火星の科学-Guide to Mars- 藤井旭+荒舩良孝

「水、生命、そして人類移住計画 赤い惑星を最新研究で読み解く」という長いサブタイトルがついている。2018年の火星大接近にあわせて出版されたことが、あからさまな本。
 入門的な内容なのでローウェルの運河探しなど、アイスバーンな部分も多かった。

 それでも新鮮に感じたのは運河説を否定したアントニアジのスケッチが高く評価され、いくつか掲載されていたことと、日本のアマチュア天文家の活動が取り上げられていたことだ。
 また、キュリオシティ以降の火星探査機の活動は、あまり把握できていなかったので、興味深く読むことができた。アメリカはともかく、ヨーロッパとロシアによるエクソマーズミッションはノーマークだった。
 さすがに日本のフォボスからのサンプルリターンミッションは把握していた(フォボスへの着陸は世界初の挑戦と説明されているが、ソ連の探査機が挑戦自体はしたことがあったはず)。

 本書を通して、あいかわらず火星は人々の興味を引き続けていることがわかった。

関連書評
宇宙探査機 フィリップ・セゲラ著 川口淳一郎・監修 吉田恒雄・訳
MARS(マーズ)火星移住計画 レオナード・デイヴィッド
人類が火星に移住する日 矢沢サイエンスオフィス・竹内薫

火星の科学 ‐Guide to Mars-: 水、生命、そして人類移住計画 赤い惑星を最新研究で読み解く
火星の科学 ‐Guide to Mars-: 水、生命、そして人類移住計画 赤い惑星を最新研究で読み解く
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月と太陽ってどんな星? 縣秀彦

 サブタイトルは「もっとも身近で不思議な星を科学しよう」。もっともは身近だけに掛かっていて不思議には掛かっていない?二つ併せておきる月食と日食の現象は宇宙的にみても、不思議な部類かもしれない。

 太陽については、赤色巨星になったときでも金星軌道までしか膨らまないと書かれていて、「地球軌道まで来るか来ないか」と言われていた時代から知識がアップデートされた。

 月の出は中心が地平線上にみえたときで、日の出は端っこがみえたときと、微妙に定義が異なることも新知見だった。
 肉眼観察時代からの伝統的にそうなる理由は理解できるが、ややこしい……。

関連書評
系外惑星の事典 井田茂・田村元秀・生駒大洋・関根康人
大宇宙MAP〜天体の距離から見えてくる宇宙の構造〜 沼沢茂美・脇谷奈々代

月と太陽ってどんな星?―もっとも身近で不思議な星を科学しよう (子供の科学★サイエンスブックス)
月と太陽ってどんな星?―もっとも身近で不思議な星を科学しよう (子供の科学★サイエンスブックス)
カテゴリ:天文 | 23:25 | comments(0) | trackbacks(0)

デジタルカメラによる天体写真の写し方 中西昭雄

 ほぼ一眼レフデジタルカメラに集中。デジタルカメラを使った天体写真の撮影方法を固定撮影から、天体望遠鏡をもちいた拡大追尾撮影まで紹介している入門書。
 とりあえず一眼レフデジタルカメラと丈夫な三脚がほしくなってしまうのは否めない。赤道儀に手を出したら天体写真沼へ足を踏み入れたとの自覚が必要か。
 一部説明が重複している感じなのは、雑誌の連載特集を一冊の本にしたて直した関係と思われる。

 できるだけ条件をそろえて、ひとつの設定だけを変更した写真をたくさんとって比較してくれており、設定の効果がとてもわかりやすかった。
 光害のために毎晩移動を繰り返したと思うと……おつかれさまである。

 サンプル写真のために三脚を用意する人と、撮影をする人が、別の女性である点がなんとなく気になった。

関連書評
双眼鏡で星空ウォッチング 第3版 白尾元理
星降る絶景〜一度は見てみたい至極の星景色 沼澤茂美
よくわかる天体望遠鏡ガイド えびなみつる

デジタルカメラによる天体写真の写し方―基礎からわかるきれいに撮れる
デジタルカメラによる天体写真の写し方―基礎からわかるきれいに撮れる
カテゴリ:天文 | 19:35 | comments(0) | trackbacks(0)

超・絶景宇宙写真〜NASAベストフォトセレクション 寺門和夫

 NASAの写真ばっかりなのは、副題がNASAベストフォトセレクションだからしかたないと思っていたけれど、微妙に欧州宇宙機関の写真は採用されている宇宙写真集。それならば太陽写真や月写真で日本にも出番がほしかった〜。
 枚数が限られているのでしかたないね。

 写真は四種類にわけられている。宇宙探査の歴史がわかる「フロンティアへの挑戦」太陽系内の惑星をみていく「太陽系グランドツアー」さらに遠く星雲や銀河をみる「宇宙の神秘」最後に宇宙からみた地球の美しさを訴える「母なる惑星、地球」である。
 どれも見応えのある写真が多く、太陽系グランドツアーについてはもっと多くの写真を見たいと思った。メッセンジャーが水星に到達した現状では天王星と海王星の写真が手薄といえる。冥王星探査ができたのだから、いまのNASAにとっても観測の射程圏内なのは間違いなく、新しい観測成果を期待したい。

 宇宙の神秘では表紙にもなっている「こと座のリング星雲」のすばらしい写真がみられる。LBT(大双眼鏡)による赤外線の観測データによってとらえられた初期に放出されたガスがなんとも綺麗だった。
 本体だけでも美しいのに、こんな隠し球をもっていたとは!

