宝石と鉱物の大図鑑〜地球が生んだ自然の宝物 スミソニアン協会

 日本語版監修 諏訪恭一・宮脇律郎。翻訳 高橋佳奈子・黒輪篤嗣。

 ハイグレードな宝石の写真がたくさん収録された図鑑。伝説的な宝飾品についての見開き解説ページもある。まさに別世界の出来事で、フランスの宮廷生活を眺める気分だ。カルティエの宝飾品がいまいち好みに感じられないのも単なる嫉妬かもしれない。
 準宝石あつかいの鉱物であっても最高品質のものを見事にカットして、主役として飾れば、垂涎の宝飾品になることが確認できた。リチア輝石など非常に魅力的だった。
 最高級とされるダイヤモンドは脇役にされることで、普段は主役になれない石を主役に持ち上げる力も持っているかもしれない。

 巻末には鉱物図鑑もあって比較的めずらしい鉱物も多く取り上げられていた。宝石のほうで写真が出てきた鉱物の中には写真のないものもあった。

 また、全体に誤訳や用語のミスなどは目に付かず、しっかりしていた。
 おしむらくは産地表記が少ないことか。

鉱物関連記事一覧

宝石と鉱物の大図鑑
宝石と鉱物の大図鑑
定価で一万円近い
カテゴリ:地学 | 22:23 | comments(0) | trackbacks(0)

羽毛恐竜と巨大昆虫 ナショナルジオグラフィック

 熱河ビオトープ(熱河層群)を始めとする熱い化石産地からの最新研究成果を存分に活かしたビジュアル再現。さまざまな恐竜や昆虫がCGでリアリティたっぷりに再現されている。もう少しで写真と区別の付かない雰囲気になりそうだ。あえてCGっぽさを残しているところがあるのかもしれない。

 ゾルンフォーヘンは熱帯のラグーン、遼寧省は火山近くで寒冷な気候だったと、有名化石の産出地について当時の気候に注目した紹介がされている点が興味深かった。
 気候がわかることで有名恐竜たちが生きていたときの姿が、より具体的にイメージできるようになった。
 それにしても遼寧省の産地は生物が豊かである。冬は雪が降っていたはずなのに意外と書かれているが、四季があるからこそ生物の種が豊富だったとも考えられる。
 ここで育った中国の古生物学者も生まれてきているようで羨ましい。こういう恵まれた化石産地があっても世界的に一億〜8000万年前の恐竜化石が空白になっているそうで、日本はそこをなんとか押さえてほしいものだ。

 今後期待される恐竜化石の産出シミュレーションも紹介されていた。とりあえずしばらくはラッシュが続いて、飽和したら歴史の文献研究みたいに見直しが盛んになるのかなぁ。
 そのときには博物館から再発見される新種が出て、発掘の有終を飾ってくれるかもしれない。

関連書評
そして恐竜は鳥になった 小林快次・土屋健
発見!恐竜の墓場 ナショナルジオグラフィックDVD

スーパービジュアル再現 羽毛恐竜と巨大昆虫 7つの謎で解き明かす太古の世界
スーパービジュアル再現 羽毛恐竜と巨大昆虫 7つの謎で解き明かす太古の世界
カテゴリ:地学 | 20:25 | comments(0) | trackbacks(0)

恐竜・古生物ILLUSTRATED ニュートンムック別冊

 恐竜は古生物なのに、古生物と並んで表記されている。それほど古生物のなかで恐竜のしめる立場には特別な物がある。でも、他の古生物だって面白いのだ。
 というわけで、恐竜以外の古生物好きにも満足のできる内容になっていた。恐竜以前と恐竜以後という紹介のされ方はシャクだが、いつかは世間から認知される日も来る……はず。
 翼竜と魚竜も恐竜とは別の分類ですよ――と断りながら紹介されていた。

 ヴェロキラプトルが単独行動する動物として、プロトケラトプスとタイマン状態でイラスト化されている。ディスカバリーチャンネルでは思いっきり群れで行動する動物としてCG化されていたため、群れで行動した証拠がないと書かれていたことには驚いた。
 巨大なウミガメ「アルケロン」は食べ物となるアンモナイトの絶滅に引きずられる形でいなくなってしまったらしい。オウムガイに食料を転換して生き延びることはできなかった?
 背中に二列のトゲがあるアマルガサウルスや装甲板をもつサルタサウルスなど、竜脚類にも巨体以外の特徴をもつものがいることも覚えておきたくなった。

