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太公望・中 宮城谷昌光

 商王の膝元で国家転覆の計画をたくましくしていく太公望はまさにテロリスト!だが、商王を倒した後のビジョンを育て始めている点が、そんじゃそこらのテロリストとは違う。革命家と呼ぶべきであろう。
 本拠地を構えるようになってからは人脈もぐっと増えて複数の諸侯や首長と交わるようになっている。そんな中バカ養子「子良」のおかげで鬼公との距離が広まってしまった点が惜しまれた。本当にまだ何者でもなかった太公望を見つけ出してくれた鬼公への恩は一生物である。
 他にも太公望は多くの人間から多大な恩を施されている。人間一人で何でもできるわけではなく、超人に思われる太公望にも手足となって働く多くの人間がいた。その事が意識された。

 諸侯の中では妲己の父でもある蘇候が非常に立派な人物として描かれていた。悪名高い妲己の方も受王の寵愛を得られぬ人質の身をなげく弱い女性にすぎない。
 太公望が彼女に一目で恋をしてしまう展開には驚いた。もしかしたら、太公望と受王があっても何か通じ合うものがあったかもしれない。太公望と妲己の邂逅はそんな夢想すらもたらすのであった。

 溜めの中巻では派手は会戦はないものの、太公望が向族を教育して狩りを行わせるシーンは興味深かった。瞬く間に機能的な軍隊をつくりあげた様子は、孫氏が宮女たちを組織した手際に比べても遜色がない。
 見事なものである。
 様々な族が各地に存在していて、商に従ったり逆らったりしている様子はガリア戦記のガリア諸族を連想させた。古代ローマはガリアの外側に強力な策源地をもっていたが、商が周辺諸族に一斉蜂起されれば大海に浮かぶ小舟のごときものになってしまう。
 ここに大差がある。

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太公望〈中〉
太公望〈中〉
カテゴリ:時代・歴史小説 | 16:30 | comments(0) | trackbacks(0)

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