迷宮のミノア文明〜事実になった神話 ルイズ・スティール

 開かれた封印 古代世界の謎16

 アーサー・エバンズ卿の紹介からミノア文明の物語は始まる。
 父親の友人だったというシュリーマンの大発見にも刺激されて、エバンズはクレタ島で豪華で複雑な宮殿を発掘することになる。

 民衆から穀物を宮殿に集めて、その穀物で養った職人によって、貿易に使う工芸品を生産する。税金を取り立てていなければ生まれなかった富をつくりだす仕組みが見事に回っていたようだ。
 分業は都市の特徴と言われるが、宮殿の主は半ば人工的に分業を強いていた感じもする。

 絵画の分析から巫女の役割がそれなりに大きかったらしいことも印象的だった。エバンスが「玉座の間」と勘違いした部屋の「玉座」に腰掛けたのも女神を演じる巫女だったのではないかと書かれている。
 なお、宮殿が複雑な構造をしているのは、計画性のない増築のせいらしい……。

迷宮のミノア文明―事実になった神話 (開かれた封印 古代世界の謎)
迷宮のミノア文明―事実になった神話 (開かれた封印 古代世界の謎)
カテゴリ:歴史 | 22:43 | comments(0) | -

沈黙の都市マヤ〜密林に眠る驚異の文明 コンスタンス・コルテス

 開かれた封印 古代世界の謎5

 マヤにおける二つの都市パレンケとコパンを例にマヤ文明を紹介している。
 密林という地形と気候で文明の発達に難しそうな土地で、なぜマヤ文明が発達したのか、サブタイトルからあらためて気になったが、そのあたりの説明は特にされていない。
 アマゾンにも古代文明の形跡がみつかってきたし、気候の問題は思いこみに過ぎないのか?

 パレンケにはパカン王とチャアン・バラム王という二代にわたっての栄光が遺されている。パカン王の長生きと母親の生まれからもわかる婚姻政策がパレンケ繁栄の原動力だったのかな。
 スペイン人に多くの文章が焼かされてしまったことが残念でならない……。

 コパンは衰退の時代にまで話が続いている。石に複雑な文字を彫るメディアの問題で緊急事態のリアルタイムでの記録は期待しにくいが、著者の予想が外れて今後の発掘調査によって永遠の謎とならないことを期待したい。

沈黙の都市マヤ―密林に眠る驚異の文明 (開かれた封印 古代世界の謎)
沈黙の都市マヤ―密林に眠る驚異の文明 (開かれた封印 古代世界の謎)
カテゴリ:歴史 | 20:02 | comments(0) | -

インカ〜古代の空中都市 カレン・ワイズ

 開かれた封印 古代世界の謎10

 わずか100年の栄光ながら、古代ローマを超える版図を文字や車輪なしに支配したインカ帝国の記録。スペイン人によって多くが失われたそれらを拾い集めた本。
 やはりマチュ・ピチュがインカ帝国の顔として、たくさんの写真で紹介されている。
 クスコの方がマチュ・ピチュより高い場所に存在し、サブタイトルにもあっているのだが、破壊を受けて上に植民都市を建てられてしまったので、しようがない。石組みについてはスケッチなどで紹介がある。

 キープを分析・記録するキプカマヨックや飛脚であるチャスキなどインカ帝国を支えた役人たちの名前があげられている。
 単純に官僚機構が巨大化しただけでは効率的に国家を運営するには足らず、情報伝達において優れた工夫があったと想像されるのだが、文字がない以上は属人的きわまる智慧のため謎のままになりそうだ。
 なお、インカ帝国滅亡の謎については少ない字数でそれなりに説明していた。

 ピントの合っていない一部の写真に時代を感じてしまった。簡単には接近できないマチュ・ピチュの高地らしい雰囲気をよく表していたとはいえる。

インカ―古代の空中都市 (開かれた封印 古代世界の謎)
インカ―古代の空中都市 (開かれた封印 古代世界の謎)
カテゴリ:歴史 | 21:15 | comments(0) | -

ドルイド僧−不可解な聖職者たち− A・P・フィッツパトリック

 開かれた封印 古代世界の謎20

 ケルト人を語るときに欠かせない、しかし非常に多くの謎に包まれたドルイド僧についてのハンドブック。
 途中著者はケルト文化の多様性について言及していて、とても一括りにできる代物ではないと示唆している。やはり発掘資料の充実による詳細な研究で理解を広げていくしかない。