 CGはあまりなくイラストレーターのタッチが感じられる絵が多い点もなかなか良かった。

関連書評
生命史図譜 土屋健 群馬県立自然史博物館 監修
絵でわかるカンブリア爆発 更科功
「知」のビジュアル百科 太古の生物図鑑 ウイリアム・リンゼー

恐竜・古生物ILLUSTRATED―よみがえる陸・海・空の覇者たち (ニュートンムック Newton別冊)
恐竜・古生物ILLUSTRATED―よみがえる陸・海・空の覇者たち (ニュートンムック Newton別冊)
カテゴリ:地学 | 20:24 | comments(0) | trackbacks(0)

マンモスを科学する 鈴木直樹

 愛・地球博に展示された冷凍マンモス。その調査研究と展示の監督にあたった著者による冷凍マンモス研究譚。
 研究対象であるマンモスのことに視点を固定せず、彼らが眠っている凍土層からの研究についても詳しく記述している。現実はお話のように伏線が回収されないので、せっかく開発した地中三次元レーダーは許可申請のミスから使用されないし、マンモス展示の予算が大幅に削減されて未知のマンモス全身標本を輸送展示するわけにもいかなくなってしまった。
 そういう状況の変化に翻弄されながらも、できる範囲でベストの結果を目指している著者の姿勢には是非とも学びたいものだ。医学を研究しながら、グラフィックボードの開発や世界各地でのフィールドワークを行っている著者の真似はとうていできないにしても……いったい何者なのだろう。

 肝心のマンモス研究については、はるばる日本までやってきたユカギルマンモスの頭部と前足のCTスキャンが行われて、手に入ったデータから三次元的にマンモスを研究することが可能になった。
 最初は何気なくみていた表紙が、著者の述べる苦労をして得られたデータだと知って見直すと、まったく別のものに思えてくるのであった。

 ロシアが共同研究や標本の貸し出しに快く応じてくれたことも覚えておきたい。壁を作ってしまっているのは日本人の方なのかも。

関連書評
絶滅したふしぎな巨大生物 川崎悟司
怪異古生物考 土屋健・萩野慎諧・久正人

マンモスを科学する (角川学芸ブックス)
マンモスを科学する (角川学芸ブックス)
カテゴリ:地学 | 20:58 | comments(0) | trackbacks(0)

ときめく化石図鑑 土屋香・文 土屋健・監修

 ときめく図鑑シリーズでは比較的図鑑しているときめく図鑑。ただし、出てくる化石はおもしろさと美しさ重視で、分類群のことなどは脇に置く傾向が強い。
 キャプションに客観的事実よりも著者の感想――だいたいは同意できるもの――が表れている点も普通の図鑑とは異なっていた。
 収録されている化石の質が非常によくて、同じものをそろえようとした場合の出費が想像もつかなかった(が、化石の金銭収集方法も紹介している)。まぁ、化石の世界にはレプリカってものもあるからなぁ。研究に使おうと思わなければ、本書を読んで刺激された欲望もそれなりに満足させられるのかもしれない。

 紹介されている化石は有名どころが多いながらも、コケムシの「アルキメデス」やフデイシの「ディディモグラプタス」など聞いた覚えのない種も出てきていた。
 巻貝「フラグモリテス」のラノベ主人公っぽさもなかなか……
 産地や「化石の歴史」なども取り上げられていて、限られたページ数でもけっこう内容が充実した本だった。

関連書評
楽しい植物化石 土屋香・土屋健
怪異古生物考 土屋健・萩野慎諧・久正人

ときめく化石図鑑 (Book for Discovery)
ときめく化石図鑑 (Book for Discovery)
カテゴリ:地学 | 22:21 | comments(0) | trackbacks(0)

