日本の古生物大研究 冨田幸光・監修

 古生代からつい最近まで、日本の古生物を紹介する子供向けの本。
 非常によくまとまっていて、奇蹄類から偶蹄類に繁栄する種が移り変わっていったことなど、わかりやすく説明されていた。
 やはり日本は広くて、いろんな時代の化石がなにかしら見つかっている印象を受ける。実際には抜け落ちている時代や環境があるとしても、一通りみれる状態になっている国は貴重なのかもしれない。

 北アメリカに生きる唯一の有袋類キタオポッサムが、南アメリカから進撃して定着したことも面白かった。
 負けてばっかりに思える有袋類の中にも気合いの入った種がいるんだな。

 新生代の化石では岐阜県の存在感が大きかった。
 瑞浪市は有名だが、可児市もかなりの存在感がある。やるじゃん岐阜県、まったくそれに比べて愛知県は〜。

日本の古生物大研究 どこで見つかった? 絶滅した生き物 (楽しい調べ学習シリーズ)
日本の古生物大研究 どこで見つかった? 絶滅した生き物 (楽しい調べ学習シリーズ)
カテゴリ:古生物学 | 22:49 | comments(0) | trackbacks(0)

サメ帝国の逆襲〜海洋生命5億年史 土屋健

 海の生物による覇権争いを描いた古生物の本。主役は軟骨魚類のサメである(そういえばエイの名前があがらない。濾過食性組と似たコースの扱い?)

 しかし、中生代も新生代も「新手」の紹介にページが割かれていて、サメは最後にあがってくる感じだった。
 大量絶滅でサメが生き残れたのは、肺呼吸のモササウルスと違ってサメは環境変化の穏やかな深海に逃げ込めるからであろうな(そういう仮説の紹介があったわけじゃないけど)。
 次の大量絶滅がこれまでと類似のものになったら、やっぱりクジラが絶滅して、サメが生き残る気がする。胎生も何らかのメリットがあるのかも――卵の方が大量絶滅に強いんだっけ?

 陸上でこれほど長い間覇権を握った生物がいないことを考えると、サメは本当に興味深い存在だ。
 残念なことは軟骨が残りにくいことだが、化石産地によっては体も残っているようだ。それなのに最近の「メガロドン」は歯しか見つかっていないことが意外だった。
 メガロドンは系統もホホジロザメにきわめて近縁な属とする説以外に「カルカロクレス」か「オトダス」に属する説があって著名なのに謎多い存在だと分かった。
 そこが世間の関心までかき立てる?

関連書評
シー・モンスター 太古の海の支配者たち ナショナルジオグラフィック
世界の美しいサメ図鑑 仲谷一宏・監修

海洋生命5億年史 サメ帝国の逆襲
海洋生命5億年史 サメ帝国の逆襲
カテゴリ:古生物学 | 23:20 | comments(0) | trackbacks(0)

鳥類学者無謀にも恐竜を語る 川上和人 生物ミステリー

 恐竜にはよく分からないことが多いから楽しく想像を語れる。
 鳥類学者が歴史小説家みたいなことを言い出した!歴史学者だったら、わからないから楽しく補っていいみたいな言い方はできない。そういう意味では本書は通常よりも遙かに過去の時代をあつかった歴史小説といえるのかもしれない。
 まぁ、想像にも何らかの(こじつけに近くても)根拠を示しているところは、やっぱり学術よりだと思われる。

 ユーモアの効いた文章に踊らされながら、恐竜への関心をテコに鳥類への知識が増えた気がするので、著者の意図は果たされたと思う。
 Tレックスボーンステーキを酒の肴にされた恐竜学者の反応は?……日本は恐竜学者の勢力があまりないことも本書出版の追い風になったのかもしれない。
 これがアメリカでの英語出版だったら自称小心者の著者は……?

