知られざる弥生ライフ 誉田亜紀子

 弥生時代のイラスト概説書。弥生土器にも縄文のついたものがあることをフックに、弥生時代への関心を誘っている。
 マニアックな部分にまで言及していて、戦争で殺害された死体のレポートは、ゆるいイラストで見るのがちょど良かったかもしれない――人骨の写真も出てくるが。
 大量の鏃を打ち込まれた人は、戦闘の結果というよりも処刑であり、呪術的な意味も込めて、ああいう形になったのではないかなぁ。生前に受けた矢か、死後に受けた矢か、鑑定できないことが残念だ。

「卑弥呼の住まい」イラストは大阪府弥生文化博物館の想像復元模型を更にイラスト化しているため、参考にしてはいけない感じがした。あまりにも足場にするものが不安定で、空中に浮いているかのようだ。
 復元模型の制作経緯を聞けば、多少は印象が変わるのかな?

 縄文時代の土偶と石棒は別系統の祭祀だったらしいが、弥生時代の祈りでは男女一対の思想が強くなってきている点も興味深い。両者の関係に何か変化があったのだろう。

知られざる弥生ライフ: え? 弥生土器なのに縄文がついたものがあるって本当ですか!?
知られざる弥生ライフ: え? 弥生土器なのに縄文がついたものがあるって本当ですか!?
カテゴリ:日本史 | 10:27 | comments(0) | trackbacks(0)

知られざる縄文ライフ 誉田亜紀子

 縄文時代の最新研究をわかりやすく紹介する本。縄文時代に興味があるのに、学校で習ったことから知識がアップデートされていない人に向いている。

 極一部のシャーマンがつけていたであろう漆塗りの櫛が一般的な装飾品に感じられてしまう描写があったり――別のところではヒスイなどは特別なアイテムだと説明はされているのだが――注意が必要に感じられる部分も見受けられる。
 婿通い婚だった可能性を示しておきながら、交易のついでに嫁入りする女性のイラストがあったりもした。そういう例も普通にあっただろうけど。
 ……あれだけ長い時代と広大な地域を一冊にまとめることの難しさを感じる。

 一番興味深かったのは縄文時代の服作成に掛かるコストで、一日8時間編むとしても1年以上かかるそうだ。
 まぁ、戦国時代でも農民は悪くすれば一生に一着に近い状態だったらしいからなぁ……現代との差がとても大きい分野である。

知られざる縄文ライフ: え?貝塚ってゴミ捨て場じゃなかったんですか!?
知られざる縄文ライフ: え?貝塚ってゴミ捨て場じゃなかったんですか!?
カテゴリ:日本史 | 06:21 | comments(0) | trackbacks(0)

縄文時代の歴史 山田康弘

 縄文時代の歴史を通観しようとする意欲的な文庫。そして、「縄文文化」の呪縛を解き、各地の文化を再認識する。
 個人的には下った時代の「弥生文化」を地域ごとに分類して、そこから「縄文文化」の解体に向かった方が同意してもらいやすい気がする。情報量の関係もあって。

 縄文時代の社会がユートピアだったとは思っていなかったが、結婚が部族主体で行われる政治的意味合いが強いものだったとの解釈には衝撃を受けた。人間そのものが交換財というエグさは古い時代には避けられない……。
 まぁ、縄文時代のはじめほど婿入り婚が多かったみたいで、その場合に交換されるのは男性になるのだが。
 ストロンチウムを利用した人骨の出身地分析はどんどん広がってほしい研究手法だ。人と物の交流が縄文時代を解く鍵になるというよりも、交流中心で見るしかないのかも。

 定住が生み出すゴミや人間関係ストレスの問題が社会を複雑化させる現象も興味深かった。「日本人」が社会で受ける苦しみは、この頃から始まっていたとも言えてしまうかもしれない。

縄文時代の歴史 (講談社現代新書)
縄文時代の歴史 (講談社現代新書)
カテゴリ:日本史 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0)

必見!関ヶ原 監修 小和田哲男 発行 岐阜県

 関ヶ原合戦に絡めて関ヶ原を観光するときに便利なハンドブック。関ヶ原合戦の概要が、それまでの流れまで含めて簡潔に説明されている。また、目立った武将についての説明もある。
 まとめられると島津勢が天下分け目の戦いにおいて私情に囚われる身勝手な連中に思えてきた……小早川勢よりも思い切りが悪いようにすら見えてしまう。島津も最初から迷走しているからなぁ。最後に見せ場を得られなければ、なんと言われていたことか。

 小早川への問い鉄砲はなかったとされると説明しながら、その後の説明では繰り返し問い鉄砲のことが出てくる。
 これでは検証よりもイメージの方が強くなってしまう。
 そもそも関ヶ原合戦の展開自体が疑問をもたれてきているので、流布した通説どおりの方が、関ヶ原の観光にとっては都合がいいのだろうと斜に構えた見方もしてしまった。

