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歴史群像アーカイブvol.22 日露戦争 瀬戸利春

 日露戦争における主な会戦と海戦を開戦から遡って詳述していくムック。冒頭にカラーページがあるせいか、いつものアーカイブよりお高くなっている。なまじ着色されているせいか、表紙のしゃがんでる砲兵の目が怖い……よく見たらまぶたと白目を混同していた。視線がカメラ目線だと勘違いしている間は、二八センチ榴弾砲が深夜のコンビニに見えていたよ。

 さて、日露戦争の流れだが――日本側から見れば、いいシナリオだ。国土が広すぎて戦力の分散したロシア軍を各個に撃破、戦場単位では有利なことが多いのに確たる勝利をあげている印象を世界に与えている。その頂点が日本海海戦である。まぁ、あの結果の見えていた戦いは艦隊を進めさせたロシア首脳部の戦略負けだが。
 軍艦だけあっても商船がなければ海軍力を発揮することはできない。日本が旅順港に対して行った閉塞船作戦に使った船舶数さえ、ロシア太平洋艦隊には豪華に見えたのではないか。
 旅順やウラジオストクにまともな船舶修理能力がなかったことも無視できなかった――日本海軍が太平洋戦争にあたって習うべきは、丁字戦法艦隊決戦ではなくて、ロシア海軍の苦しみぶりだった気がする。

 陸上の戦いは決定的な状況にこそ至らなかったものの、はっきりした会戦が行われた最終期の例として興味深かった。日本軍に対して半分の戦力しかないロシア軍が、さらに兵を二分して日本の第一・第二軍にあたるのは、どうなのか。一方に兵力を集中して各個撃破がおとぎ話だとしても、一方に偏らせて日本軍を消耗させる戦線を決める作戦を立てた方が良かったのではないか。
 クロパトキンなりの考えがあったとは思うのだが、各会戦での判断を追っているかぎりでは、特別に優秀な人物には見えなかった。まぁ、第一次世界大戦の戦訓で評価できてしまうせいで、この時代の軍人に対する評価はどうしても厳しくなってしまうところがあるからなぁ。
 乃木将軍にしても、自分の可能な範囲でできることはしていた印象があった。同時に多くの人命が掛かっているのだから「後の時代に生まれる方法だからできなかった」は言い訳にならない、その時思い付けと言われてしまうのも分からないでもない。

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日露戦争 (歴史群像アーカイブVol.22)
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