組合せ数学 ロビン・ウィルソン 川辺治之 訳

 岩波科学ライブラリー280

 組合せ数学は農場試験場に役立つ!少なくともそれだけは覚えた。それだけしか覚えられなかった?
 比較的懐かしい数列の話などもあったが、あっという間に高度になっていった。それでも「ほんの入り口にすぎない」と、あとがきに書かれている通りなのだから、なんかもうね……。
 日本の大企業の研究でもブロック理論をきちんと使って計画が立てられているのか老婆心ながら心配になる。工学部はどうだろう。さすがにきちんとしていると思いたいが。
 そして、お前が利用するんだよ、と言われてしかるべき内容のはずだった。

 ラテン方陣の手前にある魔法陣の話は「スパイラル推理の絆」でも出てきて親しみがあるので、とっかかりにしたいものだ。
 イギリスの数学者でも洛書のネタを把握しているのね。
 最後は分割で「やっぱりオイラーはすごい」と思っていたら、ラマヌジャンとハーディーが持って行った。

 ラマヌジャンの独創的すぎる研究成果をみたハーディーの直感「これは正しいにちがいない。そうでなければ、このようなものをでっちあげる想像力がある者などいるはずがないからだ」が好き。

関連書評
ほんとうに安全?現代の暗号 太田和夫・國廣昇
アルキメデス「方法」の謎を解く 斎藤憲
ラマヌジャン探検〜天才数学者の奇蹟をめぐる 黒川信重

組合せ数学 (岩波科学ライブラリー)
組合せ数学 (岩波科学ライブラリー)
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積乱雲〜都市型豪雨はなぜ発生する? 小林文明

 東京の気象は大事だよな。日本の首都だもんな。
 南と東に海があって、けっこう難儀な気候をもっている。というか東京の規模が拡大しすぎて南と東に海がある状態になった?

 本書では積乱雲についての基礎知識と積乱雲から派生する様々な気象現象、そして東京を代表とする局所的な気象について学べる。
 環八雲は何かの拍子に覚えていたが、他にも関東平野に関連する気象的な特徴を知ることができた。練馬豪雨はいつか再来するに違いない……。

 発達のいきおいがいい積乱雲は「オーバーシュート」によって成層圏の高さにまで上昇する(対流圏を成層圏にまで押し上げる)ことがあるそうで、本当にとんでもない気象現象だと思った。
 微生物がうまく積乱雲に乗っていっても結局、成層圏には進出できずに阻まれてしまうのかな?しかし、進出しても環境が過酷すぎて死にそうだ。宇宙は遠い。

 著者はヒートアイランド現象についても発見当初から観測に関わっていたそうで、昔は冬に都市の中心部が暖かい現象から注目され、札幌のススキノからススキノ効果と呼ばれていたそうだ。
 地球温暖化平均の5倍も気温が上昇しているのに東京オリンピックを開催しようとは何とも無謀である。サマータイムなんてやっていないでヒートアイランドを止めてみせろ!一部の都市では廃熱を川や海に捨てる試みがあるらしい……せめて地中熱利用を促進してほしいところだ。2年じゃ厳しいが。

関連書評
天気のしくみ〜雲のでき方からオーロラの正体まで 森さやか
絵でわかる地球温暖化 渡部雅浩 講談社

積乱雲 ー都市型豪雨はなぜ発生する?ー
積乱雲 ー都市型豪雨はなぜ発生する?ー
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絵でわかる地球温暖化 渡部雅浩 講談社

 表紙は色彩に乏しいのに中身にはカラーがふんだんに使われている本だった。カラーをたくさん使わないと表現できないほど取り扱っている情報の量が多い。また、予測に不確実性が存在するために多数のシミュレーションを同時に表示したがっていることも多色化への要求を強めている。
 昨今の異常気象も専門家に言わせてみれば地球温暖化が原因とは言い切れないらしい。わかりやすい一部の極端な意見に飛びついてしまったら、温暖化懐疑論者と変わらないことになってしまう。
 それがわかっても慎重に腑分けする気持ちを持ちにくいのは、人はいろいろな問題を複数抱えていて、簡単な答えで負荷を軽くしたいと無意識に思ってしまうせいかな。
 多少のストレスがあっても慎重な発言を心がけたいものだ。

