あの場所の意外な起源 断崖絶壁寺院から世界最小の居住島まで ナショジオ

 トラビス・エルボラフ、マーティン・ブラウン著 湊麻里、鍋島僚介 訳

 写真を見るだけでも面白い場所の起源を知るともっと面白い。世界中の名景をナショナルジオグラフィックらしい写真と読み取りやすい地図で楽しめる本。シンプルな地図の出来が非常に良くて紹介されている土地周辺の関係ない地形の情報も眺めて楽しめた。
 情報量は少ないのだが、その裏にあるものが想像できるのだ。

 日本からは青ヶ島、猫島(田代島)、国営ひたち海浜公園が参戦。自然が創った絶景、偶然生まれた観光地、意図的に計算されて創られた公園と綺麗に分かれている。
 世界でみてもいろいろな背景があって面白い。

 フォードランディアの解説で初代ヘンリー・フォードが従業員の私生活にまで干渉するブラック企業マインドの持ち主だとわかった。時代がちがーう!と言われても好意的にはなれないかな。フォード支配下の企業都市では完全に逃げ場がなくて絶望的だ。

 イギリスのシュピーゲルハルター宝飾店は百貨店相手に立ち退かなかったことでド根性を見せた。百貨店より長生きしたのも興味深い。仮に百貨店内の店舗に取り込まれていたら寿命が縮まっていたんだろうな。
 しかし、百貨店の流れを説明する文章はずいぶん持って回った内容で、肝心の百貨店が出てくるまでに時間が掛かった。

 ラスコー洞窟の解説はブドウの接ぎ木とイミテーションの洞窟を重ねたオチで上手く結んでいた。ラスコー2とラスコー4が出てきたのにラスコー3が出てこないのは気になる。そこで調べたらラスコー3は巡回展に使われる持ち運び可能なイミテーションだった。

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ツタンカーメン100年 ナショジオが伝えてきた少年王の素顔

 100年前の1922年に発見されたツタンカーメンの王墓。ナショナルジオグラフィックが記事にしてきたツタンカーメン関連の情報をまとめた特集ムック。
 発見直後にナショナルジオグラフィックの特派員が見に行った当時の記事が載っている。写真はモノクロでところどころ粗いもののしっかり記録が残っている。
 他の王墓を暗室に使った、食堂にした、など今では考えられない情報もある。ツタンカーメンの呪いを本気で信じるような人が加わっていたら、こんな罰当たりはしないだろう。発掘のライバルなどが流した噂だと種明かしの解説がある。

 ツタンカーメンの死因についてミイラのCTスキャンなどを行って分析した記事が載っているが、頭部の骨片が殴られた跡ではなくミイラ作りの際のものだと分析された以上の情報はあまりない。胸の部分の骨が失われているのは気になるところだが。
 カーターがツタンカーメンのミイラを棺から外すために傷つけてしまったことが残念だ。現代の考古学は、時に後世の分析に委ねる判断をするようになっていて進歩しているなぁ。
 DNAの分析からツタンカーメンの母親が5人のうちの誰かまで絞られているが名前が判明するまでには至っていない。アクエンアテンはネフェルティティ以外の名前をあまり記録に残さないみたいなので――キヤは何とか残っている――新しく記録が見つかって特定されるのも期待薄なのかな……。

 ツタンカーメンそのものだけじゃ内容がもたないのか、父親のアクエンアテンに関連する記事が最後の方は多かった。アクエンアテンが美術を発展させた点も、日本からだと足利義政的な評価に繋げてみてしまう。玄宗皇帝でもいいが。

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エジプトの女王〜6人の支配者で知る新しい古代史 ナショナルジオグラフィック

 メルネイト、セベクネフェル、ハトシェプスト、ネフェルティティ、タウセルト、そしてクレオパトラ。エジプトで最高権力を握った6人の女性について分かっていることをまとめた本。序文で数千年前ただ一つ女性が正式に権力を握った国がエジプトだと書かれていて、日本は?という気持ちになってしまった。まぁ、「数」千年だから定義から外れるのかな。卑弥呼でもちょっと厳しい。
 ただ権力を持つことになった事情は日本の女性天皇にも通じる部分があって、男性の後継者に何らかの問題がある場合のリレー役要素が強い。そこからの展開はそれぞれの個性も出てくる。

