長野県の地震入門 塚原弘昭・編著 しなのき書房

 長野県に災害をもたらす恐れのある活断層について分かりやすくまとめた一冊。マグニチュード7より小さい地震は、地表地震断層を生じるとは限らず、活動履歴を調べることが難しいとの説明付きだ。
 長野ほど広い県になると、知られざる活断層がいくつも眠っているんじゃないかな。地表に与える影響よりも浸食の方が早ければ簡単には見つかるまい。
 地雷のうえに住んでいるみたいな気持ちが増した。

 ちゃんと地表に現れている大規模な断層については個別の情報がある。
 長野県は、糸静線と中央構造線の両方がある凄い県なのだ。
 中央構造線の愛知県部分は活動的でないことで有名だったが、長野県に入った部分は活動的な可能性があるのか……ややこしいムーブをしてくれる。

 松代群発地震が地下水の侵入によって起こされた経緯は、アメリカのシェールガス採掘にともなう人工地震発生に似ていると感じた。
 群発地震発生時の松代が地震研究のメッカ状態になっていたことも興味深かった。
 ほとんど長野県にはないが被害を与える岐阜県の阿寺断層も怖い。震度予想から諏訪盆地の軟弱性もよく理解できた。

 巻末には地形図に長野県の活断層の位置を重ねたマップが載っている。個人的には活動のトレンド(横ズレ方向・上盤下盤側)も分かると、もっと良かったかな。

カテゴリ:地学 | 22:49 | comments(0) | -

火山のしくみパーフェクトガイド 高橋正樹

 パーフェクト!
 カラーイラストでビジュアル的にわかりやすく、火山に関連する幅広い内容をまとめたパーフェクトガイド。付録の赤色立体地図でみる火山も、さまざまな方向から3Dに赤色立体地図を重ねた画像が収録されていて、見応え十分だった。
 注目の新しい国土である西之島に関する情報が集まっている。収録内容も出版までの一時を切り取ったもので、今後も激しく変化していくと思われるが。

 さまざまな火山の研究者たちが自分の専門分野についてのコラムを載せているので、火山関係の進路に進みたい高校生にも参考になるかもしれない。
 おもしろいところでは火山地質学者による日本の温泉10選なんて記事もある。
 温泉といえば、泉質が地理的な法則性をもって変化していくのも興味深かった。

カテゴリ:地学 | 20:38 | comments(0) | -

鉱物語り〜エピソードで読むきれいな石の本 藤浦淳

 著者が所有する国産の美しい鉱物の写真と共に石に関するエピソードが読める本。
 西日本を中心に過去の有名産地や一時的にファンの間で評判になったと思われる産地の標本がたくさん出てきて、著者のキャリアの長さとアクティブさが感じられた。
 外国産の鉱物もまったくないわけじゃなくて、話の内容によっては写真に出てくる。

 鉱物名の日本語表記に○○石・○○鉱じゃなくて○○ナイトと最後までカタカナの表記を使っているのは珍しいかもしれない。著者なりのこだわりか?

 今では採れない鉱物、稼働していない鉱山や石切場の鉱物をみたり話を読んだりしていると、いまの鉱物ファンが将来おなじような本を出せるのか心配になってくる。
 可能性のひとつは海外で採集する手だが……?あまりに手に届かないものの話ばかり並べられるのも読者は喜ばないかもしれない。

鉱物関連記事一覧

鉱物語り: エピソードで読むきれいな石の本
淳, 藤浦
創元社 (2019-10-17)
カテゴリ:地学 | 20:04 | comments(0) | -

鉱物・宝石のひみつ 松原聰

 高クオリティの鉱物標本写真が惜しげもなく使われた子供向けの鉱物・宝石の本。一方で河原の石を拾う方法も紹介しているので「手に入るのは、こんなものだ」と理解してもらえると思いたい。
 河原の石は荒川の物で統一されていた。

 海外だと国名までだが産地や化学組成も表記していて、なかなかわかりやすかった。アルファベットでの表記はないが、カタカナで英名もわかるようにしてある。
 けっこう読みの難しい鉱物が多いので助ける。

 なお、鉱物図鑑で化学組成を示したのより後にメンデレーエフの周期表が出てくる。条痕などについても同様の順番になる。
 簡単な内容であるし読み返すことを前提とすれば、問題はないのかなぁ。むしろ、そこに注意して読み返すことで記憶に定着しやすくなるかもしれない。

鉱物関連記事一覧

調べる学習百科 鉱物・宝石のひみつ
松原 聰
岩崎書店 (2017-10-17)
カテゴリ:地学 | 23:28 | comments(0) | -

地層ってなんだろう3〜歴史をしらべよう 目代邦康

 天然記念物の指定は1960年代以降すすんでいないそうだ。ジオパークを推進するとき一緒に、あるいは前作業として天然記念物化を進めればいいのにと思ったが、実際にはやっているかもしれない。

 カキが縦だとその場所で生きていたもの、カキが横になっていると死んで流されてきたもの。
 ここを覚えてみよう。
 サンゴも見事なものが千葉県の丘陵に出ているんだなぁ。海進期を実感させられる。現地に行けばもっと強く感じられるだろう。

