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ローマ亡き後の地中海世界・上 塩野七生

 西ローマ帝国滅亡後の中世暗黒時代を描く、ローマ人の物語から半ば連続する本。ほとんど東ローマ帝国史になるのではないかと、ギボン的な予想をしていたが視点を地中海の中心、シチリア島周辺からイタリアにしていることで独自色を感じさせた。
 しかし、世界が狭くなってしまっているのは中世社会だけではなく、その描写にも一致する現象なのか、特に東地中海を中心にイスラム側からみたらあまり暗黒ではないところをはぐらかされてしまった気がする。
 塩野氏があれだけ褒め称えていた古代ローマが、少数部隊の軍勢を「蛮族」のところに殴り込ませて奴隷を持ち帰る、その行動と「サラセン人」の海賊行為の間にどの程度の差異があるのだろう?
 真正面から取り組んでくれないと、かえって差がないように感じられてしまうのだった。まぁ、常に大国ローマから圧力をうけつづけロクな記録も残せなかった蛮族と、なんだかんだで記録を後世に伝える人間のいた中世イタリア人とは違うということか。

 などなど、皮肉な見方をしてしまうものの、北アフリカの海賊がキリスト教徒を拉致して搾取する有り様は――その後の「救出修道会」と「救出騎士団」の活動に関して詳らかなように、とてつもなく酷いものだったわけで、好きになれないのも確かだ。
 まぁ、イスラムの中心は東方にあったのだから、シチリアが例外として扱われるように、北アフリカもイスラムの全体として扱うには問題があるのではないか。しかし、彼らが厄介で、ヨーロッパ人にとって恐ろしく印象的な敵であったことは間違いないだろう。

 その足跡がイタリアにまで深く残り、今の地中海を形成していることを知ることができたのは大きな収穫だった。シチリアにおけるノルマン人の大冒険も愉しい。


 しかし、昔日に比べると塩野氏の文章の冴えも鈍った気がするなぁ――詳述で論点がずれるのは危険と言いながら、けっきょく金貨の話題で何が伝えたいのか話し始めからでは分からなくなってしまっていた。
 ……いろいろと資料を詰め込み過ぎて思考の焦点に明解な答えを結びにくくなったのかもしれない。

ローマ亡き後の地中海世界(上)
ローマ亡き後の地中海世界(上)
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ローマ亡き後の地中海世界・下 塩野七生
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| 読書は呼吸 | 2009/12/27 9:03 AM |