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異説桃山戦記 三成死すべし1〜大阪城炎上 尾山晴紀

 群雄戦国志であれだけ格好いい主人公を演じた石田三成が、今度は悪の首魁として活躍する。彼のことだけに、やはり秀吉とのあいだに裏の約束があったのではないかと勘ぐってしまう。
 いきなり家康を抹殺して政治権力の中枢を掌握したときには、自らが悪を演じることで豊臣家にリレーするつもりかと思ったのだが――まさに三成死すべしと本人さえ思っている状態――大阪城(爆破)炎上事件でそれも怪しくなった。本当に悪中の悪なら、豊臣御為の悪役を演じているフリをして支持を取り付けたうえで、やっぱり天下を狙っていたかたちにする気もするのだが、そこまではやっていない。
 想像するに秀頼が秀吉の実の子ではないんじゃないかなぁ。淀殿ならあり得る話で――じっさい噂があったし――三成が彼がないがしろにする理由もわかる。それなら秀吉がもっと明確な遺言を残す気もするが、10年のあいだに調べてくれと言われたのかもしれない。

 なんにしても主人公もラスボスもこなせてこそ、一流の役者。考えようによっては近江佐和山19万石――作中では加増されているが――がより狸の領域に近付いたといえるかもしれない。
 どうしても三成についていく人間が足りない印象があるのは痛い。大谷吉継の状況からいっても公儀方はうまく大量動員ができても結束が弱くなってしまいそうだ。

 尾山先生の作品で安定して「いいもん」になっているのは宇喜多秀家かな。
 やっぱり育ちの良さも美点で、父親の所業をこえる魅力をもつこともある――そう秀頼にもうしおくれそうな戦国大名である。
 仕置きをされた徳川家の跡地に居を構えたのは群雄戦国志のラストと同じで、そのつながりからも興味深かった。気合いの入った三河武士がかなり死んでしまったのは残念だが……赤備えの活躍に期待しよう。

 秀吉遺言の10年がたって、動揺のはしる天下の状況は、ちょうど関ヶ原直前に似ていた――全体的にちょっとずつ西に移動して、上杉家が宇喜多家、畿内が九州になっているけれども。今度は見事な挟撃作戦をみせてくれるのか、期待が高まる。宇喜多秀家は西部戦線そっちのけで佐竹領に攻め込んだりはしまい。


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異説桃山戦記 三成死すべし〈1〉大坂城炎上 (歴史群像新書)
異説桃山戦記 三成死すべし〈1〉大坂城炎上 (歴史群像新書)
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