NHKスペシャル「完全解剖ティラノサウルス」 土屋健

「最強恐竜 進化の謎」と副題にあるが、進化の謎についての説明は不十分に感じられた。番組の副読本にはなるかもしれないが、単独で楽しむためには前提知識が必要なのではないか。
 著者は入門書と位置づけていて、本当に進化の謎を説明しているらしき「ティラノサウルスはすごい」に読者を誘導したいみたいだった。あと、ウェブサイトで補足説明をしているらしいので、そっちまでしっかり読めば「進化の謎」にしっかり納得できるかもしれない。
 3D映像も見れるらしい。

 「超肉食恐竜」とまで持ち上げられているらしい、ティラノサウルス類専門の図鑑としては情報が非常に限定されている種までイラスト化されていて、なかなか役に立ちそうだ。

 進化の謎についてはアメリカ西部にあった大陸「ララミディア」でティラノサウルス類が大きくなったことを押さえることができれば十分だろう。
 アパラチア大陸の恐竜についてはほとんど分かっていないことが気になる。カナダでみつかっている恐竜も西部が中心なんだな。

関連書評
白亜紀の生物・下巻 土屋健 群馬県立自然史博物館監修
ジュラ紀の生物 土屋健 群馬県立自然史博物館監修
発見!恐竜の墓場 ナショナルジオグラフィックDVD

NHKスペシャル 完全解剖ティラノサウルス 最強恐竜 進化の謎 (教養・文化シリーズ)
NHKスペシャル 完全解剖ティラノサウルス 最強恐竜 進化の謎 (教養・文化シリーズ)
カテゴリ:地学 | 19:03 | comments(0) | trackbacks(0)

怪異古生物考 土屋健・萩野慎諧・久正人

 古今東西の怪異とされる生き物について、古生物学的な観点から妄想をたくましくしてみる本。
 ちょっと前にネットで話題になったマンモスの頭蓋骨からキュプロクスの伝説ができた話や、天狗の爪がメガロドンの歯というネタバレしても問題なさそうな話題から、個人的には新鮮だったぬえや平賀源内が記録した天狗の頭蓋骨の正体まで楽しく妄想をたくましくしていた。
 イラストもリアルなスケッチから怪異の姿まで久正人氏が担当しているため、比較しやすかった。

 昔の人でもわかっている人はわかっている話があって、現代よりも少ない情報から正解をいい当てる知性の鋭さには驚かされた。

 科学者によるコラムや著者の説明文も楽しく知識の幅を広げてくれた。しかし、検索結果汚染の話題には苦笑い。いつまでも流行しているはずもないのに、コンテンツが終わった後も検索結果は汚染されたままで本当にいいのだろうか……。

関連書評
古生物たちのふしぎな世界 土屋健・田中源吾
ビジュアルでわかる地球と人類の46億年史 土屋健・宮崎正勝

怪異古生物考 (生物ミステリー)
怪異古生物考 (生物ミステリー)
賢そうなキュプロクス。著者的に言えば神性強めだな。
カテゴリ:地学 | 23:11 | comments(0) | trackbacks(0)

絶滅した奇妙な動物シリーズ 生命のはじまり古生代 川崎悟司

 古生代っておもしろい。
 多様な生物が次々とあらわれて新しい環境への進出をこころみる古生代。絶滅した奇妙な動物1・2巻で紹介された古生代の動物は最初にまとめられており、それ以外のやや特殊な動物たちがイラストに描かれている。
 ハルキゲニアがまだ前後逆だが、こういう復元を描いた反動が「ハルキゲニたん」なのかなぁ……
 ネクトカリスの復元が大きく変わったことはすっかり忘れていた。だが、現在の頭足類につながる生物だったわけで、ハルキゲニアより重要に思える。

 デボン紀にアノマロカリスの子孫シーダーハンネスやマルレラの近縁種ミメタスターなどのカンブリア紀からの生き残りが生息していたドイツのフンスリュック頁岩が興味深い。周囲から隔絶された環境だったのかなぁ。
 あとがきで著者が深海に三葉虫が生き残っていることを期待している。生き残っていれば中生代や新生代にも化石に残るんじゃないかとも思うのだけど、深海の地層だとそのまま海溝に落ち込んでいって地上に出てくる可能性は低いか?
 ごく小型の三葉虫なら、そんなに資源を必要としないだろうし、どこかで生きていてほしいものである。

