海と陸をつなぐ進化論 須藤斎

 不定期的な湧昇に適応した珪藻の爆発的な増加は、地球全体規模の気候変動を反映していたかもしれない。さらにはクジラをはじめとする他の動物の進化にも大きな影響を与えていたかもしれない。

 そんな著者の説が丹念な珪藻の休眠胞子観察から組み立てられていく科学読み物。
 すべての時間を顕微鏡観察に捧げられてはじめて一人前の研究者という著者の先輩研究者の話も出てくるが、さすがにそこまでできない著者が結果を出していることに期待をかけたい。
 表紙の珪藻が綺麗である。見ていて飽きないとまでは言えないけれど、目を楽しませてくれる瞬間のある研究なのだろう。

 休眠胞子の上下を区別させてくれる突起は、上と下が外れにくくするために付いているのだろうな。
 わりと市販のプラスチック容器などにありそうな仕組みでおもしろかった。人間は自然の再発明をしているところがあるからなぁ。

海と陸をつなぐ進化論 気候変動と微生物がもたらした驚きの共進化 (ブルーバックス)
海と陸をつなぐ進化論 気候変動と微生物がもたらした驚きの共進化 (ブルーバックス)
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球状コンクリーションの科学 吉田英一

 世界各地から、はては火星でも発見されている球状コンクリーション。この成因について画期的な研究をおこなってきた著者による一冊。
 研究の重要性を伝える冒頭で現代技術をもってしてもコンクリートは100年もたないと書いているが、ローマ時代のコンクリートは遙かに長持ちしている。
 耐用年数は鉄筋コンクリートにしている影響が大きいはずで、コンクリーション並の強度なら現代技術でも再現できないのかな?そんな疑問が湧いた(強度比較がほしかった)。
 そのため、懐疑的な姿勢で読み進めたが、途中で疑問に思ったことにはだいたい回答がでてくる内容になっていた。一番してほしかった再現実験もおこなわれている。
 地質学的には短期間でも再現実験するには長期間みたいなことにはならなくて良かった。

 いちばん引っかかったのは(一部)アンモナイトのコンクリーションが扁平な理由の説明かなぁ。ツノガイみたいに口の部分を中心に腐食酸がひろがるなら、やっぱり球状に広がらないと違和感がある。そういう例も紹介されていたし。
 殻の縁から漏れているの?

 鉄コンクリーションの元となるコンクリーションは生物起源じゃないところも多少の混乱をかきたてた。化石が入っていなければ同位体分析するしかないってことかな。

 核廃棄物処理場のシールに使うのは、スケールが小さいから地震で壊れない構造も、大きくなると壊れる可能性がある問題に直面すると想像したが、どうなのだろうか。

球状コンクリーションの科学
球状コンクリーションの科学
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法則の事典 Newtonライト

 物理化学生物の法則がいくつかまとめられた冊子……地学は?地層累重の法則くらい載せてくれてもいいのでは?
 数式は経験式的なものが多くなってしまうけれどさ。

 ニクロムの説明に「非常に抵抗の大きい合金のことです」と書いていたのは首を傾げた。下の図にあるように「ニッケルとクロムの合金であり、非常に抵抗が大きい」みたいに言った方が正確なのでは?
 ページ数が限られるからこそ、記述には慎重でなければならないのだが、わりとやっつけに感じてしまったのが正直なところであった。

 アボガドロ数の定義が2019年に変わったことは重要なニュースだなぁ。

Newtonライト『法則の事典』 (ニュートンムック)
Newtonライト『法則の事典』 (ニュートンムック)
カテゴリ:地学 | 22:19 | comments(0) | trackbacks(0)

東海のジオサイトを楽しむ 森勇一

 東海四県のジオサイトを興味深い話題とともに紹介する一冊。東海三県の本があったところに静岡県をくわえて加筆修正したらしい。ジオサイトに関して静岡県は強力すぎる。
 単独でも他の三県に対抗できるのではないか。

 とはいえ他の三県にもそれぞれの見所があって、なかなか興味深かった。
 愛知県にだけ県立の総合博物館がないという悲しい事実も知った。単に箱物を造ればいいだけとは思わないけれど……。

 苗木の花崗岩のことを本書では「苗木石」と呼んでいるが、自分の記憶では変種ジルコンのことを苗木石と呼んだはず。岩石と鉱物でそれぞれに苗木石がある?
 紹介されている中津川市の鉱物博物館では、鉱物の苗木石が紹介されていたと思う。

 なお、考古学に深く関わってきた著者の経歴も異色に感じられておもしろかった。

関連書評
地質と地形で見る日本のジオサイト―傾斜量図がひらく世界― 脇田浩二・井上誠

東海のジオサイトを楽しむ (爽BOOKS)
東海のジオサイトを楽しむ (爽BOOKS)
カテゴリ:地学 | 17:16 | comments(0) | trackbacks(0)

