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最強戦艦 魔龍の弾道3 林譲治

 通信能力――と哲学――の差がかなり意識して書かれている。マレー沖海戦の混乱によって航空兵力がまともに機能してくれなかった背景にあるものを、ちゃんとくみとれていれば海軍の編成はおかしな方向には進まなかっただろうに。
 まぁ、空母の生産力でアメリカに水をあけられることがハッキリしている以上は搭載機を戦闘機に絞って、殴り合いを序盤のリードのおかげもあって差の生じにくい戦艦に任せることになるのも、悪い話ばかりではなさそうだ。敵空母のヒットエンドラン攻撃に対してしっかり追撃をかけられない問題は無視できないんだが、これが上陸作戦ともなれば高速戦艦でも対処できないことはない。
 ただ、対艦攻撃能力は陸上攻撃機があればよいというのは、空母戦力における戦闘機重視に反して、対艦攻撃では護衛戦闘機が手当てしきれない問題を招くわけで、あまり良い発想とは思えなかった。
 あの日本海軍のやることだからなぁ……きちんとした計算ではなく多分に感情的な動機で劇的な変化がなされてしまうところがいかにも「らしい」。それが結果的に良い方向に作用するのは言ってしまえばフィクションだからに過ぎない。

 そんな問題に釘を刺すためにも、あとがきで差を語っていたのだろう。エンターテイメントも大変だ。
 林譲治氏の言いたいことに考えさせられるところが多くて、アメリカがあまりに強大過ぎたがために、太平洋戦争での敗因が早い段階で「チート」の思考停止に落ち込んでしまいがちなことに危惧があるのかもしれない。
 だからこそ有利な状況で日本を戦わせることができるフィクションで、組織的な問題を「決定的な要素」として浮かびあがらせているのではないか。

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最強戦艦 魔龍の弾道〈3〉 (歴史群像新書)
最強戦艦 魔龍の弾道〈3〉 (歴史群像新書)
カテゴリ:架空戦記小説 | 17:43 | comments(0) | trackbacks(0)

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