 懐疑論者のおかげで議論が深まっている一面も見られるものの、彼らの存在はやっぱり厄介なものに思えてしまう。自分の信じたいことを補強できる情報だけに飛びついて全体から目を逸らしているのではないか。あるいは懐疑論者そのものが入れ替わっているか、だが……?

 地球に働く四つのフィードバック、「プランクフィードバック」「氷-アルベドフィードバック」「水蒸気フィードバック」「雲フィードバック」くらいは覚えておきたい。
 雲フィードバックが難しいことは昔から変わっていないけれど、高層の雲と低層の雲の違いは昔読んだ本にはなかった。少しずつでも研究が進展していることが分かる。
 簡易的な温室効果の計算方法をコラムでわかりやすく解説してくれているのも良かった。

 シミュレーションを用いた予測の話も興味深かった。精度のいいモデルを求めて各国がしのぎを削っているものの、万能のモデル完成には先が遠い様子。
 計算のメッシュを細かくすることにも限界がありスーパーコンピューターによる計算が万能ではないことが分かった。むしろ、現実の観測との二人三脚があって、はじめて有効に機能する。観測の方もシミュレーションに支援されている面は多々あるのだろう。

関連書評
+6℃地球温暖化最悪のシナリオ ナショナルジオグラフィックDVD
気候大異変〜地球シミュレータの警告

絵でわかる地球温暖化 (KS絵でわかるシリーズ)
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ロプ・ノールその他 寺田寅彦

 否定されている学説が蘇ってくるから青空文庫は怖い。
 当時の情報不足だからそれは仕方がない――大陸移動説すら認められていないのだ――として、ペルーの空中写真をみて世界中の空中写真集の刊行を求めるビジョンには感心した。グーグルアースが叶えたわけだが、寺田寅彦氏が期待したような変化が起こったのであろうか。
 内側にいるせいか、かえって解らない。情報があっても見てもらえなければ影響は与えられないしなぁ。

 また、氷河の溶けた水が涵養する文明というビジョンにも魅力的なものを感じた。
 実在はともかく、架空のそういう文明を想像してみるのも一興である。というか、設定だけは考えたことがあったりする。

 あと断層運動による流路の変更についても触れていたけど、実際に黄河の屈曲部は断層運動のせいで出来ているらしい。小さな例なら日本中にあるしなぁ。
 科学者と宗教の信者が、カタストロフへの危機感では意見を一致させられるという皮肉な認識もおもしろかった。

青空文庫
寺田寅彦 ロプ・ノールその他
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学ぶ脳〜ぼんやりにこそ意味がある 虫明元 岩波科学ライブラリー272

 人間の脳は休んでいる間も活動をつづけ、記憶の整理など必要な業務を行っている。ぼんやりしている時間の大切さを、さまざまな科学成果や実例を挙げて訴える。
 そして、「非認知的スキル」の言葉がキーワードとして出てくる。重要性や必要性はよくわかるのだけど、自分が持っているとは思えなくて苦しかった。レジリエンスとか、もうないわ。
 マイナス方向のマインドセットが紹介されても、そこから脱出するヒントはほとんど示されず、やっぱり自分はマイナスのマインドセットなんだなぁ、と実感するだけになってしまうのもしんどかった。
 まぁ、簡単に脱出する方法を見つけていればノーベル医学賞を取っているという話だ。

