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スペイン継承戦争〜マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史 友清理士

 ルイ14世の元で元帥になりたかったら、ヴから始まる名前にすること!せめてバ行であることが望ましい。ベリック、ヴィルロワ、ヴァンドーム、そしてヴィラールと名前が見事に偏っていた。
 対するマールバラは冒頭で発音は「モールバラ」の方が綺麗な英語に近いを言われていて、モヤモヤした。その他、名前にからむ問題としては爵位を与えられたイギリス議会の人間が途中で名前を変えて、把握しにくい点があった。
 おかげで、ただでさえ複雑怪奇なイギリス議会の動きが、余計にわかりにくくなっている……。トーリーとホイッグの対立という二極構造でみれば現代にくらべて、ずいぶん単純なはずなのだが。

 肝心――だが、最後はハノーヴァー朝成立の政治的動きが長い――の戦記の方は、マールバラ公のオールマイティな戦いぶりが印象的だった。会戦の戦術局面だけではなく、戦略機動や攻城戦でもそつがない。
 問題は周囲に足を引っ張る存在がたくさんいたこと。スペイン継承戦争前半はオランダの政治委員が、ソ連の政治将校を連想させる妨害行為に出てくれた。そして後半には安定しないイギリス議会がマールバラ公の邪魔をする……講和交渉が本格化してからは、もっと酷くなって初期のオランダに不満をもったことを申し訳なく感じるほどだった。
 どちらも被害者で加害者だ――敵はフランスのはずなんだけどなぁ。

 妻のサラという地雷をもったマールバラに比べてライバルのヴィラール元帥は最期まで鮮やかだった(生涯を詳しく描かれなかったおかげかもしれないが)。交渉中に外交の援護射撃となる勝利をえられているから、純軍事学的以上の評価が出来てしまう。マルプラケの会戦における被害もマールバラ軍より小さくて、どちらが本当の勝者か分からないほどだ。
 彼が81歳まで現役で軍を率いたことは、スペイン継承戦争の軍事技術が「完成」の域に達していたことを示すのかもしれない。

スペイン継承戦争―マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史
スペイン継承戦争―マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史
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