 美しい金製品の写真が多く、ケルト文化の高度さを物語っていた。アルレルキー・エヴロウィケス族は金貨まで発行していたのか。
 もう少し彼らに時間や文字記録の機会があれば、もっと多くのことが分かっただろうに残念だ。
 ドルイド僧による知識の独占が後世に実像を伝えるためには裏目に出たことも確かである……。

ドルイド僧―不可解な聖職者たち (開かれた封印 古代世界の謎)
ドルイド僧―不可解な聖職者たち (開かれた封印 古代世界の謎)
カテゴリ:歴史 | 21:41 | comments(0) | -

秘密結社テンプル騎士団−謎に包まれた聖地の守護者− ニコラス・ベスト

 開かれた封印 古代世界の謎12

 フィリップ4世の悪名を後世に轟かせた事件だったね。ダンテに地獄に投げ込まれているのは、すごい。財政難を解決するために失ったものが大きすぎる。
 5000人を一斉逮捕して、20人しか逃さなかった手腕はある意味で見事だが……当時のフランスにそれほどの組織があったとは!

 テンプル騎士団に対して行われた拷問も壮絶で、簡潔に表現されているだけでも身の毛がよだつ。
 逮捕された瞬間に自分に行われることを予想できたら自殺したくなる。まぁ、修道士ということもあり、自殺は厳禁なのかな……緩慢な死に至る囚われの身に甘んじた騎士団員も、拷問の後遺症に苦しんだ人間がたくさんいたに違いない。

 フランス王国に最大限の打撃を与えたド・モレー総長の立ち回りが興味深かった。

秘密結社テンプル騎士団―謎に包まれた聖地の守護者 (開かれた封印 古代世界の謎)
秘密結社テンプル騎士団―謎に包まれた聖地の守護者 (開かれた封印 古代世界の謎)
カテゴリ:歴史 | 23:15 | comments(0) | -

尚泰〜最後の琉球王 川畑恵 日本史リブレット人080

 明治維新の影響により日本と中国への両属状態を続けることができなくなった琉球王国。その最後の王、尚泰を中心に琉球王国滅亡の経緯を追う。
 尚泰が主人公ではあるものの、王宮の奥にいて外部とは家臣を通して交渉する姿勢を通しているため、話の中での存在感は微妙なところがあった。
 それでも琉球の人々にとっては重要な象徴であり、琉球独自の運動に大きな意味を死ぬまで持ち続けていた点が興味深い。

 このような難しい時期に対応するための「帝王学」がなされていたわけではなさそうで、本人はともかく王朝全体は迂闊だったと思ってしまうところがある。

 清と日本の交渉をみていると、現在の国境線があるのも偶然の産物に思えてくるのだった。
 海よりも内陸を重視する清の姿勢がなければ、いまの中国はもっと海洋進出をしていたかもしれない……。

尚泰 (日本史リブレット 人)
尚泰 (日本史リブレット 人)
カテゴリ:歴史 | 22:42 | comments(0) | -

地図で見るブラジルハンドブック オリヴィエ・ダベーヌ

 フレデリック・ルオー、中原毅志 訳、オーレリー・ボワシエール地図制作。

 混血を賛美するブラジルの歴史と現在がわかるハンドブック。ルーラ大統領の有能さが強く印象に残る。三選が可能な制度だったら、ブラジルはまだ上昇気流を掴んでいたのか?
 それともカリスマ的大統領にも人気の陰りが生じていたのか?
 わからないけれど、やっぱり制度をねじ曲げなくて良かったと思う。後継者選びを間違ったと言うよりも、誰を選んでも苦しかったかもしれないが。

 いわゆる「バラマキ」政策によって州ごとの分断が深まってる様子も興味深い。でも、日本の視点からはバラマかなくても分断されていった可能性が高いと感じるので、バラマいた方がよかったんじゃないかな……。
 暑さの激しくない南部の方が栄えている傾向がやっぱりあるらしい。アルゼンチンとは、ずいぶんと人口の差がついたなぁ。

 余談ながらコスタリカの教育に関するスコアが悪化していて、何が起こっているのか、心配になった。他の国は改善されているのに。簡単に検索しただけでは分からなかった。コスタリカハンドブックが出てくれれば分かるのだが。

