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呉越春秋〜湖底の城 一巻 宮城谷昌光

 復讐の人、伍子胥を主人公に中国春秋時代における南方の風景を描く作品。タイトルに呉越春秋とあるものの、伍子胥がいまだ楚にとどまっているため、越の出番はまだ来ない。
 中央からは離れているものの、独自の文化が育まれている「南船」の風景が目に鮮やかで――北の方に比べると心なしか懐かしいものがあった。

 主人公の伍子胥は将来性の高さを周囲に評価されてはいるものの、まだまだ穏やかで、復讐鬼の姿を想像させるほどの激しさは持ちあわせていない。ただ、兄や父との仲の良さが大きな怒りを抱くことを予想させる。
 宮城谷先生の登場人物には、出会ったばかりの相手の将来を常に思い描く習いがあって、歴史上に名を残さないような人物であっても、歴史上の偉人から温かな視線を注がれている。その様子から「仁」の意味が少しずつ分かってくる気がするのであった。
 逆に歴史に名を残さない人でも、偉人にどこかで出会って影響を与えているかもしれない。歴史の不思議さがそこにある。

 伍子胥の兄が支配する棠の邑は呉との最前線にあたり、穏やかな雰囲気をもちながら、常に緊張をはらんでいる。ひとたび大戦争が巻き起これば、彼らにはどうにもならない規模の力によって、いままでの営為が瓦解されかねない。
 戦争とは恐ろしいものだ。


 そして、そんな戦争から「法」を見つけようとする孫武も既に登場している。話を聞いた伍子胥が、孫武を狂人扱いしたのには笑った。まぁ、実績がともなうまでは誇大妄想に思えて当然か。

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呉越春秋 湖底の城 第一巻
呉越春秋 湖底の城 第一巻
カテゴリ:時代・歴史小説 | 23:33 | comments(0) | trackbacks(0)

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