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沈黙の王 宮城谷昌光

沈黙の王
 言語障害をもっていたゆえに言葉を探す旅に出なければならなかった商の王子、丁の冒険譚。妖術が自然に用いられておりファンタジー性が高い。森林に大部分を覆われた古代の中国には、これが自然と似合っている。武丁が生み出した文字の呪力性はさらに絶大だったことであろう。
 甘盤は本当に武丁を裏切っていたのか、最後まで分からないところが引っ掛かった。個人的な心象では白だ。英明な王をもってしても、第一印象を最後まで引きずっていた気がした。

地中の火
 時代はさらに遡って夏王朝のころ。各地を移動しながら狩猟で生計を立てる族が弓矢の術によって肥大化し、ついに夏を滅ぼす。だが、その力となった寒サクは野心の多い男で……凄惨な物語なのに妙に爽やかな印象を受けるのは、純狐と寒サクの関係がもつ深みゆえであろうか。
 初めて弓矢を戦争につかった男、后ゲイの戦いも相当興味深かった。敵対する族が使える飛び道具として投石や投槍が思いつくが、精度や射程を考えると対抗力には限度がある。

妖異記
 褒ジを寵愛することで周王朝に滅びをもたらした幽王の時代が描かれる。自らの利益だけを追求する人間が増えていけば、周のような体制はあっという間にまとまりを失ってしまう。
 鄭公友も最期の立派な振る舞いばかりが印象に残るけれど、途中では自邑の繁栄をもとめた動きを示していた。

豊穣の門
 妖異記から連続する話。今度は鄭公友の息子、掘突が主人公。父を失い国を背負う立場になった彼の成長ぶりが眩しい。ついつい青年のような印象を受けるけれど、すでに40代であったことを忘れぬように心がけたい。何歳からでも人は好ましい方向に変化できるのだ。

鳳凰の冠
 夏姫春秋の後日譚的な側面をもった作品。晋の名臣、叔向が自らの生き様を貫いていく。彼の想像の通りであれば夏姫はまさに化け物だ。しかし、恐ろしさを感じさせたのは叔向の母親の叔姫の方だった。生まれを決めつけて、決めつけられた人物を不幸にしてしまうところは諸葛亮の「反骨」発言に似ているかもしれない。
 そういえば、夏姫の侍女はどうなったのかな。案外、叔向が視たのは夏姫でもその娘でもなく侍女だったりして。

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沈黙の王 (文春文庫)
沈黙の王 (文春文庫)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 22:01 | comments(0) | trackbacks(0)

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