関連書評
ハルキゲニたんの古生物学入門〜古生代編 川崎悟司
オルドビス紀・シルル紀の生物 土屋健
すごい古代生物〜ようこそ、奇跡の「もしも動物園」へ

生命のはじまり 古生代 (絶滅した奇妙な動物シリーズ)
生命のはじまり 古生代 (絶滅した奇妙な動物シリーズ)
カテゴリ:地学 | 17:56 | comments(0) | trackbacks(0)

日本の恐竜図鑑 宇都宮聡+川崎悟司

 「実は恐竜王国」とのアオリもついて、日本でみつかった恐竜の姿がイラストで楽しめる。部分化石なので恐竜そのものの生態よりも、みつかった経緯のほうに情報が集中している場合もあるが……。
 近隣の中国などでの研究が進展したおかげで、わずかな化石からも議論が可能になっているらしい。そうして得られた情報が中国などの研究に役立てば、どんどん研究が進んでいくかもしれない。

 部分化石が多い中、かなりの骨が見つかっているのに特徴的ではないため、特定の種だと認定できない化石もあった。そういう場合は化石研究の先進地が完全に有利だ。凡庸な種でも最初に発見すれば特別な種になる。
 発見から論文発表まで時間がかかる場合もあって、フタバサウルスの場合は1968年にみつかって2006年に論文発表である。当時高校生った発見者に孫がいても不思議じゃない。
 慎重なクリーニングには時間が掛かるし、しかたのないことだが。

 恐竜化石を探すときにはカメの化石を探すといいことが著者の経験から説明されている。また貝化石の研究者のほうが植物化石の研究者よりも恐竜化石をみつける可能性が高いらしい。
 身近な恐竜産地を探すときに注意したら良さそうだ。あと、産地の荒廃が問題になっているのは、やはり化石も鉱物同じだと分かった。

関連書評
日本の白亜紀・恐竜図鑑 宇都宮聡+川崎悟司
日本の絶滅古生物図鑑 宇都宮聡・川崎悟司

日本の恐竜図鑑:じつは恐竜王国日本列島
日本の恐竜図鑑:じつは恐竜王国日本列島
カテゴリ:地学 | 17:56 | comments(0) | trackbacks(0)

近江の平成雲根志―鉱山・鉱物・奇石― 福井龍幸

 琵琶湖博物館ブックレット5

 鉱物愛好家の間で名高い江戸時代の木内石亭は近江の出身だった。そんな縁から平成の雲根志と名付けられたブックレット。昭和雲根志は益富先生が書いているとのことで、かなり挑戦的なタイトルに思われる。
 でも、滋賀県に限らず、各県で同じように雲根志が書かれたらおもしろい。それではまるで風土記だ。とりあえず山梨県版といえるものは山梨新聞が出版している。愛知も鳳来寺山博物館館長のものが近いかもしれない。

 滋賀県には大規模な鉱山はあまりないかわりに意外と多様な地質から生まれた様々な鉱山が存在していた。
 古老からの聞き取り調査などによって判明した操業の実際を丹念に記録していて、地元の強みをよく活かしていた。
 特に石部灰山のベゼリ石が産出した時代に居合わせたことはうらやましい(著者は最適なタイミングは逃してしまったようだが)。まぁ、近年でもレインボーガーネットの発見などはあったし、可能性と夢と採集趣味だけでも後進に残してあげたいものである。

 写真は著者の撮影によるものらしいが、できればプロに撮ってほしかった。ベゼリ石のマクロ写真や各種鉱物の蛍光写真は特に。近年の出版事情では難しいのかなぁ。

関連書評
山梨の奇岩と奇石〜石のロマンを追って 石田高・著 石田啓・写真
日本の屋根 長野県の鉱山と鉱石 市川正夫 | 読書は呼吸:長野県もあった
山師入門〜登山で見つけよう大地の宝 成谷俊明

近江の平成雲根志 (琵琶湖博物館ブックレット)
近江の平成雲根志 (琵琶湖博物館ブックレット)
カテゴリ:地学 | 16:40 | comments(0) | trackbacks(0)
| 1/32PAGES | >>