 液状化現象を示す地層がぐちゃぐちゃになった露頭もすごかった。
 写真で上の方にいる人のポーズがちょっとコミカル。スケールになるからね、人が写るのは正しい。

地層ってなんだろう〈3〉歴史をしらべよう
地層ってなんだろう〈3〉歴史をしらべよう
カテゴリ:地学 | 21:28 | comments(0) | -

地層ってなんだろう2〜実験しよう 目代邦康


 小学校の校庭に河川実験施設があって、理科の授業で水を流して河川の形成を観察したことを思い出した。あとビーカーかペットボトルに土を入れて級化を観察する実験も義務教育期間にやった覚えがある。
 けっこう強い印象に残っているので、子供にはできるだけ地学の実験を経験してほしいと思った。
 近くにやっている博物館があれば恵まれている。

 実験が上手くいかなかった時がチャンスで条件の違いなどを考えてみようと書いているコラムを読んで思ったのだが、間違っていた条件がちょうど重力や素材の違う火星やタイタンの地学現象を再現している可能性もあるのかなぁ。
 そんな例がみつかったら最高だ。

地層ってなんだろう〈2〉実験しよう
地層ってなんだろう〈2〉実験しよう
カテゴリ:地学 | 22:58 | comments(0) | -

地層ってなんだろう1〜観察しよう 目代邦康

 まずは地層を生み出す様々な地形を写真と図で紹介していく。すべて国内の写真であり、日本の地形が多様なこともわかる。

 高山や南の島は近くに住んでいないと子供が観察するには難易度が高い。しかし、身近な地層がそういう場所で出来ている可能性を意識してほしいものだ。
 川の攻撃斜面は覚えやすいが、滑走斜面はすぐに忘れてしまう。インブリケーションの説明が懐かしかった。

 河岸段丘の断面図に日本には珍しい正断層が描かれている?それとも地滑りをイメージしているのかな?そう思っていたが2巻で同じ図が出てきて、河川堆積物を表しているにすぎないことに気づいた。
 地層の色を変えているところがポイントか。不整合面が湾曲していれば勘違いしにくかったのだが。

地層ってなんだろう〈1〉観察しよう
地層ってなんだろう〈1〉観察しよう
カテゴリ:地学 | 23:53 | comments(0) | -

雲のカタログ[空がわかる全種分類図鑑] 村井昭夫・鵜山義晃

 雲の種類は飛行機雲を加えてもたったの11種類!だが、その見分けは簡単ではなく、説明している本でも間違っていることがある。そのことを打開したいと考えた著者による雲のカタログ写真集。
 視直径によって雲の種類を見分けることは覚えておくと良さそうだ。そして、気象の変化に敏感になりたい。なんかカッコいいし。

 レアな光象の写真を撮るためにも雲の種類を見分ける能力は欠かせず、それぞれの関係を覚えておくことで目立たないがもっとレアなイベントにも気づける可能性がある。
 空の写真を撮りたいと考えている人にはとても参考になる本だ。

 それにしても星の数でレア度を煽る本が増えたなぁ。ガチャのあるソーシャルゲームの影響がじわじわ来ているのかもしれない……。

雲のカタログ  空がわかる全種分類図鑑
雲のカタログ 空がわかる全種分類図鑑
カテゴリ:地学 | 21:51 | comments(0) | -

宮沢賢治の地学実習 柴山元彦

 宮沢賢治が学んできた地学的な知識や露頭、逆に教えてきた地学などが紹介されている。
 個人的にあまり親しみのない東北地方のフィールドに興味がわいた。イギリス海岸のネーミングが強すぎる!
 中盤からは東北地方に限らず、魅力的な化石採集地や体験施設が紹介されている。岐阜県下呂市で行われている蛍石鉱山の採集体験ツアーが気になる。


 自分もそれなりに地学のことは学んできたはずなのだが、宮沢賢治と同じように人に教えられる自信がまったく持てない……自分の中で知識を消化することについて、改めて反省させられる。

 地学知識が取り込まれた作品については、けっこう難解で、読者の大半は何となく読んでいた予感がした。それでも、地学に親しむ切っ掛けになってくれれば関係者にはとても助かったことであろう。

宮沢賢治の地学実習
宮沢賢治の地学実習
カテゴリ:地学 | 22:40 | comments(0) | -

世界の富士山 伊藤和明/監修

 観光的な本を予想していたら、がっつり富士山の災害対策を啓蒙する本であった。
 びっくりした。

 まず、富士山が属するタイプの成層火山が世界各地で災害を引き起こしていることが説明される。どの火山も恐ろしいが、セント・ヘレンズ山に起こった噴火現象の描写は簡潔にしてダイナミック。一編の記録映像を展開されるがごとき迫力があった。
 実際の死亡例は多くないのだが、爆風が怖すぎる。

 富士山の噴火形式を説明するところでは山頂噴火は比較的大きな噴火になること、最近の噴火は珍しく山頂以外からの噴火で大規模なものが続いていることが印象的だった。
 これらのパターンからは次の噴火が読めない。そのことにも危機感を覚える。

 それでもハザードマップは作成されていて、その紹介が本書の最後を飾っている。ハザードマップそのものも付録についているのだが、滝や湧水地の紹介まで入っているのは、イメージ悪化を心配する観光業者への配慮と思われた。
 その紙面でもっと情報を盛り込んでほしい気もしてしまったが、実際に影響があるだろうから仕方ないのかな。

世界の富士山
世界の富士山
カテゴリ:地学 | 20:57 | comments(0) | -
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