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修羅の波濤8〜未完の講和 横山信義

「英霊に申し訳ないから撤兵できない。英霊に申し訳ないから講和できない。英霊、英霊、英霊!
 ああ英霊よ、そはまことに便利至極な、反論封じの決まり文句に他ならん――」

 作中で山下奉文が放ったこの言葉ほど強烈なものも珍しい。死んだ人間は「いや、あれはそういう意味で言ったわけじゃ…」なんて反論は決してしないからなぁ。言葉に踊らされるどころか「地下でこう思っているに違いない」などと、やりだすことがどれだけ自己欺瞞に満ちているか、このセリフは如実にしている。

 真珠湾奇襲の失敗によってはじまった長き戦いと議論の果てについに日本と連合国の講和がむすばれるときが来た。
 しかし、それにあくまでも異をとなえる頭の中がおめでたい人々がクーデターを起こし、日本全土が混沌とした状態になる……クーデターでの戦闘で皇軍同士があらそえば彼らが無敵と思い込んでいる組織でも修復不能の損傷をうけることがわからないものか。本当におめでたい連中であるが、史実でも早期講和をしようとすれば過激な反対活動が行われたのは想像にかたくない。
 もっとも寺尾大佐のように、周囲とのしがらみから引き込まれていってやむにやまれず乗ることになってしまって人間も少なからずいたのだろう。それまた日本的なことである。

 寺尾の場合は徳田少将みたいに上手く立ち回れば、艦隊派を発射台にすることは十分可能だったと思うのだが――村上武雄とのパイプもあるし――誰もが器用に世渡りができるわけではないか。
 最初の2・26の時に反省していれば…と惜しまれる。

 ともかく大和と武蔵が失われる絶望的な戦いをへて、日本と米英の戦闘状態は終わりを告げた。しかし、それを生みだすために起きた、ソ連とドイツの同盟が新しい戦火を満州の地に運んでくるのであった……まるでモグラたたきみたいである。

 P&Wの2000馬力エンジンを積んだ烈風や流星の活躍が楽しみだ。まぁ、生産数の絶対量から、そのうちF8Fやスカイレーダーを使った方が効率的といわれてしまう気もするが……。

修羅の波濤〈8〉未完の講和 (C・NOVELS)
修羅の波濤〈8〉未完の講和 (C・NOVELS)
カテゴリ:架空戦記小説 | 21:43 | comments(0) | trackbacks(0)

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