 「革命家」アクエンアテンの無責任っぷりには呆れるばかりだ。夫の尻拭いをする羽目になったネフェルティティが気の毒。王妃の視点から書かれている関係もあるのだろうけど、そういう感想を持った。
 家臣にとってもエキセントリックなアクエンアテンよりもネフェルティティの方が話を持っていきやすいことがあったんだろうな。

 エジプト王家によくある近親婚の目的について権力を外部に持たせないため――いわいる外戚を作らせないため――だと著者は説明している。それにしても、きょうだいはまだしも父と娘の近親婚は強烈に思えて何か恐ろしい感じがしてしまった。これも社会的な常識による思い込みなのかもしれない。
 近親婚によって王妃の側もファラオの血を受け継いでいたことも、エジプトに女王が立つことのできた理由だろう。その点でも、日本の天皇は似ている。

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ここでしか味わえない!非日常の世界! ナショナルジオグラフィック

 世界中の劇的な景色をとらえた写真集。瞬間的なものもあるし、長く存在している景観もある。後者であっても天気などの条件が整ったところが撮影されている。
 世界は広大だわ……と、とらえどころのなさすら感じるカオスの集合体に感嘆してしまった。表紙にもなっているインドの塗料ぶちまけ祭は、中身でキャプション付きで見てもやっぱりわけが分からなかった。
 日本の奇祭も出てきて、柱に貼られまくった御札が異様な雰囲気だった。

 簡単には理解できないもの、参加している本人すら理解しているか怪しいものを、ありのまま世の中にはそういうものもあると受け容れて消化を待つことも人生には必要なのだろうな。
 実際の現場に行って参加すれば、もっといいのだろうが、まずは世の中にはこんなものがあると伝えてくれたカメラマンたちに感謝である。

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美しく孤独な場所 世界の廃墟島 クラウディア・マーティン 小金輝彦 訳

 無人島の中でもかつては人が住んでいた無人島に絞った写真集。廃墟が、人の生活の痕跡が、残されているだけに寂しい雰囲気がいや増している。
 建物の他に、家畜を囲う石積みが残っている島が多かった。あるいは菜園を守るためかもしれない(石垣が迷路になっている島は果樹を守るためと解説にあった)。

 木が一本も生えていないような島は住もうと思っても無理と感じる。木が成長できないほど気候が厳しいのは、風が非常に強いことも示唆していて、まともな暮らしにならないと思う。
 頑丈な風除けから入念に構築していって入植に成功した島があるなら、とても見たいのだが写真集の本題から外れる。修道院関係の島にはあったかもしれない。

 アメリカの廃墟島は観光地として第二の人生を歩んでいる島が目立って、そこまで雰囲気が暗くなかった。ヨーロッパではホテル化している島も散見された(だから厳密には無人島になっていない島もある)。
 それにしても、王立カナダ騎馬警察にはデボン島への入植なんて仕事もあったのか。キャプションの記述だけでは意味がわからない!まさか左遷先として利用されていないよなぁ?

 クリッパートン島の物語が妙に心に残った。1915年に成人男性でたったひとり生き残ったビクトリアーノ・アルバレスが王を名乗って島の住民を恐怖に陥れたが逆に殺されたと言うが、殺害犯は誰なのか?女性か子供しかありえないわけで、勇敢な人物がいたはずだ。

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人体の不思議〜驚異のメカニズム ナショナルジオグラフィックDVD

 人気歌手スティーブン・タイラーの声帯をリアルタイムで撮影したことを売りにしている……ちょっと生々しい。声帯の映像は文字通り生々しかった。ライブの最中に撮影するなんて、よく声に影響が出なかったなぁ。それだけ撮影機器が小型化しているってことか。
 スティーブン・タイラーもレーザー手術の恩があるとはいえ、良くここまで協力してくれたものだ。声帯が激しくぶつかり合う様子を実際にみると、よく生涯もつものだと感心してしまう。
 まぁ、人によっては器官が持たなくて駄目になってしまう人もいるが、声帯はあまり聞かない気がするのは呼吸とも関わっているから?外部からは分かりにくいだけかなぁ。

 感覚器官の密度が一定になるように人体の姿を変換した映像が衝撃的だった。モデルの女性はよく引き受けたものだ。モデルといえば、ちゃんぽんのカップ麺を食べている日本人らしき人の笑顔が眩しかった。他の役者はレストランで食べているので栄養の差を感じてしまった。

