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王家の風日 宮城谷昌光

 中国で二番目に古い王朝である「商(周人は殷と呼ぶ国)」の最後の日々について描いた時代小説。小説の体裁をとることによって、かえって封神演技の神話の彼方にある時代に理性の強烈な光を投げかけている。
 祭祀をなによりも優先した商王朝の姿がとても新鮮で、印象的だった。戦争や狩りも神のために行なっている――聡明な受(紂)王はそこから離脱しようとしたけれど、商王朝の連続性の上では不可能で、周王朝への世代交代がなければ完成しなかったと言えるかもしれない。
 情報源をよりにもよって占いに頼った結果、負けたのは憐れだ。

 周が覇権を握るにあたって、かつて商に滅ぼされた「夏」に連なる国々が大きな役割を果たしていることも興味深い。というか商の長い歴史のなかで存在し続けられることが凄い。周に倒された商も、宋の国となって戦国時代まで続いているくらいだからなぁ。古代中国の人々は気が長い。

 もしかしたら商の王になっていたかもしれない箕子や、彼と対立していたこともある干子も面白かったが、いちばん精彩を放っていたのは周に滅ぼされた秦の王族であるエイ廉とエイ来だった。三国志に出てくる悪来とは、この人だったのかという驚きもある。そして、苗字の漢字が難しい。
 彼と伍して戦えるつわものだった“若き”太公望にも驚きだ。超強力な諜報機関をつくって商王朝を内側から蝕む彼の姿は、ビン〜孫子異伝〜で描かれる孫ビンのモデルになっていそう。

 紂王が単純な悪役ではなく、有能だが欠点もあり、王朝の矛盾を一身に背負うことになってしまった非業の君主として描かれているところが良かった。結末を知っていても彼のことを応援してしまうのだった。


宮城谷昌光「王家の風日」に描かれた「牧野の戦い」を戦況図化してみた
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王家の風日 (文春文庫)
王家の風日 (文春文庫)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 23:49 | comments(0) | trackbacks(0)

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