フォッサマグナ〜日本列島を分断する巨大地溝の正体 藤岡換太郎

 新潟県から静岡県まで、日本を東西にわける巨大な構造であるフォッサマグナの正体について、著者なりに迫ってみようとした著作。世界にも類似例が見つからないフォッサマグナは「鵺」あつかいされている。
 源頼政を気取った著者は見事に鵺を射抜くことができるのか。

 とりあえず北部と南部ではフォッサマグナでも大きく異なっていることは覚えておきたい。だいたい諏訪湖が北部と南部の境界に当たるらしい。
 フォッサマグナの深さが地下6000m以上あり、ボーリング調査でも基盤岩にたどり着けていないことに驚いた。
 どんだけ繰り返し活動して沈み込んでいるのやら。近くに住むことの危険性と地質構造の安定性を思う。

 フォッサマグナの成因については海溝の三重会合点と「火の気」が、影響していると著者は考えている。
 いろいろ1500万年前の「偶然」が重なって出来ているっぽいが、地質学においては一度限りの偶然もありえるから困る。再現できるとすれば、縮小した実験やコンピューターシミュレーションか?
 房総沖の海溝三重会合点が海底地形図で見るだけでも凄くて異常に思える。出来方に疑問がもたれていないだけで、これもとんでもない構造だ。「ちきゅう」に掘ってほしくなる。
 また、日本海の拡大も興味深い現象である。日本海のプレート拡大的な火成現象についてフォッサマグナの成因を論じるまで、触れられていた記憶がほとんどなく、唐突に出てきたように思えた。
 海底地形からも証拠は普通にあるので詳しく説明する必要はないと考えたのかな?

 フォッサマグナをとっかかりに地質構造に関するいろいろな説を知ることのできる本でもあった。


フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体 (ブルーバックス)
フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体 (ブルーバックス)
カテゴリ:地学 | 23:47 | comments(0) | trackbacks(0)

地球46億年気候大変動 横山祐典

 副題は「炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来」
 地球の古気候研究の歴史を追いながら、現在人類が直面している短期的な地球温暖化問題に近づいていった。南極の氷床が二酸化炭素濃度600ppmを超えた途端に、一気に溶けてしまう恐れがあることが怖い。我々は子孫にどれほど巨大な負債を遺そうとしているのか……。
 氷河期が周期通りには訪れず、新しい地質時代に突入するシミュレーション結果も衝撃的だった。
 文章は固めで正直、読みにくい。

 かなり多くの研究者が紹介されているため、紹介はやや薄味に感じたが、それでも異色の経歴をもった研究者は記憶に残る。
 あの有名なミランコビッチが元土木技術者だったとは驚いた。能力のある人はどの分野にもいて、研究の世界にやってきたから歴史に名を残すことになった感じかなぁ。
 アメリカの研究者は、なかなか「立身出世」を感じさせる経歴の持ち主が多いことも興味深かった。日本の場合は中産階級が分厚くなっているから経歴は似かよる形になるか。

 著者が世界中で仕事をしてコネクションをもっていることも、さりげなく紹介されている。
 著者の研究以外は1990年代までの研究成果が紹介されていることが多いのは、さらに新しい研究はまだまだ検証が必要なものが多いということだろう。
 古気候研究の最前線は凄いことになっているのが予想できた。

関連書評
ビジュアル版 地球・生命の大進化〜46億年の物語 田近英一・監修
地球全史〜写真が語る46億年の奇跡 白尾元理・清川昌一
大地と海を激変させた地球史46億年の大事件ファイル ニュートンムック

地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来 (ブルーバックス)
地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来 (ブルーバックス)
カテゴリ:地学 | 19:06 | comments(0) | trackbacks(0)

宝石と鉱物の大図鑑〜地球が生んだ自然の宝物 スミソニアン協会

 日本語版監修 諏訪恭一・宮脇律郎。翻訳 高橋佳奈子・黒輪篤嗣。

 ハイグレードな宝石の写真がたくさん収録された図鑑。伝説的な宝飾品についての見開き解説ページもある。まさに別世界の出来事で、フランスの宮廷生活を眺める気分だ。カルティエの宝飾品がいまいち好みに感じられないのも単なる嫉妬かもしれない。
 準宝石あつかいの鉱物であっても最高品質のものを見事にカットして、主役として飾れば、垂涎の宝飾品になることが確認できた。リチア輝石など非常に魅力的だった。
 最高級とされるダイヤモンドは脇役にされることで、普段は主役になれない石を主役に持ち上げる力も持っているかもしれない。

 巻末には鉱物図鑑もあって比較的めずらしい鉱物も多く取り上げられていた。宝石のほうで写真が出てきた鉱物の中には写真のないものもあった。

 また、全体に誤訳や用語のミスなどは目に付かず、しっかりしていた。
 おしむらくは産地表記が少ないことか。

鉱物関連記事一覧

宝石と鉱物の大図鑑
宝石と鉱物の大図鑑
定価で一万円近い
カテゴリ:地学 | 22:23 | comments(0) | trackbacks(0)

