完全版釉薬基礎ノート 基本がわかる、釉薬の見本帖 津坂和秀

 「調合計算」CD-ROMつき!とのことでゼーゲル式の計算ができるエクセルシートがCD-ROMに付属した釉薬の本完全版。通常版の7年後の2004年に発行された。
 ジルコン釉薬ののっぺりした白色を低評価から救いたい……そういう記述をみた記憶がないけど、疑似マヨルカ焼の素地としてなら?

 透明釉、灰釉、鉄釉、銅釉、色釉などで章を分けて作品例やテストピース、考え方などをまとめている。鉄と銅の多彩な変化には魅了される。
 しかし、銅釉を還元焼成したときの「辰砂」は鉱物名になっているせいで有毒金属の水銀を使っていると勘違いさせてしまいそう――顔料としては過去にありえたわけだし。色を表現したいだけにしては迂闊なネーミングだったと過去の人に言いたくなる。
 色釉の章をみた印象では価数が変化する金属元素でも、鉄や銅ほどの多彩さを持つものは他にないのかな。

 有毒性を無視すればウラン、カドミウム、セレンも美しい色になると書いていてクロムは普通に釉薬に使われている。六価クロムの生成については注意しておかなくてもいいのかな。そういえば透明釉に鉛釉は出てこなかったなぁ。
 やきものには歴史があるだけに、考えてみるといろいろと……。

 銅釉のテストピースで条件によっては表面が潰れたみたいになっているのも印象的だった。印花文があっても、これでは台無しだ。

関連書評
やきものをつくる釉薬基礎ノート 津坂和秀
やきものをつくる釉薬応用ノート 津坂和秀
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火のある暮らしのはじめ方 日本の森林を育てる薪炭利用キャンペーン実行委員会

 「七輪、囲炉裏、ペレットストーブ、ピザ窯など」

 薪炭を使った生活を実践している人たちから紹介される。副題にあるように利用法は多岐にわたる。日常的に使っている場合もあれば、ピザ窯のように非日常のイベントに使っている場合もある。
 ちょっと多彩すぎてイメージがまとまらなかった。国産の薪炭を使うことで環境問題をなんとかしたい姿勢で繋がっているのは感じられた。

 炭だとガスよりも水蒸気が出ないので焼いたものがカラッとしているとの説明があったのだけど、カーボンニュートラルな木炭でなければ罪悪感なく恩恵を受けるのは難しいかもしれない。電子レンジや電気調理器なら行けるのかな――調理方法そのものが変わってくるが。

 三州足助屋敷で職員の食事をかまどで用意していることを知る。特にアピールはしていない拘りという……。
 薪炭利用キャンペーンのモデル地域が豊田市の矢作川流域らしいので、その関係もあるのかもしれない。他にも炭焼きしているうなぎ屋がこの地域の例だった。

 農文協だけに参考文献に同社が出している「つくってあそぼう火と炭の絵本」が出てきた。


 

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狩猟者のためのハンドクラフト教書 『狩猟生活』編集部

 ハンターが狩猟によって得た獲物から食べ物以外の物を作る方法をまとめた本。皮の利用は基本で、鹿の角やイノシシの歯、毛の利用などもある。
 皮を利用する場合はまずなめし加工をしなくてはならず、自分でやる方法と業者に送る方法が出てくる。なめし方にもいろいろあって、個人ができる方法では耐熱性などの求める特性が得られない場合は業者に送ったほうが良さそうだ。方法ごとに得られる皮の性質をまとめた表があった。

 狩猟に使うための道具がいろいろ製作されているが、どう考えてもそれで採れた皮を使い切るのは難しい。銃の所持許可証入れは一人一冊あれば十分だし、鹿革グローブもそこまでハイペースで破損することはないだろう。一頭の皮からでも複数作れるわけで――ただし、強度の関係で向いた部分がある模様。
 グローブを別の仕事用にも使えばいいかもしれない。あとは革製のブックカバーを量産すれば可能性があるかな。
 そういうアイテムを作るための時間もまた有限なわけで、一部を狩猟者本人が利用する以外にも社会全体で狩猟鳥獣の皮を利用する流れができたらいいのにな――本書の趣旨から外れた感想をもってしまった。

 剥製や骨格標本づくりの話もあって、イノシシの歯から年齢データをまとめている猟友会の活動などは野生動物の研究にとっても大いに意義がありそうだった。


 

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アブラムシ おもしろ生態とかしこい防ぎ方 谷口達雄 農文協

