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興亡の世界史3〜通商国家カルタゴ 栗田伸子・佐藤育子

 敗者の目からみた地中海世界。まとまった文章を現代に残さなかったフェニキア人を中心に古代地中海世界を俯瞰する一冊。ギリシア・ローマ人の文献に頼るところが多くとも、昨今の丹念な碑文研究をはじめとする遺跡調査がそれを可能にしているそうだ。
 あくまでもローマ史を扱いながら塩野七生先生も似たようなことを言っていたなぁ。碑文の奉納だってそこそこ財力のある人間にしかできないわけで、さらに声を残しえない人々の生活があったことまで認識を広げて歴史に相対したい。

 本のタイトルからは予想しにくいが前半は「海の民」の襲来を切り抜けて地中海世界の西にまで雄飛していくフェニキア本土の状況が描かれており、神と同居する古代世界の息吹が感じられてとても興味深かった。
 イスラエル王国とまったりした協調関係を築き上げているところなど、フェニキア人のセンスに惚れ惚れしてしまう。カルタゴもエトルリア人といい感じに協調――でもギリシア人だけとは仲良くしきれないのね。ローマのスタンスを考える上で興味深い。
 彼らの外交通商政策からは多様性を大事にする通商の民の姿がみえてきて、ひたすら人口と画一性で力押しにする領域国家にはない魅力を感じた。というか、やっぱりローマは常軌を逸している。ただ、勝ってしまってスタンダードになったから、それが分かりにくく目が逸らされやすいだけで、基本的には触れるのもはばかられる狂犬じみたところがある。
 まぁ、それが魅力と言われればその通りなのだけど……。

 お約束的に描かれたハンニバル戦争では、ポリュビオスの内容のみならず意見をも大きく取り上げて、地中海世界の流れを視野にいれた描写がなされていた。言われてみればザグントゥムの紛争を開戦理由にしてしまったのはマズい手で、もう少し練りこむべき部分があった気はする。
 けっきょくハンニバルの若さに還元されるならば、今度は若いからこそイタリアに乗り込むなんて冒険を行えたとの反論もできるわけで――個人にすべてを求めるのは無理があるなぁ。いくら有能とはいえ、老練で優秀なブレーンが必要だったのかもしれない。

 まぁ、カルタゴ本国もハンニバルもローマを相手に「よくやった」。戦争に弱いカルタゴというイメージも第一次ポエニ戦争の描写とあわせて払拭された。ローマ・カルタゴ百年戦争を読んだ時点でそういう気持ちはあったが。
 カルタゴ滅亡の描写はやや圧縮されながらも迫るものがあり、非常に読み応えがあった。戦況図がカンネー以外存在しなかった、おかげでしっかり読めた面がある。

通商国家カルタゴ (興亡の世界史)
通商国家カルタゴ (興亡の世界史)
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