もめでの死者21人、志士との戦いでの死者6人の結果はしまらないものがある……。
 あと、漫画「PEACE MAKER」に描かれた池田屋事件を思い出して、負傷記録に対して非常に正確に殺陣を作っていたことがわかって感心した。

土方歳三―洋装の“武士”として散った漢の一徹 (新・歴史群像シリーズ 13)
土方歳三―洋装の“武士”として散った漢の一徹 (新・歴史群像シリーズ 13)
カテゴリ:日本史 | 23:52 | comments(0) | trackbacks(0)

今川氏滅亡 大石泰史 角川選書

 明治20年に断絶した今川氏の戦国大名としての滅亡を描いた学術的な一冊。駿河における今川氏のはじまりから、氏真の最後までを丹念に追っている。
 丹念すぎて新しい人物の名前が出るたびに、書状などの痕跡をおいかける話になりがちだった。それはそれで興味深いのだが、なかなか本筋に勢いがつかない。

 とりあえず今川氏真が衰退していく今川家を何とかしようと、あがいた様子はイメージできた。相手が悪いと言っても、武田信玄が裏切らなければ、徳川家との闘争は長く行えたかもしれない。三河における戦いは、徳川家が圧倒していたわけじゃなくて、今川家の勝利もあったこと、氏真が三河に出馬したときは一時的に盛り返したことが本書で紹介されている。
 それこそ織田家にとっての徳川家の立場に、北条家にとっての今川家がなりそうだが……信玄の判断は正しかった?
 まぁ、本拠地を駿河から西に進められなかった時点で……徳川家は本拠地移動をしたせいで浜松派と岡崎派が対立したらしいし、歴史があるだけに今川家にはリスキーすぎたのかもしれない。

 著者は最後に今川氏の「滅亡」原因は、人材の枯渇にあるとの考えを披露していた。名門の今川家でも人材の層は意外と薄くて、国衆に頼らないといけない面もあったようだ。
 領国を失った後も上杉家に前と同じ形式の書状を送って怒られたエピソードは著者のいうとおり人材の枯渇が原因なのかもしれないが、家康に昔のままの態度で接して辟易させたという氏真の逸話も思い起こさせた。
 名門出身なのに形式へのうるささが足りなかった?決めるところでは意外としっかりしている信長と印象が反転してきそうである。

関連書評
東国武将たちの戦国史 西股総生
徳川四天王と最強三河武士団 双葉社
武田信玄〜武田三代興亡記 吉田龍司

今川氏滅亡 (角川選書)
今川氏滅亡 (角川選書)
カテゴリ:日本史 | 21:03 | comments(0) | trackbacks(0)

図説 室町幕府 丸山裕之

 足利尊氏にはじまって、足利義昭に終わる。
 室町幕府の姿をトピックスごとに整理した本。
 室町幕府の歴史もそれなりに長く、時代時代(というより将軍)によって、変化している部分もある。その横糸をつなげて見るためには多少難しいところもあるが、非常にわかりやすくまとまっている本だった。

 幕府側からみれば、ともかく鎌倉府の動きが厄介で、常に中央の権力から離れようとする遠心力が働いている。
 鎌倉に幕府を置けなかった反動ともいえるが、実際に鎌倉を本拠にしていたら、今度は畿内が落ち着かなかったかもしれない。江戸幕府は室町幕府のそういう反省をふまえて成立していると考えると、さらに興味深い。

 室町幕府の収入源は金融業者への課税が大きなボリュームを占めていたらしく、それを徳政令でつぶしてしまってからは、どんどん財政的な裏付けを失っていったようだ。でも、徳政令を出さなければ民衆から見限られて、もっと早くに命脈が断たれていたかもしれない。国家経営の道は厳しい。
 財政管理まで民間業者に任せていたところはヨーロッパの王家を連想させるものがあった。

 将軍についてはほとんど知らなかった将軍でも、新しいことを試みていることが分かった。足利義教が目立つが、他の将軍もおもしろい。
 合戦・政争のまとめでは、内乱がけっこう起きていて、室町幕府が順調な時代は、それを圧倒的な兵力で押しつぶすような戦いができていたことも分かった。
 半将軍、細川政元のクーデターがエグい。
 すっきりまとめられると問題児の足利義政が割とまともに見えてしまう点は注意が必要だろう――もともと著者はかなり義政に同情的な様子。

関連書評
破産者たちの中世〜日本史リブレット27 桜井英治
足利義政と日野富子 田端泰子

図説 室町幕府
図説 室町幕府
カテゴリ:日本史 | 23:14 | comments(0) | trackbacks(0)