 驚異的な増殖力を誇る害虫アブラムシ。中でもモモアカアブラムシとワタアブラムシがエース害虫であることを教えてもらった。モモは腿じゃなくて、桃の意味だったのか。
 媒介するウイルスが多ければ、襲いかかる農作物も多い。人間の農業に適応している意味では稲に擬態するイネ科の雑草みたいな感じかなぁ。農薬の耐性を獲得していなかった牧歌的な時代を著者が回想しているのが興味深かった。一足先に農薬耐性が問題になっている害虫がいたので、アブラムシへの対応も方針そのものは素早く決まっている。
 ジャガイモとタバコの間を行き来するアブラムシへの対策で、タバコ農家のために自分がアブラムシ防除をしなくちゃならないのは納得がいかないとジャガイモ農家が非協力的だったなんて話も出ている。
 地域一丸となって一糸乱れず対策すれば物凄い効果が得られるのかもしれないが――家庭菜園はどうするか――自由があるゆえに難しいところも感じた。

 やはりニコチンが毒になるアブラムシがタバコの葉から吸汁する時にはニコチンを避けて刺しているらしいと知って憎々しさが万倍になる。その精度を医療に応用できれば凄いことができるのかもしれない。
 牛乳で害虫を窒息させるのは良く言われるが、同じ効果を狙うならオレート液剤がもっと効果的であることも紹介されていた。
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山菜・野草の食いしん坊図鑑 松本則行 農文協

 「おすすめ103種の見分け方・食べ方」

 食べられる山菜・野草の図鑑。見分け方や調理方法が載っている。著者はすべて実食しているようで、具体的な食べた感想を読むことができる。「紙を噛むようだ」と正直に表現される野草もある。
 そう書かれているヨモギも沖縄では形を残したまま汁物に入れるはずだが、細かい種が違うのかな。地域性や個体差はあるかもしれない。

 日本の一部にしか分布していない植物でも食べて情報を書いているから、著者は日本中を移動して山菜・野草のたぐいを食べたのだろうな。凄い行動力である。
 分布自体はしているのに一部地域では食べられていない場合もあって、競争相手が少ないので狙い目になりそうだった。

 有名どころの山菜・野草はやはりレシピが多めに載っている。分量については記述がないので、勘で調整する必要がある。著者としてはそうすることで料理のハードルを下げたかったとのこと。日常的な料理経験のない場合は逆にハードルが上がるかもしれない。その点でも天ぷらは強い。「おひたし」のことを「ひたし」と書くのでなかなか感覚が追いつかなかった。
 単なる雑草だと思っていた中にも意外と食べられる植物が多くあって興味深かった。


 

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NHK出版やさい栽培完全ガイドおいしくできる!トマト NHK出版編

 本書にて「連続二段摘心栽培」なる大技を知る。主枝を次々と脇芽に切り替えてトマトを実らせていく変なテクニックだ。捻枝によって高さを低くすることもポイントらしい。支柱への固定が面倒そうでプロの農家がやっていると書かれているのをみて、その手間が一番気になった。便利な道具でうまく固定しているんだろうな。
 うまくやれば一本仕立ての1.5〜2倍の収穫が得られるのは魅力的だ。
 取った脇芽を苗にして育てるのも面白そうで気になる。

 藤田智先生が写真に出演して栽培方法の実演をしていた。文章から一部の記述は藤田智先生が書いたものと思われるのだが、区切りなどもわからないのでついつい写真に出演する作業担当の人っぽく見えてしまう。
 藤田智先生の著書では本人が世話をしているとは限らないというのに。

 他にはトマトの育種開発をしている小西千秋氏が第二章の教師役として名前をあげられていた。
 第三章のQ&Aは誰が答えたのかなぁ。一段目のトマトにまつわる心配事が多い。

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庭で飼うはじめてのみつばち ホビー養蜂入門 中村純・和田依子

 アマチュアが行う趣味的な養蜂についてまとめた本。ちょっと夢をみてしまうけれど、やはりハードルは高い。住宅地でやるには近所の理解をえることが絶対に必要で、はちみつを持っての外交が欠かせない様子。
 限界集落までいけば条件が変わってくるかもしれないが、今度は蜜源があるのかな?そっちの事例は出てこなかった(他の本で集落全体で取り組んで上手く出来ている話は見たことがある)。
 特定の花から採ったはちみつ(単花はちみつ)の性質をまとめていて、結晶の出来方である程度の鑑定が可能らしい。ただし、同じ花の蜜でも集めた時期によって性質が変わってくることもあるようで複雑である。

 そば蜂蜜や栗蜂蜜は癖があって日本では人気がないけど国外では高く評価される地域もあると書かれていて円安を活かして輸出してみてほしいと思った――本書が出た2008年の為替はどうだったかな。

 ほとんど一貫して「みつばち」との表記でニホンミツバチともセイヨウミツバチとも明言していないのは注意が必要。最後の最後で逃去のしやすさの違いについて、少しだけ名前をあげて記述があった。
 趣味でやるからこそ量を気にしなくていいニホンミツバチを選ぶべきか、趣味で巣の数が増やせないから1群あたりのはちみつ量の得られるセイヨウミツバチ選ぶべきか、判断が難しい?
 参考文献はセイヨウミツバチを対象にしたものが多そうだった。