 関ヶ原を歩き回るときに巻末資料を利用しなければ、島左近を撃った黒田隊の管六之助の名前がいちばんの収穫かもしれない。

関連書評
戦国の陣形 乃至政彦
フィールドワーク関ヶ原合戦 藤井尚夫

必見! 関ケ原
必見! 関ケ原
カテゴリ:日本史 | 09:15 | comments(0) | trackbacks(0)

新版 縄文美術館 写真 小川忠博 監修 小野正文・堤隆

 縄文時代の出土品は幅広い。ひとつの遺跡、ひとつの地域、ひとつの時代に固まっていないこともあるのだろうが、同じ縄文土器でも非常に多彩なものが収録されていて感心した。
 他に例のない「作品」も多くあることに注意が必要だが、同時に土器以外の大半が朽ちてしまった生活用品があったことも意識すれば、それなりに物のある生活をしていたのかもしれない。
 これなら定住生活にもなると納得する。

 豪華な土器は特別なときだけで、普段は質素な土器を使うような発想がなかったらしい点が気になる。おそらく、自分で作ったものだから、そういう使い方になるのか?

 モースが縄文土器の命名者であったり、土器に残った指紋から現代の指紋鑑定のヒントをもたらしていたり、改めて偉大さをみせつけていた。時代もあるのかもしれないが、凄い人だ。

関連書評
ここまでわかった!縄文人の植物利用 工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館 編
日本考古学の原点〜大森貝塚 加藤緑
縄文の女性シャーマン カリンバ遺跡 木村英明・上屋眞一

新版 縄文美術館
新版 縄文美術館
カテゴリ:日本史 | 20:05 | comments(0) | trackbacks(0)

歴史家と噺家の城歩き〜戦国大名武田氏を訪ねて

 中井均・春風亭昇太・斉藤慎一
 山梨県で五つの城を、城郭研究家の二人と城巡りを趣味にする噺家が巡検したところを書き起こした本。タイトルになっているのは躑躅ヶ崎・要害山・白山城・新府城だが、新府城の前にみた能見城のあつかいも大きい。歴史群像では能美長塁の名前で取り上げられていた土木構造物だ。
 おそらく明らかに武田氏の造ったものではないため、本のタイトルにそぐわなかったこともあってか、新府城の章に組み込まれている。あと、未完成だった新府城で話すことが少ない。

 あーでもない、こーでもないと話し合って、それぞれの城をみていくのだが、「正面」「築造者」あたりの議論は必ず出てくる。
 正面は現代人が囚われているだけで当時の人には、強いこだわりはなかった可能性はないのかなぁ。それはそれで議論を投げている?
 築造者については杉山城問題を知った後では慎重になってしまう。しかし、何も言えないのも困ることも理解できる。確証が得られる山城は少ないだろうし、困ったものである。

 正直、話の内容については理解の追いつかないところがあったけれど、城関係の復元イラストを見直してみたい気持ちにさせられる本だった。

関連書評
愛知の山城ベスト50を歩く 愛知中世城郭研究会・中井均
三重の山城ベスト50を歩く 福井健二・竹田憲治・中井均 編

歴史家と噺家の城歩き (戦国大名武田氏を訪ねて)
歴史家と噺家の城歩き (戦国大名武田氏を訪ねて)
カテゴリ:日本史 | 22:38 | comments(0) | trackbacks(0)

戦国の城の一生〜つくる・壊す・蘇る 竹井英文

 「杉山城問題」によって引き起こされた議論をとっかかりの一つに、戦国時代における城の利用をみていく本。
 江戸時代じゃなくて戦国時代の城なのに、軍事的なイメージが薄くて(間接的というべき)新鮮な城の一面を知ることができた。杉山城問題みたいな城の編年と築城者の特定問題は、根本的には「金がない」に尽きてしまいそう。
 潤沢な資金があって専門研究者がいれば、片っ端から発掘調査と炭素年代測定法を使って、面倒な議論を吹き飛ばしてしまえる。それができず在野の研究者に活躍する余地があることは困ったものだが、おもしろい。
 今後もなかなか大量の資金を投入しての研究とはならない気がする。ただ、少しずつは増えていくはずで、そこからの類推で戦国の城像が変化していくかもしれない。
 読んでいて、そんな予感も覚えた。

 「縄張り」が同時代にはあまり言われていなくて「鍬立」などの言葉が使われているなど、トリビアもあった。城内の草木は意外と残っていたそうで、むしろ竹木の存在が城主の繁栄と同一視される部分もあったという。
 「城をわる」行為については特に詳しく述べられていて、破城にもいろいろな段階があって、場合によっては――というよりも、もしかしたら頻繁に再利用される事例があったことが分かる。
 また城の選地は大名といえども自由にできるとは限らず、地元住民や寺社の抵抗に遠慮する場合もあるらしい。あるいは忌み地や縁起のいい土地もある。今後はそういうことも考えて城の立地を読み解かなければならないようだ。

