大唐帝国〜四海を照らす栄華を誇る王朝 新・歴史群像シリーズ

 遣唐使や玄宗と楊貴妃、エキゾティックな100万都市長安などの華やかなイメージに包まれた唐の時代がまとめられた本。
 科挙制度が始まったことも中国の歴史において画期である。しかし、科挙官僚をもってしても宦官の専横を押さえることはできず(科挙官僚は門閥貴族との戦いに忙しかった)大帝国は内側から食いつぶされていくのであった。

 安史の乱の解説を中心にソグド人が唐で果たした重要な役割も紹介されている。
 新しい血を入れ続けることは「異民族による征服王朝」の唐に必要だったに違いないが、ボタンの掛け違えで大変なことになってしまった。
 楊国忠などを重用しなければ……やはり間接的に楊貴妃が国を傾けたことになる。えこひいきはひいきする相手への毒にもなる。玄宗が相手を本当に思いやるなら?

 安史の乱以後も唐帝国はなかなかの粘りをみせていて、両税法などの改革も興味深かった。黄巣の乱における黄巣の滅びかたが単純ゆえに趣深い。安史の乱は内輪もめの連続で敵がつぎつぎと変わったからなぁ。もっとも、黄巣の乱も最初に離間の計が使われている。

 スチューデントが後梁を興してから、超教員が宋で中国を統一するまでが五代十国と覚えたら、ちょっと覚えやすそうと思った。でも、朱忠全じゃなくて、朱全忠なので語呂合わせに失敗している。

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永楽帝〜明朝第二の創業者 世界史リブレット人038 荷見守義

 朱元璋の建てた明帝国は二代目から大きくつまずく。皇太子が死去して、まだ若い孫を後継者にしなければならなかったのだ。毛利元就を思わせる状況だが、二代目建文帝の叔父は毛利両川のように甥を支えてくれなかった。
 とういよりも、建文帝の側から徹底的な実力者である叔父の排除に走った。かくして日本で言えばジンシンの乱にも似た構図で、皇帝の座をめぐる内戦が勃発して、叔父側の燕王――永楽帝が勝者となる。
 明の建国に絡む戦いも良く知らなかったが、さらに後継者争いの戦いが起こっていたとは知らず、とても新鮮だった。
 圧倒的な力を持つ建文帝に対して、動かせる人数が800人まで削られてから、ついに決起して厳しい戦いを勝ち抜いた展開が熱い。魏の皇帝がわずかな手勢で司馬氏に挑んだのも、荒唐無稽な笑い話にするべきではないのかも?
 まぁ、本拠地が離れている状況では同じようには語れないかな。

 明帝国の悲惨なイメージはわかることなく、朱元璋は功臣を必ず1万5千人単位で一族もろとも処分するし、永楽帝も血なまぐさい行動を取ってしまっている。
 鄭和の大航海もあって対外的には輝かしい時代なのだが、どうにも美徳に欠ける部分が目に付いた。それでも巨大な中国を支配した皇帝たちの偉大さは否定しがたい。

永楽帝―明朝第二の創業者 (世界史リブレット人)
永楽帝―明朝第二の創業者 (世界史リブレット人)
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秦漢帝国へのアプローチ 鶴間和幸 世界史リブレット6

 中国全土を舞台に、90ページで秦漢帝国を語るリブレット。しょうじき散らかった感じがして、自分の中でもうまくまとまらなかった。それだけに注の対象が広範で読み応えがある。
 中国における現地考古学者たちの活躍がどんどん進んでいってくれることを願うばかりだ。

 古代中国の気候が温暖だった説の気温グラフの通りだとすれば、地球温暖化も大したことなさそうに感じられてしまう。とはいえ2度程度の変化だったので、地球温暖化最悪のパターンはやっぱり想像を絶している。
 黄河の流路変遷図も、別の本でもみた記憶があるけれど、興味深い。秦が魏を攻めるのに当たって黄河をわざと決壊させて城壁を崩した件には、上流側が有利なのは長江だけではなかったのだと感じた。

 岡倉天心の「南北合わさってこその中国」観は、当時から逆算的に過去をみているせいで出てくるもので、秦漢時代の人間が言われたら困惑しそうだ。
 南北が融合してこそ豊かになるのは分かるけれども……。

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秦漢帝国へのアプローチ (世界史リブレット)
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