古地図で楽しむ尾張 溝口常俊・編著

 尾張国絵図と吉田初三郎の俯瞰図など古地図と比較して現在の尾張の姿を楽しむ。吉田初三郎がやたらと活躍していると思ったら、名鉄とは深いつながりがあって、一時期名鉄が仕事場を吉田初三郎に提供していたのであった。おかげで周辺地域にはたくさんの絵が残ったことを考えれば、すばらしい判断である。

 一方、戦争で一宮線を単線化して軌道を拠出したり、運行停止した線路をそのまま廃線にした判断は……流れ上しかたなかったのかもしれないが、戦争さえなければ違った輸送網の姿がありえた気がして寂しくなる。

 濃尾地震に関連して名古屋城の石垣が崩れていて、積み直したところは落とし積になっていることを知った。天守の木造再建より先に、時代考証が正しい積方に直すべきではないか?いづれは孕みが生じて工事が必要になるので、その時に直せばいい考えなのかなぁ。

 最後に出てきた田圃の真ん中にある畑「島畑」が意識していなかった日本の伝統景観として興味深かった。畦につなげて畑にしたほうが手入れのための移動も楽なのにあえて田圃の真ん中に作った理由が気になる。そういう形ならコンバインのスロープとして残ったと思われる。
 農薬もない時代だから雑草対策はあるかもしれない。アイガモ農法でアイガモ用の島にできればいいのだが……。

関連書評
名古屋 時代MAP「江戸尾張編」

古地図で楽しむ尾張 (爽BOOKS)
古地図で楽しむ尾張 (爽BOOKS)
カテゴリ:日本史 | 17:54 | comments(0) | trackbacks(0)

出雲王と四隅突出型墳丘墓〜西谷墳墓群 渡辺貞幸

 シリーズ「遺跡を学ぶ」123
 弥生時代に栄えた出雲地方。そこには独特の形状をもった「四隅突出型墳丘墓」が造営されていた。巨大な四隅突出型墳丘墓から古代出雲王の勇姿を描き出す。
 まぁ、朱(辰砂)を入手するため奴隷貿易をおこなっていたとの推測が述べられていたおかげで、あまり印象は良くなかったけれど……この時代にはどこの勢力もやっていたことっぽいとはいえ。
 岡山県や新潟県の勢力と同盟関係があったらしき情報には心が躍った。この三国が連合して対抗した勢力があったとすれば、その位置は?遠交近攻が入り乱れていた可能性もあるので、もっと情報がほしい。

 四隅突出型墳丘墓が特徴的な形状をしている理由は、突出部につながるラインが道として使われていたからだった。道なら1方向にあれば十分にも思えるが、他国からの参列者用にも道を築いたなどの事情もあったのかもしれない。
 上りと下りで別の道を使うしきたりになっていた可能性もある。
 地図によれば四隅の方角については西谷でも揃っていないようだった。そこは地形的な制約が強そうだ。

 盗掘の気配がないこちは立派な反面、開発によるダメージはけっこう受けている。中でも9号墳が神社の施設で景観を壊されてしまったことが印象的だった。
 他の巻にも神社に被害を与えられた遺跡の話があったような……。

関連書評
吉備の弥生大首長墓〜楯築弥生墳丘墓 福本明:出雲王と一時的な同盟関係にあったと推測される首長
出雲国風土記と古代遺跡 勝部昭 日本史リブレット13
九州の銅鐸工房〜安永田遺跡 藤瀬禎博 遺跡を学ぶ114

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

出雲王と四隅突出型墳丘墓 西谷墳墓群 (シリーズ「遺跡を学ぶ」123)
出雲王と四隅突出型墳丘墓 西谷墳墓群 (シリーズ「遺跡を学ぶ」123)
カテゴリ:日本史 | 22:35 | comments(0) | trackbacks(0)

国宝「火焔型土器」の世界〜笹山遺跡 石原正敏

 シリーズ「遺跡を学ぶ」124
 日本の縄文時代を代表する火焔型土器。しかし、その分布は地方に限られていて、新潟県周辺に特徴的かつ数百年の短期間のみ作られた土器なのであった。
 縄文人がみんな火焔型土器を使っていたと思いこむと間違える。火焔型土器が祭祀用でまったく使われていなかった可能性は炭化物の付着で否定されていた。
 それでも特別な儀式にかぎって煮炊きされた可能性は残るが。

 国宝「火焔型土器」とは言うが、単体の火焔型土器が国宝になっているわけじゃなくて、複数の火焔型土器のみならず他の出土品もセットで国宝指定されていることを知った。
 重要文化財では遺跡を学ぶシリーズでも、よく出てきた話なので、国宝においても扱いは同じなのだと分かる。そんな重要な出土品あった遺跡なのに、運動場など建設による破壊は中止できなかったことが残念だ。

