<< ドキュメント信長の合戦 藤井尚夫 | main | 宣戦布告 レン・デイトン/後藤安彦 >>

漢帝国と辺境社会 籾山明

 漢帝国と匈奴が接する北西部の辺境。この辺りで出土した木簡と各種防衛施設の遺跡から、辺境社会の姿を描き出す考古学ロマンに溢れる一冊。

 木簡に出てくる一般兵士の名前は、書かれたものが偶然残されていなければ、こうして私が知ることもなかっただろう。歴史の波間に消えて不思議のない人々の存在を感じることができるのは非常に趣深い。
 訴訟や物品の支給が記録に残されているおかげで、彼らの生活がちょっとだけ掴める。苦しかったか、それなりに余裕があったのかは示されていないけど、官僚であれば勤務日数の割増しを受けられるなど、辺境生活者への配慮はあったようだ。

 高級官僚と徴用兵のかなりが外部の出身者で、下級官僚が現地の出身者で構成されていることも興味深かった。現地組織の軍閥化を回避しつつ、効率的に運用しようとした中央の苦心が想像できる。
 出身の違いに起因するトラブルについても記録が残っているなら紹介してほしかったなぁ。
 王莽時代の史料が連続的に扱われていることには、けっして不思議ではないのに色々考えてしまった。

 軍事的な視点からは人や馬が通過したことを調べるために整備された「天田」が面白かった。「天田」は名前が連想させる農業施設ではなく、人工的な砂場の帯のことだ。
 他にも限られた人員で効率的に匈奴対策が行えるよう様々な工夫が凝らされている。

関連書評
戦略戦術兵器事典1〜古代中国編:本書で主題になっている地域がカラーで図解されている

漢帝国と辺境社会―長城の風景 (中公新書 (1473))
カテゴリ:歴史 | 23:32 | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

カテゴリ:- | 23:32 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sanasen.jugem.jp/trackback/1521
トラックバック