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夏姫春秋・下 宮城谷昌光

 夏姫の不幸が周囲の人々にまで伝播していく下巻。周囲の人間性に問題があるとも、それを増幅する力を夏姫が持っているとも思われる。とりあえず陳公の人間性にはまったく肯定できるところがない……やはりチンコウという名前が悪いのか?なんで家臣まで交えて下劣な行為を繰り返しているんだよ!
 無理矢理弁護しようと思えば、大国に挟まれて汲々としなければならなかったストレスの反動が無軌道な日々を生んだのかもしれない。もっと苦しい立場にあって見事な生き様を示した人間がたくさんいるのだが。
 たとえば夏姫の息子、子南とか。

 荘王の人物は最後まで気宇壮大で、底の知れない度量の大きさに畏怖さえ覚えた。もしかしてニートが転じるとチートになるのか、夏姫に惑わされず正夫人への配慮を貫けている点も凄い。民に神に通じると信じられていた特別な血筋への自負が彼を正気に保ったのかもしれない。
 彼こそまさに「覇者」であった。

 それを決定づけたヒツの戦いはお互いの首脳が望まないまま、どんどん戦いの深みにハマっていく展開が怖い。一部の将の暴走を止めることができない晋軍の組織的欠陥は深刻だ。下のものが実権を握って、上のものが制御できなくなってしまう下克上の風潮が肝心な時に現れて、晋に災厄をもたらしている。


 最後は巫臣が夏姫を救い出して、めでたしめでたし。最後の方の「光」と「風」に満ちあふれた描写がすばらしく、情感を揺さぶる力をもっていた。
 素直に言えば、感動した。

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夏姫春秋(下) (講談社文庫)
夏姫春秋(下) (講談社文庫)
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