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五〇〇〇年前の日常〜シュメル人たちの物語 小林登志子

 5000年前メソポタミア地方に生き、記録を残した人々「シュメル人」は間違いなく私たちと同じ「人間」であった。
 そのことを様々な資料から実感させてくれる本である。ただしタイトルから想像させるほど一般市民の生活に踏み込むことはできておらず、記録を残す機会の多かった王たちやその家族の事績を追う記述が多い(逆に歴史の流れは把握できないとスルーしていた人は注意)。

 なかでも資料の豊富な「ラガシュ」はシュメル時代の主人公であるかのように勘違いしてしまいそうなほど多く取り上げられており、シュメルの都市国家を語る上での示準化石になっている。
 彼らと争ったウンマ市はどうしても悪役として歴史に名を残してしまうわけで、気の毒なことである。悪名は無名の勝るわけで、ラガシュの神様に向けたプロパガンダのおかげで、ウンマ市のいろいろなことが知られているのも事実であろう。

 悪名と言えば、シャムシ=アダドの息子ヤスマフ=アダドの不肖の息子っぷりが、シュメル時代の本にも関わらず載せられていた。もう許してやれよ。
 ウンマ市の例とは違い、紹介されなかったイシュメ=ダガンより幸せとは思えない……。

 最後の章はウル第三王朝の偉大な四方世界の王「シュルギ」の生涯が紹介されている。メソポタミアの国々は初代よりも少し後の王が最大の業績を立てる例が多い。
 シュルギの王賛歌があまりに多すぎるので学者によってA〜Zまで名前をふられており、イスラエルの学者の研究によれば23もあると知って、彼のナルシストぶりに引いた。
 子守歌をつくった后の例をみると重婚しまくりながら女性の趣味はよかったようだ。

 著者が女性であることも影響しているのか、歴史の影に埋もれがちな女性に同情的な視点が目立った。后を殉死させる風習は残酷だが、母后が権力をふるった中国の例を考えると、いささか乱暴ながら政権の若返りのために必要な手続きだったのかもしれないと思う。

 また物価などの数値もちょくちょく取り上げてくれており、銀の重量を基本とした経済の様子が垣間見えて興味深かった。以下、取り上げられていた物価の例を転記しておく。


ウル第三王朝時代に銀1ギン(約8.3グラム)で買えたもの

大麦1グル(約300リットル)
羊毛10マナ(約5キログラム)
銅1と6分の5マナ(約916.7グラム)
ごま油12シラ(約12リットル)
ラード17シラ(約17リットル)
なつめやし1グル(約300リットル)

 ごま油の方がラードより貴重だったり、大麦となつめやしが同じ値段だったりすることや、銀と銅の交換比率が分かる。現代になっても正確な重量がわかるのは、文字の彫られた分銅(銅製ではなく閃緑岩製だが)があるおかげだ。メソポタミア文明は保存性のよい記録を多く残してくれたものである。

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五〇〇〇年前の日常 シュメル人たちの物語 (新潮選書)
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