東海のジオサイトを楽しむ 森勇一

 東海四県のジオサイトを興味深い話題とともに紹介する一冊。東海三県の本があったところに静岡県をくわえて加筆修正したらしい。ジオサイトに関して静岡県は強力すぎる。
 単独でも他の三県に対抗できるのではないか。

 とはいえ他の三県にもそれぞれの見所があって、なかなか興味深かった。
 愛知県にだけ県立の総合博物館がないという悲しい事実も知った。単に箱物を造ればいいだけとは思わないけれど……。

 苗木の花崗岩のことを本書では「苗木石」と呼んでいるが、自分の記憶では変種ジルコンのことを苗木石と呼んだはず。岩石と鉱物でそれぞれに苗木石がある?
 紹介されている中津川市の鉱物博物館では、鉱物の苗木石が紹介されていたと思う。

 なお、考古学に深く関わってきた著者の経歴も異色に感じられておもしろかった。

関連書評
地質と地形で見る日本のジオサイト―傾斜量図がひらく世界― 脇田浩二・井上誠

東海のジオサイトを楽しむ (爽BOOKS)
東海のジオサイトを楽しむ (爽BOOKS)
カテゴリ:地学 | 17:16 | comments(0) | trackbacks(0)

フォッサマグナ〜日本列島を分断する巨大地溝の正体 藤岡換太郎

 新潟県から静岡県まで、日本を東西にわける巨大な構造であるフォッサマグナの正体について、著者なりに迫ってみようとした著作。世界にも類似例が見つからないフォッサマグナは「鵺」あつかいされている。
 源頼政を気取った著者は見事に鵺を射抜くことができるのか。

 とりあえず北部と南部ではフォッサマグナでも大きく異なっていることは覚えておきたい。だいたい諏訪湖が北部と南部の境界に当たるらしい。
 フォッサマグナの深さが地下6000m以上あり、ボーリング調査でも基盤岩にたどり着けていないことに驚いた。
 どんだけ繰り返し活動して沈み込んでいるのやら。近くに住むことの危険性と地質構造の安定性を思う。

 フォッサマグナの成因については海溝の三重会合点と「火の気」が、影響していると著者は考えている。
 いろいろ1500万年前の「偶然」が重なって出来ているっぽいが、地質学においては一度限りの偶然もありえるから困る。再現できるとすれば、縮小した実験やコンピューターシミュレーションか?
 房総沖の海溝三重会合点が海底地形図で見るだけでも凄くて異常に思える。出来方に疑問がもたれていないだけで、これもとんでもない構造だ。「ちきゅう」に掘ってほしくなる。
 また、日本海の拡大も興味深い現象である。日本海のプレート拡大的な火成現象についてフォッサマグナの成因を論じるまで、触れられていた記憶がほとんどなく、唐突に出てきたように思えた。
 海底地形からも証拠は普通にあるので詳しく説明する必要はないと考えたのかな?

 フォッサマグナをとっかかりに地質構造に関するいろいろな説を知ることのできる本でもあった。


フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体 (ブルーバックス)
フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体 (ブルーバックス)
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地球46億年気候大変動 横山祐典

 副題は「炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来」
 地球の古気候研究の歴史を追いながら、現在人類が直面している短期的な地球温暖化問題に近づいていった。南極の氷床が二酸化炭素濃度600ppmを超えた途端に、一気に溶けてしまう恐れがあることが怖い。我々は子孫にどれほど巨大な負債を遺そうとしているのか……。
 氷河期が周期通りには訪れず、新しい地質時代に突入するシミュレーション結果も衝撃的だった。
 文章は固めで正直、読みにくい。

 かなり多くの研究者が紹介されているため、紹介はやや薄味に感じたが、それでも異色の経歴をもった研究者は記憶に残る。
 あの有名なミランコビッチが元土木技術者だったとは驚いた。能力のある人はどの分野にもいて、研究の世界にやってきたから歴史に名を残すことになった感じかなぁ。
 アメリカの研究者は、なかなか「立身出世」を感じさせる経歴の持ち主が多いことも興味深かった。日本の場合は中産階級が分厚くなっているから経歴は似かよる形になるか。

