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ローマ亡き後の地中海世界・下 塩野七生

 けっきょく東ローマ帝国は直視されることがなく、コンスタンティノープルは滅び、オスマン・トルコ対西地中海世界の時代が訪れる。
 「寛容」のローマを持ち上げまくっていた塩野先生に専制君主国家化した東ローマはあまり扱いたくない存在だったのかもしれない。滅びの美学だけには触れてくるけれど――こちらはカルタゴのように滅んだなぁ。

 ともかくメインになるのはオスマン・トルコに公認を受けた海賊の首領たちとアンドレア・ドーリアが主役の時代である(細かい戦闘は既存の作品に委ねることで虫食い状態になりがち)。ジェノヴァ出身の海の傭兵の活躍に胸おどった。それだけにプレヴェザの海戦のなんともダラダラした結果は残念だったのだが……カルロス5世が英邁といっても、あの程度なのかなぁ。
 跡継ぎが下を行くところを見ると余計にガッカリしてしまう。あれは能力や想像力の違いというより、世界観の違いが現れての敗北というしかないのかもしれない。不平タラタラのヴェネツィアにしてみても、同じキリスト教徒が襲撃を受けているのを尻目に公益に精を出すのが基本だった点では同じ穴のムジナだ。
 自分たちが参戦しているときだけスペインに積極的になってほしいと願うのも無理がある。

 なんといっても酷いのがフランスで、トルコと同盟していたことは地政的には理解できないでもなかったのだが、そんなリスクの高い政策さえまともに活かせていないとは……宗教が絡むといろいろと大変だなぁ。
 16世紀の前半ではトルコとフランスの推定人口が拮抗する程度なのが驚き。やはりフランスは人口密度が高いと感心するべきか。気になる情報なので転記しておくと、
トルコ:1600万人(エジプト、北アフリカ除く)
フランス:1600万人
スペイン:800万人
ポルトガル:100万人
イギリス:300万人
ドイツ:1000万人
イタリア:1100万人(ヴェネツィア除く)
ヴェネツィア:20万人(属領含めると145万人)
 話は飛ぶけど、英仏百年戦争はよくもまああれだけ続いたものだ。この本だけの印象ではイタリアよりもフランスのほうが遥かにダメダメに見えてくる。スペインがフランスを凌駕するくらいの勢いだったのは、イタリアやドイツの人口も助けにできたおかげだな。

 短いようでやたらと長い海賊の時代も終わり、再び地中海が(基本的に)平和の海になる現代が訪れていることに深い感慨を抱いてしまった。

ローマ亡き後の地中海世界・上感想

ローマ亡き後の地中海世界 下
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