<< 中国名言集 一日一言 井波律子 | main | 乱世幻記4〜天命、大八洲を穿つ 仲路さとる >>

乱世幻記3〜龍虎、川中島に舞う 仲路さとる

 武田信玄と上杉謙信による6回目の川中島合戦が描かれる。
 いつもとは違い大軍を引き連れてきた上杉謙信に状況は有利に展開して、啄木鳥の戦法をお返しするような形勢になった。挟み撃ちが予想されるあの状態では引き分けっぽい形に持ち込めただけでも、信玄は大したものだ。
 すべてを投げ打って撤退できるほど、武田軍には回復力がないとも言えるのだが……。

 信玄の死により東国での戦いは新たな段階に突入する。
 武田家が津軽で策動しているところが新鮮だ。おかげで信勝は生き残れそうな雰囲気になっている――このまま織田家が天下を制覇すれば信勝自信が生き残ることをよしとしないかもしれない。上杉謙信も祖父の仇であるし、陸奥の武田家には問題が山積している。
 なによりも位置関係から物語中で無視されがちな伊達家が存在するのだ。祖国を失った流れでこれを巨大化する前に併呑するのはあまりにも困難。まぁ、逆に防壁として利用できる可能性もあるにはある。

 謙信と信玄の後を継いだ勝頼による雪中の決戦は、下準備の入念な戦術がなかなか面白かった。進むよりも引き込む方が有利な形で戦えるわけだ。
 この辺は雪に慣れた北国兵ならでは、と思える。

 関東を制し、いままた信濃と甲斐を呑み込もうとしている上杉家と、天皇さえ屈服させようとしている織田信長。天下はどちらの手に帰するのであろうか。そして、雪が身篭ったのは誰の子なのやら――誰の子であっても上杉家を継ぐ予感がある。

仲路さとる作品感想記事一覧

乱世幻記〈3〉龍虎、川中島に舞う (歴史群像新書)
乱世幻記〈3〉龍虎、川中島に舞う (歴史群像新書)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 18:05 | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

カテゴリ:- | 18:05 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
トラックバック