 繰り返し思い出す記憶が、過去の恥ずかしい経験ばかりじゃなくて、楽しい記憶である人が、この世に存在するとはびっくりだよ。どうも認識が狭かった。

 苦しい状況だからこそ名作を生んでしまったピアニスト、キース・ジャレットのエピソードが興味深く印象に残った。まさに超人。

関連書評
睡眠の不思議 ナショナルジオグラフィック

学ぶ脳――ぼんやりにこそ意味がある (岩波科学ライブラリー)
学ぶ脳――ぼんやりにこそ意味がある (岩波科学ライブラリー)
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寄り道の多い数学 大沢健夫 岩波科学ライブラリー172

 数学コンクールに出題された問題を大量の寄り道をくりかえしながら解説する本、らしい。正直、これが理解できる数学に堪能な高校生を尊敬してしまう。
 もっとも才能だけの問題ではなくて、著者が引用しているティリクレ12歳の言葉「いいえ僕は分かるまで読むのです」が出来ていないせいもある……。

 本書は数学に関わる重要人物の歴史を知ることができる構成にもなっていて、古代から20世紀まで偉大な数学者たちの名前がならんでいる。
 ちょっと昔のルネサンスの数学者であっても生没年がしっかり分かっていることが興味深かった。ヨーロッパにおける数学者の地位は歴史的に高かったのかもしれない(宮廷数学者の話は高校の数学教師から聞いた覚えがある)。

 基本的に難解な話ばかりだが、それらが現代の生活に欠かせない技術を支えていることも説明されており、理解できなくともできるかぎり襟を正して読んだ。

関連書評
アルキメデス「方法」の謎を解く 斎藤憲
面積の発見 武藤徹 岩波科学ライブラリー200
シュメール人の数学〜粘土板に刻まれた古の数学を読む 室井和男

寄り道の多い数学 (岩波科学ライブラリー)
寄り道の多い数学 (岩波科学ライブラリー)
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日本の豆ハンドブック 長谷川清美 文一総合出版

 著者のマメな活動が結実。日本の北から南まで、在来種とよばれる昔から農家で自家採種して育てられてきた豆類を収録した図鑑。
 日本にはまだまだ知られざる豆があるに違いない。せめて自分の周りだけでも道の駅に行ったときに探してみようか。そんな気持ちになれる本だった。

 栽培者の年齢は非常に高齢者が多くなっていて、在来豆の将来が心配になった。次の世代が育てる用意をしてくれているなら、いいのだが。

 数十年、ときに100年を超える栽培歴をもつ豆があることに驚いていたら京都の馬路大納言の数百年つづく農家は次元が違った。
 北海道にもちこまれた豆だけじゃなくて、北海道から本州に入ってきている(戻ってきている?)豆もあることが興味深かった。

 まえがきでは「意識低い系の農家が惰性でつくっている」印象をあたえる書き方をされていたけれど、種苗交換会で入手されていたりして、作物に積極的な人が作っている印象だった。
 そもそも豆ごとの細かい特徴を把握して、その長所を愛さなければややこしい在来豆を作るはずもない。
 コラム的に入ってくる豆料理の紹介もおいしそうでよかった。

関連書評
そだててあそぼう9〜ダイズの絵本 こくぶんまきえ・へん
そだててあそぼう66〜アズキの絵本 十勝農業試験場アズキグループ・へん
そだててあそぼう81〜インゲンマメの絵本 十勝農業試験場菜豆グループ・へん

日本の豆ハンドブック
日本の豆ハンドブック
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広辞苑を3倍楽しむその2 岩波書店編集部 編

 岩波科学ライブラリー270
 広辞苑第7版に対応。広辞苑のトピックから科学的な話題をさまざまに引き出したブックレット。たくさんの著者が参加しており、巻末には経歴と著作の紹介もあるので、関心をもった分野からどんどん読書の輪を広げていくことができる。
 個人的には読んだことのある本を数えて自己満足していたが……我ながら読み過ぎなくらい読んでいた。岩波科学ライブラリーを出している場合は、ほぼ確実に読んでいる。そちらの記憶のダイジェストとしても機能しないでもなかった。

 歯が左右非対称という面白い蛇、背高蛇の著者が経歴で「本当はヘビよりも植物の方が好き」と書いていて、ブリッジしそうになった。せめてヘビに食べられるカタツムリが好きなら分かるけどさ……。

 小笠原姫水薙鳥は名前が優雅すぎる。ヒメがついている雌雄のある動物なんていくらでもいるから命名者は気にしなくて良いし、姫若子といわれた人物もいる。
 ニホニウムは説明がわかりにくいというより、核分裂の図をじっと見る気になれなかった。広辞苑の第8版がでることには新しい元素が生まれているかな?いつか元素の存在安定領域まで到達できれば……!?