 地震によって火焔型土器がダメージを受けた話もショッキングだった。
 著者が学んでその後の地震では効果のあった地震対策が世界中の博物館で使われることを願う。

関連書評
国宝土偶「縄文ビーナス」の誕生〜棚畑遺跡 鵜飼幸雄
国宝土偶「仮面の女神」の復元〜中ッ原遺跡 守矢昌文
つくってあそぼう29〜やきものの絵本 よしだあきら・へん

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

国宝「火焔型土器」の世界 笹山遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」124)
国宝「火焔型土器」の世界 笹山遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」124)
カテゴリ:日本史 | 21:10 | comments(0) | trackbacks(0)

よみがえる古代山城〜国際戦争と防衛ライン 向井一雄

 白村江の戦い以降、唐の侵攻に備えるため日本国内に築かれたと通説で言われていた古代の山城(さんじょう)。中世以降の山城とは系統のことなる技術でつくられたそれらの分布や研究史がまとめられている。
 文献に載っていない古代山城は「神籠石系山城」と呼ばれ、わけて考えられてきた歴史があるが、その分類も変化していて謎の多い存在である。
 そもそも築かれた年代すらはっきりしない山城が多い。
 その辺りの事情が著者の視点から整理されている。

 低地に位置していて、土塁が街道側の正面にしかない「びんぼっちゃま」状態の防御態勢になっている城の存在が興味深い。
 まるで古墳における「正面」論だと両者をつなげて考えていた。在地勢力の力を削るために築かれたなら戦国時代の築城につながる部分もある。外敵への対応をテコにして支配体制を深めていったとすれば、鎌倉時代の元コウとも結びついてくる。
 逆に考えれば古墳造営は在地勢力の力を削ぐ目的もあった?などと思索が広がるが、ようするに日本社会にくりかえし表れるパターンに古代山城も沿っているのかもしれない
 ただし、解釈する側がそういう風に考えてしまいがちな可能性もある。

 韓国における城郭研究が進展したことで両国の山城の比較からより多くのことが分かってきた。中国東北部の城も注目らしい。朝鮮民主主義人民共和国だけが古代城郭研究の空白になっている……せめて人工衛星画像解析から補完できるといいのだが。
 また日本の中世・近世の城郭研究家と連携して古代山城を研究することの必要性も説かれていた。

 朝鮮半島における三国やボッカイに、唐と日本が絡んだ古代の国際的な政治環境もとても興味深かった。もっとも、唐は朝鮮半島以外にも戦線をもっていて統一新羅との戦争を切り上げたのは、そちらに注力するためだったというから、やはり巨大である。

関連書評
日本の城[古代〜戦国編]〜知られざる築城の歴史と構造 西ヶ谷恭弘・香川元太郎
戦国の堅城〜築城から読み解く戦略と戦術

鬼ノ城 発掘報告書:本書の中で言及されていた報告はこれだろうか。

よみがえる古代山城: 国際戦争と防衛ライン (歴史文化ライブラリー)
よみがえる古代山城: 国際戦争と防衛ライン (歴史文化ライブラリー)
カテゴリ:日本史 | 00:50 | comments(0) | trackbacks(0)

図解 地図で読む「古事記」「日本書紀」 武光誠

 古事記と日本書紀を図解してわかりやすく紹介する本。わかりやすさにつとめるあまり諸説ありそうなことでも言い切ってしまっていたりするので注意が必要。
 陵墓について、そのままとしている?微妙に国粋主義のニオイがする……。まぁ、一通りの基礎知識をえるのには、それなりに良さそうだった。

 日本神話の神剣といえば草薙の剣ばかりがクローズアップされるけれど、神武天皇がアマテラスから送られた「ふつのみたま」という剣もあるのか。
 四道将軍もなかなか響きがカッコいい。創作でなんで使われていないのと言ってみると、使われているのを知らないだけの予感。

 バナナ型神話や呪的逃走など世界の神話との共通点も整理されている。古代イランが神話の発祥地になることの多さも興味深い。
 呪的逃走は自分がタイトルを思い出せなかった昔話が「三枚のお札」であることも教えてくれた。関東の昔話だったんだ。

関連書評
筑紫君磐井と「磐井の乱」〜岩戸山古墳 柳沢一男
地図で読む「古事記」「日本書紀」 武光誠:たぶん旧版

【図解】地図で読む『古事記』『日本書紀』
【図解】地図で読む『古事記』『日本書紀』
カテゴリ:日本史 | 21:19 | comments(0) | trackbacks(0)
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