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夏姫春秋・上 宮城谷昌光

 春秋時代に生きた傾国の美女、夏姫を中心に大国に挟まれた小国の悲哀を描く時代小説。鄭も一昔前は大国だったのだから、時の巡りは恐ろしい。もっと恐ろしいのは中原の人々が持つ「同姓は二度栄えない」という思想である。
 この思想があるせいで、現実になっている気がしてしょうがない。再び栄えると思えなければ支援する気も無くなるというもの。光武帝はその意味でも凄かったのかもしれないなぁ。あの時代は皇室がやられただけで、王族としての劉氏は十分に栄えていたか。

 晋と楚の二大国に挟まれた地域が舞台なので必然的に小国の生き残りを懸けた外交が描かれる場面が多かった。中でも鄭と陳の外交は印象的である。ちょっと愚かな公が立てば瞬く間に不幸を被るハメになる。
 散々、楚に叩かれているが、戦い続けていられる宋は流石にまだ国力のある方だ。

 そんな宋も鄭との激突では思わぬ敗北を喫している。
 華元の名前が出てきた瞬間に、起こることを察知して、激しく笑ってしまった。そして、知っている通りのエピソードなのに再び笑ってしまった。実に人間味あふれるエピソードで「戦車の時代」にしかありえないことと言える。

 鄭のためを思えば、ここで鄭が負けて子宋と子家が敗死していた方が良かった気がしてくるから余計に皮肉だ。羊の肉が狂わせたのは世界の歴史そのものなのだ。私も羊肉食べ逃しやスッポン食べ逃しの上に立っている。とんでもない歴史認識の境地に至った気分だった。
 最後に夏姫の兄である子夷は……「管仲」における斉の襄公といい、近親相姦者は優遇される法則でもあるのかなぁ。逸脱したエピソードのおかげで、人格に深みを持たせやすい気はする。
 彼が長生きしていたら夏姫の運命も大きく変わっていたことであろう。惜しい人をつまらない理由で亡くしたものだ。

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夏姫春秋(上) (講談社文庫)
夏姫春秋(上) (講談社文庫)
カテゴリ:時代・歴史小説 | 23:39 | comments(0) | trackbacks(0)

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