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十字軍物語1 塩野七生

 法王が起死回生の策として提唱した聖地奪回の戦い。その経緯を丹念につづる。イェルサレム入城での蛮行が印象的な十字軍であるが、イスラム勢の間で繰り広げられていた内輪もめの悲惨さを知ると、どっちもどっちと思えてくる。一般住民の虐殺がなければ単なる勢力争いとして許せる気分になった事だろう。
 もしかして、宗教意識を前面に出さず、キリスト教の地方勢力をやっていれば、全ては無理でも一部の領主は後世まで残ったんじゃないかな。それよりも西欧からの定期的な支援を当てにした方が賢明か?
 巨大な統一勢力が生まれやすい土地柄だから、ある程度の大きさは必要かもしれない。

 登場人物では中東に領土を興した諸侯以外にフランドル伯や司教アデマールが魅力的だった。アデマールが途中で疫病に倒れていなければ確実に歴史は変わっていたに違いない。戦いにセンスを持っているところも素敵だ。
 トゥールーズ伯サン・ジルは何で自分の領地に帰らなかったのかな。その辺りの説明がちょっと欲しかった。何か見落としているだけか?いちばん年上なのに問題児というキャラクターはある種の可愛気がある。
 それに比べて可愛気がないのがボエモンドで、最後の最後で野心が裏目に出てしまった人生は彼らしいと思った。
 自分は苦労せずに利益だけ得ようとしたビザンティン皇帝アレクシオスは本当にいい印象がない。十字軍の中には命を懸けて争ったイスラム教徒よりもギリシア正教の皇帝の方を嫌っている人間もいたんじゃないかなぁ。

 最後に第一世代に、いとこのボードワンが含まれていないことを理不尽に感じた。この時期のエデッサ伯領はまるで次期イェルサレム国王のベンチみたいだ。テトラルキアにおける副帝領みたいなものだと思えば納得できる。

十字軍物語〈1〉
十字軍物語〈1〉
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