関連書評
FAR OUT(ファー・アウト)銀河系から130億光年のかなたへ マイケル・ベンソン/檜垣嗣子
宇宙の「一番星」を探して 谷口義明

超・絶景宇宙写真─NASAベストフォトセレクション
超・絶景宇宙写真─NASAベストフォトセレクション
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宇宙の「一番星」を探して 谷口義明

〜宇宙最初の星はどのように誕生したか〜
 天文学の大きなテーマ。宇宙最初の星探しに関してわかりやすく、多くの説明画像を使って、教えてくれる本。
 著者の一番星探しの原風景がうつくしい。自分は経験した記憶がないけどな――けっこう進路に大きな影響をあたえたのかなぁ。世界各地の天体望遠鏡が活躍していて、今後(2011年執筆当時からみて)の望遠鏡計画も紹介されていた。
 やはりハッブル宇宙望遠鏡は偉大なり。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の能力にも期待だけれど、途中で修理はできない計画なのでハッブル宇宙望遠鏡ほどの長寿にはなれそうもない。絶対量でハッブルの積み重ねた功績を打ち破ることは難しそうだ。
 日本のすばる望遠鏡も大活躍していて感心した。ケック望遠鏡の前に最大記録をもっていたけれど、性能がいまいちだったというロシアの望遠鏡も気になった。

 手法においては遠くの天体探しに威力を発揮するライマン・ブレーク法がおもしろかった。スーパーウインドウまでの説明が綺麗につながっていて印象に残る。
 情報のかぎられた遙か過去のことでも論理的に当たりをつけていく天文学の魅力も伝わってきた。

関連書評
HST ハッブル宇宙望遠鏡のすべて 沼澤茂美・脇屋奈々代
ハッブル望遠鏡の宇宙遺産 野本陽代
「静かなる誕生」から「激動の死」へ 太陽と恒星 ニュートンムック

宇宙の一番星を探して 宇宙最初の星はいつどのように誕生したのか
宇宙の一番星を探して 宇宙最初の星はいつどのように誕生したのか
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ブラックホールを見る! 嶺重慎 岩波科学ライブラリー144

 多くの人をひきつけずにはいられない不思議な天体ブラックホール。その実際を天文学者の著者が説明してくれる――が、頭が良すぎてついていけない場合があった。いや、自分の頭が悪すぎるのか。
 ブラックホールの名付け親が元々はブラックホールの存在反対派だったと聞いて「ビッグバン」のエピソードを思い出してしまったが、ブラックホールの場合は研究の結果ブラックホール存在派に転向した人らしいので、微妙に違っていた。

 恒星質量ブラックホールと銀河の中心にある大質量ブラックホールの間を埋めるブラックホールが存在しないのか、興味をかき立てられた。二つはできかたから違う感じがするけれど……?

 チャンドラX線望遠鏡がブラックホール研究に活躍していたり、日本国内に設置される1メートル〜3.8メートル口径の天体望遠鏡がブラックホール研究に有効だったり、ちょっと目立たない機材の必要性が説明されているところも良かった。
 あと、天文学における研究進展の流れの説明は何かのコピペみたいで微笑ましい。やはり理論と観測・実験の三人四脚が天文学の発展には欠かせない。

ブラックホールを見る! (岩波科学ライブラリー)
ブラックホールを見る! (岩波科学ライブラリー)
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星くずたちの記憶〜銀河から太陽系への物語 橘省吾

 岩波科学ライブラリー252
 隕石は宇宙からの手紙。特にプレソーラー粒子は銀河系からの手紙。
 説明を読んでいてそんなことを感じていたら、著者自身が中谷宇吉郎の雪は空からの手紙を引用していた。科学の文字で読める鉱物という書物は意外と雄弁に宇宙の情報を語ってくれる。
 月の石がそうであるように、未来になればより多くの情報が引き出せる分析機器が開発されるかもしれない。はやぶさやはやぶさ2の功績はそうやって度々思い出されるのではないか。

 下部マントルを構成する鉱物に「ブリッジマナイト」の名前が与えられたことを知った。
 水星探査機メッセンジャーの成果もまとめられていて興味深かった。ついたことはニュースになっても、成果があまり伝わってきていなかった。
 エンケラドゥス内部の水は塩類から90℃までの加熱を受けていることが想定されているんだ。長期間保たれているなら、なかなかいい温度だ――エネルギー源から考えれば保たれていると考えるべきだろうなぁ。
 タイタンや冥王星の話題もあったけれど、ガリレオ衛星はあえてスキップされていた。でも、ちょっとした言及から星のサイズがガニメデ>タイタン>水星>カリストであることを覚えた。ガニメデたちを水星軌道まで持ってきたら、水分は飛んじゃって絶対小さくなるけどなー。