 著者が世界中で仕事をしてコネクションをもっていることも、さりげなく紹介されている。
 著者の研究以外は1990年代までの研究成果が紹介されていることが多いのは、さらに新しい研究はまだまだ検証が必要なものが多いということだろう。
 古気候研究の最前線は凄いことになっているのが予想できた。

関連書評
ビジュアル版 地球・生命の大進化〜46億年の物語 田近英一・監修
地球全史〜写真が語る46億年の奇跡 白尾元理・清川昌一
大地と海を激変させた地球史46億年の大事件ファイル ニュートンムック

地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来 (ブルーバックス)
地球46億年 気候大変動 炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来 (ブルーバックス)
カテゴリ:地学 | 19:06 | comments(0) | trackbacks(0)

宝石と鉱物の大図鑑〜地球が生んだ自然の宝物 スミソニアン協会

 日本語版監修 諏訪恭一・宮脇律郎。翻訳 高橋佳奈子・黒輪篤嗣。

 ハイグレードな宝石の写真がたくさん収録された図鑑。伝説的な宝飾品についての見開き解説ページもある。まさに別世界の出来事で、フランスの宮廷生活を眺める気分だ。カルティエの宝飾品がいまいち好みに感じられないのも単なる嫉妬かもしれない。
 準宝石あつかいの鉱物であっても最高品質のものを見事にカットして、主役として飾れば、垂涎の宝飾品になることが確認できた。リチア輝石など非常に魅力的だった。
 最高級とされるダイヤモンドは脇役にされることで、普段は主役になれない石を主役に持ち上げる力も持っているかもしれない。

 巻末には鉱物図鑑もあって比較的めずらしい鉱物も多く取り上げられていた。宝石のほうで写真が出てきた鉱物の中には写真のないものもあった。

 また、全体に誤訳や用語のミスなどは目に付かず、しっかりしていた。
 おしむらくは産地表記が少ないことか。

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宝石と鉱物の大図鑑
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定価で一万円近い
カテゴリ:地学 | 22:23 | comments(0) | trackbacks(0)

羽毛恐竜と巨大昆虫 ナショナルジオグラフィック

 熱河ビオトープ(熱河層群)を始めとする熱い化石産地からの最新研究成果を存分に活かしたビジュアル再現。さまざまな恐竜や昆虫がCGでリアリティたっぷりに再現されている。もう少しで写真と区別の付かない雰囲気になりそうだ。あえてCGっぽさを残しているところがあるのかもしれない。

 ゾルンフォーヘンは熱帯のラグーン、遼寧省は火山近くで寒冷な気候だったと、有名化石の産出地について当時の気候に注目した紹介がされている点が興味深かった。
 気候がわかることで有名恐竜たちが生きていたときの姿が、より具体的にイメージできるようになった。
 それにしても遼寧省の産地は生物が豊かである。冬は雪が降っていたはずなのに意外と書かれているが、四季があるからこそ生物の種が豊富だったとも考えられる。
 ここで育った中国の古生物学者も生まれてきているようで羨ましい。こういう恵まれた化石産地があっても世界的に一億〜8000万年前の恐竜化石が空白になっているそうで、日本はそこをなんとか押さえてほしいものだ。

 今後期待される恐竜化石の産出シミュレーションも紹介されていた。とりあえずしばらくはラッシュが続いて、飽和したら歴史の文献研究みたいに見直しが盛んになるのかなぁ。
 そのときには博物館から再発見される新種が出て、発掘の有終を飾ってくれるかもしれない。

