<< 太公望・中 宮城谷昌光 | main | ありのままの自然 平山健 >>

太公望・下 宮城谷昌光

 ついに革命の時は熟した。というか、太公望がせっせとエチレンを掛けて強制的に熟させた!商は流言による信用低下と現実の苛斂誅求が重なって周囲から見放され、周は召とむすんで力をたくわえる。
 太公望のプロパガンダが酷いとはいえ、父親の季歴と息子の伯邑考を殺された姫昌には同情せざるをえず、商王朝は滅びるべき運命にあったという結論に至りがちだ。
 悪名高い妲己が完全に被害者で、その最大の加害者が彼女に仄かな思いを寄せていたはずの太公望である事実は残酷だったと思う。王朝を打ち倒して、復讐を遂げるためには罪のない女性まで犠牲にしなければならないのか……。

 西方人に酒池肉林や炮烙の刑をやらかした商が忌み嫌われた事情には、人身御供をやって古代ローマ人に嫌悪されたカルタゴを思い出してしまった。現実は文化の違いなのに、それを悪に出来てしまえるのは、勝者の価値観が後世に残るから。それだけのことなのである。勝てば官軍。
 とはいえ、多くの異民族の不幸の上に成り立っている商に後世を決めてもらいたかったわけでもない。

 最初は単なる復讐だった自分たちの戦いに大きな「意義」を与えた太公望の勝ちとしておこう。

宮城谷昌光作品感想記事一覧

太公望〈下〉
太公望〈下〉
カテゴリ:時代・歴史小説 | 00:08 | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

カテゴリ:- | 00:08 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sanasen.jugem.jp/trackback/1653
トラックバック