 もしも鳥類がいなかったら?+もしも哺乳類がいなかったら?の妄想は生態系のジェンガみたいだった。ひとつやふたつのブロックを抜いても倒れない(木が生長して穴が塞がる)が、いっぺんに大量のブロックを抜いたら全体へのダメージが生じるかもしれない。
 人類は、無差別に滅ぼしているわけじゃなくて特定の性質をもった種を狙い撃ち状態だから始末が悪い。

関連書評
そして恐竜は鳥になった 小林快次・土屋健

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)
鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー)
カテゴリ:古生物学 | 21:01 | comments(0) | trackbacks(0)

シーラカンス〜ブラジルの魚類化石と大陸移動の証人たち

 藪本美孝・著。
 博物館に鑑定目的で持ち込まれる標本は、ブラジル産の魚類化石が一番らしい。それだけ市場に溢れているのだろうけど、国産で自分の手で取った化石でないことが残念に感じた。その場合は産地が分散してしまうから統計的に勝てないせいもあるのかな?

 本書はブラジル産の魚類化石を現生魚類のように鑑定できる図鑑を志向している。博物館学芸員には便利そうだ。世界に10個体しかない化石まで載っていて、市場で全てに遭遇するのは難しそうだが。
 ブラジルの産地紹介も興味深い。魚化石の入った石灰岩を床材に生活している現地の人が羨ましい。

 また、シーラカンス類の図鑑にもなっていて、こちらは世界中の標本が紹介されている。アフリカとインドネシアのシーラカンスについて、インド亜大陸の北上によって分布が分断された説が載せられていた。
 昔読んだ本ではインドネシアのシーラカンスが本家で、アフリカのシーラカンスはインドネシアから流れてきた連中の末裔とされていたが、その説とは対立しているなぁ。本書では両者の分岐は6000万年前とも言われている。
 また、現代に生きるシーラカンスは、他の滅亡したシーラカンスとはジュラ紀に分かれたらしく、知識の上で生きた化石の度合いが増した。

関連書評
NHKスペシャルDEEP OCEAN 深海生物の世界
8つの化石 進化の謎を解く[中生代]ドナルド・R・プロセロ

シーラカンス―ブラジルの魚類化石と大陸移動の証人たち
シーラカンス―ブラジルの魚類化石と大陸移動の証人たち
カテゴリ:古生物学 | 23:52 | comments(0) | trackbacks(0)

古生物ビジュアル大図鑑 洋泉社MOOK

 「生命誕生から古生代まで進化の謎と生命の神秘に迫る!」はアオリで、副題は「奇妙で不思議な古生物たちの世界」の方だった。
 古生物を古生代の生物と勘違いしているわけではないが、CGを使った古生代以前の生物紹介に特化している。メダカやヒトデのシルエットと比較したり、見開きページで原寸大(大きすぎる生き物は身体の一部が表示されている)で見せたりと、イメージしにくい古生物のサイズが伝わるように工夫が感じられた。

 オドントグリフスの舌歯周りがぬらっとしたCG表現になっていて、再現イラストよりも気持ち悪い。ネクトカリスみたいな生き物ならヌラヌラしていても気にならないんだけどな。
 CGの雰囲気がネクトカリス似すぎているため、石炭期のツリモンストラムが系統不明と言われてもネクトカリスの仲間にしか見えなかった。悪い方向にイメージが固定されていなければいいが。
 サカバンバスピスの目もCGのおかげで「つぶら」な感じが増しているか?まったくユニークな生き物たちだ。

 古生代で終わるため、ほ乳類の先祖である単弓類が絶好調の雰囲気だ。まさかこの後、恐竜の時代が来るとは、ここまでの流れからは想像しにくい。

 ヨーロッパの一部だった古代の大陸名アヴァロニアは、アーサー王伝説のアヴァロンから?ぶっちゃけ、かなり中二病の入ったネーミングだなぁ。

関連書評
恐竜・古生物ILLUSTRATED ニュートンムック別冊
絶滅した奇妙な動物シリーズ 生命のはじまり古生代 川崎悟司

古生物ビジュアル大図鑑 (洋泉社MOOK)
古生物ビジュアル大図鑑 (洋泉社MOOK)
カテゴリ:古生物学 | 12:25 | comments(0) | trackbacks(0)

絵でわかる進化のしくみ〜種の誕生と消滅 山田俊弘

 ダーウィンは偉大だったが権威で信じてはならない。どんな説も常に検証を続けることが大切だ。
 進化のしくみのみならず進化研究の歴史についても追いかけている。ネオダーウィニズムや進化の総合説(皮肉な呼び方はウルトラダーウィニズム)の流れを覚えておくと良さそうだ。
 遺伝に関する図解はお役立ち度が高い。