関連書評
そして恐竜は鳥になった 小林快次・土屋健
発見!恐竜の墓場 ナショナルジオグラフィックDVD

スーパービジュアル再現 羽毛恐竜と巨大昆虫 7つの謎で解き明かす太古の世界
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カテゴリ:地学 | 20:25 | comments(0) | trackbacks(0)

恐竜・古生物ILLUSTRATED ニュートンムック別冊

 恐竜は古生物なのに、古生物と並んで表記されている。それほど古生物のなかで恐竜のしめる立場には特別な物がある。でも、他の古生物だって面白いのだ。
 というわけで、恐竜以外の古生物好きにも満足のできる内容になっていた。恐竜以前と恐竜以後という紹介のされ方はシャクだが、いつかは世間から認知される日も来る……はず。
 翼竜と魚竜も恐竜とは別の分類ですよ――と断りながら紹介されていた。

 ヴェロキラプトルが単独行動する動物として、プロトケラトプスとタイマン状態でイラスト化されている。ディスカバリーチャンネルでは思いっきり群れで行動する動物としてCG化されていたため、群れで行動した証拠がないと書かれていたことには驚いた。
 巨大なウミガメ「アルケロン」は食べ物となるアンモナイトの絶滅に引きずられる形でいなくなってしまったらしい。オウムガイに食料を転換して生き延びることはできなかった?
 背中に二列のトゲがあるアマルガサウルスや装甲板をもつサルタサウルスなど、竜脚類にも巨体以外の特徴をもつものがいることも覚えておきたくなった。

 CGはあまりなくイラストレーターのタッチが感じられる絵が多い点もなかなか良かった。

関連書評
生命史図譜 土屋健 群馬県立自然史博物館 監修
絵でわかるカンブリア爆発 更科功
「知」のビジュアル百科 太古の生物図鑑 ウイリアム・リンゼー

恐竜・古生物ILLUSTRATED―よみがえる陸・海・空の覇者たち (ニュートンムック Newton別冊)
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カテゴリ:地学 | 20:24 | comments(0) | trackbacks(0)

マンモスを科学する 鈴木直樹

 愛・地球博に展示された冷凍マンモス。その調査研究と展示の監督にあたった著者による冷凍マンモス研究譚。
 研究対象であるマンモスのことに視点を固定せず、彼らが眠っている凍土層からの研究についても詳しく記述している。現実はお話のように伏線が回収されないので、せっかく開発した地中三次元レーダーは許可申請のミスから使用されないし、マンモス展示の予算が大幅に削減されて未知のマンモス全身標本を輸送展示するわけにもいかなくなってしまった。
 そういう状況の変化に翻弄されながらも、できる範囲でベストの結果を目指している著者の姿勢には是非とも学びたいものだ。医学を研究しながら、グラフィックボードの開発や世界各地でのフィールドワークを行っている著者の真似はとうていできないにしても……いったい何者なのだろう。

 肝心のマンモス研究については、はるばる日本までやってきたユカギルマンモスの頭部と前足のCTスキャンが行われて、手に入ったデータから三次元的にマンモスを研究することが可能になった。
 最初は何気なくみていた表紙が、著者の述べる苦労をして得られたデータだと知って見直すと、まったく別のものに思えてくるのであった。

 ロシアが共同研究や標本の貸し出しに快く応じてくれたことも覚えておきたい。壁を作ってしまっているのは日本人の方なのかも。

関連書評
絶滅したふしぎな巨大生物 川崎悟司
怪異古生物考 土屋健・萩野慎諧・久正人

マンモスを科学する (角川学芸ブックス)
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カテゴリ:地学 | 20:58 | comments(0) | trackbacks(0)

ときめく化石図鑑 土屋香・文 土屋健・監修

 ときめく図鑑シリーズでは比較的図鑑しているときめく図鑑。ただし、出てくる化石はおもしろさと美しさ重視で、分類群のことなどは脇に置く傾向が強い。
 キャプションに客観的事実よりも著者の感想――だいたいは同意できるもの――が表れている点も普通の図鑑とは異なっていた。
 収録されている化石の質が非常によくて、同じものをそろえようとした場合の出費が想像もつかなかった(が、化石の金銭収集方法も紹介している)。まぁ、化石の世界にはレプリカってものもあるからなぁ。研究に使おうと思わなければ、本書を読んで刺激された欲望もそれなりに満足させられるのかもしれない。

