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十字軍物語2 塩野七生

 攻守逆転。
 聖地を「解放」し、領土を拡大していく第一次十字軍世代は去り、イスラム側に反撃のときが少しずつ巡ってくる。
 ザンギーが現れる前でさえ拡大の勢いは失われていて、少ない人口で国家を切り盛りすることが問題になってしまっているからなぁ。イスラム側に統一勢力が生まれてしまっては、助かるはずもなかった。
 援軍を頼めるのがビザンティン帝国よりも遠くの西欧であったことも問題だ。もっと友好関係を築くことができていれば……アンティオキア公領を手に入れても愚鈍なビザンティン帝国に期待できるはずもないか。

 サラディンが立ってからは完全な劣勢に陥った十字軍国家であるが、残り少ない命のすべてを掛けて、祖国の寿命を延ばそうとしたボードワン4世の偉大さには胸を打たれる。もし、彼がライ病に罹っていなかったら――資質は同じでも覚悟と周囲の気持ちが変わってくるのは避けられないので、あまり期待しすぎるのも酷か。
 だが、短命で幼いボードワン5世を挟んで後を襲ったギー・ド・ルジャニンがボードワン4世とは比べようもない無能であったことは否めない……負けた側が無能すぎてハッティンの戦いの格が上がらなかった等と、著者に偉い嫌味を言われてしまうほどだ。
 比較の中でイッソスとガウガメラでアレクサンドロスと戦ったダレイオス三世を塩野先生が高く評価しているらしきことに驚いた。まぁ、すぐに戦場から逃げ出すとは言っても、戦争からは最後まで逃げなかったからな。ペルシア軍も諸兵科連合軍として高い完成度に達していたし。

 イェルサレム防衛戦をバリアーノ・イベリンが飾って、イェルサレム王国はティロスをわずかに残してほとんど終了。イベリンの活躍には映画「キングダム・オブ・ヘブン」を思い出さずにはいられなかった。
 問題児サン・ジルの流れをくむはずのトリポリ伯レーモン三世がいい仕事をしていることも見逃せない。

十字軍物語2
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