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新三河物語・中 宮城谷昌光

 三河一向一揆をくぐりぬけ、三河を血肉とした家康は、足元を一歩一歩ふみしめて遠江の地に攻めかかる。
 同時期に信長がなした飛躍に比べれば大人しくみえるけれども、それなりに体力の残っている今川家に、国の数では劣る徳川家が挑んで遠江をもぎとったのだから大したものだ。そもそも比べる相手が悪すぎる。

 家康や信玄に立ち向かった今川氏真がそれなりに評価されていて私は嬉しい。信玄に彼が勝てるものがあるとすれば歌と蹴鞠だと言われていたのには笑った。
 三河武士菌に対抗できる数少ない菌の保有者として、今川氏真の活躍を祈らずにはいられない。いっぽう、依田信蕃は綺麗に染まりすぎ――どころか、彼の方から三河武士を汚染できているようにも見えた。さすがに今川家と武田家には人材が多い。領土は一気に増やせなくても、得難い人材が集まっている。

 氏真と同じくというか、こちらは掛け値なしの評価を受けていたのが、織田家の目立たない二代目信忠であった。
 彼が本能寺の変の際に逃げなかったことが惜しまれる。家中での立場もあるからなぁ。時期によっては父よりも社稷を優先できたのかもしれない。せめて人生五十年が経っていれば……。

 大久保一門はいつもどおりにしぶとく戦っており、つつがなしと言う他なし。平助に天が味方している様子が不気味なのだが、別に天下を取るわけではないから気にするまい。
 あいかわらず漢字の使い方が巧みで、難しい単語もすんなり意味が通る形で使われている。読者のボキャブラリーを増やしてくれる作品だ。

新 三河物語〈中巻〉
新 三河物語〈中巻〉
カテゴリ:時代・歴史小説 | 14:23 | comments(0) | trackbacks(0)

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