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戦国名臣列伝 宮城谷昌光

 春秋名臣列伝に続いて中国戦国時代の名臣たちの生涯が描かれる。春秋時代と大きく違うところは他国との関わりなしに、人物の動きを追えなくなった点で、また祖国以外の国に使えて名をなした人物も多い。特に中盤以降は常に縦横家の影がチラつく状態になっていた。蘇秦と張儀の存在感は異常で、二人の師匠である鬼谷先生の幻想的な気配も異常だ……。

 このようにそれぞれの物語が常にリンクしているので、人物の動きを追っているはずなのに戦国時代全体の流れがおおよそつかめる状態になっている。
 そして、最終的に秦の人材が4連続している事実が戦国時代の趨勢を物語っている。趙の一時的な輝きはあったけれど、秦の魏冄が頭角を現した時点から基本的にずっと秦のターンだった気もするよ。惜しくも伝はないが樗里疾も素敵だ。

 せめて、昭王と楽毅があそこまで斉を追い詰めていなければ、別の展開もあったのではないかと思う。小説的陰謀論なら、それこそが秦の深慮遠謀だったりしそうだ。あの出来事は遠交近攻にとってのまたとない伏線になっているからなぁ。
 あるいは楽毅が昭王が生きているうちに斉王を名乗っていたら……とも考えてしまう。讒言者をいきなり殺す昭王の度量が凄すぎた。春秋時代に比べて戦国時代の名臣は君主の交代によって浮沈を左右される傾向が強いのも印象的な点で、身の処し方について考えさせられることが多かった。

 秦の政治は信用がならないことも作中繰り返し言われていた。しかし、名臣に人物が恨まれて国家が復讐されている他国よりもマシという気もする。荊軻の暗殺が成功していれば見方も変わったかもしれないが。
 趙括に対する評価がけっこう同情的だったのは穿った見方をすれば白起を持ち上げるためだろう。そんな考えに取り付かれなくても、孝成王に秦軍の撃破を期待されて抜擢された趙括が攻撃にでないわけには行かず、廉頗が多くの部将を失っていた状態では40万の軍勢を大きく展開することは不可能で、正面から一丸となって攻撃するしかなかった事情が想像できる。
 まぁ、趙奢の器なら日常的に親交のある人物から部将を任命して上手くやれた気もするわけで、趙括の無能が消滅するわけではない……。

 最後に戦国七雄なのに、ひとりも名臣の名前が上がっていない国がある件について――韓とはなんであったのか?いっそ魏か趙に併合されていれば秦に対する強力な障壁になれたのになぁ。そんなことを思ってしまう扱いである。真ん中すぎて身動きが取りにくく、他国人の抜擢も難しかったのだろう。

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戦国名臣列伝
戦国名臣列伝
カテゴリ:時代・歴史小説 | 10:39 | comments(0) | trackbacks(0)

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