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呉越春秋〜湖底の城 二巻 宮城谷昌光

 ついに伍子胥に運命の時が訪れる。
 費無極の奸計は連尹家全体を絡めとり、彼と対立していた太子建のみならず、その教育係であった伍奢と息子たちに危害が及びそうになっている。
 だが、兄に生き延びろと言われて大人しく楚を去る伍子胥ではない!意外なことに彼は楚の都に向かって突き進み、牢獄破りを企てる。さすが、物凄い闘志の持ち主である。そうでなくてはならないが、無謀な企てを知りながら彼を生き延びさせようとする周囲の苦労も、それだけ巨大になるのであった。
 大切な家族を危険に晒した太子建を批判している伍子胥も、彼に殉じることになった壮士の家族にとっては、太子と変わらない存在になりかねない。際どいところで二者を隔てているのは、志の差である。
 誰もが英雄のごとく生きられるわけではないけれど、楚の王子であった太子建には、見事な立ち振る舞いをしてほしかったものだ。教育係として、伍奢に落ち度はなかったのか。作中での評価が高いだけに気になってしまった。
 教育係が人間の全てを決定できれば世話はない。

 話は変わって、呉と楚の水戦である「長岸の戦い」が面白かった。
 むやみに力のこもらない簡潔な文章で、戦闘の展開を鮮やかに描き出している。川の流れが戦闘を流動的にしている様子が興味深い。公子光の初登場にも当たり、彼の大器を感じさせてくれる展開になっていた。

 伍子胥の兄、伍尚が収めていたトウ邑が、呉の目の前にぶら下げられている状態にも関わらず攻められずに済んでいた理由には、あっと驚いた。歴史には純軍事学的な思考だけでは解けない謎が満ちている。

呉越春秋〜湖底の城 一巻感想
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呉越春秋 湖底の城 第二巻
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カテゴリ:時代・歴史小説 | 00:22 | comments(0) | trackbacks(0)

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