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天空の舟〜小説伊尹伝・上 宮城谷昌光

 古の商のさらなる太古、神話のベールに包まれた夏王朝末期の社会を後の商の宰相となる伊尹の目からみる作品。文字のなかった時代なのに、驚くほどリアリティ豊かに描かれていて、史実と錯覚してしまいそうになる。
 夏と商の争いは架空戦記の様相を呈していると思った方が無難であろう。だが、それが面白い。

 最初のうちは夏の桀王が分かりやすい暴君、商の湯后が善人として描写されていたのだが、話が進むごとに風向きが変わってきた。
 桀王は問題のある性格ながら成長し、湯王は戦争好きな空気に染まって民衆に負担をかけ始めている。王朝が後退する大事な時代に、どちらの器も物足りなかったのだとしたら、寂しいことである。さらなる飛躍を望みたい。

 商が兵車を発明したという話は、后ゲイが弓を生み出したという伝説と同様に受け取れば良いのだろう。もっとも多民族の神を奪って、占領政策にもちいる方法は古代ローマより商の方が先である。
 迷信から城攻めは門の周りでしか行われず城壁を乗り越えることはできない点が社会に与える影響は大きそうだ。門の数さえ少なくすれば、大きな邑でも小さな邑でも防御力は門の強度だけで決まることになる。
 しかし、中華の風習に囚われず、城壁を越えるだけの技術力をもった異民族が現れたら、大変なことになる。

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天空の舟―小説・伊尹伝〈上〉 (文春文庫)
天空の舟―小説・伊尹伝〈上〉 (文春文庫)
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