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修羅の戦野4〜ハルピン最終決戦 横山信義

 戦場の凄惨をうったえてきた表紙の出来が最高潮にたっし、屍山血河のありさまが文字通り満州の地が修羅の戦野になったことを伝える最終巻。
 決着がリアルすぎて泣けてくる……史実を知る身としては自由主義陣営の国境線を北に押し上げることができた分、いい終わり方だった気がしないでもない。けっきょく大慶油田が満州人民共和国の掌中にあることを思えば微妙な気持ちにもなるが。

 作者が力を入れたというとおり戦場描写がすばらしく、延々と繰り返される地獄の応酬には圧倒されるばかりだった。
 日米軍とソ連軍の大戦車戦はなかなか珍しい見ものと思える。敵味方を混交させて組織的戦闘は不可能な殴り合いを演じるのは、純粋な戦術的には下策なのだが、ソ連と日本の戦車性能をふまえたうえでは上策になってしまう。
 そんな現実も皮肉であった。

 アメリカはもうちょっと良い戦車をそろえていたけど――M14対戦車砲の大雑把なところが好き――代わりにパットン大将が……まぁ、自動車事故で亡くなるよりはよかったと思うしかあるまい。
 航空機に邪魔されない純粋な地上戦力同士の殴り合いを望んだところは、航空兵力を徹底活用したパットン式電撃戦の使い手というイメージをもっている私には少し違和感があった。


 それにしても前作の主人公であった村上武雄の出番がついになくなってしまったのは寂しかったなぁ。代わりに野中五郎が主人公を食いかけていた。さすがは「大空の侠客」というしかない。チャーチルがV2ロケットで死んだこの世界で「鉄のカーテン」を言い出したイギリスの政治家は誰だったのだろう。史実に似て酷烈な20世紀の歴史を思いつつ読了した。

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修羅の戦野〈4〉ハルピン最終決戦 (C・NOVELS)
修羅の戦野〈4〉ハルピン最終決戦 (C・NOVELS)
カテゴリ:架空戦記小説 | 23:19 | comments(0) | trackbacks(0)

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