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覇者の戦塵 謀略熱河戦線 谷甲州 中央公論新社

 C☆NOVELS版の謀略熱河戦線黒龍江陸戦隊に書き下ろしの断章「決起」を加えたものの感想。政治のことはいまいち分からないのだが、とても大事なことは分かっている。とりあえず2・26が着火せずに済んだだけでも大きな影響があることは押さえられる。
 皇道派は厄介な連中だが、存在することで統制派の専横にある程度掣肘をくわえて、政治家主導の内閣が動きやすくなるメリットは認められるかもしれない。
 左遷のために火種のある土地に送り込むのはどうにも不安を覚えてしまうが。

 二つの話を通して注目を集めるのは奉天製作所のトラクターが活躍をみせていることだ。
 土木畑出身の谷先生の面目躍如というか、道路の補修から船渠の掘削まで、幅広くトラクターが活躍している。最大の目的であったはずの農地開拓に関しては後手に回ってしまっている感じだが……。
 何事をなすにもインフラ整備は重要だと、原点に立ち戻る示唆を与えられた気分になった。

 当時は満州での動きが活発であったが、船渠の整備などに威力を発揮したことが知れ渡れば、その利用法は本国にも逆流していくことであろう。
 日本の続戦能力を考えるうえで、これは極めて大きい。せめて、実験場として役立ってくれないと不要論を紹介されていた満州の立つ瀬がないのであった。必要悪とはいえある程度の「刺激」を受けられる環境は中長期的にみれば意義をもってしまう気がする。
 外交を日本の主導でいつまでも展開できるほど有能ならともかく、この時期に軍事などのガラパゴス化が起こるのもちょっと考えものだろう。しかし、軍事が徹底的に無能でいてくれたら、イタリアみたいに外交に気合いが入ってくるようにも思われるので、ややこしい。

 1933年の謀略熱河戦線に比較すると1937年の黒竜江陸戦隊はかなり機材が洗練されて第二次世界大戦的な印象を受ける。泥臭さに混じる鉄臭さの比率が高まっているとでも言おうか。
 極めて先進的な河川砲艦が出てきているおかげもあるのだろう。

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謀略熱河戦線―覇者の戦塵 (C・NOVELS)
謀略熱河戦線―覇者の戦塵 (C・NOVELS)
カテゴリ:架空戦記小説 | 01:33 | comments(0) | trackbacks(0)

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