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覇者の戦塵1944〜マリアナ機動戦1 谷甲州

 気がつけば太平洋戦争も佳境の1944年。戦線は後退してマリアナ諸島にまで迫ってきている。この世界の日本人にとっては忸怩たる戦況かもしれないが、空母機動部隊戦力が――南雲司令長官と一緒に――しっかり温存されている一事をとっても奇跡的に思われる展開といえる。
 もはや防戦一方で、ダムの決壊しそうになった部分に駆けつけて防ぐしか手がないとはいえ、戦闘自体は伯仲したものを行いうるのだから頼もしい。
 その意味で大津予備中尉の存在が大きいのも勿論、機動力では空母部隊に劣らざるをえない基地航空隊に過度の依存をしなくても戦いうる点に希望がもてた。その上で、翔竜による同時攻撃が決まればアメリカ軍の主力に決定的な打撃を与えることも可能だろう。

 しかし、日本陸海軍の前に立ちはだかる大きな敵の姿が!
 ……各務大佐は不死身の化け物か。ラングーン侵攻の件で更迭されたはずが、ちゃっかり復帰して専横をほしいままにしているしぶとさには感嘆するしかない。本人の神経なき強靭な神経だけの賜物ではなく、一定の支援者が周囲にいるのであろう。そう考えると余計に暗澹としてしまう。
 アメリカ軍には明確な形で勝つことはできないにしても、もはやラスボスにさえ感じられる各務大佐とだけは決着をつけてほしいものだ。実は上村尽瞑の歴史改変を抑え込みに来た無能なタイムパトロールでも驚かないよ……最終巻はいきなりSF色たっぷりの展開に?
 まぁ、蓮美大佐なら!蓮美大佐ならきっとなんとかしてくれる!!――そして大佐は大佐でどうかしている。

 最後に表紙にもなっている防空巡洋艦大峰だが……これがアトランタ級と同じ「防空巡洋艦」と呼称されるのは詐欺だろ?「戦艦空母」いや「巡戦空母」とでも言いたくなるキメラで、翔鶴級との共通性を「悪用」された気分になった。
 しかし、搭載機が護衛空母的になっていて、艦隊防空に特化している点はかえって先進的なものを感じさせる。搭載機のバランスから考えても相当「光陽」の戦訓が影響を与えている事は間違いない。あんな規格外の艦を基準に作戦を立てたり、艦艇を計画したりするのは悪い冗談だと思うのだが。
 悪夢のような事情で――乗組員の被害は軽減されている可能性があるのは嬉しい――搭載している戦艦陸奥の主砲も上陸支援には役立つことであろう。長門級といわず伊勢級や扶桑級の主砲も砲身命数が切れるたびにガンガン積み換えることにして、船体の方は空母に改装してしまえばいいのだ。
 でも、守勢に入った日本じゃそんなに陸上砲撃をする機会がえにくいかな……それこそヒットエンドラン砲撃が可能な荒島級に大砲を積む理由にならないでもない。

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マリアナ機動戦 1―覇者の戦塵1944 (C・Novels 41-38)
カテゴリ:架空戦記小説 | 12:22 | comments(0) | trackbacks(0)

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