 紹介されている化石は有名どころが多いながらも、コケムシの「アルキメデス」やフデイシの「ディディモグラプタス」など聞いた覚えのない種も出てきていた。
 巻貝「フラグモリテス」のラノベ主人公っぽさもなかなか……
 産地や「化石の歴史」なども取り上げられていて、限られたページ数でもけっこう内容が充実した本だった。

関連書評
楽しい植物化石 土屋香・土屋健
怪異古生物考 土屋健・萩野慎諧・久正人

ときめく化石図鑑 (Book for Discovery)
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カテゴリ:地学 | 22:21 | comments(0) | trackbacks(0)

NHKスペシャル「完全解剖ティラノサウルス」 土屋健

「最強恐竜 進化の謎」と副題にあるが、進化の謎についての説明は不十分に感じられた。番組の副読本にはなるかもしれないが、単独で楽しむためには前提知識が必要なのではないか。
 著者は入門書と位置づけていて、本当に進化の謎を説明しているらしき「ティラノサウルスはすごい」に読者を誘導したいみたいだった。あと、ウェブサイトで補足説明をしているらしいので、そっちまでしっかり読めば「進化の謎」にしっかり納得できるかもしれない。
 3D映像も見れるらしい。

 「超肉食恐竜」とまで持ち上げられているらしい、ティラノサウルス類専門の図鑑としては情報が非常に限定されている種までイラスト化されていて、なかなか役に立ちそうだ。

 進化の謎についてはアメリカ西部にあった大陸「ララミディア」でティラノサウルス類が大きくなったことを押さえることができれば十分だろう。
 アパラチア大陸の恐竜についてはほとんど分かっていないことが気になる。カナダでみつかっている恐竜も西部が中心なんだな。

関連書評
白亜紀の生物・下巻 土屋健 群馬県立自然史博物館監修
ジュラ紀の生物 土屋健 群馬県立自然史博物館監修
発見!恐竜の墓場 ナショナルジオグラフィックDVD

NHKスペシャル 完全解剖ティラノサウルス 最強恐竜 進化の謎 (教養・文化シリーズ)
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カテゴリ:地学 | 19:03 | comments(0) | trackbacks(0)

怪異古生物考 土屋健・萩野慎諧・久正人

 古今東西の怪異とされる生き物について、古生物学的な観点から妄想をたくましくしてみる本。
 ちょっと前にネットで話題になったマンモスの頭蓋骨からキュプロクスの伝説ができた話や、天狗の爪がメガロドンの歯というネタバレしても問題なさそうな話題から、個人的には新鮮だったぬえや平賀源内が記録した天狗の頭蓋骨の正体まで楽しく妄想をたくましくしていた。
 イラストもリアルなスケッチから怪異の姿まで久正人氏が担当しているため、比較しやすかった。

 昔の人でもわかっている人はわかっている話があって、現代よりも少ない情報から正解をいい当てる知性の鋭さには驚かされた。

 科学者によるコラムや著者の説明文も楽しく知識の幅を広げてくれた。しかし、検索結果汚染の話題には苦笑い。いつまでも流行しているはずもないのに、コンテンツが終わった後も検索結果は汚染されたままで本当にいいのだろうか……。

関連書評
古生物たちのふしぎな世界 土屋健・田中源吾
ビジュアルでわかる地球と人類の46億年史 土屋健・宮崎正勝

怪異古生物考 (生物ミステリー)
怪異古生物考 (生物ミステリー)
賢そうなキュプロクス。著者的に言えば神性強めだな。
カテゴリ:地学 | 23:11 | comments(0) | trackbacks(0)
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