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図説 古代ギリシアの戦い ヴィクター・デイヴィス・ハンセン/遠藤利国

 伝説的なトロイア戦争から、アレクサンドロスの後継者たちがローマ軍とぶつかるまで。
 3Dによる会戦再現をはじめとする豊富なビジュアル資料を駆使して古代ギリシアの戦争を通して解説する本。

 後ろにある関係もあって、どうしてもアレクサンドロスを「戦争しか才能のないゴロツキ」呼ばわりしていることが印象に残る。あとがきでも、その点について重点的に触れられていたほどである。
 最初に読んだときは過激な単語の使い方に反感を覚えもしたが、しっかり犠牲者の数字をあげて説明されると、じわじわと納得して来てしまう。少なくともアレクサンドロス像の一つの見方としてありなのではないか。
 ヨーロッパ型の相手を殲滅するまで終わらない戦争に思うところの多い著者が、その根源とみなされる「大王」に対して、ついつい厳しい見方をしてしまっている印象も濃いのだが……。

 アレクサンドロス以前においては、重装歩兵戦術の発生・発展の様子が分かりやすく描かれているところが良かった。ペルシア帝国は間違いなく寝た子を起こしたのだ。
 ペロポネソス戦争の泣きたくなるようなグダグダっぷり、自作農による重装歩兵戦術に最後の煌めきを与えたテーバイ(ボイオティア)の活躍。読み応えたっぷりの歴史描写が続いていた。
 アテナイ軍の戦費を神殿の建設費などに換算する視点は興味深い。真面目に戦争しているフリをしてペルシアから戦費を騙し取ることができたら、喜劇にできるのだが。

 巻末にも科学的・経済的なデータが収録されていて、戦争観の主張はうるさいながらも、資料的価値の高い本だった。

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図説 古代ギリシアの戦い
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