 ところで3倍の根拠はどこにあるのかな?定量的にお願いします。

関連書評
時を刻む湖〜7万枚の地層に挑んだ科学者たち 中川毅
クマムシ?!〜小さな怪物 鈴木忠

広辞苑を3倍楽しむ その2 (岩波科学ライブラリー)
広辞苑を3倍楽しむ その2 (岩波科学ライブラリー)
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ニッポン貝人列伝〜時代をつくった貝コレクション 石本君代・奥谷喬司

 貝人というかやっぱり怪人である。貝のコレクションに人生をついやした近代の偉人たちを記載した本。貝の写真も豊富に収録し、貝人が関わった本も再現して載せている。
 吉良哲明氏の「夢蛤」からは怖いものさえ感じてしまった。もしも自分が書いた立場だったらデジタルアーカイブ化されるのは、ちょっと恥ずかしいかも……あれくらい情熱を傾けていればそうでもないのかなぁ。
 それよりも記載者名のやらかしが痛い……。黒田氏に献名で自分の名前を間違えられて、名乗りの方を変えたエピソードはおもしろかった。

 櫻井欽一先生には「またお会いしましたね」って気分になった。
 鉱物だけでも凄まじいのに貝類コレクションでも国立博物館に専用の標本室を作ってもらえるほどに凄かったんだ。料亭の親父は仮の姿、しかしてその実体は――。

 高等小学校が採集学歴だったのに京大で博士を取得した黒田徳米氏も印象的な人物だった。そういうところは鉱物に関する櫻井欽一氏に似ている?
 貝業界にも偉大な人がたくさんいて現在に続く足跡を残していることがわかった。もちろん、他の分野でも同じであるに違いない。

関連書評
日本考古学の原点〜大森貝塚 加藤緑

ニッポン貝人列伝  時代をつくった貝コレクション (LIXIL BOOKLET)
ニッポン貝人列伝 時代をつくった貝コレクション (LIXIL BOOKLET)
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うつも肥満も腸内細菌に訊け! 小澤祥司

 岩波科学ライブラリー267
 人間の感情に多大な影響をあたえる「第二の脳」腸。進化の歴史的に考えれば腸こそが最初の脳であったとも著者は説明している。そんな重要な器官に大量に生息する腸内細菌たちの研究から人類と彼らの関わりが見えてくる。

 とりあえず発酵食品をたくさん食べようと思った――納豆を限度を超して食べ過ぎて腸内細菌の環境がおかしくなってしまった事例があるんだったか。
 生きたまま腸には届かないとの話もあるが、同類の死体を元にしたエネルギーなら、同類の腸内細菌がいちばん利用しやすく繁殖に利用してくれるものと期待する。
 食物繊維もとりたい。
 腸で生産されるセロトニンが直接脳に入り込んでいるわけではないとの説明は、そうなんだろうな。

 赤ん坊の腸内細菌についてはうるさくし過ぎると世の親を追いつめてしまいそう……コアラみたいに子供にうんちを食べさせる動物がいるのもむべなるかな。人間の場合は初乳がそれに近い役割を果たしているみたい。
 研究対象として今でも狩猟採集生活をしている人々の大切さがわかる本でもあった。

関連書評
ゾンビ・パラサイト〜ホストを操る寄生生物たち 小澤祥司

うつも肥満も腸内細菌に訊け! (岩波科学ライブラリー)
うつも肥満も腸内細菌に訊け! (岩波科学ライブラリー)
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