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華栄の丘 宮城谷昌光

 目と腹が飛び出した恰幅のよい宋の宰相、華元の生涯を描く伝記的な作品。楚の荘王と同時代人で、敵対することになった不運に見舞われつつも、華元・王姫・文公の三本足の鼎がたくましく宋の国を保っていく。
 侵略戦争によって国土を拡大するのとは、また趣の異なる大志の叶え方を、彼らの生き方に観た想いだ。三人の関係に、雪斎・寿桂尼・義元の今川家を思い出した。

 何と言っても記憶に焼き付くのが、宋の特殊な民族性である。彼らのような律儀な性質をもった民族が今後新しく生まれることは無いのではないか。たとえ伝説が混ざっていても周に攻め滅ぼされた商の末裔であるという意識が民族性に及ぼした影響は計り知れない。
 夏王朝時代から続くという楚との対立史も宋を特徴付けていた。氏族を理由に戦争を行えば、恨みが生じ、その恨みが新しい戦争を無限に生んでいく。何百年も対立を続けられたのは、そんな理由があるからではないか。

 夏姫春秋でも描かれた大棘の戦いがハイライトとなるのだが、展開が夏姫春秋とは微妙に異なっている。鄭の側から見るのと宋の側から見る違いもさることながら、鄭軍の配置自体が違っていて驚いた。
 子家が中陣にいるなら、子堅はいずこ……夏姫春秋通りの展開でも大きな問題はないような?まぁ、主人公の華元が宰相であるから、相対するのも宰相の子家の方が絵になるか。
 華元の家臣、華仲の視点があるせいもあって、夏姫春秋のときは笑い話にしか思えなかった戦いが、悲劇に見えることが興味深かった。同じ結果をもたらした戦いでも料理次第で大きく印象が変わるのだ。


宮城谷昌光「華栄の丘」に描かれた「スイ水の戦い」を戦況図化してみた

華栄の丘
華栄の丘
カテゴリ:時代・歴史小説 | 11:52 | comments(0) | trackbacks(0)

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