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群雄戦国志1〜佐和山の誓い 尾山晴紀

 大谷吉継の命を賭した説得によって家康の会津征伐に乗じた決起を諦めた石田三成が、三年の慎重な工作のうえに天下の主導権を取り戻そうとする歴史小説。
 晩年の秀吉には耐えがたいものがあるが、三成ならこういう行動をとってくれても抵抗はない。それくらい印象が軟化しているのは作中でも描かれた吉継が三成を信望することになったエピソードもさることながら、島左近のようにすばらしい人材を抱えていた事実が大きい。
 まぁ、部下の質で語れるならやっぱり秀吉も評価せざるをえないのだが……福島正則だってこの件に関しては大したものか。

 ともかく、三成が心を入れ替えての工作は反三成派だった豊臣恩顧大名たちの気持ちを翻させ、天下を壟断する家康を排除しようとする機運が高まっていく――1巻では高まっていくまでが内容で具体的な合戦が会津征伐くらいしかないのが、物足りないのも確かだった。
 今度は毛利家が上杉家の立場に追いつめられていったことが興味深い。戦略的にみても正面からの大戦力だけではなく、側面や背面から進撃を受けてしまっていることがよく似ている。まぁ、家康の後背が意外と手薄になってしまっていることは上杉攻めとは大きな違いで、そこが三成のつけいる隙になるんだけどね。
 上杉に続いて毛利までやられたら、前田も自分の順番がくることを恐れる気持ちが生まれるよなぁ。宇喜田秀家が豊臣恩顧軍の総大将になったからには家康は他の五大老をすべて敵に回してしまったことになる。
 その辺を考えても毛利攻めの判断ミスはきわめて大きかった。

 これこそ自ら家康に取り入った三成最大のファインプレーだったと思う。まぁ、難易度では加藤清正や福島正則とヨリを戻すことの方が高くなってしまっていたけれど……なんとも空しい問題だ。
 けっきょくに歴史は人間が作り、人間が人間である以上は好悪の感情は重大な要素になる。しかし、三成が示したように人間は変われる。
 それが群雄戦国志が示すひとつのテーマなのかもしれない。

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群雄戦国志〈1〉佐和山の誓い (歴史群像新書)
群雄戦国志〈1〉佐和山の誓い (歴史群像新書)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 16:52 | comments(0) | trackbacks(0)

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