羽毛恐竜と巨大昆虫 ナショナルジオグラフィック

 熱河ビオトープ(熱河層群)を始めとする熱い化石産地からの最新研究成果を存分に活かしたビジュアル再現。さまざまな恐竜や昆虫がCGでリアリティたっぷりに再現されている。もう少しで写真と区別の付かない雰囲気になりそうだ。あえてCGっぽさを残しているところがあるのかもしれない。

 ゾルンフォーヘンは熱帯のラグーン、遼寧省は火山近くで寒冷な気候だったと、有名化石の産出地について当時の気候に注目した紹介がされている点が興味深かった。
 気候がわかることで有名恐竜たちが生きていたときの姿が、より具体的にイメージできるようになった。
 それにしても遼寧省の産地は生物が豊かである。冬は雪が降っていたはずなのに意外と書かれているが、四季があるからこそ生物の種が豊富だったとも考えられる。
 ここで育った中国の古生物学者も生まれてきているようで羨ましい。こういう恵まれた化石産地があっても世界的に一億〜8000万年前の恐竜化石が空白になっているそうで、日本はそこをなんとか押さえてほしいものだ。

 今後期待される恐竜化石の産出シミュレーションも紹介されていた。とりあえずしばらくはラッシュが続いて、飽和したら歴史の文献研究みたいに見直しが盛んになるのかなぁ。
 そのときには博物館から再発見される新種が出て、発掘の有終を飾ってくれるかもしれない。

関連書評
そして恐竜は鳥になった 小林快次・土屋健
発見!恐竜の墓場 ナショナルジオグラフィックDVD

スーパービジュアル再現 羽毛恐竜と巨大昆虫 7つの謎で解き明かす太古の世界
スーパービジュアル再現 羽毛恐竜と巨大昆虫 7つの謎で解き明かす太古の世界
カテゴリ:地学 | 20:25 | comments(0) | trackbacks(0)

恐竜・古生物ILLUSTRATED ニュートンムック別冊

 恐竜は古生物なのに、古生物と並んで表記されている。それほど古生物のなかで恐竜のしめる立場には特別な物がある。でも、他の古生物だって面白いのだ。
 というわけで、恐竜以外の古生物好きにも満足のできる内容になっていた。恐竜以前と恐竜以後という紹介のされ方はシャクだが、いつかは世間から認知される日も来る……はず。
 翼竜と魚竜も恐竜とは別の分類ですよ――と断りながら紹介されていた。

 ヴェロキラプトルが単独行動する動物として、プロトケラトプスとタイマン状態でイラスト化されている。ディスカバリーチャンネルでは思いっきり群れで行動する動物としてCG化されていたため、群れで行動した証拠がないと書かれていたことには驚いた。
 巨大なウミガメ「アルケロン」は食べ物となるアンモナイトの絶滅に引きずられる形でいなくなってしまったらしい。オウムガイに食料を転換して生き延びることはできなかった?
 背中に二列のトゲがあるアマルガサウルスや装甲板をもつサルタサウルスなど、竜脚類にも巨体以外の特徴をもつものがいることも覚えておきたくなった。

 CGはあまりなくイラストレーターのタッチが感じられる絵が多い点もなかなか良かった。

関連書評
生命史図譜 土屋健 群馬県立自然史博物館 監修
絵でわかるカンブリア爆発 更科功
「知」のビジュアル百科 太古の生物図鑑 ウイリアム・リンゼー

恐竜・古生物ILLUSTRATED―よみがえる陸・海・空の覇者たち (ニュートンムック Newton別冊)
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カテゴリ:地学 | 20:24 | comments(0) | trackbacks(0)

マンモスを科学する 鈴木直樹

 愛・地球博に展示された冷凍マンモス。その調査研究と展示の監督にあたった著者による冷凍マンモス研究譚。
 研究対象であるマンモスのことに視点を固定せず、彼らが眠っている凍土層からの研究についても詳しく記述している。現実はお話のように伏線が回収されないので、せっかく開発した地中三次元レーダーは許可申請のミスから使用されないし、マンモス展示の予算が大幅に削減されて未知のマンモス全身標本を輸送展示するわけにもいかなくなってしまった。
 そういう状況の変化に翻弄されながらも、できる範囲でベストの結果を目指している著者の姿勢には是非とも学びたいものだ。医学を研究しながら、グラフィックボードの開発や世界各地でのフィールドワークを行っている著者の真似はとうていできないにしても……いったい何者なのだろう。

 肝心のマンモス研究については、はるばる日本までやってきたユカギルマンモスの頭部と前足のCTスキャンが行われて、手に入ったデータから三次元的にマンモスを研究することが可能になった。
 最初は何気なくみていた表紙が、著者の述べる苦労をして得られたデータだと知って見直すと、まったく別のものに思えてくるのであった。

 ロシアが共同研究や標本の貸し出しに快く応じてくれたことも覚えておきたい。壁を作ってしまっているのは日本人の方なのかも。

関連書評
絶滅したふしぎな巨大生物 川崎悟司
怪異古生物考 土屋健・萩野慎諧・久正人

マンモスを科学する (角川学芸ブックス)
マンモスを科学する (角川学芸ブックス)
カテゴリ:地学 | 20:58 | comments(0) | trackbacks(0)
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