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管仲・上 宮城谷昌光

 斉の名宰相、管仲の生涯を描く歴史小説。管鮑の交わりで知られるように、鮑叔の存在が管仲の人生にとって非常に大きなものになっており、半ば彼ら二人の伝記として読めてしまう。「鮑叔」というタイトルの本が別に出る可能性は低い。

 彼らが活躍した時代は、まだ周王朝がかろうじて権威をもっており、カクと鄭の二国を「幕府」にして中原を治めている。後に大国となる国が脇役に過ぎなかったり、北戎に滅ぼされてしまった国があったりと、揺籃時代の不安定さが興味深い。
 周王が権威を増す鄭から実権を取り戻そうと起こした繻(ジュ)葛の戦いが、彼の敗北によりかえって周王の方にトドメを刺す結果になったのは皮肉だ。もっとも弱い場所を急襲する鄭軍の戦術もなかなか興味深かった。

 多くのヒロインが登場する点も意外かつ面白く、管仲の女性遍歴には溜息が出た。李燕のその後が気になってしかたがない。鮑叔はいかにも充実した結婚生活を送れているのだが、馴れ初めの強烈さを思えば、それは運ではなく彼の実力によるものだと分かる。
 まぁ、いちばん強烈なカップルは斉の諸児(襄公)と実妹の文姜だけど。妹が嫁いだ魯を攻め滅ぼしてでも彼女を奪い返すと誓う諸児のシスコンっぷりが突き抜けていて、妙な感動すら覚えた。
 特殊な環境は良くも悪くも突き抜けた人間を創るようだ。

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管仲〈上〉 (文春文庫)
管仲〈上〉 (文春文庫)
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