 著者は分類について「保守性」をけっこう気にしていて、これまでの研究を活かすためには、種に関する過去の定義にも配慮が必要と考えているらしい。
 最初の流れが重要であったことが分かる。ヨーロッパ発の研究でなければ種の見方は、今とは異なっていたかもしれない。

 ヤナギムシクイの一カ所をのぞき隣り合う亜種同士では交配可能だが、シベリアで隣り合った二亜種については遠く別の道を歩んできたので交配しないことが面白かった。
 二亜種以外が残って他が絶滅したら「別種」と判断する生物学者もいるはずだ。なんとも微妙なところにあるなぁ。

関連書評
化石の分子生物学〜生命進化の謎を解く 更科功
11の化石生命誕生を語る[古生代] ドナルド・R・プロセロ
嗅覚はどう進化してきたか〜生き物たちの匂い世界 新村芳人

絵でわかる進化のしくみ 種の誕生と消滅 (KS絵でわかるシリーズ)
絵でわかる進化のしくみ 種の誕生と消滅 (KS絵でわかるシリーズ)
カテゴリ:古生物学 | 16:06 | comments(0) | trackbacks(0)

化石の分子生物学〜生命進化の謎を解く 更科功

 化石の中から分子生物学的な証拠を見つけようとした科学者たちの物語。はたしてジュラシックパークは実現可能なのか――本書を読んだ感想では不可能といわざるをえなかった。
 まず、確実に恐竜のDNAと言えるものがみつかっておらず、今のところでている報告には否定的な反論が集まっている。琥珀の中についても厳しいようで唸ってしまった。
 さらに塩基配列が得られたとしても、古生物の場合は短くなってしまっていることが通常であって、完璧なDNAには程遠い。仮に古生物のゲノムを完全に得ようとしたら、どれほど大量の保存状態が特別な化石が必要か、わからない。
 残念なことだが、本書で紹介されたようなブレイクスルーが、再び起こる可能性に期待しておくことにした。少なくとも今後も挑戦する研究者は絶えないものと思われる。

 恐竜ほど古くない化石については分子生物学的な情報が得られていて、いろいろ興味深い「証拠」を積み上げてきている。北海道の縄文人遺伝子など、知らないことが多かったので勉強になった。何より読みやすかった。
 有名なミトコンドリア・イブの理屈も覚えておきたい。

関連書評
生痕化石からわかる古生物のリアルな生きざま 泉賢太郎
フィールドの生物学19〜雪と氷の世界を旅して 植竹淳

化石の分子生物学――生命進化の謎を解く (講談社現代新書)
化石の分子生物学――生命進化の謎を解く (講談社現代新書)
カテゴリ:古生物学 | 19:42 | comments(0) | trackbacks(0)

8つの化石 進化の謎を解く[中生代]ドナルド・R・プロセロ

 化石が語る生命の歴史シリーズ2巻。江口あとか 訳。
 恐竜の時代とも限らない中生代の化石が8つ取り上げられている。それでも恐竜は強烈な印象を残してくる。植物の変化も重要だったはずなんだけどな……動物ばっかりで寂しい。

 有名なメアリー・アニングについて、かなり詳しく書かれていた。崖っぷちでの命懸けの化石採集を何度も何度も繰り返して生還しただけでも、凄いことに思われた。
 化石を発掘すること以外にも注意深い人だったのだろう。

 著者のメディアへの怒りは2巻でも健在であり、1巻のディスカバリーチャンネルに続いて、BBCとヒストリーチャンネルも槍玉にあがった。一方、ナショナルジオグラフィックについてはスピノサウルス発見の件で言及があったものの、厳しいことは言われていなかった。
 恐竜よりも絶滅の難しい進化論会議主義者の行動については言及する必要もないと思った。現代に恐竜が生きていれば進化論を否定できるって、どんな理屈なのやら。

 ややもするとニセ科学の話題に意識を奪われがちになってしまって、肝心の内容が忘れやすくなってしまう点は残念だった。ニセ科学批判はコラムにまとめてくれれば良かったのに。
 最大の肉食恐竜や竜脚類について、現時点で骨格標本の残存率からほぼ確実といえる名前を紹介しているので覚えておくと面白いかもしれない。