星くずたちの記憶――銀河から太陽系への物語 (岩波科学ライブラリー)
星くずたちの記憶――銀河から太陽系への物語 (岩波科学ライブラリー)
カテゴリ:天文 | 12:45 | comments(0) | trackbacks(0)

星界の報告 ガリレオ・ガリレイ 伊藤和行・訳

 ガリレオ・ガリレイが望遠鏡を製作して天体観測をはじめ、3ヶ月で書き上げた小さな本。コジモ公につかえるための就職活動でもあった点で、マキャベリの君主論にも似ているが、こちらは就職に成功している。

 優れた柔軟な頭脳をもった人が、新しい観測結果を前にして、多くの情報を得られることを本書は教えてくれている。
 実は頭脳だけではなくて、望遠鏡製作能力も優れていて、高精度のレンズを製作して選ぶことが出来たために木星の衛星が観測可能な望遠鏡を誰よりも早く手に入れることができたらしい。

 木星観測に関する記述はスケッチに衛星の配置がつづくもので、読み応えはあまりないが、著者の根気が感じられた。
 四つの衛星周期は、まず一番外側のものを観測して、そこから動きを把握しておくことで二番目に外側のものと見分けて――とやっていたのかな。
 ケプラーが不可能としていたのは、ちょっと早計だなぁ。解説に出てくる同時代人の優れた天文学者として、非常に興味深い存在ではあった。

関連書評
天体観測の教科書 惑星観測[編] 安達誠・編

星界の報告 (講談社学術文庫)
星界の報告 (講談社学術文庫)
カテゴリ:天文 | 19:58 | comments(0) | trackbacks(0)

「あかつき」一番星のなぞにせまれ! 山下美樹・文

 中村正人+佐藤毅彦・監修。
 金星気象観測衛星あかつきの旅を、探査機を擬人化した文章で紹介する子供向けの本。声が音波じゃなくて電波で飛んでいることが、どの程度伝わっているのかな。同じ波だからドップラー効果の問題があることが面白い。

 あかつきが誇るセラミックスラスタは、金属コーティングの技術が日本にないから生まれたらしい。コーティングとは溶射のことだろうか。
 セラミックスラスタには耐熱衝撃性に新しさがあると想像した。
 けっきょくセラミックスラスタはあまり使えずに、姿勢制御エンジンで軌道制御をやってのけている。最初から姿勢制御エンジン一本でいけるじゃないかと思ってしまったが、どちらかが残っていれば運用を続けられる冗長性が大事なことは「はやぶさ」の成果からも明らかだ。やっぱり推進の効率は酸化剤を使うセラミックスラスタの方がよさそうだし。

 あかつきが見舞われた熱の問題は擬人化されたことでわかりやすくなっていて、太陽周回の灼熱地獄が終わったと思ったら、金星の日陰にはいることの凍結地獄が待っていた。宇宙は極端から極端で容赦がないところだ。
 金星に到達できない間も、装置の一部を使って太陽の観測をおこなっているあたりは、さすがに転んでもただでは起きない日本の科学者根性が感じられた。
 あと、中村先生には悔しくて噛み締めた奥歯を大事にしてほしい。

「あかつき」一番星のなぞにせまれ!
「あかつき」一番星のなぞにせまれ!
カテゴリ:天文 | 16:58 | comments(0) | trackbacks(0)

宇宙探査機 フィリップ・セゲラ著 川口淳一郎・監修 吉田恒雄・訳


 宇宙探査機図鑑の本。探査対象ごとに世界各国の宇宙探査機が紹介されている。日本が三番目の国に数えられている時代が確かにあったことがわかる。
 いまでも無視できる組織とは思われていないが、相対的に存在感が低下しているのは否めない。しかし、あかつきもはやぶさも凄まじいしぶとさである。これで、のぞみが復活できていたらちょっとした伝説になれたのになぁ。

 いまはなきソ連の宇宙探査が興味深い。
 カメラの小型化に関して高く評価される技術を持っていたことが分かった。今のロシアは宇宙探査が少なすぎる。もっとロシアの科学者にもチャンスを与えてやってほしい――日本の未来がロシアみたいにならないと良いが。そう考えるのも贅沢なのかもしれない。

 やはりアメリカは力強く太陽系の遠くまで宇宙探査機を送り込めている。火星での成功がよほど自信を与えているっぽい。ニューホライズンズの冥王星フライバイ以前に出版されたので、その実績が載っていないところは惜しかった。
 太陽観測衛星などに長寿衛星がけっこう存在していて、気になったらWikipediaで調べてみるのも面白かった。

宇宙探査機 (ポピュラーサイエンス)
宇宙探査機 (ポピュラーサイエンス)
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