中世の都市と非人 武家の都鎌倉・自社の都奈良 松尾剛次 法蔵館文庫
2024.03.07 Thursday | by sanasen
25年前の著書の文庫化(文庫版は2024年1月発行、あとがきは8月に書かれているので2023年?)。鎌倉仏教が生まれた鎌倉時代の鎌倉と奈良の都市が出てきて、新しい時代の仏教が非人救済のために行った活動とその論理や背景が分析されている。
鎌倉の部分と奈良の部分が綺麗に結びついているとは言えず、鎌倉における御所の場所特定などは割と距離があるようにも感じられた。鶴岡八幡宮での僧の活動を考える上で意味はあるんだろうけど……。
鎌倉と奈良をつなぐのは北条時頼に強い影響を与えた僧侶、叡尊で、叡尊・忍性の活動を軸にまとめるなら、もう少し読みやすい形になったんじゃないか。やはり研究発表の場でもあることが構成に影響しているのかな……知りたいことが他の著書に書かれていそうな部分もあった。
著者がいう西大寺の叡尊教団による非人救済は、鎌倉幕府にとって教団を通して非人を統制できるメリットがあったと書かれていて、叡尊は勢力拡大のために非人を利用したようにも感じられてしまいかねなかったのだが、弱者救済的な側面の説明は控えめだった。
まとまなどで非人を人間扱いされる枠に引き戻したと叡尊の活動を評価しているので人道的な側面もちゃんとあったとは思われる。
律僧が戒律の力によって穢れから守られているとの論理を使って、官僧とは違って弱者救済の活動ができたことが興味深かった。
鹿が寺で死んでいるのを処理させるのに、官僧が穢れを避けるために律僧・非人の手を使ったことが、最近の保護鹿死亡問題まで思い出させて変な気分になった。著者はあとがきでO-157や新型コロナウイルスの感染者に対する差別に言及していて、現在が癩病患者が非人とされた時代の連続線上にあることを指摘していた。
だからこそ過去に学ぶこともできるとポジティブに考えたい……。
鎌倉の部分と奈良の部分が綺麗に結びついているとは言えず、鎌倉における御所の場所特定などは割と距離があるようにも感じられた。鶴岡八幡宮での僧の活動を考える上で意味はあるんだろうけど……。
鎌倉と奈良をつなぐのは北条時頼に強い影響を与えた僧侶、叡尊で、叡尊・忍性の活動を軸にまとめるなら、もう少し読みやすい形になったんじゃないか。やはり研究発表の場でもあることが構成に影響しているのかな……知りたいことが他の著書に書かれていそうな部分もあった。
著者がいう西大寺の叡尊教団による非人救済は、鎌倉幕府にとって教団を通して非人を統制できるメリットがあったと書かれていて、叡尊は勢力拡大のために非人を利用したようにも感じられてしまいかねなかったのだが、弱者救済的な側面の説明は控えめだった。
まとまなどで非人を人間扱いされる枠に引き戻したと叡尊の活動を評価しているので人道的な側面もちゃんとあったとは思われる。
律僧が戒律の力によって穢れから守られているとの論理を使って、官僧とは違って弱者救済の活動ができたことが興味深かった。
鹿が寺で死んでいるのを処理させるのに、官僧が穢れを避けるために律僧・非人の手を使ったことが、最近の保護鹿死亡問題まで思い出させて変な気分になった。著者はあとがきでO-157や新型コロナウイルスの感染者に対する差別に言及していて、現在が癩病患者が非人とされた時代の連続線上にあることを指摘していた。
だからこそ過去に学ぶこともできるとポジティブに考えたい……。