関連書評
三畳紀の生物 土屋健 群馬県立自然史博物館監修
ジュラ紀の生物 土屋健 群馬県立自然史博物館監修
白亜紀の生物・上巻 土屋健 群馬県自然史博物館監修

8つの化石・進化の謎を解く[中生代] (化石が語る生命の歴史)
8つの化石・進化の謎を解く[中生代] (化石が語る生命の歴史)
カテゴリ:古生物学 | 12:33 | comments(0) | trackbacks(0)

11の化石生命誕生を語る[古生代] ドナルド・R・プロセロ

 化石が語る生命の歴史シリーズ1巻。江口あとか訳。
 シリーズ1巻というか、一冊の英著が三分割されたうちの一冊目である。古生代の重要な化石について、研究史込みで紹介している。この分野での重要な研究者がわかる。著者がその列にくわわっていることも。

 印象に残るのはいわいる「カンブリア爆発」の否定であり、著者は数千万年にわたって、ゆっくり進行した変化であると主張している。魚による陸への上陸にも同様の主張がみられた。トビハゼかわいい。
 疑似的に大きな変化がみえてしまうのは、化石の世界ではいかにもありそうなことだ。考古学の世界にも同様の事例があるかもしれない。

 節足動物に比べれば脊椎動物なんて大したことないよ〜と途中で説明しておいて脊椎動物の話が多いのは「商業的理由」らしい。シリーズの最後をホモサピエンスに持って行っているなら仕方ないところはある。
 節足動物が最も繁栄しているなら現代の節足動物を最終章の主人公にした古生物本があっても良さそうではある。案外、聖書の影響もあるのかなぁ。

 訳者はアメリカで著者の地球史の授業を受けたことがあるだけあって、地球科学に堪能で、翻訳にアラがなかった。あえて注文をつけるなら著者があげている博物館に、日本の博物館を追記してほしかった。
 愛知県蒲郡市の生命の海博物館や岐阜の最古の石博物館は、なかなか注目だよ。

関連書評
エディアカラ紀・カンブリア紀の生物 土屋健
オルドビス紀・シルル紀の生物 土屋健

11の化石・生命誕生を語る[古生代] (化石が語る生命の歴史)
11の化石・生命誕生を語る[古生代] (化石が語る生命の歴史)
カテゴリ:古生物学 | 12:26 | comments(0) | trackbacks(0)

動物が見ている世界と進化 スティーヴ・パーカー

 監修 蛭川謙太郎。訳 的場知之。大英自然史博物館シリーズ4。
 表紙の密度がすごい。視覚に関する進化の歴史について集中的にまとめた本。軟体動物が複眼からレンズ眼まで持っている特殊な連中であることに衝撃を受けた。
 オウムガイの眼はピンホールカメラの原理を使っていた。イカやタコとはずいぶん違っているんだな。復元イラストから判断してアンモナイトやベレムナイトはレンズの眼をもっているはず。

 蛇のピット器官であるとか、紫外線をみる昆虫たちとか、可視光に限定せずに語られている。エコーロケーションまではなかったけれど、あれも脳の働いている部位は視覚に近いとか。
 眼の進化はそれぞれの段階で持ち主にとって有益であったため、ここまで複雑に進化することができたらしい。レンズ眼があれば便利だと後出しでわかっていても、あんなに複雑なものをいきなり持つことはできない。
 鳥の羽根みたいに後から別目的に使われる場合もあるなかで、眼の役割は割と一貫しているところも面白い。
 5000万年前の昆虫の構造色がそのまま残っている化石が見事だった。見つけた人は心の底から感動しただろうなぁ。

関連書評
古生物たちのふしぎな世界 土屋健・田中源吾
そして恐竜は鳥になった 小林快次・土屋健
ビジュアル版 地球・生命の大進化〜46億年の物語 田近英一・監修


動物が見ている世界と進化 (大英自然史博物館シリーズ 4)
動物が見ている世界と進化 (大英自然史博物館シリーズ 4)
カテゴリ:古生物学 | 20:13 | comments(0) | trackbacks(0)
| 1/1PAGES |