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信長東征伝1〜元康の死、信玄の深謀 尾山晴紀

 桶狭間の合戦で、ぐうぜん今川本陣にいあわせた松平元康が討ち死に!徳川家康になるはずだった男の死により空白地帯と化した三河を併合し、さらに東へ兵を進めるべく信長が動き出すという歴史のifを取り扱った作品。

 展開が極めて自然で、史実に基づいた落ち着いた記述がなされており、堅実なおもしろさがある。
 上洛が信長にとって物凄い負担になったことを考えれば、北と西を固めて東に向かって活路を開くのは非常に興味深い戦略だ。じっさいに尾張の動員能力はバカにならず、バカとしか言いようのない今川氏真を何度も打ち破っての快進撃でまたたくまに遠江まで調略の手を伸ばしていく。

 そして、そこに立ちはだかるのはご存じ武田信玄!
 家康がいないおかげでタイムスケジュールが縮まって信長と信玄の直接的な対決が愉しめそうなところも、おもしろい。今川との同盟を裏切って海を求めた行動を起こすくだりも、さすがに無理がなかった――行動から性格を逆算させるような描写も巧みだった。
 謙信も外交戦略に新しい活路を見出しつつあるし、ひとり冴えないのは今川氏真……尾張に優っていたはずの大国が、当主の無能を原因として分解していく様子は教訓的だ。ただでさえ能力的劣位にあるのに、純粋な戦力的にみても織田に押されるようになってしまえば崩壊は瞬時――にならないのは、周辺各国のバランス感覚のおかげ。


 今後の展開も、足利義輝が妙な色気を出して泥沼の上洛を誘っていたり、領国の問題で信玄との対決時に長篠ほどの鉄砲を集めるのは難しそうだったり、信長が切り開くべき困難が思いやれて愉しい。

信長東征伝〈1〉元康の死、信玄の深謀 (歴史群像新書)
信長東征伝〈1〉元康の死、信玄の深謀 (歴史群像新書)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 12:42 | comments(0) | trackbacks(0)

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