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楚漢名臣列伝 宮城谷昌光

 楚漢戦争時代の名臣たちの人生を描く短篇集。
 やはり劉邦の臣が多いわけだが、韓信の名前をみることはできない……名臣というより覇者だからかと韓信に好意的に見ていたのだが描写の端々から察するにあまり著者の評価が高くないらしい。
 同時に劉邦の評価も微妙なものがあった。しかし、誰もが評価する蕭何や周勃みたいな人間を劉邦も評価している以上は、悪くいうにも限界がある。まとめでは信用ならない上に、猜疑心の塊と言われても、場面場面では光を当てられていた。
 漢の名臣たちはまさに高祖を彩る綺羅星といえるだろう。

 比べて項羽の人材は、范増ひとりに、章邯が(半分は秦の将なので)半人分しかない。前者は項羽の不明を訴える退場をしてしまうし、後者のように忠義を尽くしても対象となった項羽よりも尽くした本人が讃えられる形になる。敗者とは憐れなものだ。
 しかし、名臣たちの人生を追っていると、最大の転機が「鉅鹿の戦い」によってもたらされていることは少なくなく、歴史における項羽の巨大さを感じずにはいわれない。彼はひとつの人物というよりも、転換をもたらす一大災害に近かったのかもしれない。

 楚漢から距離をとった人物としては、斉の田横と趙の陳余があげられている。章こそ立てられていないが周市や魏咎、周文みたいな人物も光彩を放っていて、楚漢戦争が一国内の内乱というよりも多士済々が入り乱れる世界大戦であったことが分かる。

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