関連書評
中世城郭の縄張と空間〜土の城が語るもの 松岡進
カラー図解 城の攻め方・つくり方 中井均・かみゆ歴史編集部
「城取り」の軍事学〜築城者の視点から考える戦国の城 西股総生

戦国の城の一生: つくる・壊す・蘇る (歴史文化ライブラリー)戦国の城の一生: つくる・壊す・蘇る (歴史文化ライブラリー)
カテゴリ:日本史 | 15:05 | comments(0) | trackbacks(0)

徳川綱吉〜犬を愛護した江戸幕府五代将軍 福田千鶴

 日本史リブレット人049
 生類憐れみの令でよく知られた犬公方徳川綱吉の人生観を読みとるリブレット。再評価がされてきているとは言っても、犬の維持費に年間9万8千余両を費やしたことには引いてしまう。将軍になってから二年目に年間10万石の維持費が掛かる安宅丸を破却したのは何であったのか?
 まぁ、箱物よりも動物愛護にお金を使ったと考えれば、ましなのかもしれない。ジャイナ教徒がインドでやっている動物の愛護施設を連想するなぁ。

 綱吉は兄綱重に跡継ぎがなかった上に、兄弟が死亡したため思いがけず将軍になった人物だった。そのため、権威において不安が残り、それを払拭するためにも儒教を利用した独特な権力構造を指向していく。同じくピンチヒッターだった吉宗の場合と比較しても面白いかもしれない。吉宗のために地均しをした部分はありそうだ。

 非常に穢れを嫌う性格をしていて、赤穂事件の処分にも、それが大きく影響した(処分の主な理由)との分析は興味深かった。でも、民衆まで綱吉の思想が伝わっていなかったのだろうな。
 「潔癖性」の綱吉の影響で城内は異様な雰囲気だったはずと著者は述べている。やっぱり、あまり下で働きたい人物ではない。

関連書評
はしかの脅威と驚異 山内一也 岩波科学ライブラリー26

徳川綱吉―犬を愛護した江戸幕府五代将軍 (日本史リブレット人)
徳川綱吉―犬を愛護した江戸幕府五代将軍 (日本史リブレット人)
カテゴリ:日本史 | 23:48 | comments(0) | trackbacks(0)

江戸の長者番付〜殿様から商人、歌舞伎役者に庶民まで 菅野俊輔

 江戸時代のお金のことをまとめた「下世話」な文庫。「江戸時代の100円ショップ」の定価4文を100円に換算して現代での金額も算出している。
 それで、そんなに外れていない雰囲気になっているから面白い。書く前にいろいろな換算方法を検討したんだろうな。

 江戸時代の格差は強烈であるが、将軍や前田家当主の収入を藩からの収入としてしまっているのは、いかがなものか。まぁ、現代の政治家や経営者とは感覚が違っていたことも確かとは思われる。
 というか、現代の政治家・官僚・経営者にも、ともすれば現代に生きる大名以下の倫理観の持ち主が……。

 越後屋あたりの大商人はさすがに豊かだった。千両役者や花魁も儲けている。
 江戸屋敷の留守居がやりたい放題なのは知ってた……諜報活動だから兵法を知っているほど歯止めが掛からない。

 庶民や隠居の生活費もあつかわれていて、江戸時代の人々を身近に感じることができた。

関連書評
近世村人のライフサイクル 大藤修 日本史リブレット39
近世商人と市場 原直史 日本史リブレット88

江戸の長者番付 (青春新書インテリジェンス)
江戸の長者番付 (青春新書インテリジェンス)
カテゴリ:日本史 | 23:36 | comments(0) | trackbacks(0)

古墳空中探訪[奈良編] 梅原章一 今尾文昭・解説

 奈良盆地に存在する多くの古墳を小型機で空中撮影した写真集。1970年代の写真がふくまれており、昔の奈良盆地の姿まで分かる。いくら史跡が豊富な奈良盆地といえども時間が止まっているわけではない。
 開発もあり、古墳の整備もあり、昔からここに住んで古墳を巡っている人には価値の高そうな本だった。
 奈良にほとんど足を踏み入れたことのない自分としても、疑似的な土地勘が養われる感じがした。

 黒塚古墳や藤ノ木古墳など重要な出土品で有名な古墳がしっかり撮影され、コラムで詳しく解説されている点もよかった。
 遺跡を学ぶシリーズでも著者の撮影した空中写真をそれと知らずに見ている予感がする。

 前方部の先端(濠のある場合は、濠を挟んだ位置)に拝所が作られていることも空中写真だと分かりやすくて印象的だった。深い緑に包まれた姿は昔のものではないが、灰色の石に覆われた姿だと町にとけ込んで全体的な配置は観察しにくいかもしれない。

関連書評
斑鳩に眠る二人の貴公子〜藤ノ木古墳 前園実知雄
筑紫政権からヤマト政権へ〜豊前石塚山古墳 長嶺正秀

古墳空中探訪 奈良編
古墳空中探訪 奈良編
カテゴリ:日本史 | 23:05 | comments(0) | trackbacks(0)
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