地図で見るブラジルハンドブック
地図で見るブラジルハンドブック
カテゴリ:歴史 | 20:45 | comments(0) | -

ユグルタ戦争・カティリーナの陰謀 サルスティウス・栗田伸子

 古代共和制ローマ末期の二大事件、ユグルタ戦争とカティリーナの陰謀を当時の歴史家サルスティウスが記したものの翻訳。
 ついつい現代的な視点を投影して読んでしまう部分があることが面白い。
 ユグルタに貴族が買収されて正義が蔑ろにされている状況は日本の政治を、カティリーナに与する人々が大量発生している状況はアメリカのトランプ支持者を連想させた――正しい見方かはともかく。

 ユグルタ戦争にはユグルタ王の個性が影響するところが大きく、もっと最初から計画的に、揺るがぬ意志でローマとの戦争を行っていれば勝てないまでも、あんな末路にはならなかったと思える。
 賠償金を支払ってから戦争続行は無駄すぎる。カルタゴみたいに受け入れられない条件を後から突きつけられたわけでもないのに――その史実が判断に影響を与えた可能性はあるかな。
 戦場にあってのユグルタは優秀な将軍で、メッテルスとの戦いには手に汗を握らされた。また、正面衝突ができない場合でも、もっとも効果的な抵抗方法を選択している。
 ところでボックス王がスッラの身柄をユグルタに引き渡していたら古代ローマの歴史もまったく違ったものになったはず。自覚はなくても、その瞬間の彼は世界の運命を握っていた。

 カティリーナの陰謀はやったことの関係もあって反乱軍の責任が反乱者本人の不摂生に帰せられてしまいがちに見える。社会の構造的な問題を直視しなければ抜本的な解決には至らない。
 そういう意味でも無法な死刑に反対したカエサルの演説は興味深かった――力強さでは小カトーに敵わないが。ショックドクトリン的な似た手口は現代の社会においても見受けられるものだ。

カテゴリ:歴史 | 21:33 | comments(0) | -

古代オリエントの歴史 小川秀雄

 文明の始まりからローマとパルティアがオリエント世界を支配する前までの歴史を高密度に圧縮した一冊。

 ペルガモン王国など名前はよく出てくるのに実態を説明されることの少ない王朝についても取り上げてくれていた。首都以外に都市をもたない特殊な国、エジプトのオリエント政治にリンクしたり、離れたりする動向も興味深い。

 エジプトと違ってメソポタミアの覇権は安定せず、さまざまな勢力がつぎつぎと現れては消えていく。ペルシア帝国はアッシリア帝国を反面教師としたけれど、それより前の新バビロニア帝国は普通に教師としてしまった(あるいはペルシアが反面教師にしたのはバビロニアなのか)。判断を分けたものは何だったのだろう。
 実際に被害をうけた立場の方が、かえって真似してしまいやすいのかなぁ。

 あとがきや参考文献で三笠宮の名前がたびたび出てくるところも印象的だった。日本のオリエント学にとって重要な人物であったことが分かる。

カテゴリ:歴史 | 22:27 | comments(0) | trackbacks(0)

南の島のよくカニ食う旧石器人 藤田祐樹

 岩波科学ライブラリー287

 沖縄のサキタリ洞で、とても古い人骨を発見した著者による発掘調査結果から、旧石器人の生活を想像したドキュメント。「ハトはなぜ首を振って歩くのか」と同じ著者であることを知り、驚いてしまった。
 研究の幅が広い!

 ついついサキタリ洞で定住生活を営んでいたイメージをもってしまっていたのだが、旧石器人なのだからキャンプを変えながらの生活が通常であり、サキタリ洞はカニの旬である夏の終わりから秋にかけての生活の場であったことが、根拠をもって明らかにされている。
 絶滅したリュウキュウジカのサキタリ洞からみつかった歯から推測される年齢が高いのは、旧石器人が高齢の個体を狙って狩っていたせいという可能性はないのだろうか?
 島嶼化ですべて説明できるなら、その方がエレガントではある。

 調味料はないながら、旧石器人もいろいろな味覚を楽しんでいたことが想像できて、彼らのイメージが生き生きとしてくる本だった。

カテゴリ:歴史 | 10:22 | comments(0) | trackbacks(0)
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