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関ヶ原疾風伝3〜天下泰平の器 尾山晴紀

 大垣表に兵を残しているため、史実よりも少ない東西両軍が激突する関ヶ原の合戦が繰り広げられる。
 関ヶ原を決戦の地に描く利点は、史実通りの要衝の地であることに加えて、何度も何度も描かれたアイスバーンの決戦場であるため、近隣の住民でなくても戦国時代好きなら地形をおおよそ把握していることにあるかもしれない。
 事実、非常にイメージしやすかった。

 戦い自体は徳川四天王の本多忠勝・井伊直政が良くも悪くも目立ったわりに、榊原康政は史実通りの地味っぷりだったとの感想……もっと大事な連中がいろいろ居る気がするが。
 島津と井伊の因縁は捨てがまりで直政が負傷、のち死亡した史実の未来を関ヶ原前に逆輸入しているかのようだ。直政はどうしてもキツイ役割を与えられやすい気がする。傷を負わない忠勝ではらしくないせいかなぁ。むろん榊原康政は地味だから除外される――鳥居元忠や奥平信昌みたいな籠城戦での華々しい見せ場があればねぇ。

 島津は歴史シミュレーション通りのチート島津だったとして、新鮮な活躍をしていたのが吉川広家だ。懐の深い政治家、外交家のイメージが関ヶ原の合戦で沁みてしまっているが、この作品では思う存分に兵を動かしてくれている。
 あと叱責されつつ仕事をこなしている小野木公郷が妙に愛おしい。フィクションの中の彼では最も活躍しているのではないか?

 ひとつの戦役に焦点を絞り、尾山氏の力強い戦闘描写の密度を徹底的に高めた作品だったが、だからこそ最後は政治の話になった。
 宇喜多・毛利・徳川のトロイカ体制が安定したわけには、八丈島で84歳の大往生を遂げた秀家の長寿が物を言っている。温暖な八丈島だからこその長寿という気もするが、栄養条件と医療体制の向上で気候の厳しさは相殺できるかもしれない。できることなら信之お兄ちゃんには勝ってほしかったですね。天海までとは言わないけれど。

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関ヶ原疾風伝3: 天下泰平の器 (歴史群像新書)
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この世界の八丈島は眉目秀麗な人の率がちょっと低下したのかなぁ、なーんてねっ!
カテゴリ:時代・歴史小説 | 21:42 | comments(0) | trackbacks(0)

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