 赤外線カメラの説明は何か飲み込みにくかった。赤いところが熱いんじゃなくて明るい色のところが熱くて、汗がたくさん出る場所は赤いから比較的冷えているってことではないだろうか。汗が出る場所が熱いというのは感覚的に一致しない。

 セックスに関連する話題で、ダンスを取り込んでいたのはインド映画的だった。でも、精子が一秒に1000個生産されることを別の時間単位でも換算して繰り返し説明したことで、だいぶ台無しだった。

ナショナルジオグラフィックDVDレビュー記事一覧

カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 11:58 | comments(0) | -

戦争の地図〜歴史の残る、世界18の戦い ナショジオ

 薄いムックに18もの戦いが詰め込まれているので、さらに内容が薄い。徹底的にまとめられていると言えないこともないが……あくまでも知識の入り口であり、これで知った気持ちになるのは危険。
 日本の戦国時代に関する記述がそつなくまとまっていたことに驚いた。翻訳者の手柄かもしれない。三英傑以外で名前が出てくるのは今川義元・明智光秀・石田三成そして豊臣秀頼であり、三英傑が天下を握るに当たって切っ掛けになった敵がわかる。

 アステカ帝国はコルテスが現場を離れた時期に、一度首都を取り戻していて惜しかったと感じる。スペイン人に同盟者がいなければ包囲戦などできなかっただろうに……。

 アメリカ南北戦争も西部での戦いが全体の戦局に与えた影響をうまく説明していて、わかりやすかった。やはり南軍はヴィックスバーグへの意識が薄すぎたのでは?単純に戦力不足だったのか。

カテゴリ:ナショナルジオグラフィックDVD | 18:51 | comments(0) | -

ベスト・オブ・アメリカ ナショナルジオグラフィック傑作写真集

 2003年のムック。2020年には遠くなってしまったアメリカの姿が写されている。2020年になる萌芽は既にあったようで、国旗掲揚に関するコメントが不穏な空気をはらんで感じられた――尤も、あの人が現在どんなスタンスかは分からない。新型コロナウイルスに感染しているのかも……。

 写真がメインで文章は少ないが、そのどれもが力の入った文章で特にマイナーリーグの球場に関する描写には販売しているホッドドッグの匂いまで漂ってくる感じがした。
 どれも現場に行って空気を十分に吸い込んだ記者だけが書ける文章だと思う。

 写真に関して、撮ったその場で現像しろと言っている人がいて、デジカメ時代は彼の主義に非常にあっているだろうと想像できた。

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世界の市場めぐり ジョン・ブラントン 岡崎秀 訳

 レヴィ=ストロースは訪れた国のことを知るため、まずは市場に行ったという。世界各国の市場を切り取った写真集。人の集まるところには市場あり(築地はなくなったが)。
 非常に歴史のある国から、新しい国まで、それぞれの特色が表れた市場の姿が楽しめる。

 表紙になっている水上市場の籠が舟から落ちないのか心配になる……重心が舟の内側にあれば落ちないという理屈はわかるけど。客とのやりとりで売り物が落ちることもあるんだろうな。
 まぁ、浮けばそれほど問題ないのか?

 カリブ海諸島の市場で撮影された売り子のおばちゃんがはにかんでいる様子が妙にチャーミングだ。あまり観光客慣れしていない地元民相手に商売している人なんだろうな。売り物も野菜ばかりだった。
 新大陸の市場ではファーマーズマーケットという単語が頻繁に出てきて黙読ながら耳に残った。

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アート科学鑑定〜「美しき姫君」はダ・ヴィンチの真作か

 ナショナルジオグラフィック。
 オークションに出された一枚の絵画が掘り出し物だと直感したシルバーマン氏はその絵と奇跡の再会を果たしたことで購入。科学的な鑑定を様々な人々に依頼していく。

 普通はグレーの結果に終わりそうな内容なのに、かなり可能性が高いと思えるところまで迫っていて熱かった。ダ・ヴィンチが左利きの特徴を持っていることも地味に強い。

 実際の絵として、いいものなのか気になっていたけど、そこも模写を担当した画家がべた褒めしてくれたので納得できた。
 でも、ダ・ヴィンチの作品という看板がなければ価格には限界があるのだろうなぁ。日本の茶器なんかも同じかな。

ナショナル ジオグラフィック アート科学鑑定「美しき姫君」はダ・ヴィンチの真作か [DVD]
ナショナル ジオグラフィック アート科学鑑定「美しき姫君」はダ・ヴィンチの真作か [DVD]
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