カテゴリ:ハウツー | 16:45 | comments(0) | -

1m2からはじめる自然菜園 草を活かして、無農薬で野菜がぐんぐん育つ! 竹内孝功

 1平方メートルの畑を基準にして夏畝と冬畝にわけ毎年同じ作物が栽培できる自然菜園の使い方が紹介されている本。ただし、自家不和合性のある一部の作物は必要な個体数を満たすために必要で2平方メートルでの栽培が推奨されている。ズッキーニやマクワウリやトウモロコシなど。
 雑草が周囲に生えているのを許しているものの、中心部分は草マルチを敷くことを基本にしているし、その周りには緑肥ミックスと称する「クリムゾンクローバー・赤クローバー・エンバク・イタリアンライグラス」の遷移ゾーンが設けられている。これらが草マルチの供給源になると共に、バンカープランツの役割も果たしているのだろう。
 「通路に緑肥ミックスをまく」と解説しつつ、別のページでは踏んじゃ駄目と書かれているので(通路とは?)となってしまった。踏むのは最低限にして作業しろってところか。

 なんとなく無肥料を想像してしまっていたが、無農薬としか書いていないわけで最低限度の肥料は投入されている。緑肥や窒素固定菌の力を借りて上手くやる考えも示されている。あと、米ヌカが要所要所で投入される。

 もしこれで上手に場所ごとに育てるものを固定できたら、輪作のローテーションを考える負担を減らせるはず。雑草や害虫をひたすら手で排除する形の無農薬とは違った省力への方向性が見られた。

カテゴリ:ハウツー | 06:40 | comments(0) | -

混ぜておぼえるはじめての釉薬づくり 野田耕一 誠文堂新光社

 釉薬の成分ごとの役割をわかりやすく整理して説明。出したい効果を見つけるためにどの成分を固定して、どの成分の割合を調整すればいいか、テストピースの作例で示してくれる。
 テストピースには二度塗り印花ベンガラ白化粧などいろいろな効果をほどこして釉薬との関係を一度で見れるように工夫している。もちろん、酸化焼成と還元焼成がある。

 原料に出てくる「中国黄土」に、中国の資源豊富さを感じた。日本の資源としては福島長石なども出てくるが、分布面積では中国黄土が圧倒的だろう――福島長石も釉薬としての必要量はあるのだろうが。

 ゼーゲル式を解くことで釉が溶けるか、表面の感じがどうなるかを求められることが紹介されている。なんとなくエクセルである程度は自動化できそうだなと思ったら、計算ソフトが2つ紹介されていた。対応OSがウィンドウズXPだ……2005年の本だからなぁ。

 釉薬を実際に工夫している陶芸家の記事をみて、データをみんなで共有したらテストのエネルギーロス(焼成窯はたくさんの熱を使うので)を減らせないものかと考えてしまった。商売の秘伝を明かすことになるので抵抗は大きいだろうな……。
 焼成窯によっても結果が変わってくることも書かれていて、データがあっても再現が難しいことも予想される。

関連書評
やきものをつくる釉薬応用ノート 津坂和秀 双葉社
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決定版 半日陰、日陰を楽しむ 奥峰子 今日から使えるシリーズ 講談社

 タイトルだけでは分かりにくいがガーデニングの本である。日照が少ない場所でも育成する植物の品種や、その育て方についてまとめている。
 日陰をA〜Eまでの5種類に分けて、A〜Eまで対応できる品種、A〜Cまでの品種のように整理している。Aは木漏れ日の当たる木の下、Eは建物の狭い隙間で、同じ日陰でもだいぶ条件が異なる。
 Eでもシダ植物などで育成できる品種があるのだから植物の多様性は大したものだ。熱帯雨林の植物も、暗い樹冠の下で育成しているため意外と日陰に強いとのこと。
 斑入りの白い部分がある葉などは日陰を明るく見せることができるらしい。いざとなればオーナメントを使う手もある。

 日本出身のギボウシがヨーロッパで人気を博し、品種改良されて日本の夏の高温多湿に弱くなって帰ってきている……寒さには強くなったんだろうけど、品種改良も万能ではない。
 食用には関係ない植物ばかりが出てくる中で、アケビが現れておいしいと説明されているのも面白かった。祖母が家の北側でイチジクを育てていたのを思い出した。

 見本となる庭としてヨーロッパの庭がいろいろと紹介されている。
 オランダの個人宅がけっこう多くて、最初はどれほど大きな家なのだろうと思ってしまった。あまりに多いので流石に複数の家だと考え直した。
 プランター栽培をしておいて日陰に持ち込む作戦も推奨されている。ヨーロッパの公園では花期だけ日陰に植えられて終わると移植される植物もある様子で、植物の身になってみるとなかなか過酷なことである。

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